レビュー
GoProなどアクションカムの映像を補正する「proDRENALIN」
フィッシュアイや手ブレの軽減機能をチェック
(2013/8/16 00:00)
アクションカム界のデファクトスタンダードと言えるGoPROではあるが、基本性能は高いにも関わらず、最近のアクションカムに搭載されてきている手ブレ補正などの映像補正機能が一切ないのを残念に思っていたユーザーもいるのではないだろうか。フラッシュバックジャパンが8月6日に発売したPC用ソフト「proDRENALIN」は、そんな人にうれしい数々の機能が詰まった製品だ。
「proDRENALIN」は撮影した映像を後処理するための動画変換ソフトで、簡単な設定をするだけで、アクションカム特有の魚眼風に見える歪みを補正できるだけでなく、手持ち撮影時などのブレの補正も可能。さらにはローリングシャッター歪みまで軽減できるという。果たしてどれほどの効果があるのか、実際に試してみた。
proDRENALINは32/64bitのWindows Vista/7/8に対応し、価格は5,670円。フラッシュバックジャパンのWebサイトから製品版をダウンロード購入でき、体験版も用意されている。
GoPROはもちろん、ソニーのHDR-AS15などにも対応
「proDRENALIN」ができることは、動画ファイルの加工・変換だ。イン・アウト点を指定した前後のクリッピングなど簡単な編集機能も備えてはいるが、動画編集ソフトのように本格的な編集機能はない。したがって、アクションカムの生の映像を取り込んだ後、第1段階の映像補正を行なうのに「proDRENALIN」を使い、素材として完成させるところまでが本製品の役割となる。
機能としては、視野角が広いアクションカムの映像特有の魚眼歪みを修正する“フィッシュアイ歪み除去”、手持ち撮影で発生しがちな手ブレを軽減する“スタビライズ”、CMOSセンサーのカメラで構造上発生してしまうことがあるローリングシャッター現象を抑える“ローリングシャッター補正”、映像全体の色調を補正する“Video FX”の4種類がメイン。
“フィッシュアイ歪み除去”では、数多く用意されているカメラや撮影モードごとのプロファイルを選択することで、適切な歪み補正が自動で行われる。対応機種にはGoPRO HERO、HERO2、HERO3といったGoPROシリーズに加え、ソニーのHDR-AS10/AS15、Contour HD、Canon EOS 60D、スマートフォンのGalaxy S2/S3なども含まれている。プロファイルは別途同社製品「proDAD Defishr」を購入することで独自に作成することも可能だ。
“スタビライズ”をオンにすると、上下左右や奥行き、傾きを含めたブレの補正を行なう。また、“ローリングシャッター補正”は、ローリングシャッター現象による映像の細かな震えを軽減する。この2つは“スタビライズ”にカテゴライズされており、“スタビライズ”のみをオン・オフするか、“スタビライズ”と“ローリングシャッター補正”の両方をオン・オフするかを選択することになる。“ローリングシャッター補正”のみを適用することはできない。
ちなみに、この“ローリングシャッター補正”で補正可能な範囲は、あくまでも細かな振動程度に限られる。代表的なローリングシャッターの現象の一つとして、高速回転するプロペラなどを特定のシャッタースピードで撮影した際に、奇妙な静止物体が出現するというものがあるが、こういった現象を解消するものではない。
“Video FX”は、いくつか用意された色調のパターンから選択して、コントラスト、明るさ、彩度、ホワイトバランスを一括で変更できるというもの。色合いをやや濃くしたり、ポスタリゼーションのような大胆な見映えに一気に変更できる。それぞれのパラメーターをユーザーが個別に調整することもできるので、映像を見やすくしたり、オリジナリティあふれる映像を作りたいときにも役立つはずだ。
その他、画像を歪ませることで仮想的にズームアップ・バックさせたり、視点の変更、映像のパン(左右方向への移動)、角度変更といった調整が行える“バーチャルカメラ調節”、3段階の強さでノイズを軽減する“ノイズ除去フィルター”という機能まで用意されている。
この“ノイズ除去フィルター”を除き、すべての補正機能についてはリアルタイムに映像プレビューに反映され、仕上がりを確認しながら細かく調整作業が行なえるようになっている。確認のために何度もファイル出力をやり直すような手間を減らせるのがうれしいところだ。一通り調整が終わったら、画質を“低品質・標準・高品質”の3段階から選択してMP4もしくはMOV形式で出力する。複数の映像について調整を行った後、一括でファイル出力することも可能だ。
個別の補正は満足できるが、組み合わせには注意が必要か
「proDRENALIN」を使った映像補正の効果が果たしてどれほどあるのか、GoPRO HERO3 Black Editionの映像を用いて試してみた。“フィッシュアイ歪み除去”、“スタビライズ”、“ローリングシャッター補正”の3種類の補正機能に絞って検証している。オリジナルと補正の有無による違いが比較できるよう映像を4分割した。
まず、これら3種の補正のいずれにおいても、オリジナルの映像より視野角は狭くなる方向に働くことを頭に入れておきたい。フィッシュアイ歪みを補正すれば映像周縁の一部が視界の外に追い出される。スタビライズをオンにするとさらにズームアップした形になり、それに加えてローリングシャッター補正まで適用すると、またわずかにズームアップしてしまう。
オリジナル映像と変換後の出力映像は同じ解像度になるため、引き伸ばされた分だけ画質が低下することになる。とはいえ、変換後の映像の解像感が極端に失われたようには感じられない。よく見ると細かい文字などがぼやけて見えることがある、という程度だ。
フィッシュアイ歪み補正のみ適用した映像は、単独で見た場合には補正されているとは気づかないくらい自然な仕上がり。画像周縁に行くほど歪んでいたものが、しっかり直線は直線として正しいパースで表現され、広角レンズの一眼カメラで撮影したような見映えになる。視野角が狭くなっている分、臨場感が損なわれたように感じる人もいるかもしれないが、そのあたりは好みの問題だろうか。
スタビライズとローリングシャッター補正の組み合わせでは、ブレの少ない安定した映像を得られている。視野角はフィッシュアイ歪み補正のみ適用した場合とほぼ同程度。大きな揺れについてはさすがに補正しきれていないが、細かな揺れのほとんどは吸収されているようで、30fpsながら滑らかで見やすい映像に大きく変化した。
これにフィッシュアイ補正まで加えると、なぜか今度は不自然な揺れや歪みが目立ってくる。たとえばサンプル映像の0:23から0:30にかけてのUターンポイントでは、視点の移り変わり時に奇妙な歪みが発生していたり、0:40あたりの静止時にはほとんど動いていないにも関わらず、映像の一部が歪んだりもする。また、1:00からの垂直上昇時は、左上に見える飛行機雲だけが大きく振動しており、右下の軌道部分と揺れが連動していないのも気になるところ。1:23頃の遠くの風景の、不自然なスクロールも目につく。
もちろん映像ソースによって異なる印象になる可能性はあるが、以上からわかることは、3種類の補正すべてを同時に使った場合は、良好な映像を得るのは難しいらしいということ。フィッシュアイ歪み補正のみ、もしくはスタビライズのみ、あるいはスタビライズとローリングシャッター補正の組み合わせのみのいずれかを選択した方が、使いどころの多い映像素材になりそうだ。
歪みがなくなることで、アクションカムの新たな魅力の発見へ?
今回のレビューで使用したPCはWindows 7 64bit/Core i3 2.93GHz/メモリ4GB/ATA HDDという構成で、3分の1080p/30fps映像の変換に9分余り、同じく1080p/60fps映像の変換に18分余りの時間がかかった。補正の種類や数、出力時の画質設定による時間の差はほぼなかったため、変換にかかる時間は単純にファイルサイズによって左右されるものと見られる。
出力した映像ファイルのサイズは、画質を“低品質”にした場合にオリジナルの5分の2程度、“標準”でオリジナルよりわずかに大きく、“高品質”はオリジナルの3倍以上になった。MP4とMOVとでサイズは同じ。たとえば3分の1080p/30fps映像であれば、オリジナルが450MBのところ、“高品質”だと1.5GBになった。映像素材はできるだけ高品質の状態で残したいものだが、マシン間のデータの移動などを考えて“標準”などにせざるを得ない場面も出てくるのではないだろうか。
ただ、手ブレ補正をなんとか実現したいと願っていたGoPROユーザーにしてみれば、それらはささいな問題かもしれない。GoPROユーザーだけでなく、それ以外のアクションカムのユーザーにとっても、手軽にフィッシュアイ歪みを補正できる機能は試してみる価値がある。今まで「アクションカムはそういうもの」だと思って意識していなかった魚眼風の歪みがなくなるだけで、新たなアクションカムの魅力や使い方の発見につながる可能性があるからだ。