藤本健のDigital Audio Laboratory

第699回 「楽器フェア」で見つけた、音楽ビデオレコーダや最新シンセなど注目製品

「楽器フェア」で見つけた、音楽ビデオレコーダや最新シンセなど注目製品

 11月4日~6日の3日間、東京ビッグサイトで2年に一度の楽器の祭典「2016楽器フェア」が開催された。日本最大の楽器総合イベントである楽器フェアには、鍵盤、弦楽器・管楽器、打楽器、エレキギター、アコースティックギター、そしてコンピュータ・デジタルなどのゾーンに分かれて数多くの企業が出展した。

2016楽器フェアが開催
会場の東京ビッグサイト

 さらに、従来は別イベントとして開催されている「SYNTH FEST 16」(シンセフェスタ16)、「TOKYO GUITAR SHOW」(TGS)、「ポータブルオーディオフェスティバル」(ポタフェス)なども包括した大規模なものとなった。新製品や新サービスなどを数多く展示されていた中から、気になったものをいくつかピックアップして紹介していこう。

ズームやローランド、コルグなどの新製品が一挙に登場

 規模的には2年前とほぼ同程度だったが、3日間ともに晴天が続いたからか、今回の楽器フェアはかなり大盛況だったと感じた。見ていった順に紹介していくと、まず入口を入ってすぐに見つけたのが、ローランド創業者である梯郁太郎氏が昨年設立した会社、ATVが出した新製品、aFrame。

aFrameを手に持つ、パーカッショニストの梯郁夫氏(左)、ATV代表取締役の室井誠氏(中央)

 ダイヤモンド型のaFrameは、まったく新たな電子パーカッションで、叩いたり、こすったりして鳴らすことができ、盤面を抑えると音色が変わったりミュートができるというもの。いわゆるサンプリング音源ではなく、実際に叩いたり、こすったりする音を内蔵の小さなマイクで捉え、それを特殊なEQを使って音を加工するシンセサイザー的な機材。USB端子もあり、将来PCとのデータのやり取りも可能になる模様だ。発売は来年1月の予定で、16万円程度になるとのこと。

aFrame

 ズーム(ZOOM)ブースに展示されていたのは、Q4nの姉妹製品となる小型のデジタルビデオカメラ「Q2n」。まさに手のひらサイズのカメラだが、これは単にビデオカメラとして動作するだけでなく、ステレオの高感度マイクが搭載されているのが特徴で、最高96kHz/24bitで録音しながらビデオ撮影ができるため、音楽演奏などを録画するのに最適。

ズーム「Q2n」

 映像が不要な場合は、シンプルなリニアPCMレコーダーとしても使えるようになっている。すでに先週から発売が開始され、価格は19,800円(税込)。

ディスプレイ側

 ローランドが展示していたのは、12月中旬に実売20,000円前後で発売するという「UA-4FXII」。これは、同社が2005年に発売したUSBオーディオインターフェイスUA-4FXの新モデルとなるもの。UA-4FX自体は2010年に生産終了していたので、新モデルというよりも、似たコンセプトのまったくの新製品と言ってもいいとは思うが、ほかのオーディオインターフェイスと異なり、内部にさまざまなエフェクトを備えており、パネル上のパラメータだけで、いろいろと音をいじれるのが大きな特徴。また、ループバック機能を備えているので、ニコニコ生放送やFRESH! by AbemaTVなど、ネット放送メディアで利用することを主眼に開発されている。以前のUA-4FXはUSB 1.1対応だったので、入出力などにさまざまな制限があったが、今回の製品はUSB 2.0対応になっているのでPCとのスマートなやりとりが可能になっている。

ローランド「UA-4FXII」

 数多くの新製品を投入していたのがコルグだ。メインとして打ち出していたのは、5色のカラーバリエーションのアナログシンセサイザ、monologue。以前、4音ポリフォニックのminilogueという製品を出していたが、今回出したのは一回り小さいモノフォニック版。単にモノフォニックにしたというだけでなく、モノフォニックならではの音が出せるように設計されている。2VCO、1VCF、1EG、1VCA、1LFOという構成で16ステップのシーケンサなども搭載。12月下旬発売で価格は34,000円の予定。

コルグ「monologue」
5色のカラーバリエーションを用意
背面

 iPad/iPhoneアプリのシンセサイザとしてはARP ODYSSEiを発表。これは米ARP Instrumentsが1972年に発表したアナログシンセサイザーをiOS上で復元したもの。コルグは昨年、アナログのハードウェアシンセとしてARP ODYSSEYを完全復刻していたが、そのコルグ独自の電子回路モデリング・テクノロジーCMTを用いて復元したのが、このODYSSEiなのだ。こちらはすでにApp Storeで2,400円で発売されている。

iOSアプリ「ARP ODYSSEi」

 コルグの輸入部門が初出品したのが仏ARTURIAの「MATRIX BRUTE」。こちらも2VCO+サブオシレーターのアナログシンセサイザだが、16モジュレーションソースと16のディスティネーションパラメーターを設定可能な16x16のマトリックスを装備しているのが最大の特徴。このマトリックスを利用することで、自由自在なパッチングができ、幅広い音作りが可能になっている。製品の開発は終わっていて、これから生産に入るところだが、価格や発売時期は未定という。

ARTURIA「MATRIX BRUTE」

 MATRIX BRUTEより先に発売される予定というのが、同じARTURIAのアナログドラムマシン「DRUM BRUTE」。17種類のアナログドラム音源を搭載するとともに、Steiner Parkerフィルターを搭載したことで、切れのいい音作りができるという。また最大64ステップ、64パータンのシーケンサも内蔵し、USB経由でPCとの接続も可能となっている。年内発売を目指したいと言ってはいたが、正確な発売時期、価格は未定だ。

アナログドラムマシンのDRUM BRUTE

新たなシンセや注目の技術が集まった「SYNTH FEST 16」

 続いて見ていくのは、SYNTH FEST 16と題したスペースで展示されていた各種製品。フックアップのブースで展示していたのはイタリア・IK Multimediaの新ソフトウェア音源「MODO BASS」。同社が「究極のフィジカル・モデリング・ベース音源」として打ち出しているだけあって、かなり注目度の高い製品となっていた。弦の種類やピックアップの位置、種類などを自由に設定することができるので、他にない自分だけのベースを作ることが可能。物理モデリング音源というと、やや独特な雰囲気の音になるものが多いが、このMODO BASSを聴く感じでは、非常にリアルな音である印象を受けた。発売は今月末で、通常価格は39,500円(税込)とのことだが、発売当初はイントロ価格として16,000円で発売する予定とのことだ。

IK Multimediaの「MODO BASS」

 メディアインテグレーションブースで人気を集めていたのは、米Positive Gridの600Wのギター&ベースアンプ、BIAS Head。これは現存するアンプ、キャビネットやマイクまで正確に捉えることが可能なギター&ベース・アンプのシミュレータ。PCのソフトウェア版と機能的には同等のものを、この機材内蔵のDSPを使って実現しており、スタンドアロンで動作するのが特徴。

Positive Gridのギター&ベースアンプ「BIAS Head」

 パラメータもすべて、このBIAS Headのツマミで操作できるので、普通のアンプと同じように操作できるのがポイントで、iPadからプリセットを読み込ませたり、パラメータをエディットすることも可能なっている。また、実物のギターアンプの音をBIAS Headに聴かせて、EQなどを活用しながら、そのギターアンプに近い音にするといった機能も用意されている。初回出荷分はすでに完売したとのことだが、価格は178,000円(税込)となっている。

iPadからパラメータのエディットなども可能

 Elektronが展示していたのはステレオ・アナログ・サウンド・プロセッサのAnalog Heat。これはアナログ回路を使ったディストーション、EQ、フィルターであり、8種類の異なるディストーション回路を装備していて、切り替えることが可能になっているというもの。ユニークなのは、単なるアナログ機材というわけではなく、各パラメータはデジタル設定が可能で、プリセットができるだけでなく、USBを通じてPC側からコントロールすることができる。さらに、A/D、D/Aを備えているので、PCのアプトボードエフェクトとして、USB接続で簡単に利用できるのが特徴だ。しかも付属ソフトを利用することで、PCのVST/AUプラグインとして扱えるのも面白いところ。11月発売の予定で、価格は79,900円(税込)とのことだ。

Elektronの「Analog Heat」

 このAnalog Heatの中のディストーション部分を抜き出して、ギター用のエフェクトに仕立て上げたAnalog Driveも今回初展示された。こちらの発売はもう少し先になりそうとのことだったが、44,900円とのことだった。

ディストーション部分を抜き出した「Analog Drive」

 浜松のベンチャー企業であるキッコサウンドが展示していたのは、アナログシンセサイザなどで使われているCV/GATE信号をワイヤレスで飛ばすシステム「mi.1e」。

キッコサウンドの「mi.1e」

 同社では、多くの企業に先駆けてMIDIをBluetooth LEで飛ばすシステムmi.1を製品化していたが、今回登場したmi.1eはユーロラックにマウントできるサイズの小さな基板にmi.1のチップを搭載したというもの。iPadの専用アプリを使ってmi.1eをコントロールできるようにしてあり、8つある端子はそれぞれCVにでもGATEにでも設定できる。CVを4つ、GATEを4つとすれば、4ポリフォニックまでコントロールできるわけだ。また、このアプリで直接、出力信号をコントロールすることで、LFO信号を発信できるなど、さまざまな応用も効くという。発売時期など詳細は決まっていないが、来年3月ごろをメドに、20,000~25,000円程度で出せることを目指しているという。

小さな基板にmi.1のチップを搭載
iPadアプリからmi.1eをコントロールできる

 このSYNTH FESTでは、TOMITA MEMORIAL MUSEUMというスペースで、先日亡くなった冨田勲氏が使っていた数々のシンセサイザが展示されるとともに、ゆかりの人々が講演を行なっていた。

「TOMITA MEMORIAL MUSEUM」のコーナー。説明しているのは、右から松武秀樹氏、篠田元一氏、藤井丈司氏

 SYNTH FESTステージでは各社による製品デモを兼ねたライブイベントが行なわれており、その隣にはAMEI(音楽電子事業協会)のステージが併設されていたのも注目のポイントだ。

SYNTH FESTステージで行なわれていたライブイベント

 中でもユニークだったのは、クリムゾンテクノロジーが技術セミナーを行なった「リアチェンvoice」というシステム。これは人がしゃべる声を、特定のキャラクタの声にリアルタイムで変換する技術で、すでにBtoBの形での販売を開始しているもの。事前にキャラクタの声と話者の声を録音して学習させたデータベースを作っておくことで、遅延時間100msecでの変換を行なうのだ。まだ発展途上の点もありそうで、やや聞き取りにくい部分もあったが、会場ではデモが行なわれたほか、このリアチェンvoiceを歌で使用したらどうなるかというデモも興味深かった。

クリムゾンテクノロジーの「リアチェンvoice」
「リアチェンvoice」のデモを交えたプレゼンテーション
リアチェンvoiceを歌で使用するデモ

音楽アプリ「nana」の有料版スタート。ユニークな弦楽器も

 上記以外のブースで見つけた製品やサービスも、いくつか紹介しておこう。ヤマハのブース内では、先日ユーザー数250万人を突破したnanaが、サービスのデモをしていたのとともに、有料会員サービスである「nanaプレミアム」をスタートしたことを紹介。このnanaプレミアムではiOSユーザー向けに月額580円でスタートさせたもので、拍手数順検索や、プレミアムエフェクト機能、固定サウンドなどの機能を使えるようにしたもの。将来的にはAndroidへのnanaプレミアムの展開を予定しているが、現在のところまだメドは立っていないとのこと。また今後はnanaプレミアムでの機能を月に1回程度のペースで拡充させていくことを検討しているそうで、プレイリストのシェアを可能にしたり、ケロケロボイスなど新しいエフェクトの追加も考えているようだ。

有料の「nanaプレミアム」がスタート

 音響特機では、Bluetoothデジタルワイヤレスミキサー「ProDXシリーズ」というちょっとユニークなミキサーの展示を行なっていた。これは本体にはフェーダーを持たないというアナログミキサーで、4ch仕様のProDX4と8ch仕様のProDX8の2製品がある。

Bluetoothデジタルワイヤレスミキサー・ProDXシリーズの4chモデル「ProDX4」
8ch仕様のProDX8

 いずれも入力信号自体はアナログで接続して2chにミックスするものだが、操作はBluetooth接続のiPhoneアプリからできるようにしている。ここにはエフェクトも搭載されており、本体操作で4種類を切り替えて操作できるほか、iPhoneアプリ側からなら16種類までお呼び出せるようになっている。また、ミキサーへの入力信号の1つはiPhoneからBluetoothでのストリーミングも可能になっている。いずれもすでに発売は開始しておりProDX4が24,800円、ProDX8が35,800円とのことだ。

Bluetooth接続のiPhoneアプリから操作できる

 完全なアナログ機材だが、ちょっとおもしろかったのが設立されたばかりの中谷インストゥルメントという会社がデモをおこなっていたSympaSizerという共鳴現象を利用した弦楽器だ。これは縦型のモジュールの中に13本の弦を入れた楽器なのだが、この弦は直接弾くのではなく、共鳴だけで鳴らすというもの。横でギターを持っているが、たとえばギターをサウンドを入力したものに、SymaSizerを共鳴させるという不思議なシステムになっている。もちろんギター以外にも電子ピアノやシンセサイザなど入力楽器は何でもOK。これによってインド楽器であるシタールのような共鳴楽器特有のサウンドが得られるようになっている。

中谷インストゥルメントの「SympaSizer」

 すでに6年も前から製品を出していたのに、個人的に初めて見たのがA.O.M.という日本のプラグインメーカー。リミッタやステレオイメージャー、イコライザー、パンナーなどを業務利用を目的としたプラグインをいろいろ出している。最新の製品はInvisible Limiter G2というマスタリングリミッタ。16倍までのオーバーサンプリングを可能にするとともに、オーバーサンプリング時にはサンプリング間ピークに対応したリミッティングが可能であったり、リダクションカーブ形状を変更したり、ソフトー・ニー機能を装備するなど、なかなか強力なシステムになっているようだ。

 以上、楽器フェアの会場で見つけたものを紹介してきたが、楽器フェアでは別会場でライブなども行なわれていた。その中で初日に見てきたのが「Daisuke Asakura re:meet 初音ミクV4X」というもの。これは昨年のMusic Park 2015のイベントとして行なわれた浅倉大介氏と初音ミクのコラボレーション・ライブの第2弾と位置づけられているもので、浅倉氏の楽曲を初音ミクが歌う形でライブを実現する企画。今回は、その初音ミクのデータ打ち込みを女性ボカロPである黒田亜津氏と、赤い彗星P氏の2名が担当し、初音ミクには最新版であるVOCALOID4対応の初音ミクV4Xが利用された。

浅倉大介氏が登場したMusic Park 2015のイベント

 そのライブに先駆け、浅倉氏と、女性ボカロPの2人、さらに初音ミク企画開発プロデューサーであるクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏の4人が登壇する形で制作に関する対談も行なわれた。楽器フェアの入場料とは別に費用のかかる有料イベントではあったが、かなり多くの人が入って盛り上がっていた。なお、このライブの様子はヤマハのFRESH! by AbemaTV番組、SOUND ROSTERでアーカイブされているので、興味のある方はご覧いただければと思う。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto