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「ジャヒー様」や「月とライカと吸血姫」をハイレゾで!! 10月期注目曲

原作が完結してからのアニメ化、あるいは完結直前のアニメ化は、大メジャー作品を中心に以前から無くはなかったが、最近は多くなっているかもしれない。今回紹介する作品には、偶然にも原作が完結、あるいは大きな区切りを迎える作品が含まれている。

アニメ化で原作の全てを観られれば理想的。そうでなくても、アニメの続きをすぐに原作で終わりまで追うことが出来る。アニメ化に合わせて原作が増刷されたり、スピンオフが作られたり。ファンとして一番嬉しいのは、これまで作品を知らなかった人たちに原作を手に取ってもらえることではないだろうか。

アニメの続きを観たいならBlu-rayを買うのが一番。作品の雰囲気をいつでも味わうなら、やはり音楽が最適だ。本企画は、音楽的にも音質的にも注目のアニソンを紹介するもの。さっそく、今期の注目ソングをみていこう。

「ジャヒー様はくじけない!」2期ED主題歌「ペタルズ」(96kHz/24bit)

岡咲美保「ペタルズ」MUSIC VIDEO

昆布わかめ氏による同名漫画を原作として、本年8月から12月中旬まで全20話にわたって放送されたTVアニメ。魔界No.2のジャヒー様は、突如崩壊した魔界から人間界へと墜ちてしまう。散らばった魔石を集め魔界復興を目指して奮闘する……はずだったのだが、ジャヒー様がいい人(魔族?)過ぎる上に周りに悪人が全然いなくて、すっかり人間界での貧乏生活に馴染んでしまうのが可愛らしいやら可笑しいやら。

プライドが高く、傲岸不遜な振る舞いをするジャヒー様が実は情に厚く優しくされるとあっという間に絆されてしまうチョロいキャラであるのも魅力だ。最終話では魔界復興を忘れているほど人間界に馴染んでいて、周りには友人やジャヒー様を助けてくれる人で溢れていた。このままずっと人間界で過ごして欲しい。

ED主題歌は、ペダルズが2ndシングルとなる声優の岡咲美保が担当。本人も魔王役で出演している。クリエイター集団Arte Refactの本多友紀が作曲、編曲は脇眞富が手掛ける。

ジャヒー様の現実世界での日々をポジティブに綴った希望溢れるポップチューン。シンセとブラスに、生ドラムを中心としたバンドセクションも合わさって音場は混雑しているが、ボーカルの浮き立ちは良好でシャープに聴かせる。リバーブも控えめで、ハイレゾによる声の実在感の高さも際立っている。岡崎の溌剌としたボーカルは、テレビオンエアでは突抜けるような中高音が目立っていたものの、それに加えて声の芯となる中域に厚みが出て、録り音の情報量もそのまま再現されたことでより本人をリアルに感じられる。

リズムパートの中低域の密度とダイナミックな躍動は、多幸感溢れる本楽曲をノリノリに楽しむために重要な役割を果たしていた。

ペタルズ/岡咲美保
(P)2021 King Record Co.,Ltd (C)2021 King Record Co.,Ltd
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  • 「ジャヒー様はくじけない!」2期ED/ペタルズ

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  • 「ジャヒー様はくじけない!」2期ED/ペタルズ

「大正オトメ御伽話」ED主題歌「真心に奏」(96kHz/24bit)

真心に奏/土岐隼一

大正時代を舞台に、大事故で右手の自由を失い世の中に絶望した青年志磨珠彦と、志磨家に金で買われ妻としてあてがわれた少女立花夕月が本当の夫婦になるまでの物語。原作はジャンプコミックスより全5巻で2017年には完結、時代を昭和初期に移した実質的な「続編」も2020年に完結しているというタイミングでのTVアニメ化だ。

女性が、自らの将来も自由に決められなかった時代。地方と都会の暮らしのギャップなど、当時の時代背景を随所に感じさせるのも魅力の1つ。夕月は、とてもお人好しで、常に献身的に珠彦を支えるので、現実離れのファンタジーに最初は思えてしまうのだが、物語が進むにつれ珠彦は変わっていき真に夕月の良きパートナーになりたいと行動するようになる。

その変わりっぷりはなんだか愛おしくさえ感じられ、本作のヒロインは実は珠彦ではないかと思ったりもする。原作ファンの筆者としては、よりハードな展開の「続編」昭和オトメ御伽話も映像で見たいところだ。

ED主題歌は、Re:ステージ!などの楽曲提供で活躍する森本練が作曲、クラムボンのミトが編曲を手掛ける。歌唱は本編でも白鳥策役で出演する声優の土岐隼一。

まず歌唱力がすごい。土岐のボーカルは、音域が広くファルセットも巧みに使いこなしていて圧倒された。本楽曲の録音に共通する傾向なのか、とにかく音が近く感じる。マイク距離と音作りと両面からのアプローチだと思われるが、息づかいまで感じられそうな近接ボイスはファンならハイレゾ版必聴と言い切れるほどのクオリティ。ドラムのスネアやタムの音像は大きくて、奥行きのある音場を所狭しと跳ねている。

ストリングスの録音はオンマイク近めだが、ドラムとの音作りの統一性を考えるとこれでいいと思った。倍音の豊かな響きや優しい質感はハイレゾで100%味わって欲しい。

真心に奏/土岐隼一
(P)PONY CANYON INC.
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「月とライカと吸血姫」ED主題歌「ありふれたいつか」(96kHz/24bit)

ありふれたいつか/Chima

牧野圭祐による同名ライトノベルのTVアニメ化。冷戦期の宇宙開発競争をモデルに宇宙飛行士を目指して青春する若者達を描いた物語。初の有人宇宙飛行を忌み嫌われる被差別側の吸血鬼の少女にやらせようとする国家。

実験動物のような扱いを受けるイリナに対し、彼女の訓練係を命じられたレフは、割と序盤でイリナの本当の人となりに気づき1人の女性として接するようになる。

悲しい過去のおかげでイリナの人間への嫌悪感は相当なものだが、時折レフやアーニャの前だけで見せる年相応の可愛いところが、本当に”時折“なのがヒロイン力を高めている。

TVアニメは原作の1~2巻を描いて終了したが、3巻以降は競争相手の連合王国を舞台に人間と新血族種という、これまた被差別民族と人間との物語が続く。目指すは月面着陸とあって、まるで大河ドラマのようだ。アニメ放送中に月面着陸までを描いた7巻が刊行されたのも注目を集めた。

ED主題歌は、北海道をホームグラウンドとして活動するシンガーソングライターのChimaが担当。本作が収録されたミニアルバムは、筆者がe-onkyo musicにて アーティストインタビュー を担当させていただいた。楽曲制作についてなどChima氏のこだわりをたくさん伺っているので、ぜひお読みいただきたい。

Chima ミニアルバム『nest』スペシャルインタヴュー公開!

シンガーソングライターのChim本人がマスタリングディリクションにも関わったという本作。自身の音楽性を活かすべく、ダイナミクスを広く取り、ウィスパーも取り入れたボーカルの繊細なニュアンスを殺さない音作りが貫かれている。前後感がしっかり出ており、リズムトラックとベースの位置取りも明瞭でボーカルの定位もスッキリしている。

コンプレッションはアタックをなるべく残した仕上がりで、シンセなどの緻密な音がディテール豊かにキラキラと瞬くようだ。宇宙観を演出するために不思議な音がいっぱい鳴っている本楽曲。ただ、ピコピコ鳴っているだけじゃない、音の作り込みの複雑さをハイレゾで十分に堪能したい。音量を上げても打ち込みの音がうるさく感じないのも素晴らしい。とても音のいいアニソンファン必聴のミニアルバムだ。

nest/Chima
(P)Lantis
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本企画で毎回紹介しているハイレゾサブスクの対応状況。主要国内サービスをフォローしているのは、これから加入する方の参考にしてほしい思いもある。それに関連して先日残念な知らせがあった。mora qualitasサービス終了の発表である。サービス開始時点から排他モードに対応し、音質も他社を大きく圧倒するクオリティだったが、開始から2年半という期間で幕を下ろすことになった。

mora qualitasの至らなかった要素は、あえて自分がここで書くまでもなく明々白々であり、方々でも言われているので割愛する。筆者は、そんな惜しい点も含めてmora qualitasの今後に期待していた。自身の音楽ユニットBeagle Kickでは、長文のバイオグラフィーや各アルバムの紹介文などを書き下ろして独占掲載するなど応援もしてきただけに、サービス終了は残念でたまらなかった。国内発のハイレゾサブスク、短い期間だったが素敵な夢を見ることができた。これまでお疲れ様でしたと労いたい。

そして、改めて思ったのは、ダウンロード販売は廃れないだろうということ。音源は手元にあるという安心感はもちろんのこと、再生方法も多岐にわたり利便性も高い。世の中の音楽の聴き方がサブスク主流になっても、ハイレゾを楽しむ人たちはまだ当分はダウンロード音源との共存になるだろう(この点は、国内サービスを開始していないTIDALやQobuzなどの大手が入ってくると事情が変わるかもしれない)。ダウンロード販売で買うという面倒を承知でも、ハイレゾの付加価値に魅力を感じるリスナー。筆者もその1人であり、ファンがスタジオマスターを聞けることは文化的な意義があると思っている。来年も懲りずにハイレゾ楽曲の楽しさを伝えていきたい。

【使用機材】

  • NAS/ネットワークトランスポート「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB(アイ・オー・データ機器)
  • USB-DAC「NEO iDSD」(iFi audio)
  • プリメインアンプ「L-505uXII」(ラックスマン)
  • スピーカー「RUBICON2」(DALI)
  • ポータブルプレーヤー「PLENUE R2」(COWON)/HPH-MT8(YAMAHA)/IE 400PRO(ゼンハイザー)
橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト