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オリジナルアニメの楽曲に注目。多田恋やLOST SONGなど良い音のアニソンを聴く
2018年7月2日 08:00
音楽的にも音質的にも気になるアニソンを紹介する本企画。今期の3曲は偶然にも共通の要素があった。それはアニメがオリジナルのシナリオである点だ。原作が既出でない分、先の予測ができず毎週ワクワクできる。対して主題歌制作は、シナリオを一通り知ってから作るケースも多いと聞く。話数が進むごとに歌詞やメロディに込められた意味に気付くことができるのもアニソンの醍醐味だろう。そんな4月クールで気になった高音質なハイレゾのアニソンを紹介していこう。
多田くんは恋をしない OP「オトモダチフィルム」(48kHz/24bit)
一生に一度の恋を描いた、笑って泣ける青春ラブコメディ。アニメーション制作は動画工房。題名の「恋をしない」は、「恋に気付かない」主人公の多田光良のことであり、彼がその気持ちを自覚しテレサの母国まで追いかけていく様を見て胸が熱くなった。ヒロインのテレサと多田くんの2人を応援したくなるストーリー展開だ。
主題歌は、ポップでノリのいい告白ソング。オーイシマサヨシ名義では4年ぶりの新曲となる。ハイレゾ版は、48kHzの限界に迫る躍動感と立体感が魅力だ。バンドセクションやストリングスを含め、ほぼ全てが生演奏。ベースの低域は深いところまで入っているし、時折挟まれるオルガンの音色も厚みがあって聴き所だ。ミキシングの技量の高さがうかがえる仕上がり。思わず踊りたくなるポップナンバーだ。
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・オーイシマサヨシ/オトモダチフィルム
LOST SONG OP「歌えばそこに君がいるから」(96kHz/24bit)
ライデンフィルムとドワンゴの共同制作によるオリジナルTVアニメ。2大歌姫による幻奏叙事詩(ファンタジーオペラ)と銘打たれている。この作品、何といっても第7~8話の大仕掛けが話題だ。衝撃の真実が明かされて以降、フィーニスの数万年単位に渡る心の闇に恐れおののいた方もいることだろう。そしてついに出生の秘密が明かされたリンがどう終滅の輪廻に対峙するのか、興味は尽きない。一方でシリアスな流れの中にゆる~い雰囲気のギャグを差し込んでくる作風も病みつきになってしまった。
歌唱は主役のリンを演じるアニソンシンガー・鈴木このみ。作編曲は、劇伴も担当する白戸佑輔。ハイレゾ版は、やや高めの音圧で、疾走感のある力強いロックサウンドが膨大な熱量で迫ってくる。ボーカルが一際前に出るミックスとなっており、録音時のマイク距離も近いのか、とてもリアルな音像だ。そんなボーカルを囲むようにしてストリングス。少し奥に引いたようにバンドセクションが定位。96kHzセッションならではの奥行きの深さはハイレゾ版でこそ味わえる醍醐味。音数が多く、終始フォルティッシモで鳴っているような楽曲ながら、ボーカルとの分離はすこぶる良好だ。ぜひスピーカーでも聴いていただきたいが、スピード感やキレの良さを十分に表現できる機種。モニタースピーカーで楽しむのもいいかもしれない。
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・鈴木このみ/歌えばそこに君がいるから
ルパン三世 PART5 ED「セーヌの風に…(Adieu)feat. 沢城みゆき」(96kHz/24bit)
言わずと知れた国民的長寿アニメ。2年ぶりとなるテレビシリーズの第5弾だ。筆者が物心付いた時、既に金曜夜のテレビスペシャルが始まっており、「ルパン暗殺指令」や「燃えよ斬鉄剣」のVHSを擦り切れるほど見ていたものだ。PART5は、のっけから最新のサイバー犯罪を取り上げてきたことに強い吸引力を感じた。作中の闇サイト「マルコポーロ」が実際に摘発された某サイトをパロったものであることに気付いた人は唸ったことだろう。7月からはEPISODE IIIが始まると思われ、学生になったアミの再登場にファンの期待も高まっている。
エンディング主題歌は、峰不二子を演じる沢城みゆきが歌唱を担当。本人名義としては初の楽曲となる。シングルカットはなく、サントラアルバムのみの収録だ。そのセクシー過ぎる歌声は、もはや峰不二子そのものといっても差し支えない圧倒的な表現力。
ハイレゾ版は、2年前のイタリア編で48kHz制作だった劇伴が96kHzになって、大幅に音質面でもグレードアップしている。主題歌も含めて劇伴はややローファイな音調で調整されており、最新の技術で年代物のアナログ音源のような質感を再現している印象だ。それが実にルパン三世という作品に合っている。オープニング「LUPIN TROIS 2018」は、ゴージャスな大編成のジャズバンドをライブで鑑賞しているような空気感を楽しめる。中盤のサックスソロは、距離感を表現したリバーブと録り音そのものの情報量の豊富さが互いに効果を高め合っていてプレイヤーの姿が見えるようだ。吹き終わりには思わず拍手したくなってしまうほど。アニメ未見でも大野雄二の音楽集として単独でも楽しめる一枚だ。
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・Yuji Ohno & Lupintic Six/セーヌの風に… (Adieu) feat. 沢城みゆき
最後にアニメ作品とは異なるが、気に入った曲の1つとしてゲーム音楽を紹介したい。作曲家の光田康典氏が総合プロデュースを担当した「ゼノブレイド2 オリジナル・サウンドトラック」(96kHz/24bit)だ。光田氏がプロデュースするハイレゾ音源はどれも音質が優れており、ゲーム音楽と侮ってはいけない、むしろオーディオファイルのリファレンスになり得る作品だと筆者は捉えている。本作では、劇中音楽はもちろん、主題歌が一際いい音なのだ。イギリスのシンガー、ジェン・バードの歌声は音像がクッキリとして彫りが深い。オケの楽器音はとてもクリーンで純度が高く1秒たりとも聞き流せないクオリティ。録り音からミックス・マスタリングまで一貫して高い品質を追求する光田氏の手腕には脱帽する。
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・光田康典/ゼノブレイド2 オリジナル・サウンドトラック
音楽作品には、作詞や作曲、演奏だけではなく、音質面にも作る側のこだわりが込められている。ハイレゾ版は、スタジオで制作者が作った音をそのまま受け取れる唯一のバージョンといえる。ハイレゾであることはあくまでデータを入れる器の大きさの違いだが、その器の大きさ=ハイレゾスペックを活かし作り込まれたアニソンだからこそ、そのままのクオリティで楽しみたい。
- NAS「RockDiskNext」(アイ・オー・データ機器)
- ユニバーサルプレーヤー(ネットワーク再生)「BDP-103DJP」(OPPO Digital Japan)
- AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
- スピーカー「MENTOR2」(DALI)
【使用機材】