日沼諭史の体当たりばったり!

第34回

四畳半仕事場改善。ソニー「マルチファンクションライト」で在宅勤務推進!

在宅勤務が流行の今、ソニー「マルチファンクションライト」を使いたい!

大手IT企業が数千人、数万人の社員を在宅勤務に切り替えているのを見習って、弊社(これでも一応社長なのだ)も可能な限り在宅勤務に移行するよう全社員に通達した。

「我々から黒髪の乙女に出会うチャンスを奪うのか」という反発も予想されたが、異論は1ミリも出ず。以前からリモートワークにも対応できるようオフィスと自宅に同じようなPC環境を整えてきたこともあって、この緊急事態においても実にスムーズに対応できたと自負する次第である。従業員は自分1人だけなんだけど。

そんな自宅の仕事部屋はまさしく四畳半。PCとエアコン、しばらく回していないサイクルトレーナー、ネットラジオくらいにしか活用できていないAmazon Echo PlusやGoogle Nest Miniといった最低限のものがあるだけで、わりと殺風景である。この仕事部屋を、もっと在宅勤務が楽しくなる快適空間に仕上げたい。そこで目を付けたのが、ソニーの「マルチファンクションライト MFL-1000A」(オープンプライス/実売2万6,000円前後)だ。

この殺風景な仕事部屋を快適にするぞ!

調光できて音も鳴らせて家電も操作できる!

ソニーのマルチファンクションライトは、一言でいうと、数々のスマートな機能を備えたシーリングライト。シーリングライト本体の「LGTC-30」と、その中心部に取り付けるマルチファンクションユニット「LGTG-200」の2つがセットになった製品だ。

シーリングライト(左)とマルチファンクションユニット(中央上)がセットになっている

シーリングライトはもちろん単体でも動作し、付属のリモコンで調光(明暗切替)・調色(電球色~白色)が可能。就寝時に都合の良い常夜灯の機能も備えているので、フツーに便利に使える。そして、これにマルチファンクションユニットを追加することで、Bluetoothスピーカーと家電リモコンの機能が加わり、専用スマートフォンアプリで照明その他諸々の操作も可能になる。

多数のLEDが並ぶシーリングライト
付属のリモコン。ホルダーは自立させられるほか、壁掛けするのにも使える

Bluetoothスピーカーとしては、低遅延コーデックのapt-X LL(Low Latency)に対応している。たとえばスマートフォンやPC、テレビなんかで動画を見たりゲームをプレーしたりするときも、再生側がapt-X LLに対応していればほぼ遅延なしでサウンドが流れるわけだ。ちなみに、テレビ本体がapt-X LLに対応している例は少ないと思われるので、別途Bluetoothトランスミッターを組み合わせるのがオーソドックスな方法となる。

マルチファンクションユニット
スピーカーでもあり、赤外線リモコンユニットでもあり、センサーでもある

でもって家電リモコンの機能では、テレビとエアコンの操作に対応する。スマホアプリで連携設定することで、アプリから電源のオンオフ、動作モードや温度設定、もしくはチャンネル切替や音量調整といった操作が行なえる。Amazon EchoシリーズやGoogle Homeシリーズのスマートスピーカーがあれば、声でも照明と家電の操作が可能だ。宅内無線LAN環境下はもちろんのこと、外出先からの遠隔操作もできるので、帰宅前にエアコンをオンにするといった芸当も可。

専用スマートフォンアプリ「MF light」
スマートスピーカーを介した操作にも対応する

また、マルチファンクションユニットには温湿度センサーと人感センサーも搭載されている。これらのセンサーはアプリ内で室内の温度・湿度を監視したり、マルチファンクションライトの動作を自動化するのに活用できる。一定の温度になったらエアコンをオンにしたり、指定時刻になったら照明やテレビをオンオフして音楽を流したり、といった具合だ。これらをうまく使いこなすことができれば、ぐっと快適な仕事部屋になりそうではないか!

温度と湿度はリアルタイムの値がわかるだけでなく、過去24時間のログも確認できる

設置からスマートスピーカー連携まで、手順はカンタン

マルチファンクションライトの設置は、一般的なシーリングライトと同じでカンタン。天井にある照明用の電源にアダプターとシーリングライト本体を取り付け、フードを装着してからマルチファンクションユニットを固定する。個人宅の多くで最初から天井に用意されている電源をそのまま使えるうえ、スマートフォンとの通信には宅内無線LANを利用することから、配線が一切不要なのがうれしい。

一般家庭の天井によくある引っ掛けローゼット
これにまずはアダプターを取り付ける
シーリングライトをはめ込む
フードを装着し、最後にマルチファンクションユニットを取り付け。赤いマークを合わせて時計回りに回転させる
取り付け完了

あとは壁面スイッチを入れるなどしてマルチファンクションライトに電源を供給し、専用アプリでWi-Fi接続の設定などを行なえば、スマート照明やBluetoothスピーカーとして使い始められる。照明はグラフィカルな画面で直感的に好みの明るさ・色合いに変えられるほか、5パターンのシーン(カスタマイズ可能なプリセット設定)から気分に合うものを選んで調光するのもアリだ。

専用アプリをインストール
最初はWi-Fi Directでマルチファンクションライトに直接接続する
普段使っている宅内無線LANを指定
最後にマルチファンクションライトに名前を付けて初期設定完了
アプリのメイン画面
「照明」機能で直感的に好みの色・明るさに調光できる
最大5つの「シーン」設定を保存して、すぐに呼び出せる

Bluetoothスピーカーはスマートフォンやオーディオプレーヤーとペアリングして楽曲再生してもいいし、マルチファンクションユニットにあるmicroSDスロットに音楽入りのメディアを挿入して好きな音楽を流す方法もある。

microSDスロットを装備。保存されている音楽ファイルをマルチファンクションライトで直接再生できる

音楽が降ってくるような感覚は、同じくソニーのLED電球スピーカー「LSPX-103E26」で一度体験しているけれど、目の前のテレビやPC、スマートフォンで再生しているものが頭上から聞こえることについては、意外と違和感がない。スピーカーが下向きで、1階の仕事部屋で夜遅くまで音を鳴らしていても、2階で寝ている家族を起こすことがないのもありがたいところ。

音が頭上から降ってくる!

さて、家電リモコンの機能でテレビやエアコンを操作しようと思うと、もうひと手間必要だ。と言っても、その製品のメーカー名を選んで、何度か赤外線信号をテスト送信し、テレビ・エアコンが正しく動作するか確認するだけ。手間取るところはないだろう。

家電リモコン機能の設定は、最初に家電メーカーを選ぶ
信号をテスト送信して正しく動作するかどうかを確認
テレビのリモコン画面
エアコンのリモコン画面

スマートスピーカーとも連携したいときはさらに続けて設定する。ソニーアカウントとGoogle アカウントのどちらかを利用してひも付けする仕組みで、まずは専用アプリ上でスマートスピーカー(AIスピーカー)の連携機能を有効にする必要がある。

最初にログインしてスマートスピーカーとの連携設定を有効に
Google Homeでは新たに「MF light」というサービスをリンクさせる
Amazon Echoでは「MF light」スキルをインストール

その後、Amazon AlexaアプリでのスキルのインストールやGoogle Homeアプリでのデバイス追加を経ることで、スマートスピーカーに話しかけて照明や家電を操作できる状態となる。あとは「アレクサ、仕事部屋のエアコン(テレビ)をつけて」だの、「ねえグーグル、仕事部屋の明かりを50%にして」だの、好きなように命令しよう。

Google Homeアプリに追加された照明(電気)とエアコン
Alexaアプリからも操作OK

仕事部屋で快適な1日を送る設定例

今回は「快適に在宅勤務できる仕事部屋」がコンセプトである。なので、いつでも テレビ番組を楽し 情報収集できるようにテレビを設置。aptX LL対応のBluetoothトランスミッターを接続して、遅延なしでマルチファンクションライトから音声が流れるようにした。集中して情報収集にいそしむために、ソファも完備である。

aptX LL対応のBluetoothトランスミッターをテレビに接続

1日の始まり、平日はアプリのタイマー機能を使い「おはようモード」で自動化する。起床時刻となる朝6時30分にはマルチファンクションライト内蔵の「おはようアラーム」が鳴り、やさしいメロディで起こしてもらう。同時にテレビとエアコンも自動で電源がオンになる。

タイマー機能
「おはようモード」で朝の爽やかな目覚めを演出

このとき、照明はあらかじめ指定したシーンの色合いで、起床の15分前から徐々に明るくなってくるので、ゆっくりと覚醒して、すがすがしい朝を迎えられる。エアコンの運転モードや温度も設定しておけるため、真冬なのに冷房からスタートするようなこともない。朝はエアコンの運転モードを自動にすることで、季節を問わず対応できるだろう。

起床時にはエアコンの電源も入れる
そして目覚まし代わりの「おはようアラーム」を鳴らす
すがすがしい朝!

しかしその後、時間帯や室内環境によっては、エアコンの自動運転に頼りっぱなしだと寒すぎたり、暑すぎたりすることもある。なので、ビジネスアワーの朝8時から夜までは、マルチファンクションライトの温度センサーを活用し、一定温度以下になったら運転モードを暖房にして暖かめの温度設定に。

反対に、一定温度以上になったら自動運転するようにしてみた。今は冬なのでこのような設定だが、夏には冷房が動作するように変更する必要がありそうだ。いずれにしても、しばらく使い続けながら少しずつ調整を繰り返していくのが良いだろう。

日中は「温度モード」でエアコンを制御してみる
仕事の合間には情報収集。テレビの音はもちろんマルチファンクションライトから
ときにはゲームで集中力を鍛える。耳にやさしいサウンドだが、低音はもうちょっと欲しいかも

仕事も終わり、就寝モードになりつつある夜0時には、タイマー機能の「おやすみモード」でテレビ、エアコンの電源を自動で切る。なお、おやすみモードでは指定時刻の15分前から徐々に照明が暗くなるが、照明や家電の電源オフは指定時刻に強制的に実行されるわけではない。指定時刻以降に人感センサーで人がいない(動くものがない)と判断されてから5分後にオフとなる仕組みだ。

夜0時にはすべての電源をオフにする「おやすみモード」を実行する

そのため、まだ起きていたいときはマルチファンクションライトに向かって「夜更かししたいアピール」をすることで(つまり、動くと)その分延長可能だ。いずれ寝落ちすれば、自然とすべての電源がオフになってくれる。……うーん、なんというか仕事というより1日の暮らしそのものが快適になっているような……。

就寝前にリラックスしてテレビを視聴
寝落ちして動きがなくなると、その後に照明と家電の電源がオフに

フツーに便利だけれど、めちゃくちゃ便利にするのは難しい!?

マルチファンクションライトは、手軽に調光・調色でき、エアコンとテレビに限定されているとはいえ家電の操作も可能で、しかも雰囲気良く音楽を流せて温度・湿度もわかるという、充実装備の豪華アイテムとなっている。

特に家電リモコンの機能が照明と一緒になっているのは、理にかなっている。照明というのは部屋を隅々まで明るく照らすためのもの。だから、通常は照明のある天井から床まで遮るものはほぼないわけで、必然的に赤外線信号が最大限に行き届く。他の独立した赤外線リモコンユニットだと、できるだけ広範囲に信号が届くよう置き場所を試行錯誤するものだけれど、マルチファンクションライトだとそのあたりで悩まずに済む。

天井から赤外線信号を飛ばすため、部屋の中にある家電にくまなく届く

ただ、マルチファンクションライトのさまざまな機能を個別に使う分には便利でも、自動化機能をもっと深掘りして活用したくなったときは、なかなか思い通りにいかない部分があるのも事実だ。センサーを活用したり、他のスマートホーム機器やサービスと連携させようとしても難しかったりして、今回のように仕事場として快適にするにもやや不完全燃焼な感じになったりする。

複雑にならないようテレビとエアコンに限定しているのだろうとは思うのだけれど、やはり家電リモコン機能は他の機器にも対応してほしいと感じてしまう。たとえばエアコンを動かし始めたとき、同時に加湿器の電源を入れたくなったりするわけだ。こういうときによく使われる自動化ツールとして「IFTTT」などが知られているけれど、マルチファンクションライトはそれらのツールにも対応していない。

タイマー機能の「温度モード」と「湿度モード」では「メール通知」の機能がある。これを使ってIFTTTでメール受信を検知することで、他の機器と連動させることは不可能ではない。が、それだけでは柔軟な対応は困難だ。スマートスピーカーとの連携はあるにしろ、基本的に専用アプリの“閉じた”世界で使うことを前提とした仕組みになっているので応用が利きにくい。このへんはガジェット好きなユーザーには少し物足りなく思えるかもしれないところ。

タイマー機能の「温度モード」と「湿度モード」では、実行したときにメール通知することも可能
IFTTTでこのメールを読み取って何らかのアクションを起こすことは可能だけれど……

現時点で、せっかく搭載している人感センサーが十分に活かされていない点が大きなネックになっている印象もある。照明や家電をオンオフするにしても、そこに人がいるかどうかの判定を人感センサーで加えられれば省エネにもつなげられる。外出した直後に照明や家電の電源をオフにするとか、帰宅時にオンにして歓迎の音楽も流すとか……。

ソニーによれば、将来的には人感センサーを活用する設定が増えるそうなので、そうした機能も含め、継続的なアップデートで実用度がどんどん高まることを期待したい。在宅ワークしていても、していなくても、暮らしがもっと豊かで便利になるプロダクトに進化していってほしいなあと思う。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。