レビュー

今年の三浦的マイベスト! 魅力的な音のツイーター、フォステクス「T360FD」が素晴らしい

フォステクス「T360FD」

ツイーター探しの旅

現在はメインスピーカーに米国マジコの「M3」を使っている私であるが、実は小型スピーカーの自作は今でも好きで時々やっている。その始まりはオーディオに興味を抱くようになった1970年代前半の中学生時代までさかのぼる。フォスター電機の「FE103」をノコギリとカンナで仕上げて作ったラワン合板ボックスに納めた自作バスレフ型が、私の人生初スピーカーだった。

タイトルにあるフォステクス「T360FD」ツイーターの話をはじめよう。もう10年以上も前からになるだろうか、私は購入可能なツイーターの中から個人的に興味を抱いた製品を購入して音を確かめてきた。ホーン型にはあまり食指が動かず、もっぱら平面型かドーム型。

米国アヴァロンアコースティックスが逆ドーム型のダイヤモンド振動板ツイーターを採用した「Diamond」(正式名称:Eidolon Diamond)を発売したことで、そのツイーターがドイツのAccuton(企業名:Theil & Partner)による製品と知った私は、自作向けにスピーカーユニットを販売しているサイトで見つけることができた。

そのとき私が購入したのは、「C20」シリーズという直径20mmのダイヤモンド振動板ツイーター。直径25mm(1インチ)のC25シリーズほうが一般的なのだが、口径が小さいほうが少し安価だったのだ。市販のスピーカーシステムにアドオンするスーパーツイーターとして試したかったこともあり、C20のほうが高域再生限界が伸びているからと決めた。残念なことに、Accutonはダイヤモンド振動板に限ってだが一般市販(自作=DIY用途)をやめたらしい。需要に対して供給が追いつかず、採用する企業とのB to B取引だけになったようなのだ。

最初に購入したAccuton製のダイヤモンド振動板・逆ドーム型(直径20mm)ツイーター

私はこれまでに、純リボン型ツイーターやプリンテッドコイル平面振動板ツイーター、ベリリウム振動板のドーム型ツイーター、ピエゾ(圧電素子)方式ツイーターなどを試してきた。いずれも振動板素材と発音方式の特徴が音に反映されていると感じているが、純リボン型ツイーターは振動板質量の軽さから応答スピードが非常に速く、既存のスピーカーシステムにアドオンするスーパーツイーターとしては意外に使いにくかったという思い出がある。

そして今年になって私が入手したのが、フォステクス「T360FD」(1台49,500円)である。これが金星的というべきダークホースだった!

アコーディオンのような振動板に注目

型番末尾の“FD”とは、フォールデッド・ダイアフラムの略。日本語では「折り曲げ振動板」である。世界的にはAMT、すなわちエアー・モーション・トランスフォーマーと呼ばれるタイプだ。トランスデューサーという誤訳も散見するが、開発当初からトランスフォーマーと称されていた。

いま私が手元に置いているツイーターは3種類だけ。そのなかで、フォステクスT360FDが最も魅力的な音がする。アコースティック楽器の音色変化にきわめて敏感に反応してくれるし、音そのものが色彩的に鮮やかで耳にスッと入ってくる浸透力を持ち合わせているのが特徴。周波数測定をしたら3機種ともに優れた高域特性が得られるのは間違いないけれども、音楽を聴いて判断したらフォステクスT360FDがナンバーワンだと思っている。コストパフォーマンスでいっても、文句なしダントツのナンバーワンだ。

手持ちのツイーター3機種。左から独Accutonのダイヤモンド振動板・逆ドーム型(直径20mm)、フォステクスT360FD、独Bliesmaのベリリウム振動板・ドーム型(直径25mm)

フォステクスT360FDのようなAMTは、ハイルドライバーとも呼ばれる。それはドイツ出身のオスカー・ハイル博士(1908-1994)が考案した方式だから。AMTのツイーターが世界で初めて搭載されたのは、米国ESS社のスピーカーシステムだった(1974年)。当時はティアックが日本の輸入元になっていて、ある程度の台数が売れたと聞いている。

ちなみに、米国ESS社の正式社名はエレクトロ・スタティック・サウンド。つまり、静電型サウンドということなのだ。初期の製品はツイーターやミッドレンジがエレクトロスタティック(静電型)で、音は良かったが故障が多発したという。その後にオスカー・ハイル博士が考案したAMTを採用して成功したのだ。

フォステクスT360FDは、構造的には独エラックのJETツイーターに似ている。これは他からの伝聞だが、パテントが切れたことから各所でAMTが造られるようになったという。

「JET 6」ツイーターを搭載したエラック「BS312.2」

エラックのJETは、晩年のオスカー・ハイル博士と交流を得たドイツのクラウス・ハインツ氏が手掛けた。彼はその後にADAMオーディオを設立してプロ用のアクティヴ型スピーカーで成功。現在はHEDDという会社を興して、同じくプロ用アクティヴ型スピーカーとAMTヘッドフォンを製造している。HEDDとは、ハインツ・エレクトロダイナミック・デザインズの略。余談であるが、HEDDのAMTヘッドフォン「HEDDphone」は、個人的にとても好みの音質だ。軽量化された新製品のHEDDphone TWOは、AMT=ダイナミック型のひとつの究極だろうと思っている。

HEDD Audioの新ヘッドフォン「HEDDphone TWO」

AMTの発音動作はシンプルかつ独特。フォステクスT360FDの振動板はポリイミド(PI)製フィルムの長方形シートをいくつも折り曲げた、まるでアコーディオン・カーテンのようなヒダヒダ形状になっている。

T360FD
振動板を見やすくしたところ。アコーディオンのようなヒダヒダになっているのがわかる。本来は開けてはイケナイのですが特別に……

その裏面にはボイスコイルになるアルミニウムのパターンが蒸着されている。一般的なドーム形状ツイーターの振動板面積と比べると、AMTは8倍ほどもあるという。微小領域でも再現性の高い音を奏でられるAMTは、振動板面積の大きさをメリットにしているに違いない。

T360FDの構造

フォステクスT360FDの構造である。振動板の後方に強力な平面のネオジム磁石が置かれている。振動板のボイスコイルを動かすには磁束が必要になる。ネオジム磁石の背面が円形のボトムプレートになっていて、円柱状のリングヨークが正面から見える4つの穴が開いたトッププレートと連結されている。これでトッププレートからネオジム磁石へと磁束流が発生しているのだ。ヒダヒダ振動板とネオジム磁石の間には吸音シートが介在している。

ボイスコイルに電気信号が流れると、折り曲げられた振動板が空気を押し出したり引き入れたりする。ダイナミック型スピーカーが振動板の振幅で空気を押したり引いたりするのと同じ動作を、ヒダヒダ振動板は対向面を伸縮させることで実現しているのだ。

T360FDを横からみ見たところ
T360FDの背面
T360FDの付属品

音を聴いてみる

さて、フォステクスT360FDの音を紹介していこう。自宅では市販のスピーカーシステムにアドオンできるように、パッシブ素子のコンデンサー(キャパシター)とコイル(インダクター)に可変アッテネーターを組み合わせた環境である。しかし、これでは僅かながらもパッシブ素子のキャラクターが音に乗ってしまう……。

取り付けられるよう合板にφ65mmの穴を開けたT360FDは、比較試聴のためフォステクスから借りたもの

というわけで、私は友人のリスニングルームを借りて比較試聴を行なうことにした。ソニー時代にはSACDビジネスセンターでSACDに深く関わり、その後は日本オーディオ協会を経てフリーランスとなっている照井和彦さんの「照井亭リスニングルーム」である。

照井亭システム

彼のオーディオシステムはオーストラリアの「DEQX」を使ってデジタル帯域分割している3ウェイのマルチアンプ駆動システム。低音域は40cm口径のフォステクスW400A-HR(生産完了)の密閉型ダブルウーファー。中音域は16cm口径のイスラエルのモレル製SCM634である。そこにアキュフェーズの優秀なデジタルチャンデバ「Accuphase DF-65」を持ち込んでDEQXと換装した。こうすることでパッシブ素子を使わずに、ツイーターとしてのフォステクスT360FDの音がピュアに鳴るわけだ。

オーストラリアの「DEQX」
アキュフェーズのデジタルチャンデバ「DF-65」
低音域は40cm口径のフォステクスW400A-HRの密閉型ダブルウーファー

比較対象として同じフォステクスのT250Dを用意していただいた。25mm口径の純マグネシウム振動板(リッジドーム形状)を採用している、ワイドレンジな現行品ツイーターである。

手前がフォステクスのT250D

アキュフェーズDF65の設定であるが、ダブルウーファー~ミッドレンジ間は100Hzのクロスで-96デシベル/オクターブという急峻な設定。これはDEQXでの設定に準じたもの。ミッドレンジ~ツイーター間は、試し聴きを繰り返して3,150Hzのクロスに-12デシベル/オクターブとした。減衰特性を-12デシベル/オクターブにしたのは、パッシブ素子を使った2次の特性に準拠させるためである。

T360FDの能率は93.5デシベルで、T250Dは90デシベルと僅かに低い。ということで、それぞれのレベル調整を慎重に行ってから比較試聴を始めることに。最初に試聴楽曲をT250Dにセットアップした状態で聴き、次にT360FDにセットアップして聴くことにした。

  • 試聴曲1:イーグルス「ホテル・カリフォルニア」(ライヴ音源)44.1kHz/16bit
  • 試聴曲2:Tea(女性ボーカル)「They Can’t Take That Way」96kHz/24bit
  • 試聴曲3:ヴィットリオ・ククーロ(Sax)「帰ってくれたら嬉しいわ」96kHz/24bit
  • 試聴曲4:ジョン・ウィルソン指揮SOL「レスピーギ:ローマの祭」96kHz/24bit
  • 試聴曲5:キース・ジャレット「ハートランド」(ライヴ音源)96kHz/24bit
  • 試聴曲6:神尾真由子(Violin)「バッハ:パルティータ 第1番」96kHz/24bit
T250Dを設置したところ

純マグネシウム振動板のT250Dはモニター的というか、無駄な音を出さない真面目さが特徴のようだ。イーグルスでは冒頭のギターの音色に精確さを感じさせて音像定位もピシッとしているが、これがT360FDでは音色が開放的で艶やか。倍音成分が豊かに感じられるのでカラフルな表現になるのだ。聴衆の拍手や口笛の音なども明らかに情報量が多く、そのぶん立体感も高まって感じられるから心地よい。これがT250Dでは少し艶消し的な色調に感じられるほど。T360FDはいくぶん音が華やかに描かれる傾向があるようだが、これはエネルギーレスポンスがハイエンドまでフラット傾向なことにも関係しているのだろう。T250Dでは中高域のエネルギーが僅かながら強いようだが、ハイエンドの伸びはじゅうぶんに感じられた。

女性ボーカルのTea(ティー)を聴くと、T360FDは喉や唇の細やかな動きが見えるような声色の生々しさと艶やかさ。そしてドラムスの特にシンバルを叩いたりリズムを刻んだりする金属音が複雑に響いてくるので、歌と演奏の臨場感が素晴らしい。

これがT250Dでは冷静さを重視した音の描写になる。T250Dの純マグネシウム振動板は軽量かつ高剛性ということから、ベリリウム振動板ツイーターに近い精鋭な高音域を特徴にしている。シンバルの金属音は鮮やかで透明感もじゅうぶんに備えているのだが、T360FDで聴いているほうが音楽が躍動的に感じられるのだ。

ヴィットリオ・ククーロが吹くサキソフォンは、やはりというかT360FDで聴いているほうが迫力がグッと増してくるようでフレッシュだ。T250Dだって決して悪くないし過不足も感じられないのだが、音の強弱表現に関してT360FDのほうが余裕があるようで、ジャズのクワルテット演奏が実にダイナミックなのだ。

サキソフォンの音色は緻密な描きかたという観点からはT250Dのほうが上回っているようだが、艶やかな音色を重視したように響かせるT360FDのほうが音楽に自然に入り込める。もし聴き手が録音エンジニアだったらT250Dの落ち着きのある音を選ぶかもしれない。一方、音楽の生き生きとしたエネルギー感を求めるなら、やはりT360FDの音のほうが魅力的だ。

T360FDを設置したところ

AMTならではの音数の多さに加えて、T360FDは変化に富んだ旋律の美しさも得意としている。ジョン・ウィルソン指揮シンフォニア・ロンドンが演奏する「ローマの祭」を聴くと、複雑に楽器の音色が重なってきたときも解像感を保っているし、トランペットなどの金管楽器が奏でる強弱を伴う旋律が伸びやかで輝かしさが失われることもない。これも振動板面積の大きさからくる余裕なのかも知れない。

T250Dの方はというと、T360FDでは音の華やかさに隠れがちになる、芯の強さを感じさせる一音一音の明確さが特徴といえる。他の試聴曲でもそうだったが、T360FDのほうで聴くと低音域や中音域の明確さも高まるような印象を受ける。

キース・ジャレットのライヴ演奏は、その演奏空間に漂っている空気感も再現するという意味で、T360FDのほうが圧勝といえるだろう。彼が弾くピアノの音の立ち上がりは鋭さと音色の豊かさに溢れていて、きわめて抒情的な演奏になる。T250Dは音の厳格さを重んじたモニター的な表情で緊張感はこちらのほうが高めになるのだが、音楽の世界にフッと没入できるのはT360FDのほうだった。音に適度な緩みが宿っている気もしないわけではないのだが、T250Dよりも聴き疲れのしない自然体な音ということもできる。

最後に聴いた神尾真由子のヴァイオリン独奏は印象的だった。T250Dは録音の見事さを意識させるオーディオ的に凄味のある音がして、T360FDのほうは演奏の素晴らしさを意識させる美しい音だった。どちらもツイーターとしての性能の高さを際立たせているのは明らかだが、音を表現する方向性はT250DとT360FDでは明らかに異なるように感じられて興味深かった。

6曲の試聴曲を聴き終わった私の総論的な感想は、T360FDのほうが音楽表現に深みがあって彩り豊かに聴かせるということ。モニター的な音の真面目さを信条とした、凛とした音がするT250Dの音質傾向を好むオーディオファンも少なくはないと思うけれども、音楽を新鮮に聴かせるT360FDの音は実に魅惑的だった。

年末年始、ぜひT360FDを使ってスピーカーDIYに挑戦を!

私はImpress Watchの読者オーディオファンに、フォステクスT360FDを既存のスピーカーにアドオンするスーパーツイーターとしての提案をしてみたい。そのためにはT360FDをマウントできる穴(φ65ミリ)を開けたバッフル板+台座やネットワーク素子(コンデンサーとコイルと可変アッテネーター)などを用意する必要があるけれども、その価値は大いにあると思うのだ。

フォステクスから借用したT360FD+合板製バッフルボードにはフィルムコンデンサーがついていたが、比較試聴ではそれをバイパスして使っていない

ひとつ注意しておきたいのは、T360FDのインピーダンスが4Ωということ。可変アッテネーターは音圧を調整するために便利なパーツなのだが、フォステクスには4Ω用のアッテネーターがない! それは困ったと思っていたらコイズミ無線がBennicとAticsのL-PADアッテネーターを取り扱っていたので、私はAticsのL-PADアッテネーター & つまみセットをペア購入。これでアッテネーターの件は解決した。でもまあ、8Ω用のフォステクスR80Bを使っても特に支障はなく、直流抵抗値が少し変わるだけだ。個人的にはフォステクスに4Ω用のアッテネーターを出してほしいところだけれど、スーパーツイーター的に使うのならアッテネーターを使わないという選択もある。

コイズミ無線がBennicとAticsの4Ω用L-PADアッテネーターを取り扱っていた

フォステクスは高性能ウーファーFW168HRとT360FDを組み合わせた場合のコンデンサー(キャパシター)とコイル(インダクター)の値を提案してくれた。また、既存のスピーカーにT360FDをスーパーツイーター的に接続する結線図も描いてもらった。左にあるスピーカーは背面からみた格好になっている。

FW168HRとT360FDを組み合わせた場合のコンデンサーとコイルの推奨値だが「中抜け感」がある場合にはFW168HR側のコンデンサーを10μFにしてT360FD側のコンデンサーを6.8μFにするという案もあるそうだ。音楽を聴きながらカット&トライで追い込むのが、自作スピーカーの音をまとめあげる面白さといえる
既存のスピーカーにT360FDをスーパーツイーター的に接続する結線図

参考になると思うので、-12デシベル/オクターブにした場合の素子の概算値を挙げておこう。この場合の減衰特性はLinkwitz-Rileyである。3000Hz~5000Hzくらいの周波数だとアドオンした場合に既存のスピーカーの音域とカブるので注意してほしい。

  • 3000Hz コンデンサー=6.8μF (計算値6.63μF)、コイル=0.39mH (計算値0.42mH)
  • 4000Hz コンデンサー=4.7μF (計算値4.98μF)、コイル=0.33mH (計算値0.32mH)
  • 5000Hz コンデンサー=3.9μF (計算値3.98μF)、コイル=0.27mH (計算値0.25mH)
  • 6000Hz コンデンサー=3.3μF (計算値3.32μF)、コイル=0.22mH (計算値0.21mH)
  • 7000Hz コンデンサー=2.7μF (計算値2.84μF)、コイル=0.18mH (計算値0.18mH)
  • 8000Hz コンデンサー=2.7μF (計算値2.49μF)、コイル=0.15mH (計算値0.16mH)
  • 9000Hz コンデンサー=2.2μF (計算値2.21μF)、コイル=0.15mH (計算値0.14mH)
  • 10000Hz コンデンサー=2.2μF (計算値1.99μF)、コイル=0.12mH (計算値0.13mH)

同じく、-6デシベル/オクターブにした場合の素子の値を挙げておこう。この場合は減衰特性がなだらかなので、アドオンする使い方なら6,000Hz以上がベターだと思う。

  • 3000Hz コンデンサー=12.0μF (計算値13.25μF)
  • 4000Hz コンデンサー=10.0μF (計算値9.94μF)
  • 5000Hz コンデンサー=8.2μF (計算値7.95μF)
  • 6000Hz コンデンサー=6.8μF (計算値6.62μF)
  • 7000Hz コンデンサー=5.6μF (計算値5.68μF)
  • 8000Hz コンデンサー=4.7μF (計算値4.97μF)
  • 9000Hz コンデンサー=4.1μF (計算値4.42μF)
  • 10000Hz コンデンサー=3.9μF (計算値3.98μF)

フォステクスによると、コンデンサー(キャパシター)を1個にした場合に、0.15μFくらいから0.47μFの値を使うという妙案もあるという。この場合はあえて高い周波数から減衰させることになり、音圧が下がるため可変アッテネーターの必要がなく、しかも既存のスピーカーの高音域とケンカせずに馴染む可能性があるというのだ。教科書的な使い方ではないけれども、私も試してみようと思っている。

締めくくりに、私の友人がT360FDを愛用しているので紹介しておこう。それは1ビット研究会で知り合ったNさんだ。

N氏のシステム

彼は三菱DIATONEのユニットを使った自作スピーカーシステムで音楽を楽しんでおり、スピーカーユニットを壁面にマウントしたマルチアンプ駆動のオーディオシステムを構築している。プリアンプからアナログ方式のチャンネルディバイダーを経由した4ウェイ構成のシステムは、パワーアンプも含めてすべてN氏の自作である。市販のオーディオ製品はDENONのSACDプレーヤーとアナログプレーヤーだけなのだ。

以前はツイーターも三菱DIATONE製で揃えていたのだが、T360FDの情報を知り、これは絶対にいい音がする! と直感して現物を見ないまま購入したのだそう。T360FDが届いてからすぐにツイーターを換装してレベル調整をしたところ、これまで聴いていた音とは比べ物にならないほど情報量が高まり、音楽の表現力が格段にアップしたという。結果的に音を楽しむ時間も増えたようで、N氏はT360FDによる音質向上にご満悦だ。

AMT=ハイルドライバーのT360FDは、ホーン型やドーム型のツイーターを得意とするフォステクスのなかで異色の存在といえる。解像感の高さと色彩的に鮮やかな音は実に魅力的だ。フォステクスT360FDに興味を持っていただけたなら、クリスマス~年末年始のホリデイ期間にでもDIYに挑戦してみるはいかがだろう。

三浦 孝仁

中学時分からオーディオに目覚めて以来のピュアオーディオマニア。1980年代から季刊ステレオサウンド誌を中心にオーディオ評論を行なっている。