レビュー

いつでもライブ気分!? JBL屋外用スピーカー「STAGE XD-5」をデスクトップで使ってみた

屋外でも使えるタフなスピーカーを室内で使ってみる

音響エンジニアでもある自分は、日頃から業務用のスピーカーも気になるタイプの人間だ。以前、デスクトップオーディオのリニューアル企画として、JBLの設備音響系スピーカーControl 1 PROを取り上げて以降、改めて業務用スピーカー熱も高まっていた。そんなとき、東京インターナショナルオーディオショウでJBLの「STAGE XD-5」というスピーカーを発見した。なんでも、同機はControl シリーズの後継ともいえるモデルなのだとか。イベント会場では外観しか拝めず、音は未体験だったので、そのサウンドや使用感をお借りして確かめてみることにした。

STAGE XD-5は、JBLブランドの壁/天井用埋め込み型スピーカー「Stage Architectural」シリーズのひとつだ。防水・防塵規格IP67に対応し、テラスや中庭などプライベートな屋外空間に置いても、JBLサウンドが楽しめるという。

STAGE XD-5

IP67といえば、「6」が耐塵型=粉塵が内部に侵入しないという基準。「7」が防浸型=水深1mの水中に30分浸漬しても内部浸水しないという基準を満たしている。スピーカーとしては、かなり厳しい基準を採用することで、全天候型を実現。価格は49,500円(ペア)と、ホームユースのユーザーにも手に取りやすい値段となっている。

屋外での使用イメージ

ユニットには、JBL独自開発のHDI(High-Definition Imaging)ホーンを搭載した25mm径アルミダイアフラム・ドームツィーターとポリセルロース・コーンの130mm径ウーファーを採用。サイズを超えたパワフルなサウンドと、リスニングエリアのどこにいても鮮明かつ自然な音響バランスを実現するという。

HDIホーン搭載の25mm径アルミダイアフラム・ドームツィーターとポリセルロース・コーン130mm径ウーファーを搭載

周波数特性は75Hz~25kHz(-6dB)で、インピーダンスは6Ω。グリルを含む外形寸法/重量は、幅182.1×奥行き161.8×高さ249.9mm/5kg。カラーは、ホワイト、ブラックの2種類あるが、今回はホワイトを試用した。

スピーカーを箱から出して、グリルを外そうとしたところで、手応えが慣れないことに気付く。Stage Architecturalシリーズ共通の、「マグネットキャッチグリル」だ。グリル外周のベゼルが無い「ベゼルレスデザイン」もスマートでカッコいい。ちなみに、グリルのJBLロゴバッジは、スピーカーの縦横設置に合わせて回転可能なローテーション機構を備える。

壁面への取り付けが簡単にできる、スイーベル・ボールマウント式ブラケットを付属。部品を見る限り、本格的なしっかりとした作りだ。このブラケットを使えば、上下左右のスピーカー角度の調整も行なえるという。

スイーベル・ボールマウント式ブラケットを付属

落下防止用のワイヤーを通す穴が付いている点もいかにも業務用らしい。ターミナルは銀メッキでバナナプラグにも対応。ネジを緩めればスピーカーケーブルを直で結線も出来る。PAスピーカーのようなスピコンコネクターでないのは、ホームユースを考えてのことだろう。バスレフポートのない密閉型の仕様は、IP67を満たす上で必然といえる。

背面にブラケット用のネジ穴や、落下防止用のワイヤーを通す穴が付いている
スピーカーターミナル

グリルを装着して横向きにすると、カラオケの天井にぶら下がってるスピーカーみたいな外観に自然と親近感を覚えた。グリルを外すと、HDIホーンがJBLらしさを適度に主張する。ツィーターこそシルバーだが、ウーファーはマット仕上げのブラックで光を当ててもテカらないのはさすがだと思った。あくまで、その場を満たす音楽が主役という業務用らしい配慮が随所に感じられる。

グリルを外すとJBLらしさがグッと強まる。ウーファーはマット仕上げのブラックで光を当ててもテカらない

サウンドをチェック

まずは、出音のキャラクターをできるだけ正確に把握するために防音室へ持ち込んだ。ネットワークトランスポートは「DST-Lacerta」、USB-DACは「NEO iDSD」、ソースはSoundgenicのSSD版に保存している。プリメインアンプはラックスマンの「L-505uXII」だ。

スピーカースタンドに縦向きに置いてみると、スタンドに対する設置面が少ないようで安定しない。本体のみで自立はするが、手で天面辺りを軽く押すと本体がグラグラした。おそらく壁付けや、天吊りをメインの用途としているのだろう。明るいところで撮影した写真を用意したのでご覧いただきたい。設置面との隙間があることがお分かりいただけるかと思う。

縦置きは可能だが、安定性が悪い

実際にいつも聴く音量感で鳴らすと、中低域が濁ってしまった。筆者は普段聴くとき、爆音ではなく、やや控えめのボリュームで聴いている。それでも存在しないはずのリバーブが聴こえるような、不必要な響きが混ざっているのが分かった。いつもスタンドに置いているDALIの「RUBICON 2」では気付かない現象だ。想定外の用途である縦置きをするなら、弾力性のあるインシュレーターを使って隙間を埋めることは必要であろう。

横置きだと安定した

縦置きは不向きであると感じたので、次は横置きを試してみる。今度は安定して設置でき、手で押してもぐらぐらしない。最初に試したのはツィーター外側、ウーファーが内側の配置で置くパターンだ。結論から言うと、逆向きの方が自然であった。ツィーター外側で聴くと、POPSの左右に振り切ったギターや、ステレオで録音されたキーボードの右手側が異様に外側に聴こえてしまう。

センターにボーカルやベース、バスドラはあるが、「左スピーカー↔センター」と「センター↔右スピーカー」の間の音が薄いことも気になった。縦置きから横置きにした音場感の違いよりも、左右の定位が強調され、密度の濃淡が出てしまったことが気になって仕方がないので、逆向きに変えてみることに。

ツィーターを内側にして横置きしたら、定位感の改善とともに、左右のスピーカー間の音の密度が改善した。若干だが、スイートスポットも広がったと感じる。比較して分かったこととして、ツィーターが外側だと、スピーカーの存在も主張しがちだ。いわゆる“スピーカーから鳴ってる感”はツィーターが内側の方が軽減される。後述するが、試聴距離が十分にあれば、ツィーターからの高域と、ウーファーからの高域がX軸上(横軸上)で離れている点も気にならない。

他のステータスとして、解像度は価格以上のクオリティを感じたが、中音域の楽器(ボーカルやサックス、パーカッションなど)はもう少し音像の描写にクリアさがほしかった。帯域バランスとしては、ボーカルやアコギなどのミッドレンジをふくよかに出す印象。
サイズからしてローエンドが高いのは仕方ないと思う。ベース音の量感はやや物足りないが、ダブつくことはない。密閉型だからこその圧倒的な低域のタイトさだ。

音色感は、イベント会場で流れている音楽っぽい。ライブや屋外イベントで使われているPAスピーカーの印象に近いのだ。あの慣れ親しんだ音をそのままサイズダウンしたような音。スッと耳に入ってきやすい、でも聴き疲れはしない優しめな音だ。高域に耳障りなピークもない。この辺りはJBLならではなのだろう。

誤解していただきたくないのは、モニタースピーカーとはまたちょっと違うということだ。どこにいても誰に対しても確実に音の情報を届ける役割に特化している印象を強く受けた。アニソンなど現代的な歌モノを鳴らすと、顕著にその傾向が分かる。防音室でかなり大きな音を出しても中低域が破綻しないのは見事だった。よくあるパターンとして、ボリュームを上げれば、音像がファットになって、キャビネットも低域に耐えられず音が淀んでくるのだが、「まだまだ音量上げられるぜ!」とスピーカーに言われている気分になった。

音楽の次は、ゲームコンテンツも遊んでみる。PS5版「JUDGE EYES:死神の遺言 Remastered」をしばしプレイ。重低音がフロントからほとんど出てないのでバトルシーンなどの迫力には欠ける。台詞や効果音のディテールがもう少しクリアに出るといいなと感じた。他は、スピーカーのサイズが小さくなった以外の著しい差は感じにくく、映画などを見ても相性の有無は起きにくいのではないかと受けとめた。

デスクトップオーディオで使ってみる

続いて、リビングのパソコンデスクに置いてみた。

デスクトップオーディオで使ってみる

ソースはWindows PC内のハイレゾ音源、USB-DACはFiiO製、パワーアンプは「FX-1001Jx2」だ。まずは縦置きから。デスクはオーディオ用の台ではないので、隙間にAETのVFEシリーズVFE-4005を4枚ずつ敷いた。机の天板は、重量物が右側に集中しているため、歪みが発生していると思われる。結果、インシュレーターの安定する箇所が左右で異なった。どうにかそこそこ安定する敷き方で設置してみた。縦置きのとき、底面が平らでないのは、本当に惜しい。

パワーアンプは「FX-1001Jx2」

音を出してみる。高域のX軸(横軸)が揃ったことで、試聴距離が近くても音場は自然に。一方で、横置きと比較して混濁感は上がり、広がりは失われた。楽器同士の分離も悪くなってしまった。あとは、中低域がぼやける。密閉型なのに、せっかくのタイトなローが無に帰している。やはり、制振対策の観点からは横置きがベストだろう。

防音室でよい結果が得られたツィーター内側の横置きに変更する。幅約250mmとあって、結構な存在感だ。背面の壁までの距離は、8cm弱となった。Control 1 PROは、改めてコンパクトだったのだと実感する。ちなみに筆者のデスクだと、身体がキーボードを打つ体制になったとき耳からツィーターまでの距離が70cmほどだ。左右のツィーター同士の距離は、65cmほどだ。

背面の壁までの距離は、8cm弱
左側は少しはみ出した
普段使っているControl 1 PRO

写真のように左側は少しはみ出したが、自分としては許容範囲。音を出してみると、ちょっと不自然さを感じた。普通の縦置きであれば、ツィーターとウーファーの位置は横軸で見たときほぼ同じ位置にあるので、指向性の強い高域が横方向で揃っている状態だ。

なお、ウーファーといっても、クロスオーバーが2.5kHzのため、高い音も出ていることは忘れてはいけない。横置きにしたことによって、高域を出すユニットがツィーターとウーファーで左右にずれて存在することになり、普段と違う感覚で聴こえるのだ。

人間の耳が左右の定位を時間差と音圧の違いで知覚しているのと異なり、上下の位置は(超ザックリ言うと)反射音を脳内で解析して判断していることから、それぞれには感じ方の違いがあるのかもしれない。縦置きにした場合、ツィーターとウーファーの上下の位置のずれはあまり気にならないのがその証だ。この普段と違う音場感は、試聴距離を長めに取ることで解消された。具体的には、左右のスピーカーの距離の2倍程度離れれば、まったく気にならない程度になる。

それにしても、センターの定位が素晴らしい。ピシッとボーカルが真ん中に浮かび上がる。スピーカーの間にはディスプレイがあるのに、尋常ならざるフォーカスの良さには驚いた。

リビングなのであまり爆音は出せなかったが、短時間ながら大きめの音でも鳴らしている。ボリュームを上げても音楽の印象が変わらないのはすごい。さすが設備用の音響機器だ。繰り返しになるが、スピーカーは大音量で鳴らすと、音像が広がってしまったり、音場が飽和ししがちであるが、XD-5なら実用音量を多少越える分にはまったく問題がない。リビングでもスピーカーにドヤられてしまった。「まだまだ音量上げられるぜ、おっさん」と。

それにしても、密閉型はいい!

バスレフによる僅かな風切り音や、空気っぽい低音は一切無く、音量を上げても筐体のビビりもないし、透明感のある引き締まったベースやバスドラが音楽の本物らしさを高めてくれた。

筆者は、密閉型を聴いた機会がそれほど多くないので、改めて魅力を再確認した。背後のスペースが取れないとき、密閉型は注目の選択肢といえる。またリスニングポイントがスピーカーに近い人こそ、バスレフ/密閉の違いは感じやすいだろう。

そして、設備音響だからと思われる音のキャラクターも好みだった。まず、音が優しい。決して甘くて緩いということはない。刺激的な高域も、耳障りなピークもない。JBLらしい音色感は、リスニング用の機種と近いとも言えるだろう。DSDの滑らかな質感も、樹脂製のエンクロージャーにしては適度に表現できている。

ただ、ホール録音のジャズカルテットをDSDで聴いたときは、ステージの奥行き間がいまひとつ……と思った。ホール録音のクラシックでももう少し空間表現力はほしいところ。筆者の環境ではこれ以上は無理だったが、左右の間隔を離せば変わるかもしれない。一方、POPSとの相性はすこぶるいい。直接音がポーンと飛んでくる。

音場再現という観点では少し贅沢を言いたくなるものの、音楽を楽しむという点においては、どんな曲でも特段の向き不向きはなく、優しめの音で丁寧に鳴らしてくれる。解像度は、Control 1 PROと比べると格段に向上した。特にボーカルなどのセンターに定位するトラックが克明なディテールで真に迫っているのは感動した。

『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話 本編冒頭映像

最後は、YouTubeで「ガールズ&パンツァー最終章」第4話の冒頭映像をチェック。Control 1 PROに比べると、SE/BGM/音声の分離が格段に向上。大きいレベルで鳴ったSEの背後に隠れた小さな環境音とか、複数の音が混在する中でも埋もれずに漏れなく描写している。それぞれの音が緻密で明瞭に鳴ってくれるから、没入感も高まる。止め所が分からなくなって、結局最後まで観てしまった。

重低音は、期待しても仕方ないと割り切っていたが、デスクトップオーディオにおける小型スピーカーでここまで出せるなら十分ではと思う。バスレフでないことによる量感の不足も、ニアフィールド試聴なら個人的にまったく問題を感じなかった。

設備音響モデルの、それも壁や天井に設置する前提のSTAGE XD-5を家庭内の一般的なスタイルで使ってみたが、意外にも満足のいく結果となった。音量を上げても音楽の印象があまり変わらず、部屋のどこにいても耳にスッと入るPAスピーカー譲りのサウンドは、期待以上の楽しさを提供してくれた。環境や設置条件と照らし合わせながら、一般の方にもお勧めの出来る隠れた逸品といえる。

何よりの(?)証拠に、作業しながらの“ながら聴き”が苦手な筆者が、これを書いている目の前で、XD-5からうっすらと音楽が流れているのだ。すっかりデスクトップオーディオの沼にハマりつつある。

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト