本田雅一のAVTrends

Xbox Oneの魅力とは。MSフィル・スペンサー氏に聞く

日本で発売は? Xbox Oneは“専用ゲーム機”?

Microsoftのファーストパーティを束ねるフィル・スペンサー氏

 いよいよ発表されたXboxの最新モデル「Xbox One」だが、ゲーム機としての詳細に関してはまだ謎が多い。ゲーム機としてのさらなる詳細やパートナーとなるサードパーティ、それにファーストパーティ(注:ゲームプラットフォームを手がける会社)タイトルについてはE3での発表になるという。

 ゲームファンが尋ねたいほとんどの質問に対して、マイクロソフトの公式な答えは決まっている。

「詳細はE3で!」

 そんな中、15分程度というごく短時間ながら、Xboxのファーストパーティを取りまとめているスタジオヘッドのフィル・スペンサー氏に話を伺えたので、ここに紹介する事にしたい。

Xbox Oneは日本で発売される?

Xbox Oneを初披露

--今回の発表イベント、日本向けにはプレス登録枠がありませんでした。僕も実は米国プレスの扱いで入っているんですが、これはXbox Oneが日本で投入されないことを示しているんでしょうか?

「そんなことはないですよ。Xbox Oneは全世界で今年後半に発売されます。なぜ日本で発売されないかもしれないと思ったのですか?」

--日本以外の地域では直接的なライバルであるPlayStation 3に対し、Xbox 360は有利な戦いをしてきましたが、日本では失礼ながらサッパリの状況ですよね。それに“より優れたテレビ”を実現する機能部分は、かなり米国市場に特化されている印象を受けました。

「Xbox One」。左にあるのがKinect

「ゲーム以外のコンテンツ対応に関しては僕の担当ではありません。でも各国ごとに最適化を施して投入することになると思いますよ。さて、日本でのXboxですが、確かにコンソールの売上げという面で見ると、日本が占める割合はごく僅かでしかありません。しかし、ゲームクリエイターのコミュニティは世界でも有数の大きさです。僕も毎年、東京ゲームショウに行くのすごく楽しみなんですよ」

「そのゲームクリエイターのコミュニティと密接な関係を築いていくことは、どの世代のXboxにとってもとても重要なことです。世界的なゲームクリエイターの名前を、なんの資料もなしにいくらでも挙げられる国なんて、そうそうあるものじゃありませんから」

Xbox Oneのホーム画面。テレビの映像もここに表示できる
Xbox OneのEPG画面
テレビと動画サービスを利用するための画面

--では今年後半のXbox Oneローンチ(立ちあげ)では、同時発売かどうかはともかく日本での出荷も行なわれると考えていいのでしょうか?

「“全世界で”の中に日本が入らない理由はないでしょう。当然、日本でもXbox Oneは愉しんでもらえます」(ただし広報によると、公式なステートメントは今年後半に全世界でローンチされるが、“詳細はまだ決まっていない”とのこと)

Xbox Oneの魅力とは?

--スペンサーさんはスタジオヘッドとしてゲームを開発する側ですね。その現場から見た第3世代のXboxの魅力、これまでの世代とのエンターテインメント性の違いはなんでしょう?

「大きく分けると三つあります。ひとつめはグラフィックスが大幅に進歩したこと。画質も良くなりましたし、メモリもCPUコア数も多いですから、従来よりも凝った映像演出を行なえます。そのパワフルさは、ForzaレーシングやCall of Duty GHOSTの画面を見ていただければわかるでしょう。写実的な表現を越えて、さらなる高みに突入していると思います。リアリスティックを越えた“ハイパーリアリスティック”。現実を越えるほどの、高い質感表現が当たり前になってきていますから、それだけ創作意欲が刺激されます」

「次にXbox Liveが大幅に進化しました。今のXbox Liveはコンテンツ配信機能と、マッチングサーバーを中心にしたちょっとしたコミュニケーション機能だけしかありません。しかし、マイクロソフトは数100万ものサーバーをXbox Liveに用意し、そのクラウドパワーをクリエイターに開放します。これまではコンソール自身のパフォーマンスを向上させることばかりに投資が集中していましたが、Xbox Oneではインターネットの中に新たな付加価値を生み出せるところがユニークです」

「最後に新しいKinectカメラです。高精度の音声認識と高解像度な映像キャプチャ、それに従来より正確な距離測定で、プレーヤーの感情やジェスチャー、声といったものを、プレイアブルな要素として取り込むことができます。単にナチュラルユーザーインターフェイスのデバイスとして使うだけでなく、遊びのひとつとして取り込めます。検出精度が高くなり、広角レンズ採用でより多くのプレーヤーを同時認識し、同時にプレイが可能になるため、Kinectを使ったカメラは大きく変化します」

Xbox Oneのコントローラ
本体の背面。HDMI入力を備えている
Kinect

--発表イベントの中でも、Xbox Liveを通じてクラウドを活用するといった話が出ていましたが、具体的な事例は出てきませんでした。クラウドを活用するといっても、いろいろなアプローチがあると思いますが、どのような形でクラウドのパワーを利用するのでしょう?

Forza Motorsport 5

「この話はまだ大まかにしか話せません。通常、ゲームコンソールが持つ価値というのは、出荷した箱の中に入っているものです。しかし今の時代、クラウドの中にもエンターテインメントの要素は存在します。Xbox Oneが提供する価値は、物理的なXbox Oneハードウェアの外にもあるということです」

「たとえばマッチメイキングのシステムが進化しました。従来より素早く対戦相手を見つけますし、ユーザーの振るまいやスキルレベルなどで、より賢いマッチングを行ないます。Game DVRはプレイビデオのキャプチャ、編集、クラウドへの保存を可能にします。Living Gamesという機能も面白いですよ。人工知能がプレイヤーのクセを学習し、自分がいない場所で友だちと対戦したりします。他にも色々とありますが、SmartGlassは大幅にアップデートしています」

「おそらくForzaレーシングのチームが、良い事例になるでしょう。今回のデモでは紹介されていませんが、彼らはとてもユニークな形でクラウドを使っています。そうですね。E3では具体的なことを言えますので、是非、E3でマイクロソフトブースを訪ねてください。今日の発表に関しては、とても時間が短かったので、詳細の多くはE3で公開ということになっています」

Xbox Liveホームスクリーン
Skypeを統合

--同世代のライバルに対して、今回のXboxはどのような特徴、ユニークさがあると考えていますか? スペックなどではなく、遊びをクリエイトするためのゲームプラットフォームとしての個性についてお聞かせください。

「ゲーミングのスタイルはとても多様化しています。ゲームコンソールだけでなく、ノートパソコンで遊んだり、スマートフォンやタブレットでもゲームが遊ばれています。最初のXboxはハードウェアそのものがゲームプラットフォームとなり、その上で動くネイティブゲームの質を高めることがプラットフォームとしての使命でした」

「今回のXbox Oneは、単にハードウェア性能を上げ、より質の高いゲームを開発できるようになっただけでなく、テレビや映像配信、様々なネットコンテンツを統合し、ライトなカジュアルゲームやマインクラフトなどのコンテンツにも適合できる懐の広さがあります。テレビというデバイスに集まる様々なコンテンツを気軽に切り替えて楽しめる、もっとも手軽で軽快なデバイスという特徴がXbox Oneにはあります。音楽、テレビ、映画、ゲーム。これらをひとつまとめていきますし、単にコンテンツを受け身で楽しむだけでなく、ネット上のコンテンツと融合してインタラクティブな形でも愉しめるようにする。ゲーマータグやスカイプでコミュニケートしながら、10年間育ててきたXbox Liveのコミュニティを活用し、さらにその楽しみの幅を拡げていけるのです」

Xbox Oneは“専用ゲーム機”なのか

--これまでのXboxは、“専用ゲーム機”としての立ち位置に拘っていたように思います。もちろん、Goldメンバー向けの映像配信端末機能が重要な普及要因であったことは確かでしょうが、AV機能を統合した総合エンターテインメント端末というコンセプトは、どちらかというとソニーが得意としていたメッセージですよね。ところがPS4の発表会は、まるでXboxのかつての発表のように、開発のしやすさやゲーム機としての純粋さを訴求するものでした。

 今回はゲームコンソールに対するコンセプトが逆転したということでしょうか?

「Xbox Oneにとって、ゲームが一番重要なコンテンツであることは、今もまったく変わっていませんよ。E3にいらしていただければ、Xbox Oneのゲーム機としての側面を、もっと詳細に知ることができます。最初の1年で15タイトルをXbox One専用に開発、発売していきますが、このうち8タイトルはまったくの新規タイトルですから期待してください」

--PS4はゲームファンを結びつけるソーシャル機能に力を入れるとソニーは話していますが、この視点でマイクロソフトはどんな価値が提供できるでしょう?

「僕らがファーストパーティタイトルを企画する上で重視しているのは、Xbox Liveを上手に活用することです。Xbox LiveのIDは、テレビ、モバイル端末、パソコンなど様々なプラットフォームをまたがって1700万人が利用しています。こうしたゲームファンのコミュニティと、そこに生まれるゲームのエコシステムをキッチリ作れていることこそが、自分たちにとってのライバルに対するアドバンテージです。E3ではその活用例をお見せいたします」

本田 雅一