レビュー

スマホ画面をMiracastでTVにワイヤレス表示

“割り切り”が新しい「スマホライフAQUOS」

大胆な“割り切り”

スマホライフAQUOS「AQUOS MX1」

 高機能化したテレビは、VODやネット動画の再生だけでなく、後からアプリで機能を追加できるスマートフォン的な機能も備えている。一方で、スマートフォン側も、キャリアによる映像配信サービスが活発化。映像を鑑賞するデバイスとして活用する場面が増えており、スマートフォン自体にフルセグ受信対応のチューナを搭載した機種まで登場している。

 こうなると、TVとスマホ、カテゴリは異なる製品ながら、機能面では“かぶっている”部分も多くなる。そこで、VODなどのエンターテイメント系機能はスマートフォンに任せ、自らはスマートフォンと接続しやすくする事に専念した、“割り切り”が特徴の液晶テレビが登場した。シャープのスマホライフAQUOS「AQUOS MX1」だ。余談だが、AV Watchにも「スマホLIFE」というレビューコーナーがあるので妙な親近感がある。

 23.6型/1,366×768ドットのVA系パネルを搭載した液晶テレビで、チューナは地上/BS/110度CSデジタルを各1系統搭載。別売のUSB HDDを接続すれば、録画にも対応する。価格はオープンプライスで、実売7万円前後と、一見するとシンプルな液晶テレビ。パイオニアと共同開発したというスピーカーは前面に搭載しており、サランネット部分のカラー違いでグリーン(-G)、オレンジ(-D)、シルバー(-S)を用意している。

スマホライフAQUOS「AQUOS MX1」
パイオニアと共同開発したスピーカーを下部に備えている
付属のリモコン
背面

 最大の特徴は、スマートフォンと様々な方法で接続できる事。大きく分けて3つあり、HDMI(MHL)を使っての有線接続、さらにBluetooth、そしてMiracastを使ったワイヤレス接続だ。

 わかりやすいのは、HDMIでの有線接続だろう。MHL対応のスマートフォンとケーブルでテレビを接続すれば、スマホの映像/音声出力をそのままテレビに表示できる。これ以外は無線接続で、Bluetooth接続は音声のみを伝送。簡単に言えば、「AQUOS MX1」をテレビではなくBluetoothスピーカーとして使う機能だ。そして、Miracastは、ワイヤレスで映像/音声を伝送する機能となる。

 まず、特徴的なMiracast接続を試してみる。Miracastは、Wi-Fi Allianceで策定された無線接続規格で、無線LANを使ってテレビとスマホを1対1接続する。そのため、無線LANルータは不要だ。接続は簡単で、テレビ側の入力切替ボタンでMiracastを選択。接続の待受中になったら、対応スマホ側で「AQUOSコネクト」というアプリを立ち上げれば、双方が相手を発見し、スマホの画面がテレビに表示される。接続までは8秒程度と、ジッと見ているとやや時間がかかるように感じる。

テレビ側でMiracastの接続待ち受け状態にする
スマホ側で「AQUOSコネクト」を立ち上げると、テレビの名前がディスプレイに現れる
接続完了。スマホの画面がそのままテレビに表示されている

 スマホに表示されている画面がそのままテレビにも表示されるので、ホーム画面だけでなく、Webブラウザでサイトを見たり、ゲーム画面を表示する事もできる。音声も伝送されるので、NOTTVやワンセグアプリを立ち上げ、テレビに表示する事も可能だ。綺麗な地デジが表示できるテレビでわざわざワンセグを表示する意味はないが、NOTTVはワンセグより解像度が高く、フレームレートも滑らか(ワンセグ:15fps/NOTTV:30fps)であるため、テレビに表示しても比較的快適に鑑賞できる。

 とはいえ、地上デジタル放送などよりはビットレートが低いため、動きのある番組ではブロックノイズも見える。しかし、スマホの小さな画面で鑑賞するよりも、距離をとってテレビの大画面で鑑賞する方が楽で、長時間の番組視聴も苦にならない。これは、ニコニコ動画やYouTubeなどのネット配信動画でも同じ事が言えるだろう。

NOTTVをテレビに表示したところ。解像度も高いので快適に視聴できる
スマホを縦向きにすると、テレビのNOTTV表示も縦向きに
ワンセグ放送も表示できる

 なお、表示の向きはスマホの向きと連動させる事ができ、横向きではテレビ画面いっぱいにスマホ画面を表示する事が可能。Webブラウザで文字を大きく表示したり、撮影した写真を表示する時などは横向きがマッチするだろう。

ブラウザの画面をテレビに表示
文字を拡大すれば、離れていても読みやすい
スマホ内の静止画もテレビに表示できる

 使っていて気になったのは、Miracastはあくまでスマホの映像/音声を受信/表示しているため、例えばスマホ側の電源ボタンを押して、ディスプレイ表示をOFFにしてしまうと、テレビ側も真っ暗になってしまうこと。スマホのディスプレイを消さなければ良いだけの話だが、長時間の映像再生では、スマホのバッテリが気になる。長時間視聴する場合は、スマホを充電台に置いたまま連携した方が良いだろう。なお、MHLで有線接続すれば、映像を表示しながらスマホの充電も可能だ。

 なお、映像/音声表示だけでなく、AQUOSコネクトアプリを使う事で、テレビの操作もスマホから可能になる。テレビ側の通信設定で「AQUOSコネクト」を使用するよう設定しておき、テレビをLANに繋いでおけば、スマホからテレビの電源を入れたり、チャンネルを変更するといった操作も可能だ。また、Miracastを多用する場合には、テレビの電源をONにすると、自動的にMiracastの待ち受けを2分間開始するモードも用意。スマートフォン側のMiracast接続をONにすれば連携できるようになる。

Miracast接続でスマホから再生する音楽をテレビで聴く事も可能
radikoアプリも利用可能だ
「AQUOSコネクト」アプリからテレビを起動する事も可能
Miracastの接続を多用する場合は、テレビ起動時に自動的に約2分間、Miracastの待ち受け状態にする機能も用意されている

テレビとスマホを同時表示

 ユニークなのは、スマホ画面とテレビを同時表示できる「スマホスクリーン」機能。リモコンのボタンを押すと切り替えられ、例えばテレビを見ながら、スマホでTwitterのタイムラインを表示。その番組に関するつぶやきをチェックする事も可能。電子書籍アプリで漫画を読みながら、横にスポーツ中継番組を表示しておくといった使い方もできる。

テレビとスマホのホーム画面を同時に表示
テレビとYouTubeを一緒に見られる
電子書籍を読みながらテレビ画面を確認する事も可能

 テレビ画面を大きく、スマホ画面を縦向きに小さくという表示方法だけでなく、テレビ画面を小さくし、スマホを横向き表示させたり、スマホの全画面表示にPinP(小画面表示)でテレビを表示する事も。テレビの表示サイズや表示位置は、リモコンから細かくカスタマイズできる。

横向きにしてYouTubeの全画面表示も可能
スマホのゲームもテレビの大画面で
PinPの小画面表示も可能。2画面の表示タイプは、このように選択できる

 2画面表示では、どちらの映像の音声を出力するかという問題があるが、リモコンの「「操作切り替え」ボタンで変更できる。ボタンを押すと、スマホとテレビ、交互に「♪」マークが付き、出ている方の音がスピーカーから出力される。なお、スマホ側とテレビ側のボリューム管理は別になっているため、例えばYouTube動画のベース音量が低いのでテレビのボリュームを上げた後、テレビ番組に出力を切り替えたら爆音が出て驚くという事は無い。細かいところまで作られている印象だ。

Bluetooth接続でテレビをスピーカーとして使う

 Miracast以外の接続も試してみよう。スマホの画面をテレビ表示する必要が無い場合は、Bluetooth接続も有効だ。テレビ側でペアリングモードに移行し、スマホ側で検出したテレビを選択すれば接続完了。使い勝手は、一般的なBluetoothスピーカーなどと同じだ。Bluetooth Ver.3.0に対応している。

 このスピーカーもAQUOS MX1の特徴の1つだ。小型のテレビながら、リッチなスピーカーを搭載している事が挙げられる。パイオニアと共同開発した2.1chスピーカーで、フルレンジ×2とサブウーファ×1構成。最大出力は5W×2ch+10W。

 小型の薄型テレビでは、低音の量感や厚みを出すのが難しく、高域寄りのスカスカした音になりがちだが、AQUOS MX1は低音がしっかりと出ており、野球中継でどよめくプレーがあった時の「うおお~」という歓声に迫力がある。男性アナウンサーが読み上げるニュースも、低域の厚みがあるので、落ち着いた声に聴こえ、聴き取りやすい。

Bluetoothでペアリング設定をしているところ
スマホの音楽がテレビのスピーカーから流れる

 Bluetooth経由で音楽を再生しても印象は同じで、JAZZのアコースティックベースもゆったりと再生できる。ボリュームを上げすぎるとボンつくが、BGM的に再生するには十分な音質・音量である。エンクロージャーのサイズを見ればわかるが、例えば手のひらサイズのiPodスピーカーとは比較にならないサウンドが出ており、1万円を超える、大ぶりなiPodスピーカーとも戦えるレベルだ。

 なお、Bluetoothで音楽を流したまま、テレビも表示できる。スマホの音楽を流したまま、「面白い番組ないかな」とザッピングし、なかった場合はテレビ画面だけを消して、スピーカー利用に戻れる。真っ暗では寂しいという場合は、時計を表示しておく事もでき、時計のサイズやアナログ/デジタル時計の選択も可能。

 ほかにも、気になるスポーツの試合をテレビに映像だけ表示しながら、スマホのradikoでラジオを流すなんて使い方も可能だ。なお、スピーカーには音楽再生用に最適なチューニングを施した「Musicモード」やサラウンド機能も備えている。

 テレビの音が聞きたくなった時はBluetoothのペアリングを解除するか、ツールボタンのメニューから、出力音声をBluetooth/テレビで切り替えられる。

 さらに、待機モードの設定を変更する事で、テレビの電源をONにしていなくても、Bluetoothスピーカー機能を利用できる。つまり、スマホ側でBluetoothをONにして、テレビと接続すれば、そのままテレビのスピーカーから音が流れるわけだ。テレビのリモコンに触らずに利用できるので非常に便利だ。

Bluetoothかテレビ、音声出力をメニューから切り替えられる
Bluetoothで音楽を流しながら、画面には時計のみを表示する事も可能だ

まとめ

 シンプルなテレビではあるが、スマホと連携する事で様々な機能が利用できるようになる。また、2画面表示のカスタマイズの豊富さなど、スマホとの連携で高い柔軟性を備えているのが特徴だ。

 発売されたばかりで、実売は7万円程度と、4万円台、3万円台もある他の24型テレビと比較するとやや高価だ。しかし、Bluetoothスピーカーとしても使える事や、スマホと連携する事で、動画配信サービスに対応したSTBやメディアプレーヤーを追加したのとさほど変わらない機能を実現している。対応スマホさえ持っていれば、追加投資無しで、これらの高機能をテレビで活用できるのは魅力的だ。

 使っていて1点気になったのは、接続方法の豊富さ、カスタマイズ性の高さゆえ、操作が若干複雑なところだ。パソコンであればウインドウをマウスで選択したり、サイズ変更するのは簡単だが、リモコンでは「どのボタンを押せば調整モードに入るんだっけ」と戸惑う部分もある。ただ、スマホとの連携に興味を持つ人であれば、1日使っていれば慣れるだろう。例えば画面をタッチパネルにして、指で直感的に表示位置を変更できたりすると、より便利そうだ。

 テレビと言うと、どうしても大画面・高機能な高級モデルに注目が集まりがちだが、大胆な機能の割り切りにより、今後の“シンプルな低価格テレビ”の1つのあり方を示す、意欲的なモデルと言えるだろう。

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山崎健太郎