本田雅一のAVTrends

50kg減量して師走を走る。ボーズとJaybirdの完全ワイヤレスイヤフォン対決

Bose Soundsport Free(上)とJayBird FREE(下)

 筆者の記事を以前から読んでくださってる方は『なんで、おまえがランニング用イヤフォンなんて……』と思うかもしれない。僕の名前をネットで検索すればわかるが、ハッキリ言って、その身体は“巨漢”というに相応しいものになっていったからだ。

 しかし、まったくの私事ではあるのだが、1年で45kgほど減量し、ピーク時から比べると体重が50kgほど減った。念のために付け加えると、いたって健康で病気による減量ではない。

いままでの本田雅一(左)と2017年11月の本田雅一(右)
最新の本田雅一

 ということで、現在はランニングやインドアバイク、水泳でストレス発散するような身体になったのだが、音楽に乗ってトレーニングするインドアバイクはともかくとして、ランニングや水泳など代表的な有酸素運動の多くは“暇でしかたがない”という、ある意味、息が切れることよりも辛い現実がある。

 そこで、イヤフォンで音楽を聴きながらランニングなどのトレーニングに勤しむ、のだが、実際にさまざまなトレーニングをしながら音楽を聴いていると、そこには快適性の大きな違い、求められる機能性の違いがあることも身に染みてわかるようになってきた。

 そんなわけで『ランニングやフィットネスに本当に適したイヤフォンはどれだろう?』と、自分のためのイヤフォンを探そうと思い立ったのが、このコラムを書くきっかけである。

あちらを立てると、こちらが……

 多様なオーディオ機器を評価してきた筆者だが、スポーツ時に音楽を楽しむための製品は、これまで試したことがほとんどなかった。筆者はApple Watch Series 3を使ってトレーニングの記録をしているので、まずはPowerbeats 3を試してみた。iPhoneとApple Watchの組み合わせで、再ペアリングすることなく切り替えて使えるからだ。

Powerbeats 3

 しかし、実際に使い始めてみると、耳からドライバユニットがぶら下がるようになっているため、外れても地面に落ちることはないが、かといってイヤーチップが抜けにくいというわけでもない。

 トレーニング中に抜けても落ちない。ある程度の安定性もあるので抜けにくいというだけで、抜けないのとはだいぶ違う。結局のところ、走っているうちにイヤーチップが抜けはじめ、低域がスカスカになってくると、手でドライバ部を耳に押し込みながら走ることになる。

 加えて左右が完全に独立していないこともあり、交差点などで周囲の状況を確認していると、汗に濡れたクビと左右ユニット間にあるコードが張り付いたまま動かされ、やはりイヤーチップが抜け始める。

 さてどうしたものか。

 ネット通販のスポーツ用イヤフォンランキングで上位に来る、購入しやすい商品を買ってみたものの、音質はそこそこ満足できたのだが、やはりいまひとつ耳への安定性に欠けるし、左右独立でもないため問題は完全には解決しない。

 次に使ったのがFitear Universal。もちろんワイヤレスではないが、Bluetoothレシーバユニットと組み合わせ、腰にレシーバー、ウエアのネック部にイヤフォンクリップを着け、コードの二股を後ろに回して装着。コード長を絞り込んでぴったり安定するようにした。

Fitear Universal

 Fitear Universalだけに音質は段違いによく、また走っても力がかかって本体が耳の中でねじれるほどに安定する……いわゆる”Shureがけ”なので、コンサートでロックスターが駆け回っても大丈夫なように、極めて安定した快適なリスニング環境を得られた。別途、使ってるカスタムIEMのFitear TITANを使わなかったのは、さすがに少し”重い”ためである。

 ところが、あまり長距離を走っていると、音の出口となっているポートから汗が入り込み、ほとんど音が聞こえなくなるという現象が発生した。故障したわけではなく、乾かせば完全に復活する。なぜ音が出なくなる(実際には微かに鳴っている)のか。実はドライバユニット(この場合はバランスドアーマチュア)に装着されている音響フィルタが汗を吸ってしまい、膨張して音が通る隙間がなくなってしまうからだった。

 こうした汗の影響は、ドライバユニット部だけの問題ではない。

 たとえば端子部は防水・防汗のためにパッキン付きのものが使われていなければならないが、たとえ液体の浸入を防げていても、汗による腐食が進みやすい素材だと、あっという間に接触不良になる。実際、スポーツ用を標榜する製品でも、充電できなくなってしまうものもあると耳にする。

 ということで、これは少し腰を据えて製品を探してみようと思ったのだ。

相次いで発表されたスポーツ用完全ワイヤレスイヤフォン

 すると「Jaybird」という耳慣れないブランドが浮上してきた。が、これはロジクールのスポーツ向けイヤフォンブランドなのかと納得。ロジクール(米ロジテック)が、かつてUltimate Earsを買収したことを記憶している読者もいるはずだ。

 Jaybirdは、そのランナー向け/フィットネス向けブランドとして立ち上げられたもので、実際に多くのランナーの意見を取り入れて開発をしているという。同ブランドの製品を最初から使っていれば、今回のように不満を感じていろいろ製品を集めてみようとは思わなかったかもしれない。

 一方、同じ頃に今度はボーズからニュースリリースが舞い込み「Bose Soundsport Free」という左右独立の完全ワイヤレスイヤフォンが発売されるとあり、続いて上記のJaybirdからも完全ワイヤレスの「Jaybird RUN」発表会の案内が(示し合わせたわけではないだろうが)あった。

Jaybird RUN(左)とBose Soundsport Free(右)

 前述したように、ワイヤレスと言ってもランニングやトレーニングに使うのであれば、完全ワイヤレスの方が望ましいと思っていたので、この2製品を中心に評価をした。価格はBose Soundsport Freeが27,000円、Jaybird RUNは実売25,880円前後だ。実際の製品は試していないが、これら以外にもJabraが「Jabra Elite Sport」というスポーツ用の左右分離完全ワイヤレスイヤフォンを発表している。

 そしてこの2機種に加えて、番外編としてソニーの「NW-WS623」も試してみた。これは水泳しながら使えるウォークマンだ(筆者が知る限りプールを泳ぎながら音楽が聴ける道具はこのシリーズのみ)。

 以前の製品は内蔵メモリの音楽のみしか聴けなかったが、現行品はBluetoothイヤフォンとしても機能するようモデルチェンジされ、ワイヤレス接続ができない水泳中はメモリ内蔵イヤフォン一体型ウォークマンとして、ランニングなどではBluetoothイヤフォンとしてスマートフォンなどと接続して使う2ウェイ仕様。

 メーカーが“使える”というのだから、きっとプールでも音楽を楽しめるのだろう。筆者は1時間以上、比較的ゆっくりとノンストップで泳ぐのが好きなため、本当に音楽が楽しめるなら、どれだけストレスが減ることか!

音質よりも重要なふたつのポイント

 さて、まずは完全ワイヤレスの2製品だが、それぞれを順番に紹介する……というスタイルは今回は採らない。音質に関しても、後ほど感想を述べたいが、それ以前にスポーツ用完全ワイヤレスイヤフォンとして、どうしてもここだけは譲れない……という点を直接比較していきたいと思うからだ。

Bose Soundsport Free
Jaybird RUN

 ちなみにこの2製品、まったく異なるメーカーの製品だが、機能面でのアイディアは極めて似ており、操作性の違いやサイズの違いなどはあるものの、決定的な仕様差はないといって差し支えない。

 たとえば両者とも専用アプリで設定変更やバッテリ残量のチェックができ、ペアリングしているスマートフォンの位置情報から、紛失したと思われる場所を推定する機能(Bluetooth信号が切れた場所を記録する)も同じだ。完全ワイヤレスイヤフォンの例に漏れず、バッテリ内蔵ケースに収入することで充電できる。

Bose Soundsport Free
Jaybird RUN

 大きな違いがあるとするなら、Jaybird RUNは専用アプリで周波数特性を補正可能な点だろうか。イヤフォン本体内の信号処理プロセスでイコライザがかかるため、再生アプリに依存しないのが利点と言える。つまりイヤフォンそのものの、帯域バランスを自分好みにできるわけだ。Apple Watchなどスマートフォン以外の製品とペアリングして使っている方は、それらと組み合わせる際にもイコライザ補正が生きてくる。

 しかし、それこそが決定的な差か? というと違う。イコライザによる補正は帯域バランスを好みにすることは可能だが、素の状態での音域バランスが整っているのなら、余分な調整はかえってそのバランスを崩すものになりかねないからだ。イコライザは諸刃の剣ということ。もちろん、使いこなせれば武器ともなろう。

 しかし、実際に2製品を使ってランニングや各種ワークアウトを行なって感じた重要なチェックポイントはふたつ。ひとつは耳の中での安定感、安心感。もうひとつはカナル型イヤフォンの遮音性を、どのあたりに落とし込むか……である。

いずれも付属のケースを使って充電する

タイトな装着感のRUN、ソフトな装着感のSoundsport Free

 まずは装着感について話を進めよう。

 両製品とも耳たぶの溝に“角”の部分を添わせ、本体が落下する方向にズレようとすると、その角がより溝に強く押し当たるように力がかかるよう設計されている。これにより、ランで足が着地した際にも、外れないようになっている。

 仕組みは同じだが、実際の使用フィーリングは少々異なる。

 RUNは耳たぶに添わせる角の部分と、外耳道のイヤーチップが別になっており、角のサイズは4種類、イヤーチップは4つ(2種類の異なるタイプが2サイズづつ)付属する。角の部分はやや固め。さらにイヤフォン本体がコンパクトで重心が安定していることもあって、装着感はタイトでブレが少なく、ランしていても安心感がある。

 異なる2種類のイヤーチップは、一般的な真円のタイプ(SおよびM)と楕円タイプ(MおよびL)に別れている。外耳道の小さい人は楕円チップを使えないの? と思うかもしれないが、外耳道は楕円形をしているため、楕円のMは真円のSと同じか少しだけ大きい程度の装着感だ。

 どうやら遮音性は真円の方が高そうなのだが、フィット感は楕円の方が優れている。筆者はもっとも大きな角のチップ+イヤーチップに楕円のLがちょうど良い。

 一方、Soundsport Freeは角の部分とイヤーチップが一体化されており、角の大きさに合わせて3つのイヤーチップから選ぶことになる。角の大きさに合わせ、イヤーチップ部分の大きさも少し変えられているが、外耳道と耳たぶの大きさは必ずしも同期していない。

 これでは詳細なフィッティングができないのでは?と心配になるかもしれないが、ボーズはこのタイプのイヤーチップを長年開発してきたメーカーだ。耳に差し込む部分が楕円形で外耳道の形状に近く設計されているのはもちろん、円錐状に先がすぼまっていく形状になっている。外耳道の少々のサイズ差はここで吸収される。RUNほど細かなカスタマイズではないが、フィッティングの幅には大きな差はないと感じた。

 ただし、角の部分にコシの強い素材を採用するRUNに比べると、Soundsport Freeは全体にややソフトな当たり。素材そのものが柔らかい。またRUNに比べサイズがかなり大きく、イヤーチップ部と本体の距離が離れているため、走っているとやや不安に感じることもある。

 実際に頭を素早く振ると外れやすいが、少なくともランしている間は、正しいフィッティングができている限りにおいて、落とすことはなかった。フィッティングのコツは、しっかりと角の部分を耳の溝に押し当てるようにセットすること。また、チップのサイズで迷ったならば、大きい方を使うのが良い。

 筆者の場合、Mサイズの方が心地良いと最初は感じたが、Lにした方が安定したため、現在はLを使うようにしている。コツを掴めば安定し、RUNよりも開放的な印象だが、よりしっかりした装着感がいいという人もいるかもしれない。

 このあたりは好みや、耳の形との相性もあるだろう。もしフィッティングが可能なお店が近くにあるならば、上記の紹介を踏まえた上で実際に確認してみることを勧める。

遮音性とランニング用イヤフォンの関係性

 ところで上記のフィット感、実はその次に話したい”遮音性”とも関連してくる。

 通勤時や飛行機のフライト時のリスニングの使うイヤフォンなどでは、遮音性が高い製品が好まれることも多い。開放型の方が音質そのものは整えやすいが、ノイジーな環境では遮音性を高くした方が小さな音量で音楽を楽しめる上、公共交通機関では近くにいる人に迷惑をかけにくいという利点もある。

 しかし、遮音性の高さはラン時には諸刃の剣にもなる。

 遮音性が高いと周囲の環境から遮断され、集中できる利点があるが、それはまた周囲の情報を遮断していることの証でもある。実際に遮音性が高すぎるイヤフォンで音楽を聴きながら街中をランすると、まわりの状況が把握できずに怖いと感じる。

 加えて遮音性の高いイヤフォンは耳栓をしているのと同様の状況を作り出すため、体内音が自分自身で聞こえてしまいやすいという問題もある。ワイヤードのイヤフォンで遮音性が高いものは、タッチノイズが目立って気になるという人もいるだろう。あれと似たようなものだ。

 ランの場合、足の着地時の骨に伝わる振動が音となって耳に伝わってくる。このとき、遮音性の高いイヤフォンほどノイズは大きい。

 Soundsport Freeは開放型の設計で、遮音性は実際のところあまりない。イヤーチップそのものに、多少の遮音効果はあるものの、本体側が開放型になっているので遮音性は限られている。実際、ランをしながら音楽を聴いていても、常識外に音量を上げない限りは、周囲の状況も把握しやすく街中でも走りやすかった。体内ノイズも聞こえないわけではないが、さほど気にならない。

 対してRUNは密閉型のカナル型イヤフォンだ。とりわけ真円のイヤーチップを使ったときの遮音性は(Soundsport Freeと比べて)高めで、音楽の音量次第では周囲の気配を感じるのが難しくなる。体内音も明確に感じられるようになり、ランで足が着地する度に耳にノイズが飛び込んでくる。

 “トントン”というランニングのリズムと捉え、聞いている音楽のBPMと合わせていくことでペースやモチベーションを維持する……といった発想もあるため、必ずしも悪いと断じるわけではないが、少なくとも街中でのランでは周りをケアした方が良さそうだ。

ラン時の装着感ならRUN、総合力ならSportsound Free

 さて、両製品をそれぞれ1カ月近く使用してみた結論だが、ラン時の装着感、安心感はRUNの方がいいと思う。大抵のことでは耳から外れそうにない安心感は、さすがに”ランナー自身がランナーのために企画・設計した”というだけのことはある。バッテリ内蔵ケースを含めたコンパクトさも評価したい。しかし、総合的にはSportsound Freeの魅力も極めて大きい。

 そのひとつは前述した遮音性に対する考え方の違いなどもあるが、音質面でも自然なバランスなのはSoundsport Freeの方だ。悪く言えば“クソ真面目”な感じなのだが、帯域バランスは良く特定の帯域に歪みやノイズを感じることがない。オープンエア設計のため、音場が広く自然に頭の外に拡がっていく感触も心地いい。

 そしてもうひとつ、日本……とりわけ都市部で暮らす人にとって重要なポイントだが、Soundsport Freeの方が、人が密集する場所での混信が少ない。もちろん、Soundsport Freeでも(他の完全ワイヤレスイヤフォンと同じく)乗り換え客の多い大きな駅などで混信し、左右の音が交互に聞こえたり、断続的な音になるといった減少はゼロではない。しかし、その頻度はRUNに比べかなり少なかった。

 そかし、そのRUNも装着してラン/フィットネスを行なう際の安心感という意味で、小さくはないアドバンテージがある。コンパクトさもその魅力のひとつと言えるだろう。フィッティングの細かな調整への配慮もいい。

 音質的には、使い始めの当初はやや高域に歪み感があり、シャリシャリとした感触が気になっていたが、数10時間も鳴らせばそれも滑らかになってくる。耳当たりソフトな音ではないが、伸びやかで明るく元気のいい音の風合いはスポーツ用として考えるならば悪くない。

 低域もよく伸びているようだが、100~150Hzぐらいのミッドバス帯域にやや強調するニュアンス感じる。ヒップホップベースのEDM系音楽をランの時に聴いている人の場合、ベースの帯域に弾力感や迫力を感じて良いと感じる場合もあるだろうが、素直な音という意味ではSoundsport Freeに譲る。

 このあたりはイコライザで好みに調整すればいいという考え方もあるだろう。“音質が悪い”という意味ではない。あくまでもキャラクターの違いと考えて欲しい。なお、両者とも汗っかきの筆者が30分以上ランして、滝のような汗をかいていてもまったく機能性に影響しなかったことは報告しておきたい。

実に惜しい水泳時にも使えるウォークマン

 一方、ランの時とは別に水泳の時にも使えるウォークマン「NW-WS623」にも、かなりの期待をしていた。理由は前述した通りだが、完全ワイヤレスのスポーツイヤフォン2製品が、期待以上に素晴らしかったのに対して、こちらはもう少し商品の練り込みが欲しいと感じる。コンセプトには共感するだけに、実に惜しい。

 水泳時にも使えるウォークマンは以前から存在したが、現在発売されている製品はBluetoothイヤフォンとしても利用可能となり、ランもスイムもやっているひという人には、なかなか良い選択肢となって……ほしいなぁ、という希望を持っていたのだ。

 完全ワイヤレスではない本機だが、左右をつなぐコード部は頭を挟み込むスタビライザの役目もになっており、ホールド性はなかなかのものだ。ランニング時、スマートフォンなどを身に着けたくない人には、内蔵メモリに曲を転送して再生できるウォークマンの方が好ましいと思う人も多いだろう。

 左右が独立していない多くのワイヤレスイヤフォンが首を左右に振るとイヤーピースが外れそうになるのに対して、もともと水泳用に作られている(つまりクロールの息継ぎで本体が外れないよう設計されている)本機は安定した装着感が得られる。

 “水泳に使っていないとき”の音質は、全体に腰高で高域の歪み感が目立つものの、ランニング用と割切るならば充分とも言える。ユーザーインターフェイス用にディスプレイを持っているわけではないため、転送した曲の再生指示などは実にシンプルなものだが、ここもランやトレーニング用と割切るなら許容範囲だと思う。

 また外音をマイクから取り込む機能を持っており、ボタンを押すだけで車の走行音や人の話し声を拾い、音楽にミックスして効かせてくれるのだ。押しやすいボタンに機能が割り当てられているので、シチュエーションに応じて使い分けると屋外ランニング時にも安心だ。

 しかし、肝心の水泳時の使用感には、もう一工夫がほしい。

 本機には水泳用とそれ以外の用途で使うイヤーチップがそれぞれ同梱されている。通常のイヤーチップには音が出てくる孔が空いているが、水泳用は防水のため塞がれている。ただし、音が伝わりやすいよう薄くはなっているが、音が本来出てくるポートはいったん遮断されている。

 このため、通常タイプのイヤーチップを装着しているときには充分な音圧が得られるのだが、水泳用チップを装着していると最大音量にしてもやや物足りない程度の音しか聞こえない。まったく楽しめないとまでは言わない。

 静かな環境なら、さほど文句はない程度とも言えるが、問題は水泳しているときはたいてい、耳には騒がしく呼気を吐くときのブクブクという音が聞こえてくることもあり、もう少し音量が出て欲しい。

 “もっとアンプのゲインを大きくすればいい”

 と、そのように単純に言えないのは、水泳用チップから通常タイプに戻した際、音量がそのままだと鼓膜を痛めてしまうほどの爆音になってしまうかもしれないからだ。おそらく、これ以上大きな音が出るようにしてしまうと、健康被害などが想定されるのだろう。

 ただ、ここまでスポーツに特化するのであれば、防汗性を高めるためにも、完全防水イヤーチップを前提にした音質設計をしてもいいのではないだろうか。実際、イヤーチップを水泳用にすると音質は大きく変化する(刺激が強すぎる通常イヤーチップよりも、多少S/N感が改善される水泳用チップの方がソフトなタッチの音になる)。

 ならば、最初から防水チップ前提に設計し、音量調整範囲も防水チップ装着時に合わせてアンプの設計をすれば、チップ交換なしに水泳時と陸上で楽しめる。ジムトレーニングで大きな筋肉を動かし、刺激を与えてから水泳で有酸素運動を……という方もいるだろうから、その間にチップ交換なんてことはさせない方がいい。

 もちろん、他に選択肢のない孤高の存在であるため、長時間の水泳の友を探すなら他に選択肢はないのだが……。

 なお、水中でも安定した装着感を得られたが、ターン時に思い切り壁を蹴ると、本機が水圧で外れてしまうことが多い。実際に使用する際にはお気をつけを。

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Bose Soundsport FreeJaybird RUNNW-WS623

本田 雅一

PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。  AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。  仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。  メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」も配信中。