第122回:初の超解像技術搭載プロジェクタの実力は?

~3LCD搭載最新モデル エプソン「EH-TW4500」~


EH-TW4500

 プロジェクタの新モデルのシーズンがやってきた。今期、パナソニックはTH-AEシリーズ、サンヨーはLP-Zシリーズの2009年モデルの投入を行なわず、透過型液晶プロジェクタで2009年モデルを発売したのは今回紹介するエプソンと三菱だけだ。

 年次リファインモデルの製品投入ができるのは、順当な進化を遂げていると言うことであり、歓迎したい。今回紹介するエプソンの透過型液晶パネル採用のフルHDプロジェクタ「EH-TW4500」は2009年9月24日に発表されたモデルである。

 型番からもわかるように、EH-TW4500は、昨年モデルのEH-TW4000からのマイナーチェンジモデルに相当するが、世界初の超解像技術採用のフルHDプロジェクタ製品ということで注目を集めている。


 


■ 設置性チェック
 ~筐体デザイン、レンズ仕様および光源ランプ仕様に変更無し

 筐体デザインは先代EH-TW4000と同一。あえてエクステリア面での違う点を挙げるとすれば、前面に備え付けられている「EPSON」ロゴプレートの意匠の変更くらいだろうか。

横長デザインだが、奥行きはそれなりにある

 ボディサイズと重量にも変更はなく、先代と同じ450×360×136mm(幅×奥行き×高さ)、約7.5kgとなっている。一人で移動はできるとは思うが、重さはそれなりにある。

 横長のボディデザインだが、奥行きはそれなりにあり、さらに接続端子と吸気口が背面にあるため、壁に寄せての設置は適さない。よって壁に寄せて設置されている棚の天板に設置する場合は、事前に入念にシミュレーションをすべき。

 高さ調整可能な脚部は前面に二つ、背面側の脚部は固定式で一本。よって三角支持で置かれることになる。なお、脚部の前後距離は30cm未満。


前部の左右脚部は高低調整が可能正面向かって右側には簡易操作パネルがある

 天吊り金具は今回も純正オプション「ELPMB20」(47,250円)が利用できる。これは2005年モデルのEMP-TW600からずっと共通に利用できるもので、旧来モデルのユーザーは、その設置環境を流用して買い換えができる。

 投射レンズも先代からそのまま継承されている。2.1倍ズームレンズ(F2.0-3.17/f:22.5-47.2mm)は手動調整式で、上下±96%(約3画面分)、左右±47%(約2画面分)のレンズシフトに対応。このシフト量の広さはEH-TW4500の設置自由度の高さに大きく貢献している。

投射レンズ仕様にも変更無し。レンズシフト調整は旧来のダイヤル調整式ズーム/フォーカスは外郭リングの回転式

 100インチ(16:9)の最短投射距離は約3m(298cm)で、最長投射距離は約6.3m(636cm)で、小さい部屋での大画面から、大きい部屋で本体を部屋の後部に置いても中規模の画面サイズにとどめるような設置も可能となっている。

 投射レンズのポテンシャルはクラストップレベルなのだが、妥協点もある。それは実売価格30万円台の製品でも採用例が多くなっている「リモコン電動制御でのレンズ調整ができない」という点だ。

 「レンズは一度設置してしまえば再度調整しない」、という意見もあるが、ズームやレンズシフトをリモコンで行なえると、4:3映像のSD映像をズームして大きく見たり、Wii Fitのような立って遊ぶゲームをプレイする際に、レンズシフトで映像を上に持ち上げて頭の影の写り込みを避ける、といった活用ができるので便利なのだ。次期モデルでは対応を望みたいところだ。

 EH-TW4500は、ダイナミックコントラスト値が向上しているが、光源ランプに変更はなく、先代と同一仕様の200W出力の超高圧水銀系ランプを採用している。交換ランプも当然同一型式番の「ELPLP49」(31,500円)となる。ちなみに、兄弟機の下位モデル「EH-TW3500」も同一の光源ランプを採用しているが、こちらのモデルは光出力を最大限に輝度方向へ使っており、EH-TW4500よりも200ルーメン明るい1,800ルーメンとなっている。

左側のスリットが排気口。エアは左側に排出される

 消費電力は前モデルのEH-TW4000の285Wよりも若干上がり、297Wとなった。ちなみに、この消費電力値は同クラス他社製品と比較すると若干高めの値だ。

 騒音レベルは先代と同じで、低輝度モードである「エコ」モードで22dBを達成。動作音は1m離れればほとんど聞こえない。逆に、通常輝度モードである「ノーマル」モードでは耳障りなほどではないものの、1m離れても耳を澄ませば「フー」という稼働音は聞こえる。

 エアフローは背面の吸気口から冷気を吸って前面の排気口から吐き出す流れ。排気口のスリットは曲面デザインがあしらわれている関係で、排気を正面ではなく側面側に吐き出すように工夫がなされている。このスリットは内部からの光漏れも遮断する構造となっており、機能とデザインを両立させた筐体デザインとなっている。


 


■ 接続性チェック
 ~HDMIはx.v.Color、DeepColorに対応。Dsub15ピンのPC接続端子も完備

接続端子はEH-TW4000と同一。背面には吸気スリットも

 接続端子は背面側にあり、前モデルから種類に変更はない。HDMI端子は2系統を装備しており、広色域モードのx.v.Colorモード、高分解能Deep Colorモードの双方に対応したHDMI Ver.1.3a相当。アナログビデオ系としてはコンポジットビデオ入力端子、Sビデオ入力端子、コンポーネントビデオ入力端子を各1系統ずつ配備するが、D端子はなし。

 PC入力端子はアナログRGB接続用にD-Sub15ピン端子を完備。最近はD-Sub15ピン端子を省略する機種も多いが、データプロジェクタ製品で高い実績を誇るエプソンとしては「こだわり」を見せたということだろうか。なお、PCとの接続はHDMI端子を利用することでも可能だ。

 PCとHDMI接続した時の注意点は2点。1点目はオーバースキャンをキャンセルすること、2点目はHDMI階調レベルを正しく設定すること、だ。

 オーバースキャンのキャンセルはEH-TW4000の時から設定方法が変更されており、EH-TW4500では「映像」メニューの「アドバンスト」メニュー階層下の「オーバースキャン」設定を「オフ」とすればいい。

「映像」-「アドバンスト」-「HDMIビデオレベル」設定

 HDMI階調レベルの設定は「映像」メニューの「アドバンスト」メニュー階層下の「HDMIビデオレベル」設定を「拡張」とすればいい。上記両設定とも「オート」があるが、PCとの接続時には、明示指定しておいた方が確実で失敗がない。

 この他、PCとの連動制御に用いるRS-232C端子、外部の電動カーテンや電動開閉スクリーンと連動させるためのDC12Vトリガ端子を備えている。

 EH-TW4500でも、設置時の美観を重視するユーザーのために、別売りの背面端子を覆うケーブルカバー「ELPCC01B/W」(5,250円)が純正オプションとして設定されている。接続ケーブルがごちゃごちゃと背面から伸びている姿を「見たくない、見せたくない」という人は利用するといいだろう。

 


■ 操作性チェック
 ~リモコンは先代と同じ。メニュー構成に小変更

シンプルなリモコンはEH-TW4000と同一。右上のライトアップボタンを押すことでリモコン上の全てのボタンがオレンジ色に点灯する

 リモコンのデザインは前モデルと同一。また、メニューデザイン、その本体側の操作レスポンスなども変化はない。よって、操作性の部分についての詳細は本連載EH-TW4000編の回に譲る。

 EH-TW4000から変わったところだけをフォローすると、メニューの項目名に若干の変化が見られる。

 オーバースキャンの設定はEH-TW4000では「出画率変更」となっていた項目名がEH-TW4500では「オーバースキャン」という一般的に使われる名称になった。同様にランプ輝度モードの設定である「明るさ切替」の設定パラメータが「高」「低」だったのが、「ノーマル」「エコ」という表記に変わっている。


明るさ切替=ノーマル明るさ切換=エコ。明暗だけでなく色味も違う点に注目
「画質」メニュー「映像」メニュー「設定」メニュー「メモリー」メニュー「情報」メニュー「初期化」メニュー
「映像」-「アドバンスト」メニュー「映像」-「アドバンスト」-「シャープネス」のカスタム設定「画質」-「アドバンスト」メニュー「画質」-「アドバンスト」-「ガンマ」のカスタム設定「画質」-「アドバンスト」-「RGB」のカスタム設定「画質」-「アドバンスト」-「RGBCMY」のカスタム設定

 排他利用しかできない「4-4プルダウン」と「フレーム補間」の両機能がメニュー内の別ページに並んでいることが分かりにくい、と本連載のEH-TW4000編で指摘したが、これが改善され、「映像」メニューの最上位階層に肩を並べるように記載されるようになった。これで、片方の機能を活用すれば片方が活用不可になるという関係性がユーザーにも分かるようになった。もっといえば、他機種のように両機能が同時利用できるように改善することが一番メリットが多いのだが、それは次期モデルに期待することにしよう。

色温度=5000。赤み最大色温度=6500。標準的な値
色温度=8500。液晶ディプレイ的な色合い色温度=10000。青み最大

 


■ 画質チェック
 ~プロジェクタでは初搭載となった超解像の実力は?

 EH-TW4500は基本設計を先代のEH-TW4000と同じくしていることもあり、採用されている液晶パネルは0.74型フルHD(1,920×1,080ドット)の「C2FINE」で、EH-TW4000と同一だ。パネル世代的には「D7」であり、倍速駆動技術に対応したD7のリファイン版を採用している。

 ただ、このパネルの開口率は約52%と低めで、DMD(DLP)パネルやLCOSパネルの開口率90%前後の画素を見慣れていると、やや粒状感の強さが気になるかも知れない。一般的なホームシアターの画面サイズである100インチ程度ではそれほど目立たないが、150インチ以上になると、画素の格子筋が目立ってくる。

フォーカス感は良好。色ズレも最小限。描画映像は美しい。同一画像を同一画調モードにて「超解像=3」として接写してみた。陰影の先鋭化だけでなく色味も変更している事が分かる

 投射映像のフォーカス感は良好。フォーカスを中央で合わせれば画面外周まできっちりと合ってくれていた。外周に行けば行くほど若干の色収差は出てくるが、表示がぶれて見えるようなことはなく、解像感への影響は最小限という印象。なお、先代モデル評価時に指摘した「再起動のたびにフォーカスがずれる」という症状は、EH-TW4500では確認されず。改善がなされたと思われる。

 公称輝度はホームシアター機としてはかなり明るい部類に属する1,600ルーメン。スペックだけでなく実際に投射映像はかなりの明るさでとてもパワフルだ。この圧倒的な輝度パワーはEH-TW4500の武器となっている。画調モードの「ダイナミック」は水銀ランプの色味が強く出てしまうが、「リビング」にすると最大限の輝度が得られつつ、色味も整えられるので蛍光灯照明下でモニター的にも活用できてしまう。食事をしながらのバラエティ番組の視聴、ちょっとしたゲームプレイなどに、この画調モード「リビング」は重宝しそうだ。ちなみにさらなる高輝度が欲しい場合は1,800ルーメンの下位モデル「EH-TW3500」もある。

 公称コントラストは先代EH-TW4000の75,000:1から大幅に引き上げられて、ついに20万:1にまで達した。もちろんこれは動的絞り機構を有効にしたときの値となっている。なお、EH-TW4500の最大輝度は1,600ルーメンに据え置かれていていることから、20万:1の超ハイコントラストは、主に暗い方向へのダイナミックレンジを広げて実現させた値だと思われる。EH-TW4500には、動的絞り機構である「オートアイリス」に、従来の二倍の速度に早められた「高速」モードが新搭載され1/60秒単位の追従性がさらに強化されたとのことだが、これが20万:1の動的コントラストの実現の鍵だろう。

 20万:1が数字のマジックだとしても、コントラストの高さは、その投射映像を見ると認めざるを得ない。明部の伸びは相変わらず凄く透過型液晶機特有の鋭さがある。そして先代からのマイナーチェンジ機と高をくくっていたために不覚にも驚かされてしまったのが暗部の沈み込み。最暗部はかなり部屋の暗さそのものに近く、それが鋭い明部と同居できている。あらためて透過型液晶機の進化ぶりに驚かされた格好だ。

 「ダークナイト」のブルーレイを視聴してみたが、チャプター23の暗い取り調べシーンでは、奥深い漆黒の闇に、淡い陰影と共に浮かび上がるジョーカーの白い顔のコントラスト感が凄い。画素開口率に関してはDLP機やLCOS機にまだまだ優位性があるが、ことにコントラスト感では拮抗する実力を透過型液晶機が身につけてきたという実感を持つ。

 さらに熟成が進んだという動的絞り機構である「オートアイリス」機能はオフ-標準-高速の3モードが選べるが、明暗の移り変わりの激しいシーンを視聴してみたが違和感がない。とても追従性が正確であり、オートアイリスを使ったからといって映像が極端に暗くなることもない。違和感がなければ、標準モード、高速モードのいずれについても常用して問題なし。

オートアイリス=オフオートアイリス=高速。写真同様、見た目にもほとんど変わりはない

  階調表現も滑らか。黒の始まりがとても暗いだけでなく、最暗部にも色味が残る色ダイナミックレンジの広さも優秀だ。その甲斐あって、暗部表現の多い映像でも非常に情報量が多い印象を受ける。

 水銀系ランプのクセを殺した発色も素晴らしい。赤、緑、青のパワーバランスがいいのは前モデルから真っ当に受け継がれている模様だ。二色混合グラデーションも擬似輪郭をほとんど感じず、液晶らしいアナログ感のあるリニア表現が実現されている。

 もちろん肌色も自然だ。水銀系ランプの黄緑感はなく、それでいて人為的な赤乗せ感もなく、とてもナチュラルな色合いとなっている。特にハイライト付近の白味の乗った肌色が透明感があって美しい。

 映像プロセッサとしては、先代と同じ「HQV Reon-VX」を搭載する。EH-TW4500においてHQV Reon-VXは、残像低減技術の根幹となる「補間フレームの生成」と毎秒24コマの映画ソースを忠実に表示する「4-4プルダウンの実現」を主に担当する。

 補間フレームの生成は、「映像」メニュー階層下の「フレーム補間」にてオフ、弱-標準(デフォルト)-強の設定が行なえる。設定を強くすれば強くするほど、挿入された合成フレームの影響が支配的となるため、表示は滑らかとなり、現実の視界に近い表示となる。しかし、周波数の高い(テクスチャの細かい)背景映像を動体が動いたときにモザイク状のノイズが出てしまう振る舞いは先代と同じだ。映画等を見ているとザザっと突然モザイクが出現することがあるが、ノイズリダクションでは消せないたぐいのノイズなので、筆者としては「フレーム補間」設定は「弱」設定、ないしは「オフ」設定を推す。ちなみに、「弱」設定は適度に滑らかで、しかも補間フレームエラーのノイズの支配力が小さく見ていて気にならない。使うならば「弱」設定がお勧めだ。

千鳥模様の背景を動体に横切らせるとこのようにすだれのようなエラーが出る。このエラーは「フレーム補間=弱」設定でも起こりうるが描画映像として支配的でないためまだ見られる

 一方、4-4プルダウンは、毎秒24コマの各フレームを4回ずつ表示することで毎秒96コマ表示とし、毎秒24コマ表示の味わいを過不足なく再現する表示モードになる。こちらのモードでは補間フレームは用いないため、毎秒24コマ映像独特なカクカクとしたフィルムジャダーは残るものの、実はこれが毎秒24コマの映像信号に忠実な表示だったりする。もちろん、疑似的に毎秒60コマにする2-3プルダウンよりも自然な表示となるのはいうまでもない。映画やアニメのような毎秒24コマ映像の独特なフィルムジャダー感を“味わい”として楽しめるユーザーは「映像」メニュー階層下の「4-4プルダウン」を「オン」設定にするといい。

 なお、「フレーム補間」と「4-4プルダウン」の両機能は互いに排他関係にある。つまり、どちらか一方しか有効に出来ない。他メーカーの機種では4-4プルダウン時にもフレーム補間が出来るものもあるが、EH-TW4500では対応していない。

 目玉機能である「超解像」機能についてはどうか。

 超解像技術という技術そのものについての解説は、本連載の第102回を参照して欲しいが、簡単に言えば、映像に埋もれている隠された解像度情報を抽出してやろうという高画質化技術になる。

 EH-TW4500に搭載されている超解像技術のアルゴリズムについては基本情報はないが、基本的には時間方向ではなく、1フレーム内の情報だけで実行するタイプの手法を採用しているらしい。

 実際に様々な映像を映して試してみたが、特にHD映像(720p、1080p)によく効く手応えがある。

 まるで視力がよくなったかのように、映像の細部がくっきりと見えるようになる。具体的にいうと、映像中のもっさりとしたフォーカス感の甘い領域の陰影が自信たっぷりと描き出されるようになるようなイメージ。

 例えば、俳優の短髪頭のトゲトゲした毛先感がきっちりと描かれるようになるし、肌の肌理、革ジャンの革シボの微細凹凸の陰影もキッチリと見えるようになる。

超解像=オフ超解像=3。岩や雑草の陰影のクリア感に着目

 しかし、意外なことに、SD映像(480i、480p)には効きがマイルドで効果が分かりにくい。

 超解像の効き具合は「画質」メニューの「アドバンスト」階層下の「超解像」設定項目にてオフ、1-2-3の調整が可能となっていて、設定3が最強なのだが、SD映像では3設定でも効きは甘めであった。

 設定3はHD映像に対して効かせると、かなり効き目が強く表れる。筆者の実験では、一部の映像では、映像中の細かいテクスチャ模様の色味まで変えてしまうことがあるほど。この現象は、例えば1,920×1,080ドットのPC画面でWeb画面を表示させてから超解像を設定3で効かせると分かりやすい。文字の色が変わるのだ。

 また、設定3では映像に含まれるランダムノイズ、あるいはフィルムグレインなどを強調する特性があり、手懐けて活用するには少々コツがいると感じる。筆者的には使うならば設定2以下か。

超解像=オフ超解像=3。花の一輪一輪の解像感に注目
超解像=オフ超解像=3

 プリセット画調モードのラインナップとその傾向はEH-TW4000と一緒だったので、本稿では省略する。それぞれのモードの評価、および活用は本連載EH-TW4000の回を参照していただきたい。

 なお、以下に、実際の投射映像の写真を掲載しておく。

ダイナミックリビングナチュラル
シアターシアターブラック1シアターブラック2

 


■ まとめ
 ~透過型液晶ベンチマーク機の2009年モデル

 EH-TW4500は、前モデルH-TW4000に超解像技術を搭載し、リファインしたものといえる。そのため、EH-TW4000からの買い替えは響かないとは思うが、720p機を使い続けてきた人にとっては、この「+500」型番の部分が最後の背中の一押しになると思う。

 マイナーチェンジで変更点は少ないが、だからといって何も変わっていないわけではない。EH-TW4000が安売りされていたとしても、所々に地味ながらも改善が施されているEH-TW4500を選ぶべきだとも思う。

 さて、目玉であるEH-TW4500の超解像機能は、予想に反してHD映像に良く効くということが分かったのが面白かった。ただ1つ、超解像機能を積極的に使おうとすればするほど不便だと感じたのは超解像の効き方を簡単に変えられないという点。

 EH-TW4500の最大のウリの機能なのに、超解像の効き方を変更するのに「画質」メニューを開き、「アドバンスト」階層にまで潜らないと「超解像」の設定項目にたどり着けない。せっかくのウリの機能なので、ここまで奥底に隠さずに、リモコンからテレビの音量を変更する感覚で超解像レベルを上下させられるようにして欲しかった。前述したように、EH-TW4500の超解像機能は映像の種類と設定レベルによっては効き方がアグレッシブに変わるため、1つの設定でオールラウンドに活用するのに適さない。それだけに、ユーザーはその効果を確認しながら変更したいはずだし、それができると、一層、超解像機能を積極的に活用ができるようになる。次期モデルではリモコンに超解像[+][-]ボタンが欲しいところだ。

 EH-TW4500の評価テーマの本筋ではないのかも知れないが、今回、改めて透過型液晶機の暗部の沈み込みの性能の進化ぶりに驚かされた。コントラスト比が20万:1あるかどうかはともかく、1,600ルーメンの絶対輝度とLCOS機に迫る暗部のコントラスト感は超解像機能以上にEH-TW4500の持ち味になっていると思う。発色もいい。あとは開口率だけだ。

(2009年 11月 12日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。