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「ラブライブ!」や「かげきしょうじょ!!」をハイレゾで味わう。7月期注目曲

長引くコロナ禍の影響でアニメイベントも軒並み延期や中止、オンライン開催、あるいは観客を減らしての開催を余儀なくされている。筆者は、それほどイベントに参加する方ではないが、コロナの影響もあって徹底して控えていた。そんな中、先日久しぶりにトークイベントに参加してきた。本企画でも過去に取り上げているTVアニメ「ヤマノススメ」、その待望の続編である「ヤマノススメ Next Summit」のオータムフェス2021だ。

感染対策のため歓声を上げることが出来ない窮屈なものだったけれど、生の演者をこの目で見て聞いて、拍手などで応援できる、それは夢のような時間だった。ライブならではの波動というのか、そこでしか味わえない肌感覚がたまらなくて、忘れかけていた過去の“当たり前”がこんなにも貴重な体験だったと痛感した。まだ数年は感染症と付き合う日々が続くともいわれているが、出来ることから少しずつ新しい日々を思考し積み重ねていけたらと思う。

本企画は、音楽的にも音質的にも注目のアニソンを紹介するもの。さっそく、今期の注目ソングをみていこう。

「ラブライブ!スーパースター!!」OP主題歌「START!! True dreams」(48kHz/24bit)

【限定公開】START!! True dreams / Liella!【TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』OP主題歌】

筆者がここで説明するのもおこがましいほどの国民的アニメ、ラブライブ!シリーズのテレビアニメ第4弾だ。ついにNHKで全国あまねく放送、しかもゴールデンタイムということで、初代からリアルタイムで見続けて良かったと感動を噛み締めたファンは私だけではないだろう。

内容は、スクールアイドルとして青春を謳歌する主人公たちの超王道ストーリーだが、そこには陳腐さの欠片もなく、毎週笑い&泣きながら視聴している。筆者の推しキャラは、唐可可ちゃんだ。可可の猪突猛進で毒舌、終始コロコロ変わる感情の起伏の大きさには悩殺されっぱなしである。

Liella!が歌う主題歌は、作詞はお馴染み畑亜貴。作曲はコアラモード.の小幡康裕。編曲はアニメ・声優系への曲提供も多い山下洋介。ハイレゾ版を聴いた。ダイナミクスが狭いのは少し惜しい一方、グッと前に押し出すエネルギーの溢れるサウンドは気持ちいい。ジャンル的にイヤフォンやヘッドフォンでボーカルに集中して楽しむ楽曲かもしれないが、スピーカーリスニングもなかなか聴き逃がせない美味しいポイントがある。

特に疾走感のあるバンドサウンドがそれ。手数の巧みさに聞き惚れてしまうドラミングや、ストリングスの左右への広がりなどはもちろん、グルーブの感じもよりライブ的な肌感覚で伝わってくる。ボーカルのユニゾン部分は24bitの効果だろうか、緻密に描き分けられていて、圧縮音源のテレビ放送とは比較にならない満足感を得られる。

Liella!/START!! True dreams
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「小林さんちのメイドラゴンS」ED主題歌「めいど・うぃず・どらごんず」(96kHz/24bit)

クール教信者による同名コミックスのTVアニメ化 第2弾。京都アニメーション元請け制作ということで、放送されただけで「ありがとうございます。」と言いたい貴重な作品だ。シリーズ監督に武本康弘氏の名前がクレジットされているのも、その背景を考えると様々な思いが去来するが、筆者としてはひたすら感謝しながら毎週見させていただいた。

新ドラゴンのイルルは、あっという間に小林さんにたらし込まれ……もとい小林さんを受け入れ、駄菓子屋のアルバイトまで始めた。トールのメイド喫茶での”成り行きアルバイト“も含め、家族が増えた小林家の家計もどうやら大丈夫そう(?)。

[Official MV] スーパーちょろゴンず - めいど・うぃず・どらごんず

EDは一期に引き続き主演声優陣のユニット楽曲。新メンバーのイルルを加えていっそう賑やかかつハートフルに進化した。作詞は、松井洋平。作編曲は、星 銀乃丈。

「ああっ!やはり96kHzは声優の声を収録するために開発されたテクノロジーだ!きっとそうに違いないっ!」(筆者)

……おっと、あまりの声のリアルさに暫時正気を失ってしまったようだ。5人のキャラクターが歌唱する本楽曲は、とにかく声の臨場感が聴きどころ。キャスト陣が家まで来て歌ってくれてるような感覚。テレビ放送はもちろんBlu-rayですら味わえない、今そこで歌を聴いているようなリアリティーは96kHzから上のフォーマットのみが堪能できると筆者は思う。オケは、前後感のあるミックスが躍動感を高めている。

ボーカルとケンカしないように練られた音場は96kHzでさらに本領を発揮。C/Wの「愛のシュプリーム!(スーパーちょろゴンず ver.)」は、キャスト陣のラップが入っているのだが、作品ファン・声優ファンは必聴の仕上がり。情報の量や密度が段違いで、声優の表現はこんなに緻密なのかと再認識させられる。生音から様々な調整を経て歌モノとしてMixされているのは承知の上で、それでも一聴の価値があると断言できる。貴方のお耳を”殲滅する“至上の一枚だ。

スーパーちょろゴンず/めいど・うぃず・どらごんず
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「かげきしょうじょ!!」ED主題歌「シナヤカナミライ」(96kHz/24bit)

上坂すみれ&佐々木李子/シナヤカナミライ
(P)2021 King Record Co.,Ltd

白泉社MELODYにて連載中の同名コミックスを原作としたTVアニメ。電子を含むシリーズ累計発行部数は100万部を超える人気作。紅華歌劇団という劇団の新たな人材を育成する紅華歌劇音楽学校に入学した少女達が、未来のスターを目指して己を磨く日々を描いたスポ根青春ストーリー。

今回取り上げるED主題歌は、モデルになったと思われる某歌劇団の音楽を数多く担当し、文化庁芸術祭優秀賞を受賞した斉藤恒芳氏が担当。劇伴も斉藤氏が手掛けており、まさに音楽は鉄壁の布陣だ。本作は、厳しい音楽学校の日々を実にリアリティー(説得力)をもって描いていると思う。例えば、第五幕で無理なダイエットと過食嘔吐によって体調を崩し、挫折寸前の山田彩子を立ち直らせるのは、仲間の生徒ではなく彼女の才能を信じてくれた講師なのだ。

これは元声優志望の筆者にとって、魂が震えるほどの名シーンだった。本人を変えるのは、仲間だけとは限らないのだ(これホントの話)。養成所で講師から掛けてもらった言葉は、15年以上経った今も強く心に刻まれているものもある。当時の自分の覚悟は彼女たちと比べるべくもないが、キリキリと胃が痛むような心境にさせてくれる本作は、1クールで終わってしまうのが実に惜しい秀作だ。

ED主題歌は、メインどころのキャラクターが2人一組で歌唱。オケはまったく同じだが、歌詞がキャラクターによって変わるという体裁になっている。本稿で取り上げるのは、筆者お気に入りの山田彩子(CV.佐々木李子)と紅華オタクの杉本紗和(CV.上坂すみれ)が歌う「シナヤカナミライ」。

まず驚かされるのは、ボーカルのサウンドメイキングだ。キャスト両名の歌声は、あえて生々しさを重視したレコーディングと調整を行なったと思われる。息づかいすら感じるような、時折口からのしぶきまで見えるかのような、そんな圧倒的な「舞台で歌っている感」がハイレゾ版にはある。

本業が歌手の佐々木は、抜群の歌唱力と伸びやかな歌声が彩子の人物像にぴったり。上坂演じる杉本も、熱くストイックなキャラクター性をたっぷりと凜とした歌声で見事に具現化している。伴奏は、厚みのあるストリングスと打ち込みによるリズムトラック&シンセ。シンプルなのだが、これがまたいい。チェロは輪郭がクッキリと分かり質感も豊か。リズムトラックは、シャープに立ち上がり、生音と違和感なく融和している。

舞台の上手と下手を意識した大胆なボーカルのPAN振りは最後まで貫かれており、それぞれの演技(歌唱)に没入できる。フルバージョンは、思わずグッときて涙腺が潤むような歌詞と楽曲展開が魅力だ。ハイレゾでその魅力の全てを確認して欲しい。

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今期から、筆者のメインシステムが一部変更となっている。これまでユニバーサルBlu-rayプレーヤーをネットワークトランスポート(NASの音源を選曲して再生、デジタル出力する)として使用していたが、これを引退させた。代わりにSoundgenicをNAS兼ネットワークトランスポートとして使用することにした。

NAS/ネットワークトランスポート「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB

SoundgenicはUSB-DACに直接接続して、ネットワークトランスポートとして使用することが出来る。音源を保存するだけでなく、選曲して再生してデジタル出力まで可能なのだ。USB-DACは、あらゆるハイレゾ音源に対応したNEO iDSD。筆者の音楽ユニットBeagle Kickは768kHzやMQA、32bit整数などマニアックな音源を制作しているので、自分たちの音源をネイティブで再生出来る手頃なDACを導入した。USB経路には、ノイズ対策のためにiPurifier 3を使用している。

そして、ついにというか、やっとオーディオラックを導入した。既製品も検討したが、ヒッコリーボードを取り扱っているオーディオアクセサリーブランド「アコースティックリバイブ」に特注で3段ラックを作成してもらった。ヒッコリーボードは、帯域バランス上は素材固有の癖が少なく、音色が有機的になるため気に入っている。

ラックの2段目にUSB-DAC「NEO iDSD」を設置。右端にAVアンプ「AVR-X6300H」が見える

そして、最後の一手は、アンプの導入を予定している。USB-DACからのXLR OUTとAVアンプからのプリアウトを受けられるプリメインアンプを検討していて、これまでAVアンプで鳴らしていたフロント側のサウンドをパワーアップするべく画策中だ。せっかく専用の防音室を持っているのだから、このくらいは実現したいとかねてから考えていた。

音のいい環境に出会うと、これまでいい音だと思っていた自分の再生環境が急に「イマイチな音」に聞こえてしまう。一度イマイチな音に気付いてしまった自分の耳は、二度と前には戻れない。新しい音に出会うことで、音楽の感動がより深まって、もっとアーティストのファンになる。これがオーディオの面白いところだ。ぜひ、ピュアオーディオの世界にも関心を持っていただければ幸いだ。

【使用機材】

  • NAS/ネットワークトランスポート「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB(アイ・オー・データ機器)
  • USB-DAC「NEO iDSD」(iFi audio)
  • AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
  • スピーカー「RUBICON2」(DALI)
  • ポータブルプレーヤー「PLENUE R2」(COWON)/HPH-MT8(YAMAHA)/IE 400PRO(ゼンハイザー)
橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト