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「ウマ娘」をハイレゾで! 「無職転生」など1月アニメ注目曲

「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」OP「ユメヲカケル!」
(P)Lantis

昨今のご時勢の中、なかなか遠出をしたくても、控えているという方も多いだろう。筆者も、なるべく人の少ないところや、屋外で楽しめる場所で休暇を過ごすことがある。東京西部に在住する自分は、すぐにお隣の県に行けてしまうが、今は都内で我慢の日々だ。

アニメーションを見ていると、その場の空気感や温度感まで伝わってくることがある。絵と音が見る者の五感と想像力を刺激し、ときに圧倒的な没入感を味合わせてくれる。過去の記憶から自分が感じた思い出を呼び起こさせ、寒かった・暑かった、辛かった・嬉しかったなど、感覚と感情のエレメントを再構築してくれるのがすごいところ。何もアニメに限った話ではないが、見る者の想像力がより高まるのはアニメーションならではだと思う。今年の花粉症は特別にキツいし、やはりここはアニメを見て、もうしばらくはステイホームといこうではないか。

本企画は、音楽的にも音質的にも注目のアニソンを紹介するもの。さっそく、今期の注目ソングをみていこう。

「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」OP「ユメヲカケル!」(96kHz/24bit)

同名のスマートフォン向けアプリゲームを原作とした、TVアニメシリーズの第二期。アプリは、2018年冬のリリース決定を発表するも諸事情で延期。事前登録開始から3年の時を経て、ついに2021年2月にリリースを開始した。

TVアニメ第二期は、メインにフィーチャーされるウマ娘がトウカイテイオーへと変更。最初、「あれ? スペシャルウィークが空気?」と動揺したファンは私だけではないだろう。

いちおうチームメイトとしてスペは出てくるのだが、物語の主軸はあくまでトウカイテイオーとメジロマックイーン。筆者は、ライスシャワーのお当番回(?)にいたく感動してしまい、伝説のレースの“原典”を見るべく、当時の春の天皇賞の動画をいくつもチェックしてしまった。史実をリスペクトするスタッフの姿勢には、競馬にまったく明るくない自分も脱帽である。

OPは、トウカイテイオーが所属するチームスピカ全員が歌う。作編曲は、プリンセスコネクト!Re:Diveの劇伴などで活躍する東大路憲太。イントロのファンファーレから始まる流れは、一期OPのMake debut!を踏襲。ウマ娘のアニメが始まった! と気持ちを高めてくれる。

そうそう、一期OPといえば、ハイレゾ版が意外な形でリリースされたのを思い出す。Astell&Kernとウマ娘のコラボモデルである、ポータブルオーディオプレーヤー「A&norma SR15」。なんと、ウマ娘関連のハイレゾ楽曲4曲を収めて、声優陣の特別メッセージも収録したかたちで発売された。ここでしか聞けない音源ということで話題になった。ハイレゾを世に広めたい筆者にとって、これが売れてくれれば、今後のシリーズではハイレゾ版が標準で配信されるのではないかと期待したものだ。今回、販売元のアユート営業S氏に取材したところ、コメントをいただいた。

『我々は3年待ったのだ』

……さすが仕掛け人。言葉の重みが違う。筆者も感慨深い。

アユート営業S氏の「A&norma SR15 ウマ娘 プリティーダービー Special Edition」(現在は完売している)

本楽曲は、ブラス隊にバンドセクション、ストリングスといった豪華な生演奏とボーカルは計7人ということで、なかなかに音場は混雑している。96kHzの広大なサウンドステージをもってしても、若干の混濁感は否定出来ないものの、各パートのここがポイント! という音をきちんと活かしているミックスだ。

叩きまくりの超絶ドラミングは、あの川口千里が担当。低域の質感や厚みの豊かさがテレビ放送とは比較にならない。ハイレゾ版の音質的メリットは高域の伸びだけでなく、やはり低域の充実にもある。ブラスは、トランペット、トロンボーンにアルトとテナーのサックスを加えて全4管5人という贅沢な編成。平面的で空気感に乏しかったテレビ版に比べ、ハイレゾは音像の奥行きやトランジェントまで向上した。

スコーン! と気持ちよく前に出てくるブラスの音だ。緩急や強弱の違いというのか、人間ならではの一手間を録音が拾っているので、それを余すことなく受け取れるハイレゾ版は全国のトレーナーも要チェックである。

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「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」OP「旅人の唄」(96kHz/24bit)

「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」OP「旅人の唄」
(P)2021 TOHO CO.,LTD (C)理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会

異世界に転生した主人公が、現実世界の知識や経験を駆使して、剣と魔法のファンタジー世界で活躍(というか無双)する、いわゆる「転生もの」の元祖ともいえる作品がこの無職転生。今や小説家になろうの主流となった転生ものの先駆的作品といわれている。

制作スタジオが本作きっかけで新たに立ち上げられるなど、制作陣の気合いの入り方もひと味違う。事実、動きまくりの戦闘シーンや美麗な背景など、画面のクオリティが尋常ではなく、脚本や演出も視聴者を物語世界に没入させる高いクオリティで話題になっている。

おかげで、なろう系の異世界転生がちょっと苦手な自分も大いにハマっている。ルーデウスの前世である34歳無職男性のクズっぷりが処置無しというレベルでドイヒーなのだが、時にその機転の良さや頭のキレがピンチを解決するのはずるいなぁと思ってしまう。とはいえ、そこに夢や爽快感があるから面白いのは間違いない。

本作のOP/EDはすべてシンガーソングライターの大原ゆい子が担当する。ほぼ毎回、映像が変わる独自OP形式となっており、驚くべき事に映像のバックに単にOPが流れているのではなく、ちゃんと映像が音楽にシンクロしているのには戦慄を覚えた。

民族調のアレンジは、大原とも縁のあるMANYO氏が担当。同氏は、ゲーム音楽や同人音楽の界隈で活躍してきたコンポーザーであり、特にトラディショナルな音楽性に魅了された熱心なファンが多い。

主題歌は、民族楽器がふんだんに使われた幻想的な雰囲気が作品らしくもあり、MANYO氏の本領発揮的な面もあって、ファンには嬉しいところだろう。アイリッシュハープやホイッスル、ブズーキなどアイリッシュ音楽が好きな諸兄にとってはたまらない構成だ。ハイレゾ版は、やはり民族楽器の生々しい音色の再現性と大原のブレスが強めのボーカルの共演が聴き所。

個人的には、やや低域が量感多めなのは気になった。この曲は、マイクで録音されたアコースティック楽器がメインなので、できればスピーカーで聴いてもらいたい。ライブ感とまでは言わないが、部屋の空気を震わせて、生楽器の実在感を味わって欲しいからだ。ハイレゾ版の器の大きさによって、聴き慣れない民族楽器が実にリアルに目の前に現れる。フルバージョンを聞き終えると、思わず「ふぅ……」とため息が出るような重厚なアンサンブルに飲まれること請け合いだ。

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「ゆるキャン△ SEASON2」OP「Seize The Day」(96kHz/24bit)

「ゆるキャン△ SEASON2」OP「Seize The Day」
(P)MAGES. (C)MAGES. あfろ・芳文社/野外活動委員会

大ヒットした「ゆるキャン△」TVアニメ一期から、ショートアニメの「へやキャン△」を経て、ついに二期が放送。ひたすら舞台が冬なのは、作中の時間の流れがゆるい、もといゆっくりだからかもしれない。エンドカードでお馴染みのとおり、冬のキャンプはとても過酷で、十分な準備が必要だそうだ。

筆者は、子ども時代に夏のキャンプの経験なら何度もあるが、冬は未経験。作中で、山中湖でキャンプする3人が絶体絶命のピンチに遭遇する下りは、冬のキャンプの恐ろしさをリアルな時間経過とともに表現しており、筆者も視聴しながら鳥肌が立った。もう一つのリアルなキャンプ描写といえば、やはりキャンプ飯。毎話、垂涎モノの飯テロを披露してくれる。特別大きなドラマが起きるわけでもないけれど、時間と場所の移ろいがとてもリアルに感じられる本作。新しいキャンプブームが起きるのも納得だ。

OPはゆるキャン△といえばこの方、アニソン歌手の亜咲花が担当。一期OP「SHINY DAYS」でブレイクした亜咲花だが、筆者もあの神曲のイメージが強くて、彼女の歌声がなければゆるキャン△が始まった気がしない。作曲は、SHINY DAYSで作詞を務めた永塚健登が担当(作詞も兼務)。アレンジは、劇伴を担当する立山秋航が手掛ける。

一聴して、SHINY DAYSで感じた豊かな躍動感を思い出した。アニソンの中でもダイナミクスが大きく、ライブで聞くようなセッション感が思わず身体を揺らしてくれる。他のアニソンと比べて「アレ? 音が小さいな?」と思う方もいるかもしれないが、迷わずボリュームを上げて欲しい。その一手間を惜しまないことが、意外に重要だ。

クリエイターは、リスナーにボリュームを操作する手間を取らせるかどうかを気にする。筆者もハイレゾ音楽ユニットをやってきたので、音量感や音圧には常に気を配ってきた。リスナー側が音量は自分で調整するんだと面倒くさがらないことが、クリエイターが安心して楽曲に合ったラウドネスを選択できることに繋がると筆者は考える(あくまで要素の一つ)。

話が逸れたが、非常に優れたミックスのおかげで、ハイレゾで収録したトランペットやベース、バイオリンと言った生楽器の音が立体感を持って開放的に鳴っているのが好印象。Aメロでは、ベース/ドラム/キーボードによるリズムが軽快なのだが、その躍動がより楽曲の意図を引き立てるノリというか、聞く者の心を確実に揺さぶってくる。各楽器の分離もよく、前後左右に空間を広く取ったミックスだ。本来の音場感を味わえるハイレゾ版は必聴といえよう。亜咲花の歌唱は、本当に実力派そのもので毎回拝んでしまいたくなる。筆者も本稿で彼女の楽曲をよく取り上げるが、これは「いい加減ライブに行け」という神の啓示ではないだろうか。

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本稿を書き始める数日前、ヤマノススメのTVアニメ新シリーズ「ヤマノススメ Next Summit」が発表された。今か今かと待ちわびていたファンからすると、2年越しの大発表。ディザービジュアルには、あおいとひなた、そして赤い髪の謎の女の子が描かれている。アニメ版ヤマノススメは、筆者も視聴していて、舞台となる飯能市にはこれまで3度ほど足を運んだ。なにげに趣味も軽登山だ。音楽が豪華なことでも注目されるヤマノススメ。OPは超⼈気コンポーザーのTom-H@ckが担当し、豪華な⽣演奏で彩られる。クリエイターは現時点で未定ではあるが、ハイレゾ版のリリースが今から楽しみで仕⽅ない。劇伴もこれを機にハイレゾでリリースしてほしいものだ。筆者もリリースの暁には、本稿で紹介したいと思っている。

「ヤマノススメ Next Summit(ネクストサミット)」ティザービジュアル
(C)しろ/アース・スター エンターテイメント/『ヤマノススメ Next Summit』製作委員会

【使用機材】

  • NAS「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB(アイ・オー・データ機器)
  • ユニバーサルプレーヤー(ネットワーク再生)「BDP-103DJP」(OPPO Digital Japan)
  • AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
  • スピーカー「RUBICON2」(DALI)
  • ポータブルプレーヤー「PLENUE R2」(COWON)/HPH-MT8(YAMAHA)/IE 400PRO(ゼンハイザー)
橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト