レビュー

ソニー、Apple、ボーズ、Technics。'23年冬に気になる完全ワイヤレスを編集部で一斉試聴

'23年冬に気になる完全ワイヤレスイヤフォン4機種を聴き比べ

2023年も多数の新製品が登場した完全ワイヤレスイヤフォン(TWS)。しかし、数が多くてどれを選べばいいか迷ってしまうもの。そこで、人気の定番モデルや注目の最新機種など、4機種をAV Watch編集部が独断でチョイス。編集部員4人で聴いてみました。TWS選びの参考になれば幸いです。

ピックアップした4機種は以下のとおり。

・Apple「AirPods Pro(第2世代)」 39,800円
・ソニー「WF-1000XM5」 オープン/ソニーストア価格41,800円
・パナソニック/Technics「EAH-AZ80」 オープン/実売36,600円前後
・ボーズ「QuietComfort Ultra Earbuds」 36,740円

Apple「AirPods Pro(第2世代)」

「AirPods Pro(第2世代)」

AirPods Proは“アクティブノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレス”というジャンル自体を定着させた、TWS市場の立役者的な存在。その進化モデルとして9月に登場したのが「AirPods Pro(第2世代)」だ。価格は39,800円と、高級TWSの中でも少し高めになっている。

名前が大きく変わっておらず、外観も初代とほぼ同じなので、どこが進化したのかわかりにくいが、音質が大きく改善。より高解像度なサウンドになっている。さらに、空間オーディオのパーソナライズ、つまり個人最適化も可能になった。またiOS 17へのアップデートに合わせて適応型オーディオも利用可能になった。

イヤーピースにも「XS」が追加され、4サイズ展開と豊富になっている。「U1」チップを内蔵し、AirPods Proをどこかに置き忘れても、iPhoneからどこにあるのか、cm単位の精度で表示できる機能も搭載するなど、使い勝手も大きく進化した。

ソニー「WF-1000XM5」

「WF-1000XM5」

ソニーのTWS、WF-1000XMシリーズの最新モデルとして、9月に発売されたのが「WF-1000XM5」。“世界最高ノイズキャンセリング”を謳い、前モデルからノイズキャンセリング性能と装着性、新ドライバー搭載によって音質も強化された。価格は今回の4機種のなかでもっとも高く、直販価格で41,800円。

統合プロセッサー「V2」と、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN2e」のデュアルプロセッサー設計となり処理能力が向上。ノイズキャンセリングは、前モデル比でさらに20%ノイズを低減できる。

音質を司るドライバーは、従来の6mm径から8.4mm径に大型化された新開発の「ダイナミックドライバーX」を搭載。この新ユニットと上述の統合プロセッサーV2による24bit信号処理、高品質DACアンプでもあるノイズキャンセリングプロセッサーQN2eの組み合わせにより、「信号処理から変換、再生まで高品位な処理で低歪みの高い音質再現」ができるという。

そのほか、素材感やデザインを一新して装着性を高めたイヤフォン形状となったほか、付属イヤーピースにはSSサイズも追加するなど、装着性も追求されている。

Technics「EAH-AZ80」

「EAH-AZ80」

パナソニックがTechnicsブランドより6月に発売した完全ワイヤレスイヤフォンが「EAH-AZ80」。広帯域での再生能力を引き出すために、音響、機構、回路の全てを新たに設計し、デジタル処理だけでなく、アナログ・機構構造なども含めて開発する事で、情報の欠落をなるべく発生させないアプローチで、聴感上の劣化が少ない音にしたという。

有線イヤフォンの最上位モデル「EAH-TZ700」に搭載している剛性の高いアルミニウム振動板を採用している。口径は10mm。BluetoothコーデックではSBCとAACに加えLDACもサポートし、ハイレゾ音源にも対応。使い勝手の面では業界初(発売時点)という3台までのマルチポイント接続にも対応している。

ボーズ「QuietComfort Ultra Earbuds」

「QuietComfort Ultra Earbuds」

「QuietComfort Ultra Earbuds」は、ノイズキャンセリングに対応したQuietComfortシリーズの新モデルで、独自の空間オーディオ「Boseイマーシブオーディオ」が利用できるモデルとして、10月19日に発売された。

イヤフォンに搭載したヘッドトラッキングセンサーと、新開発のボーズ独自のデジタル信号処理ソフトウェアによって実現した空間オーディオで、オーディオプラットフォームやデバイスに関係なく楽しめる。「従来のヘッドフォンでは、サウンドが自分の頭の中だけで聞こえている感じがあった。Boseイマーシブオーディオは、まるでサウンドステージが目の前にあるかのような立体的な奥行きを生み出す」という。

世界最高クラスのノイズキャンセリングや、それぞれの耳の特性にあわせてサウンド周波数プロファイルを最適化するCustomTuneサウンドキャリブレーション、タッチコントロール、IPX4の防水仕様などの機能は先代モデルから引き継ぎつつ、音声通話品質が改善されている。新たにSnapdragon Sound認証も取得し、BluetoothのaptX Adaptiveもサポートする。

4機種をAV Watch編集部全員で試聴

試聴は、それぞれ手持ちのスマートフォンを使い、各自が普段使いや音質チェックに使っているサービス/楽曲を使用した。さらに共通の課題曲として「アイドル/YOASOBI」を設定。この曲のみ全員が試聴している。

Apple「AirPods Pro(第2世代)」39,800円

AV Watch編集部 野澤佳悟

コーデックがAACということもあると思うが、聴声方の印象が違い過ぎて、ほかの3機種とは別の立ち位置に居るイヤフォンというイメージ。音の発生源が遠いところに居る感覚で、どんな楽曲でも一歩引き下がってBGMとして聴くことに特化しているという表現が一番近いと思う。

AV Watch編集部 酒井隆文

課題曲の「アイドル/YOASOBI」や、個人的に聴いた「承認欲求/櫻坂46」の低域はやや沈み込んで、量感も感じられるが、もう少しタイトさが増してくれると、より迫力が出て、さらに気持ちの良い聴き心地になるなと感じてしまう。

一方で、バックノイズが強くなるアイドルのラップパートなど、音数が増えてきても破綻することなく、しっかりと描写してくれる。ikuraのボーカル、櫻坂46のユニゾンなども耳に刺さるような痛さはなく、癖がない印象だった。

AV Watch編集部 阿部邦弘

前回の聴き比べで一番好印象だったAirPods Pro(第2世代)。最新モデルと比較しても、バランスに優れ、聴き心地の良さは健在。どのジャンルもそつなく鳴らし、音量を上げてもけして耳障りにならず響きが美しい。楽器の音色も、EAH-AZ80に次いでナチュラル。手持ちのAndroidとの接続では低域がぼやけてしまうので、やはりiPhoneとの組み合わせがベスト。

耳穴に引っかける感じで、圧迫感がなく装着性は良好。長時間着けていても気にならない。密閉度が高くないのに、しっかりノイズをキャンセルしてくれる性能の高さはさすが。

AV Watch編集部 山崎健太郎

耳穴深くまで挿入するタイプのイヤフォンではないため、低音の深さ、重さは他の3機種よりも劣る。しかし、外界の音と、イヤフォンが再生する音楽がシームレスに溶け合うような、現実世界にドラマのBGMのように音楽が流れるような“聴こえ方”は、AirPods Pro(第2世代)ならではの魅力だ。逆に言えば、他の3機種とは聴こえ方が違うので、優劣がつけにくい。

サウンドは全体的に軽やかで、コントラストの深さや、低域の迫力みたいなものは感じにくい。どこまでも広がっていく音場の広大さを味わうイヤフォンだ。中高域はシャープで硬質で、クリアなので気持ちは良いが、ナチュラルさはあまりない。

特筆すべきは、耳穴深くまで挿入するタイプではなく、軽い装着感なのに、ノイズキャンセリング能力が現在でも第一線級に高いところだ。飛行機での長時間移動や、作業に集中したい時など、様々な場面で活躍する、使い勝手の良いイヤフォンだ。

ソニー「WF-1000XM5」ソニーストア価格41,800円

AV Watch編集部 野澤佳悟

前機種の1000XM4が中高域がメインでタイトな低音といったイメージだったのだが、今回は中低域がメインで低音の量感もしっかりと感じられる音の方向性に舵を切ったのだなといった印象。解像度はやはりピカイチなので、タイトなところはしっかりとタイトに聴こえるほか、量感の増した低音が、強力なノイキャンとマッチして包み込んでくるので、ノレる音楽もガッツリ楽しめる。「高いけど買っておけば失敗しない」万人受けのイヤフォンに仕上がっていると思う。

AV Watch編集部 酒井隆文

どの楽曲を聴いても、ドンッと沈んで迫力のある低域を味わえた。ただ「アイドル/YOASOBI」ではボーカルの抑揚など、他の機種と比べると細かい音がその低域に負けてしまっているようにも感じられた。「承認欲求/櫻坂46」についても、サビパートでバックコーラスの主張が激しいような印象だった。
一方で「Formula 1 Theme/ブライアン・タイラー」は、低域の量感もタイトさも十分。ブラスや弦楽器の高域部分は少し軽い印象もあるが、ブラスの細かな音色の違いもしっかりと感じることができた。

AV Watch編集部 阿部邦弘

解像感の高いシャープなサウンド。キラキラとした高域から、迫力ある低域までメリハリよく表現する。特に中音域が豊かでボーカルが際立ち、まるで耳元で歌っているかのように息遣いまでクッキリ。ただし、音楽によっては高域が耳に刺さるきらいも。個人的には、4機種の中で最も派手な印象。

丸みのあるボディで、耳穴に押し込んで装着するタイプ。密着度は高くなるが、長時間の装着には不向き。ノイズキャンセリングの性能は、QuietComfort Ultra Earbudsと並ぶレベルで、周囲の騒音を消してくれる。

AV Watch編集部 山崎健太郎

前モデル「WF-1000XM4」は、モニターライクかつピュアオーディオライクなバランスの良いサウンドが特徴だったが、「WF-1000XM5」はその傾向を踏襲しつつも、弾力感のある低域や、高域の突き抜ける感じが強くなり、少し派手さが加わった。よく言うと「ベースとなる再生能力が高く、それでいてメリハリもあるサウンド」。悪く言うと「良く出来たドンシャリ」だ。

もし今回の比較相手にTechnicsの「EAH-AZ80」が無ければ、WF-1000XM5を選ぶところだが、よりナチュラルなサウンドに感じられるので個人的にはAZ80の方が好みだ。

SN感の良さや、広大に広がる音場は非常に良く出来ており、開放的な気分で音楽が楽しめる。音楽の美味しい部分をしっかり味わわせてくれるという意味では、今回の4機種で最も人にオススメしやすいイヤフォンかもしれない。

そしてノイズキャンセリングは超強力。本格的なサウンドと、圧倒的なノイキャンが欲しいならば、WF-1000XM5一択と言っていいだろう。

パナソニック/Technics「EAH-AZ80」実売36,600円前後

AV Watch編集部 野澤佳悟

今回の4機種では一番音場が広く感じた。「ばいばい、テディベア/HACHI」のようなピアノ伴奏と女性ボーカルのみの楽曲がとくにマッチしていて気持ちよく聴ける。低域はタイトで切れが良いので、EDM調の曲もしっかりと楽しめる。音質面は、今回のラインナップでは一番好みの音だった。

AV Watch編集部 酒井隆文

最初、課題曲の「アイドル/YOASOBI」も、個人的に選んだ「承認欲求/櫻坂46」も、まったく聞くに堪えない音質で、思わず「なんじゃこりゃ」とうなってしまった。

低域がタイトで、ぴしゃりと止まる小気味よさがあるので、スピード感・疾走感は比較した機種の中でトップクラスだったが、「アイドル」ではikuraのボーカルが耳に刺さって痛いほど。「承認欲求」もイントロで流れる鎖の“ジャラジャラ音”と、女性ボーカルユニゾンのサビが割れたガラスのように強く刺さってくる印象だった。

ただ「Formula 1 Theme/ブライアン・タイラー」を聴くと印象が一変。タイトで迫力ある低域にブラスの高域がスッと伸びて全体のバランスも良い。曲中に時おり流れるF1のエンジンサウンドのような音も臨場感があった。どんな楽曲でも心地よく楽しめるイヤフォンというより、楽曲の持ち味を素直にそのまま引き出すイヤフォンという印象だ。

AV Watch編集部 阿部邦弘

ハイファイ志向なニュートラルサウンド。女性ボーカルも生々しく、バスドラの低域も程よくしまるが強調感はない。弦の響きも鮮明で艶があり、自然な音場をくっきりと再現してくれる。好みとしては今回No.1のサウンドだったので聴き比べの後に購入してしまったが、化粧けのないサウンドに物足りなさを感じる人もいるかも。

耳穴のくぼみに収まるコンチャフィット形状とのことだが、自身の耳にしっかりはめるには、やや強めに押し込む必要があった。ノイキャン性能は4モデルの中ではかなり控えめ。ケースにももう少し高級感があるとよかった。

AV Watch編集部 山崎健太郎

4機種の中で1モデル選ぶなら、個人的には「EAH-AZ80」だ。

低域から高域までバランスの良い音で、派手さは無いが、ベーシックな再生能力が高い。イコライザーブロックを信号が通る際に、より音の劣化が無いようにシンプルな動作にしたり、ドライバーの前と後ろの空間を設けて空気の流れを最適化するといった地道な工夫が、Technicsらしいピュアオーディオライクなサウンドを実現している。

ユニットはアルミニウム振動板だが、音色が金属質になる事もなく、人の声が自然で、質感もよく出ている。「ダイアナ・クラール/月とてもなく」も声が生々しく、ベースの音にもぬくもりがある。それでいてタイトで高精細だ。アナログライクな、大人っぽいサウンドであり、ポータブルオーディオファンがステップアップした先に選ぶ“上がりの一台”にもなるだろう。

他の3機種と比べて不満があるところを挙げると“ノイズキャンセリングが弱い”。ただ、ANCを強力にする事で、AZ80のピュアオーディオライクなサウンドの良さが阻害されそうな気もするので、このあたりは難しいところ。ノイキャンの強さが欲しくて選ぶイヤフォンではなく、自然な音を求めて手に取るべきだ。

ボーズ「QuietComfort Ultra Earbuds」36,740円

AV Watch編集部 野澤佳悟

WF-1000XM5がどんなジャンルもこなすイヤフォンだとしたら、QuietComfort Ultra Earbudsはどんなジャンルもアガる音にしてしまうイヤフォンだろう。強力なノイキャンと組み合わさった低域の圧と量感が桁違い過ぎて、「どんな曲でも俺がノせてやるぜ!!」と派手な格好をしたDJが息巻いているような光景が脳裏を過る。ここまで低域を強調しておきながら、「ボーカルが引っ込みすぎて聴こえない」みたいな破綻が起きないところがボーズのすごいところだと思う。

AV Watch編集部 酒井隆文

とにかく低域の迫力が強力な1台。「アイドル/YOASOBI」のAメロもズンッ!ズンッ!と、とにかく低音の迫力が凄まじく、バックのドラムが止まるだけで急に静かな音場になったと感じてしまうほど。それでいてikuraのボーカルや「承認欲求/櫻坂46」の女性ボーカルユニゾンも低域に埋もれることなく、しっかりと聴こえてくる。ただ低域にほとんどタイトさがないので、音が“ボワボワ”と膨らんだような印象もある。

一方で「Formula 1 Theme/ブライアン・タイラー」は低域が沈み込むものの、タイトさが物足りず、楽曲が間延びしたような印象になってしまった。ブラス、弦楽器の表現力もいまひとつで、オーケストラ構成の劇伴音楽などは不得意に感じられた

AV Watch編集部 阿部邦弘

低音域が際立った、量感たっぷりのサウンド。迫力ある重低音は4モデル中随一で、アップテンポなロックやポップス、EDMなどの再生にピッタリ。一方、クラシックをかけると各楽器が混濁し、細部は潰れがちに。レンジも狭く、生の音色とはだいぶ異なる印象になる。原音云々というより、“低音豊かで快活なサウンド”を楽しむのが醍醐味のモデルと感じた。

音より気に入ったのは付け心地。イヤフォンを捻じって奥に押し込むことなく、ボディがスッと耳にフィットしてくれるので長く着けていても耳が痛くならない。ノイキャン性能も4モデル中1番だった。

AV Watch編集部 山崎健太郎

4機種の中で最もキャラクターがハッキリしているのが「QuietComfort Ultra Earbuds」だ。跳ね回るようなパワフルな低域が大迫力。そんな低域に負けないように、中高域も輪郭が強調されてクッキリと描写される。装着中の閉塞感は少なく、開放的な空間に、前述のように旨味たっぷり、躍動感のあるサウンドが展開するので、とにかく聴いていて気持ちが良い。ボーズらしいサウンドで、他社にはない独特な魅力がある。

ロックやジャズなどが最高だが、肉厚なサウンドなので、アコースティックな曲も悪くない。いずれもベースは迫力があるが、ベースラインは野太く、解像感はあまりない。ちょっと懐かしさを感じる音作りとも言える。映画などを迫力満点に楽しみたい時にもマッチしそうだ。

お家芸とも言えるノイズキャンセリングは超強力。周囲のノイズをキレイに消してくれるだけでなく、再生される音楽もパワフルなので、まわりの騒音が本当に気にならない。QuietComfortの名に恥じない1台だ。

AV Watch編集部