西田宗千佳のRandomTracking
第520回
57,800円からの第3世代iPhone SE、その実力は!?
2022年3月14日 22:00
3月18日に発売となる、iPhone SE(第3世代)のショートレビューをお届けする。
ハイエンドではないがより多くの人が日常的に使うiPhone、それが「SE」だ。これまでの例に倣うなら、商品寿命も「1年」ではなく2年以上になると考えられる。
すなわち当面のスタンダードとなるわけだが、どんな製品になっているか詳細をチェックしてみたい。なお、価格は、ストレージ64GBが57,800円、128GBが63,800円、256GBが76,800円だ。
デザインは同じだがカラーリングは変化
2020年発売の「第2世代」から、iPhone SEのデザインは変わった。今回もそのデザインを引き継いでいて、カラーバリエーションも「白」「黒」「赤」と同じに見える。
だが実際には、第2世代と第3世代ではそれぞれ色合いが異なる。ストレートな色から少し味わいをつけた色になった、というところだろうか。
今回テストしているモデルは「ミッドナイト」だが、黒というよりは、名前通り「深夜の空」のような極めて濃い青だ。一方で、サイドやフロントは「黒」で、ガラス部のみ少し色が乗っている……という感じの仕上げになっている。
iPhone 6(2014年)から続くデザインなので、ディスプレイ周りはさすがに「狭い」と感じるが、デザインを変えずにコストを下げた機種を長く提供する、というアップルの方針なのだろう。ここで画面デザインを変えると、解像度バリエーションがまた増えるので、開発への負担が上がる、という事情もある。
同じタイミングで、iPhone 13・13 Proシリーズの新色も貸し出されているので、並べてみてみよう。新色は「グリーン」系。13がストレートなグリーンで、13 Pro系はもう少し落ち着いた「アルパイングリーン」になっている。13 Proがより、あのアニメに出てきそうな色になった感じもする。
通信・動作速度の向上で「サクサク」動く
仕上げや使い勝手は、正直これまでのSEと大差ない。
ただ、通信速度・動作速度は上がっているので、全体的に「サクサク」動く感触を受ける。
ベンチマークソフト「GeekBench 5」のテスト結果をみると、同じ「A15 Bionic」を使っているだけあって、iPhone 13 Pro Maxと比較した場合、速度があまり変わらない。CPUのマルチコア性能とGPU性能では差があるものの、価格差を考えれば妥当なところかと思う。
ちなみに、同じくGeekBench 5のテスト結果をみると、第2世代と第3世代では、シングルコア性能が3割、マルチコア性能で5割、GPU性能も同じく5割程度向上している計算になる。
速度という意味では、通信速度も重要だろう。5Gに対応したので、エリア内では通信速度が上がる。
ただ、こちらは当方でのテスト環境の関係もあるのか、iPhone 13 Pro Maxと比較した場合、同じ場所での5Gでの通信速度が劣っていた。それが即座に問題になるような水準ではないが、プロセッサー性能同様、「SEは最高性能のiPhoneではない」ということだろうか。
プロセッサー変更でカメラ性能は上がったが「ハードの差」は埋まらず
カメラの機能はどうだろう?
残念ながら手元には、第2世代iPhone SEがないので、直接の比較はできていない。だが、iPhone 13 Pro Maxと第3世代を比較し、さらに、過去(2020年)に撮影した第2世代iPhoneの傾向を比較しつつ考えてみたい。
第2世代iPhone SEは同世代のiPhone 11シリーズに比べ、写真の解像感が多少甘く、色も暖色に傾く傾向にあった。
それに比べると、iPhone SE(第3世代)とiPhone 13 Pro Maxの差は小さい。やはり若干解像感が弱く、色が浅めかとは思うが、過去に比べ差が小さくなった印象はある。暗い場所の描写でも13 Pro Maxの方が忠実だが、好みレベルの違い、といってもいい。
- iPhoneSE3rd-heic.zip(22.87MB)23,976,125Byte
第2世代と第3世代のiPhone SEは、レンズ・センサーともに変化していないようだ。そのため、A15 Bionicの採用とソフトウェアの進化によって「若干カメラ画質も上がっている」というのが妥当な見方ではないかと思う。
ただ、機能面は結構違う。
望遠・超広角などでの撮影はできないし、「ポートレート撮影」もiPhone SEはソフトウェアによる再現なので、人のシルエット以外では対応できない。iPhone 13シリーズのウリである「シネマティックモード」でのビデオ撮影もできないし、HDRでの動画撮影もできない。これらはカメラのハードウェア的な制約によるものだ。また、A15 Bionic搭載になったが、RAW撮影にも対応してない。
カメラの付加価値部分はハイエンドのものであり、スタンダードモデルのSEには入らない……というわけだ。
そう考えると、やはりSEは「付加価値は小さいがその時にスタンダートと言える性能を備えているiPhone」であり、それで十分と考えるか否かが選択の分かれ目、ということになりそうだ。