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おかえり狂気の世界。荒野爆走「マッドマックス:フュリオサ」で気分ヒャッハー
2024年5月31日 10:00
ノンストップ・カーアクションで世界を席巻した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年。待望のシリーズ最新作『マッドマックス:フュリオサ』が、5月31日より全国公開された。
女戦士フュリオサが誕生するまでの顛末と、『怒りのデス・ロード』へと直接リンクする前日譚が描かれるが、随所に衝突! 破壊! 爆発! 爆音! ヒャッハー! なマッドワールドが展開され、シリーズのファンはもちろんのこと、『怒りのデス・ロード』を未見の方でも楽しめる内容になっている。
そして何より、主人公フュリオサ演じるアニャ・テイラー=ジョイの美貌とカッコよさに、気分はヒャッハー。筆者のハートはわしづかみにされた。
9年ぶりシリーズ第5弾『マッドマックス:フュリオサ』とは
映画『マッドマックス:フュリオサ』は、トム・ハーディ主演『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年ぶりとなるマッドマックスシリーズの新作だ。
『怒りのデス・ロード』以前には、メル・ギブソンの出世作となった3部作『マッドマックス』(1979)、『マッドマックス2』(1981)、『マッドマックス/サンダードーム』(1985)が存在しており、今回の『フュリオサ』を含めると、シリーズとしては第5作目を数える。
特に『マッドマックス2』では、“荒廃した世界”、“暴力で支配するバイカー集団”、“絶望の中でも生き抜く主人公の姿”などが強烈なビジュアルで描かれ、1983年に連載を開始したアクション漫画の金字塔「北斗の拳」(原哲夫)などを始め、様々な作品・クリエイターらに影響を与えたと言われている。
そんなマッドマックスシリーズの生みの親が、鬼才ジョージ・ミラー監督。全シリーズで脚本も兼任しており、『フュリオサ』においても、ミラー監督のマッドな想像力がビジュアル、そしてストーリーに存分に反映されている。
『フュリオサ』の主人公は、『怒りのデス・ロード』の中で資源を独占し恐怖と暴力で民衆を支配する“イモータン・ジョー”に対し、元・警官マックスと反旗を翻した怒りの女戦士フュリオサ。
物語の舞台は、『怒りのデス・ロード』よりも少し遡った、世界崩壊から45年後の近未来。
若きフュリオサは、故郷である“緑の地”からさらわれ、ディメンタス将軍率いる軍団の手に落ちてしまう。彼らは、破壊の限りを尽くす“地獄のバイカー集団”。そして、荒地を掃討しながら突き進む彼らが狙うのは、イモータン・ジョーが支配する城塞都市。
覇権をめぐり、争いを繰り広げることになるディメンタス将軍とイモータン・ジョー。そして、復讐を果たし、故郷へ戻ることを誓うフュリオサは、数々の試練を乗り越え、すべてを奪ったこのMADな世界(マッドワールド)をぶち壊すべく、立ち上がるのだった――。
今作でフュリオサ役に抜擢されたのは、『ウィッチ』や『スプリット』、『ラストナイト・イン・ソーホー』、『ザ・メニュー』といったスリラー・ホラー系映画で鮮烈な印象を残し、『デューン 砂の惑星PART2』ではサプライズ出演も果たした注目女優のアニャ・テイラー=ジョイ。
そして、フュリオサの宿敵で、地獄のバイカー集団を率いる極悪非道なディメンタス将軍を、マーベルの人気キャラクター“マイティ・ソー”でおなじみのクリス・ヘムズワースが演じている。
おかえり狂気の世界。御年79歳のミラー監督、狂い咲き
字幕版のほか、日本語吹替、IMAX、4D、Dolby Cinema(ドルビーシネマ)、ScreenXと、様々なフォーマットで楽しめるが、今回は、より大きな画面と重厚なサウンドが魅力のIMAX版(グランドシネマサンシャイン)で鑑賞した。
『怒りのデス・ロード』は、およそ3日間の乱痴気騒ぎを120分で駆け抜ける、ブッ飛びノンストップアドレナリン噴出ムービーだったが、今回は、フュリオサ10歳からの15年超の出来事を5章・148分というシリーズ最長尺で丁寧に描いた、監督肝いりの一大叙事詩に仕上がっている。
そのため、ストーリーそのものの疾走感は『怒りのデス・ロード』と比べると抑制気味。しかし、そこはやはり監督兼脚本を務めるジョージ・ミラー。シリーズの醍醐味(?)であるマッドでイッちゃってる世界観はバッチリ継承されている。
例えば、バイク前方にマネキンを取り付け、クマのぬいぐるみと一緒に爆走する悪党ディメンタスや、若き日のイモータン・ジョー、人食い将軍、武器将軍など、破天荒なアタオカキャラが続々と登場。「オレが!」「オレが!」と曲芸を披露し、華々しく散ってゆく愛すべきモブキャラ・ウォーボーイズの面々も健在だ。
もちろん、シリーズお決まりの改造バイクや改造車も多数登場。ミラー監督曰く今作では「145台」もの改造車両が登場するそうで、中盤のウォータンク強奪やバレットファームでのディメンタス戦、後半のバギーカーチェイスなど、ジャンキーXL作曲のテンションアゲアゲMAXの音楽に乗せて改造車の大クラッシュ大会が繰り広げられる。
そして、復讐を胸に秘めて闘うフュリオサの雄姿も本作の見どころの一つ。やるかやられるかの弱肉強食の世界で生き残るための術を学び、しだいに強く美しい最強戦士へと成長していく様は惚れると同時に痺れる。
最後に、これはストーリーとは全く関係ないが、本作は無駄に(失礼!)画の解像度が高い。IMAXデジタルシアターのような大スクリーンに投影した状態でも、輪郭をハッキリクッキリと描写。『怒りのデス・ロード』の時はビビッド&ハイコントラストで多少ノイジーな画だったのだが、今作では65mmフィルムを上回るセンサーサイズを持つ6Kデジタルシネマカム「ARRI ALEXA 65」をメインに使うことで、精細感とSNが向上している。
また『怒りのデス・ロード』同様、身体に響くリアルで重厚なサウンドエフェクトも素晴らしい。改造バイク・改造車の排気音やエンジン音、車両が鈍く潰れてクラッシュし爆破する音、地面を蹴る砂音など、マッドな世界を構築する様々なサウンドも気分を盛り上げてくれる。
本作『フュリオサ』は、通常上映に加えて、IMAX、4D、Dolby Cinema、ScreenXとマルチフォーマット展開で劇場選びに迷うところ。ただ、画面の迫力重視ならシネスコ幕設置の大型スクリーン劇場かIMAX劇場、音重視ならDolby Atmos館や爆音上映館、ライド感覚を味わいたいならカーアクション映画と好相性な4D劇場で鑑賞するのが良いだろう。