藤本健のDigital Audio Laboratory

第892回

MOTUの定番USBオーディオ「UltraLite」。新作mk5はレイテンシーが超優秀!?

MOTUのオーディオインターフェイス「UltraLite mk5」

アメリカのDAW/オーディオインターフェイスのメーカー、MOTUから新製品「UltraLite mk5」が発表され、国内でも発売を開始した。名前からも想像できる通り、国内外で人気のUltraLiteの第5世代目に当たる機材であり、数多くの機能を装備する中級モデルだ。

国内価格も実売84,700円とそれなりの値段だが、DSP内蔵で18in/22outを装備するなど、機能的には豊富。また、MOTUが前面に打ち出してきているのが新搭載のDACチップで、米ESS Technology「ES9038PRO SABRE DAC」を搭載したことで、125dBのダイナミックレンジと-114dBのTHD+Nの測定を実現した、としている。

実際どのような機材なのか、いつものように音質チェックやレイテンシーチェックなどもしてみたので、紹介してみよう。

「UltraLite mk5」の概要

MOTUが発売したUltraLite mk5は、220×175×45mm(幅×奥行き×高さ)、1.3kgというサイズのオーディオインターフェイス。いわゆるハーフラックサイズの機材で、Windows、Mac、そしてiOSでも利用可能なUSBクラスコンプライアントなデバイスとなっている。最高で192kHz/24bitに対応し、MIDIの入出力も装備、PCとはUSB Type-C、USB 2.0規格での接続となる。

UltraLite mk5に搭載されているES9026PRO SABRE DACは、オーディオ機器においても評判のいいチップで、8ch出力を持つ(記事参照)。ただこのDACチップがESS Technologyからリリースされたのは2016年1月なので、最新というわけではない。ある意味、こなれたチップであるから間違いがない、と考えたほうがよいかもしれない。

写真右のチップが「ES9026PRO」

フロントには2つのコンボジャックが搭載され、マイク、ライン、ギターの入力が可能で、ヘッドホン出力も装備している。中央に3つのプッシュ対応のノブが付いており、これで入力ゲインやヘッドホン出力の調整ができるのはもちろん、右側にあるOLEDディスプレイも使いながらサンプリングレートやクロックなど各種設定もできるようになっている。

前面
右側にはOLEDディスプレイ。レートやクロックなど、各種設定が可能

リアを見ると、数多くの端子が並んでいる。右の6つはTRSフォン端子でライン入力。中央にある10個もTRSフォン端子で、こちらはライン出力だ。その左側にあるRCAのピンジャックはS/PDIFコアキシャルの入出力、その左上がMIDIの入出力、下がオプティカルの入出力、さらに左にUSB Type-C端子、ACアダプタの接続電源端子という構成だ。

背面

USB Type-Cでの接続ではあるが、これだけの入出力端子を備え、フロントのコンボジャックはいずれも+48Vのファンタム電源供給できることもあり、USBバスパワーで動作させることはできず、18VのACアダプタでの電源が必要となる。

オプティカル端子は、同クラスのほかのオーディオインターフェイスと同様、S/PDIFとADATの兼用。フロントのOLEDディスプレイを使った操作でS/PDIFとADATの切り替えが可能なほか、ドライバと一緒にインストールされるミキサーアプリケーション、CueMix 5からも設定可能になっている。

オプティカルをADATとした場合、8in/8outとなり、S/PDIFコアキシャルと合わせてデジタルでの入出力が10in/10out。またアナログはヘッドフォン出力も2chと数えると8in/12outとなり、合計して18in/22outとなるわけだ。

なおADATが8in/8outとなるのは、サンプリングレートが44.1kHz、または48kHzの場合。96kHzは当初ADAT規格には存在しなかったが、現在はS/MUXという拡張規格が存在し、4in/4outとなるが、試してみたところUltraLite mk5もS/MUXに対応していた。したがって96kHz動作時はトータルで14in/18outということになる。

サンプリングレートが44.1kHz、または48kHzの場合、ADATは8in/8outになる
S/MUXをサポートする

192kHzの場合は、S/MUX4という拡張規格があり、2in/2outとなるが、UltraLite mk5は対応していなかった。確認してみたところ、192kHzではS/PDIFコアキシャルのほうも無効になるためアナログのみの入出力となる。その結果、トータルとして8in/12outというわけだ。

コントローラソフト「CueMix 5」

UltraLite mk5のコントローラソフトは「CueMix 5」で、Windows用、Mac用に加えiPhone/iPad用も存在する。iPhone/iPadと接続する場合には、Lightning-USBアダプタが必要になるが、同じように使うことができる。

コントローラソフト「CueMix 5」

Windows版CueMix 5で概要を見ていくと、HOME画面では全体の動作状況をみることができ、DEVICEでは、サンプリングレート、クロックソース、ループバックのソースを何にするか、バッファサイズなどを設定できる。

HOME画面
DEVICE画面

INPUTでは各入力のゲイン調整などを、OUTPUTでは各出力のレベル調整が可能で、その下にMAIN 1-2 MIX、PHONES 1-2 MIX、LINE 3-4 MIXなどがある。これらは各アナログ端子に何を出力するかを調整するためのもの。PCからの出力に加え、18inある各入力から入ってきた信号も出力できるようになっている。

OUTPUTでは、各出力のレベル調整が可能
MAIN 1-2 MIX

上記の入力信号に対しては、それぞれEQやコンプレッサ、ゲートをかけることができ、これらはすべてUltraLite mk5内蔵のDSPで処理するためPC側の負荷はかからない。

EQ
コンプレッサ、ゲートをかけることができる

REVERBという項目もあり、ここには各入力に対してリバーブをルーティングすることができ、その出力結果を先ほどの各MIXに返すことでリバーブを掛けた音をモニターできる。

REVERB

なお、INPUTの設定でPre FXとしておくと、EQ、コンプレッサ、ゲートを掛けてもPC側には影響がないが、Post FXとしておくことで、掛け録りが可能。ただしリバーブはモニター用で、掛け録りは基本的にはできない仕様だ。

音質検証

UltraLite mk5の音質はどうなっているのだろう。いつものようにRMAA Proを使ってテストしてみた。今回試したのは、入力はフロントのコンボジャック、出力はリアの1/2chをループさせる形で接続・測定を行なった。結果は以下の通り。

44.1kHzの場合
48kHzの場合
96kHzの場合

ここに192kHzの結果がないが、実はなぜかうまく測定できなかったのだ。時々こうしたことが起こるのだが、おそらくASIOドライバでの192kHzでの挙動とRMAA Proの相性の問題であると思われる。

44.1kHz、48kHz、96kHzの結果はいずれもとても良好。強いていえば、f特における高域が伸びきっていないようだ。ここだけを見ると以前記事でとりあげた同じMOTUのM2、M4のほうがいい結果といえる(記事参照)。断言はできないが、入力側で、若干高域を抑える回路特性になっているのではないだろうか。

続いてレイテンシーのほうもチェックしてみた。これもいつものようにCEntranceのASIO Latency Testを使って試している。44.1kHzのみ、バッファサイズを128 Sampleと最小の16 Sampleの2つで測定。それ以外はいずれも最小とバッファサイズで行ない、48kHzは16 Sample、96kHzは32 Sample、そして192kHzは64 Sampleで行なった結果が以下の通りだ。

「UltraLite mk5」のレイテンシーテスト1(Safetey Offsets時)
128 samples/44.1kHzの結果
16 samples/44.1kHzの結果
16 samples/48kHzの結果
32 samples/96kHzの結果
64 samples/192kHzの結果

いずれも非常に低レイテンシーであるのだが、ちょっと気になったのは、MOTUが発表している結果と異なるということ。

MOTUによると「MacとPC、両方の環境に最適化されたドライバーは、超低遅延のパフォーマンスを提供します。UltraLite mk5は、Digital Performerなどの高性能DAWで、USB(96kHz、32サンプルホストバッファー)で2.4ミリ秒の驚異的なラウンド・トリップ・レイテンシー(RTL)を実現します」とあり、レイテンシー測定の図も記載されている。

図を見る限り、同じテストをしているわけだが、こちらでの96kHzで32Sampleでの測定結果は3.04msecなので若干大きい。もっとも0.36msecの違いなので、そんなものかなと思いつつ、改めてCueMix 5のDEVICE設定を見たら、Safetey Offsetsという項目があったのを発見。

そう、音切れがしないよう、バッファサイズにオフセットを持たせる設定がデフォルトでされていたのだ。そこで、これをLowest Latencyに設定し直したうえで、改めてテストしてみたのが以下の結果だ。

Lowest Latencyに設定し直した
「UltraLite mk5」のレイテンシーテスト2(Lowest Latency時)
128 samples/44.1kHzの結果
16 samples/44.1kHzの結果
16 samples/48kHzの結果
32 samples/96kHzの結果
64 samples/192kHzの結果

今度はなんと、メーカー発表の2.4msecよりもさらに低レイテンシー2.06msecという結果に。この結果からすると、レイテンシーという面では、非常に優れたオーディオインターフェイスになっていることが分かる。

以上、MOTUの新製品であるUltraLite mk5についてチェックしてみたが、いかがだろうか。入出力も豊富にあり、音質もレイテンシーの面でも非常に優れた機材であることが実証された。これだけの機能、性能があれば、かなり割安なオーディオインターフェイスであるといえるのではないだろうか。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto