レビュー

新ウォークマン「A300」使ってみた。“今は完全ワイヤレス派”に刺さる仕上がり

“ストリーミング・ウォークマン”の新モデル「NW-A300」シリーズ

1月27日に発売された“ストリーミング・ウォークマン”の新モデル「NW-A300シリーズ」。Amazon MusicやApple Musicといったサードパーティ製アプリや、LDACでのワイヤレス接続時にも、音質アップスケーリング「DSEE Ultimate」を利用できるようになった。「普段聴いているストリーミングサービスも高音質になるなら……」と、すっかりDAPを持ち歩かなくなっていた筆者が実際に使ってみると、あらためて“音楽再生専用機”ならではの強みを実感した。

筆者は長年ウォークマン「NW-ZX100」を持ち歩いていたのだが、Apple Musicで空間オーディオの配信がスタートしたことをきっかけに、初めて音楽サブスクに加入。その便利さに抗えず、今ではすっかりスマホ+完全ワイヤレス派となり、ウォークマンや有線イヤフォンを外に持ち出すことはなくなってしまった。

しかし、スマホでストリーミングサービスを使っていると、やはりバッテリーの減りが気になってしまう。また、あらかじめ楽曲をダウンロードしておけば回避できる問題だが、ストリーミングによる通信量の増加も頭を悩ませるポイント。そこで新ウォークマンをうまく活用してスマホのバッテリー消費を抑えつつ、さらにスマホよりも高音質でストリーミングサービスを楽しめればと考えた。

本体カラーはグレー、ブルー、ブラックの3色。背面は波打った形状となっている

NW-A300シリーズは、従来のNW-A100シリーズの後継機。前モデルユーザーから要望の多かった、バッテリー持続時間の改善に加え、ストレージ容量についても最低容量が32GBからに変更されている。ストレージ容量が32GBの「NW-A306」と64GBの「NW-A307」が用意され、実売価格はそれぞれ46,000円前後、57,000円前後。カラーはグレー、ブルー、ブラックの3色が用意されている。

「DSEE Ultimate」がすべてのアプリ、LDACでのワイヤレス接続時に利用可能に

最大の特徴は、圧縮音源やCD音源をハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE Ultimate」が、ストリーミングアプリなどすべてのアプリに対応したこと。従来は有線接続時かつ「W.ミュージックアプリ」使用時にのみ利用可能だったが、新モデルではすべてのアプリに対応した。DSEE Ultimate自体もロスレス音源に対応し、44.1kHz/16bitの音楽を、最大192kHz/32bit相当まで拡張できるようになっている。

加えてBluetoothのLDACコーデック利用時も、DSEE Ultimateを利用可能に。これにより、例えばソニーの完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM4」などLDACに対応したイヤフォン/ヘッドフォンを使えば、ワイヤレスでもAmazon MusicやApple Music、Spotifyなどで配信されている楽曲などをDSEE Ultimateでアップスケーリングして楽しめる。なお、LDACでのBluetooth接続時は、最大96kHz/24bitでの再生が可能。

そのほかの特徴としては、筐体にアルミ切削シャーシを採用。低抵抗化と低域の音質向上に寄与すると同時に、高い剛性も実現。さらにフラッグシップモデル「WM1AM2」の技術も投入し、金を添付した高音質はんだを採用するなど、高音質化が図られている。

ケースも別売アクセサリーとして発売。こちらは手帳型の「CKS-NWA300」(実売4,000円前後)
シリコンケースの「CKM-NWA300」(実売2,000円前後)

サイズは名刺入れと変わらず。LDAC完全ワイヤレスと相性良し

筆者が使っていた「NW-ZX100」(右)とのサイズ比較

今回試用したのは、容量32GBのNW-A306で、筐体色はグレー。筆者にとってはNW-ZX100以来のウォークマンで、ZX100がタッチ操作非対応だったこともあり、NW-A306を手にすると、その薄さと軽さ、小ささに驚きを隠せない。

筐体は名刺入れとほぼ変わらないサイズ感

外形寸法は約55.7×11.8×98.2mm(幅×奥行き×高さ)で、名刺入れとほとんど大きさは変わらない。重さも約113gと軽量なので、これならズボンやジャケットのポケットにサッと忍ばせて、スマホとの2台持ちでもストレスなく過ごせそうだ。

文字入力時には、少し画面の狭さを感じることも

筐体も梨地のような肌触りと、背面の波打った形状が手に馴染み、ホールド感も良好。画面サイズは3.6型で、メインで使っているiPhone 13 Proと比べると画面はかなり小さく、文字入力やApple Musicなどでの検索時に画面の狭さを感じることもあったが、慣れてしまえば特に問題はなかった。ホーム画面の操作やアプリの挙動などに引っかかりを感じることもほぼなかった。

設定アプリの「音」項目内に「ハイレゾストリーミング」が用意されている

まずはスマホとの併用を想定して、LDAC対応のWF-1000XM4をペアリング。この際、設定の「接続済みデバイス」→「接続の設定」→「Bluetooth」のワイヤレス再生品質が「LDAC音質優先」や「LDAC接続優先(自動)」になっているか、同じく設定アプリの「音」項目内にある「ハイレゾストリーミング」がオンになっているかを確認しておこう。

WF-1000XM4の場合、アプリ「Sony | Headphones Connect」から接続品質を変えるとLDACに切り替わる

またWF-1000XM4の場合、アプリ「Sony | Headphones Connect」の「Bluetooth接続品質」を「接続優先」から「音質優先」に切り替えると、LDAC接続に切り替わる。アプリの上部に「LDAC」と表示されるので分かりやすいはずだ。

さらにApple Musicの場合、アプリ内の設定で、オーディオの品質を高音質(AAC 256kbps)、ロスレス(ALAC 最大48kHz/24bit)、ハイレゾロスレス(ALAC 最大192kHz/24bit)から選択できるので、こちらもあわせてチェックしておこう。今回はWi-Fiストリーミング、ダウンロードともにハイレゾロスレスに設定した。

Apple Musicで「First Love(2022 Mix)/宇多田ヒカル」を聴いてみる

DSEE Ultimateのオン/オフを切り替えながら、Netflixドラマで改めて注目を集めている宇多田ヒカルの「First Love(2022 Mix)」を聴いてみる。Apple Musicでは、どちらも48kHz/24bit ALACのロスレス音源で配信されている。

DSEE Ultimateオフだと、冒頭に流れるピアノの高域の描写が荒く、少し耳に刺さるような印象だが、DSEE Ultimateをオンにすると、高音のカドが取れて滑らかな聴き心地になる。サビのリバーブ部分もDSEE Ultimateをオンにすると、広いホールに響き渡るような音場の広さが感じられると同時に、ズンッと沈み込む低音にも豊かさが出てくる。

そのほか、「新時代/ウタ」(ロスレス)や「Subtitle/Official髭男dism」(ロスレス)や「花は誰のもの? -From THE FIRST TAKE/STU48」(ロスレス)などを聴いてみたが、どれもDSEE Ultimateをオンにすると高域の滑らかさ、低域の沈み込みが増している印象だった。

より高音質で楽しむなら、やっぱり有線イヤフォンで

せっかくNW-A300シリーズを使うなら、完全ワイヤレスだけでなく、有線イヤフォンも活用したいところ。組み合わせて使いやすい1~3万円前後の価格帯で、ソニー製有線イヤフォンを探したが、直販サイト「ソニーストア」を見ると、その価格帯の有線イヤフォンは、ほとんど取り扱いがない。

1万円前後ではスマートフォン対応を謳う「MDR-EX650AP」(ソニーストア価格8,360円)があるが、実売4.6万円前後からのNW-A300シリーズと組み合わせるには、スペック面で、かなり物足りなさを感じる。

その上の価格帯となると一気に「XBA-Z5」(ソニーストア価格74,800円)までジャンプアップしてしまい、今度はオーバースペック感がある。「ウォークマンのエントリーモデルと組み合わせやすい価格・スペックの有線イヤフォンは、ソニーのラインナップからなくなってしまったのだな……」と、時代の流れを感じてしまった。

ちなみに前モデルでは有線イヤフォン付属モデルが用意されていたが、NW-A300シリーズでは廃止に。あわせて有線イヤフォンにおけるノイズキャンセリング機能も非搭載となった。

当たり前だが有線イヤフォンも使用可能。有線のほうがより高音質で音楽を楽しめる

というわけで、今回は手持ちのShure「SE215 Special Edition」やフェンダー「FXA2」、Ultimate EarsのカスタムIEM「UE RR」などの有線イヤフォンを使ってみた。聴き比べると、DSEE Ultimateオン+LDAC完全ワイヤレスと比較しても、音がスッと立ち上がる様子や、低域の沈み込み、音場の表現力などは有線で聴くほうが圧倒的にいい。完全ワイヤレスの取り回しの良さは魅力だが、音質については、やはり有線イヤフォンのほうが優位だと改めて感じさせられた。

念のため、NW-A306と筆者所有のNW-ZX100を有線イヤフォンで聴き比べてみると、解像感が上がっていることもあり、NW-A306のほうが楽器の多い楽曲でも、それぞれの音色を聴き取りやすい。一方、低域の量感はNW-ZX100のほうがより沈み込んでいるように感じられた。

YouTubeなどの動画アプリも利用可能。こういったアプリでもDSEE Ultimateを有効にできる

また、NW-A300シリーズでは、YouTubeやNetflixなどの動画を楽しむこともできる。画面が小さいので、検索結果や登録チャンネルの一覧性は、より大画面のスマホと比べると見劣りするが、個人的にはゲーム実況や製品レビュー、Vlog動画などを観るには十分な画面サイズで、字幕付きの映画も特に問題なく視聴できた。こういった動画アプリでもDSEE Ultimateを利用できるのも嬉しいところ。

ちなみにApple Musicは楽曲を端末にダウンロードしておけばオフラインでも楽曲再生が可能。外出前にダウンロードを済ませておけば、出先でスマホのテザリングに頼ることなく、音楽を楽しめる。

DSEE Ultimateの進化で完全ワイヤレスでも使いやすいシリーズに

手のひらに収まるコンパクトサイズと約113gという軽さながら、スマホよりも高音質で音楽や動画を楽しめるNW-A300シリーズ。DSEE Ultimateを利用できるアプリの制限がなくなり、LDAC接続時のみだがワイヤレスイヤフォン/ヘッドフォンでもDSEE Ultimateが使えるようになったことで、ワイヤレスイヤフォンをメインに使っている人でも、その恩恵を受けられるようになった。

LDAC対応の完全ワイヤレスも、ソニーだけでなく、Ankerなど各社から登場しており、以前よりも環境は整えやすい。そういった完全ワイヤレスと組み合わせて、電車などで移動中はノイズキャンセリング付き完全ワイヤレスで、カフェなどで一息つくときは有線イヤフォンで、といった使い分けも十分楽しめそうだ。

ただ、そうなると完全ワイヤレス側には、ウォークマンとスマホに同時接続できるマルチポイントに対応して欲しいところ。マルチポイント対応モデルなら、ウォークマンで音楽を聴きながらでも、スマホ側の着信や通知に反応できる。現状、マルチポイント非対応のWF-1000XM4には「今冬」とアナウンスされているアップデートが待ち遠しいところだ。

個人的に少し気になったのはストレージ容量。上述のようにApple Musicは楽曲をダウンロードしておく機能があるが、ハイレゾロスレス品質で保存していくと、ストレージがあっという間に減っていく。microSDカードを利用できるとはいえ、手持ちのハイレゾ音源も保存しておくとなると、32GBモデル(実使用可能領域は約18GB)では、かなり心もとない。

64GBモデル(実使用可能領域は約47GB)も用意されているが、その場合価格が57,000円前後まで上がるのが悩ましいところ。それでも「高音質で音楽を楽しめるなら……」という“散財の苦悩”に引き込まれるほど、NW-A300シリーズは魅力的なモデルだった。

酒井隆文