鳥居一豊の「良作×良品」

第94回

48型で緻密さUP! 映像に吸い込まれる、ソニー「KJ-48A9S」×「宇宙戦争」

ソニーの「KJ-48A9S」

リビングで使いやすく、個室でも大満足の絶妙なサイズ感

前回の東芝48X8400に続いて、今回も有機ELテレビの48型モデルを取り上げる。ソニーの「KJ-48A9S」(実売約25万3,000円)だ。今年登場した48型の有機ELテレビは、一般的な家庭でも導入しやすいサイズであること、また液晶テレビに比べると価格の高い有機ELテレビでありながら価格は20万円半ばであることなど、人気の高い商品となっている。

有機ELテレビの高画質はより大きな画面の方が迫力や臨場感が増すのも事実だが、映画だけでなく、動画配信サービスやゲームなど、画質に優れたコンテンツが増えている現在、個室に置く自分専用のテレビが欲しい人も少なくないだろう。もちろん画質もこだわりたいという人には、“プライベート大画面”とも言える48型は実に魅力的だ。

「KJ-48A9S」の概要を紹介しよう。高画質エンジンは同社の最上位となる「X1 Ultimate」。処理能力を約2倍(X1 Extreme比)に高め、オブジェクト型超解像をはじめとする高画質処理を緻密に行なう。映像に映し出される物体のひとつひとつを検出し、それぞれに最適な超解像処理を行なうことで、より豊かな質感を再現するものだ。内蔵するテレビチューナーは、地デジ・BS・110度CSチューナー×2、BS4K・110度CS4Kチューナー×2となる。外付けHDDを使用して録画することも可能だ。HDRフォーマットは、HDR10、HLG、Dolby Visionに対応する。

内蔵スピーカーは、同社の有機ELテレビシリーズでおなじみの「アコースティック サーフェス オーディオ」を搭載。画面を振動させるアクチュエーターが2基、背面にサブウーファーを1基内蔵している。実用最大出力は合計で25Wだ。サラウンド音声では、Dolby Atmosにも対応し、高さ感のあるサラウンド再生を可能にしている。このほか、リモコンに内蔵されるマイクを使った自動音場補正も備える。こちらもじっくりと試してみたい。

注目したいポイントは、Android TV搭載による多彩な動画配信サービスへの対応だ。国内で普及するほとんどの動画配信サービスをサポートしており、好みのアプリを自由に追加できる。アプリの起動や操作の反応もよく、快適に操作できるのもポイントだ。Googleアシスタントによる音声操作をはじめ、AirPlay 2やChromecast built-inなど、スマホなどとの連携機能も一通り備えている。機能はもちろん、画質・音質ともに同社の最上位モデルとほぼ同等の実力を備えたモデルだ。

48型4K有機ELテレビ「BRAVIA KJ-48A9S」

背面まですっきりとしたデザインで、壁掛け設置にも対応

お借りしたKJ-48A9Sを我が家の試聴室に設置したが、開梱や設置は容易だ。ディスプレイの厚みが極薄なこと、スタンドもそれに合わせた薄いデザインとなっているので、48型というサイズ以上にコンパクトに感じる。書斎などの個室には大きいと思う人が多いかもしれないが、置いてみても、大きすぎて威圧感を感じるようなことはないだろう。

アンテナ線などの配線をしながら背面を見てみると、画面サイズが一回り小さいぶん、相対的にチューナーやスピーカーなどを収めた厚みのある部分が大きめだ。この部分も直線主体のすっきりとしたフォルムになっている。背面部分は縦にスリットの入った処理になっていてモダンな雰囲気を醸し出す。電源や配線部にはすべてカバーが付属しており、配線をきれいに整理して、すっきりとした外観にできる。HDMI端子などもすべてコネクターを横向きや下向きに接続するので、本体からコネクターが出っ張ることもない。これは壁掛けでも壁により近づけて設置でき、接続をやり直す場合も作業がしやすい。

KJ-48A9Sの背面。背面の厚みのある部分には、上部にスピーカーとサブウーファーを内蔵。側面と下部に入出力端子類が配置されている。付属のカバーで配線類を隠してしまうことができる
スタンドの背面側。スタンド部分に電源コードやHDMIケーブルなどを整理するガイドがあり、すっきりと整理することが可能。ここにもカバーが装着できる
接続端子部(下側)。こちらにはアンテナ入力やLAN端子などがある。3系統のHDMI入力と録画用USB端子もある
接続端子部(側面側)。こちらにはHDMI入力1系統と汎用のUSB端子2系統、ヘッドホン出力とアナログビデオ入力(付属の専用ケーブルを使用)がある

内蔵スピーカーも、背面の厚みのある部分と一体化された。これは2020年モデル共通のデザイン。サブウーファーはこの部分に内蔵されており、上部にある開口部から低音が放射される。左右のアクチュエーターは外観からは見えないが、パネルの裏面に設置され画面を振動させて音を出す仕組みだ。

従来のデザインと変わって本体部と一体化された内蔵スピーカー。光沢仕上げされたラインは従来モデルからのイメージを踏襲したもの
内蔵サブウーファーの音が放出される開口部。上方と背面に向けて低音が出て、壁の反射を利用して前方に低音が拡散される
KJ-48A9Sを横から見たところ。でこぼこのないすっきりとしたフォルムになっている。スタンドと合わせて細みを主張するデザインだ
付属のリモコン。ダイレクトに主要な動画サービスを呼び出せるボタンはソニーが先鞭を付けたもの。音声入力用にマイクも内蔵する

アンテナやネットワーク接続などの準備が完了したところで、まずは一通りの機能を確認してみた。Android TVのインターフェースは基本的には大きく変わってはいないが、細かなところで使い勝手が良くなっている。ホーム画面は、登録したアプリやおすすめの番組やサービス、テレビ放送のチャンネルなどが左側の大きなアイコンで並んでおり、その横に選択できるコンテンツが表示されるスタイルだ。リモコンの十字キーで手軽に操作できるデザイン。

ホーム画面を表示した状態。上下でアイコンを選び、左右でコンテンツやチャンネルを選ぶ操作だ。設定などは上部のアイコンに移動して選択する
ホーム画面でアイコンを下に移動していくと、主要な動画サービスのおすすめ番組が表示される。ログインするまえに見たいコンテンツを探せるのは便利だ

このほか、テレビ放送主体で使う人のためにも便利な機能が盛り込まれている。それがリモコンの「テレビ」ボタン。このボタンを押すと、テレビ視聴で使う機能が画面の下側にポップアップメニューのように表示される。ここから番組表をよびだしたり、画質モードの切り替えなどを行なうことができる。視聴しながらスムーズに使うことができ、なかなか便利だ。

テレビボタンで番組表を呼び出したところ。放送中の番組が一覧できる。このまま十字キーの下を押すと番組表画面に切り替わる
番組表画面。地デジやBS4Kなどの切り替え、録画予約操作なども一通り行なえる。ミニ番組表への切り替えも簡単
画質調整や設定などの機能を呼び出したところ。詳細な画質調整は左端の「設定」から行なう
入力切り替えの画面。こちらも画面下に現れるメニューから十字キーで選択する

画質調整などは、「設定」から呼び出して行なう。設定での操作は画面の右側にメニューが表示される。ここでは画質モードの切り替えだけでなく、明るさ、色、くっきりすっきり(精細感とノイズ感)などの項目ごとに画質調整を行なえる。このあたりは、従来のブラビアと同様の感覚だ。

基本的には、明るさやコントラスト、色あいや色の濃さといった基本的な調整をはじめ、各種の高画質機能のオン/オフ、超解像処理「リアリティークリエーション」のマニュアル調整などが可能。こうした機能をいちいち操作するのは面倒だが、ある映画を見ていて違和感を感じたり、明るすぎや暗すぎて見づらいと感じたならば少し修正するといい。表現力の高い有機ELテレビだからこそ、こうした好みに合わせた微調整が重要になるのだ。

こうした画質調整をしていると、元の状態がわからなくなって混乱してしまいがちだ。そんなときは画質調整を初期値に戻せばいい。画質モードのそれぞれにリセットの項目が用意されているので、安心していじり倒してまったく問題ない。そうやって使っているうちに調整のコツがわかってくる。

画質調整のメニュー一覧。項目を選ぶと内容を説明するガイドも表示され、マニュアルを読まなくても使えるようになっている
Dolby Visionの作品で、画質モードを選んだところ。「ドルビービジョンダーク」についての解説が表示されている
画質モードを「ドルビービジョンブライト」に切り替えた状態。それぞれのモードで好みに応じて調整が可能だ
画質調整の「明るさ」の設定画面。明るさやコントラストなどの項目で調整が可能。KJ-48A9Sでは「黒レベル」の調整が重要な使いこなしのポイント
画質調整の「色」の設定画面。「色あい」や「色の濃さ」を好みに合わせて調整する
画質調整の「くっきりすっきり」の設定画面。超解像処理とノイズリダクションの調整ができる
超解像処理「リアリティークリエーション」を「マニュアル」で詳細に調整することも可能
なめらかな動きを再現する「モーションフロー」も「カスタム」で好みの動きに調整できる

音質モードも同様にいくつかのモードが用意されている。ポイントはそれぞれのモードで音色の調整、声の強調、サラウンド効果がセットになっていること。「シネマ」モードにはサラウンド効果が加わっているが、サラウンド効果の強弱だけを調整することも可能だ。サラウンド効果は好みも分かれるので、一度チェックしておくといいだろう。このほか、番組本編とCM、あるいは他の入力との音量の差を自動調整する「アドバンスト自動音量調整」やバランス調整、スタンド設置と壁掛け設置での音響特性を切り替える「スピーカー特性」などもある。

音質モードの一覧画面。スタンダードのほか、シネマやミュージック、スポーツなどが用意されている
サラウンド効果の調整画面。オン/オフの切り替えのほか、効果量の調整が可能。このほか、音質を好みに調整できる「イコライザー」や声を強調する「ボイスズーム」もある
音質調整では、音量レベルの自動調整やバランス調整、スピーカー特性の切り替えなどの項目もある

凄みを感じる特撮映像に震える。黒の再現性も問われる「宇宙戦争」を見る

いよいよ上映だ。今回はUHD BD版の「宇宙戦争」。トム・クルーズ主演で制作された古典SFの傑作だ。(地球人にとっては)突如として現れた正体不明の異星人たちに蹂躙される内容で、異星人との対話もなくただひたすらに自分たちの生命を脅かす存在として描かれる。スティーブン・スピルバーグは「ET」などで異星人との対話やコミュニケーションを描く作品も数多く作っているが、「激突」や「ジョーズ」など、対話不能の恐怖の塊を描くのも得意中の得意。本作でのポイントは決して、宇宙人襲来のパニックを描くだけでなく、命の危機に瀕した人間たちの姿、家族のきずなをなまなましく描くもので、古典SFを原作としながら今見てもなかなか面白い映画になっている。

一番の見どころはやはり特撮による映像だ。2005年の劇場公開当時、筆者はその映像の迫力に圧倒された。日本の特撮ではもはや太刀打ちできないと感じたし、最新のデジタル技術の進化にも驚かされた。が、その後CG技術はますます進化してきたが、ここまでの凄みを感じた作品はあまりない。CG技術のおかげで、すでに完敗したはずの日本の特撮作品などでも(絶対的なコスト差はあるものの)なかなか見応えのある作品が登場していたりもする。

この理由が、UHD BD版を見てわかったような気がする。結論としては怖ろしいほどのコストをかけたアナログ的な特撮とデジタルによるCGを融合させた作品だということ。人々を蹂躙する巨大なトライポッドは、実際に模型を使って撮影していると思われる。デジタル技術のおかげで合成による映像の劣化は皆無(UHD BD版では劣化を感じるカットもいくつかある)、そこにCG効果を足し合わせることで、初めて見た人は「10年以上前の作品なのに現代と変わらないレベルの高解像度のCGを使っていたのか!」とさえ思うだろう。

当時(「スターウォーズ」で言えば、エピソード3が同年公開)は現代のレベルの高解像度CGは使っているとは思えない。実際、CGの解像度不足はいくつか散見される。それでも、現代でもありえないレベルの映像だと感じるのは、大きなサイズの模型を使ったことが理由だと思う。すべてをCGに置きかえてしまうと、どうしても実物(模型)の巨大感や存在感に差がある。役者の演技もわずかながら影響はあるだろう。それでいて、模型に感じる偽物っぽさ、安っぽさはデジタル効果でうまく処理されて実物にしか見えないし、合成による解像感の劣化などの影響もない。これが本物感のある映像となった理由だと思う。今回はソニーの有機ELテレビ・KJ-48A9Sの優れた表現力で、本作の凄みのある映像の秘密に迫りつつ、それを可能にした画質の実力を語っていきたい。

試聴では、プレーヤーにパナソニックの「DP-UB9000」を使用した。UHD BD版の「宇宙戦争」はDolby Vision収録なので、Dolby Visionで再生、KJ-48A9Sは暗室向けの「ドルビービジョンダーク」で試聴した。まずは、トム・クルーズ扮するレイが自宅近所の市街地で地中から出現したトライポッドに遭遇する場面だ。日中ではあるが、先刻からの強風と落雷で薄暗い空模様となっている。雷が落ちたと思われる道路に空いた穴を群衆が見ていると、突如として地面が揺れ出し、アスファルトの道路に亀裂が入り、地面が割れていく。そして、そこからトライポッドが出現する。

トライポッドは長く伸びた触手を伸ばし、そこから謎の怪光線を放つ。その光を浴びた人間は白い粉のようなものになって消滅してしまう。逃げ惑う群衆の中で、レイも怪光線を避けながら自宅に戻る。街の中に姿を現したトライポッドの異様もさることながら、逃げ惑う群衆の視点で捉えた映像が怖ろしい。まさにテロ攻撃にさらされた人々の混乱を生々しく描いた映像そのものだ。KJ-48A9Sはレイの着る服装の質感まで細かやかに描くし、迫真の表情もよく伝わる。白い粉を全身に浴びた肌も感じもよくわかるし、やや色彩を落としたトーンだが、肌の色や服装などの色もしっかりと再現された。

「ドルビービジョンダーク」は、ドルビー側が設定した最適な画質モードで、ソニーに限らず各社独自の高画質機能はオフになる傾向だ。テレビ側での画質的な加工をなるべく行なわず、元の情報をストレートに再現するものと言えるだろう。

例えば、精細感を高める「リアリティークリエーション」も初期値はオフとなっている。せっかくなので、画質調整で「リアリティークリエーション」を「マニュアル」として多少の鮮鋭感の向上を試してみた。「オート」では精細感が高まるだけでなく、フィルムの粒子感が強調されてザラっとした感触が強まってしまうので、「オート」よりも精細感をやや抑えてやると服の質感や表情がよりはっきりと出てきた。映像の密度が高まり、さらに生々しい映像になる。

KJ-48A9Sの画質は、同じソニーの有機ELテレビと同様に、鮮明でコントラスト感が高く、暗部の階調表現も豊かに描く傾向だ。そのため、どんな映像でも明るく鮮やかで見通しがいい。これは、「X1 Ultimate」で処理能力を大幅に向上した「リアリティークリエーション」のおかげ。地デジなどの2K放送のアップコンバートでも大きな威力を発揮するが、古い時代劇などの昔の番組や、もともと細部のチラツキやノイズ感の多い番組だと、ノイズ感が強調されてやや見づらくなる傾向がある。こうした場合は「リアリティークリエーション」を調整してやると見やすくなる。良い映像はさらに緻密な映像になるが、条件の良くない映像だと悪さが目立ってしまうのだ。KJ-48A9Sの良さを引き出した画質調整のコツだ。

レイは、息子と娘を連れて街から逃亡を図る。まずは離婚した妻の家へと向かうが、電話や無線も不通で連絡は取れない。ひとまずは妻の家で夜を過ごすことにするが、安全のために地下室で休んでいるレイたちを不穏な音が襲う。周囲の状況がほとんどわからない状態で、家の外で爆発のような轟音が鳴り響いている。電子機器の故障で制御を失った飛行機が墜落したのだ。何も分からない暗室でのパニック状況は並のホラー映画以上に怖い。

内蔵スピーカーの実力を確認。自動音場補正はかなりの効果

この場面で、じっくりとKJ-48A9Sの音質を確認してみた。アクチュエーターを使った画面を振動させて音を出すスピーカーは、ソニーの有機ELテレビの特徴だ。初期のモデルに比べるとガラスを振動板に使っているための音質的なクセが目立ったが、世代を重ねた今はクセっぽさも緩和され、明瞭で聴きやすいものになっている。なにより映像と音の一体感のある再現は素晴らしく、画面の下にあるスピーカーから音が出ているような感覚がなく、自然な臨場感が得られる。

KJ-48A9Sはやや中低域が不足気味で、音の広がりもやや物足りない。音質モード「シネマ」で、サラウンド効果も調整してみたが、空間の広がりに乏しいのが気になる。これは、サイズの問題ではないかと思う。画面サイズが小さいということは振動板の面積も小さいわけで、55型や65型と比べると中低域は苦しい、背面のサブウーファーももう少し頑張って欲しくなる。48型は初めてのサイズということもあり、他のサイズに比べるともう少し熟成が必要だと感じた。

しかし、KJ-48A9Sには音質を改善する新機能がある。自動音場補正機能だ。これは、AVアンプに搭載されているものと同じ仕組みのもので、テレビの内蔵スピーカーが発したテスト信号を視聴位置でリモコンに内蔵されたマイクで測定するもの。部屋の音響特性などによる影響を補正して、最適な音質へと自動調整するものだ。

設定の「音質」の項目にある「自動音場補正」。ここからリモコンを使って音場の測定を行なう
「自動音場補正」を選択すると、最初にガイドでの説明が表示され、「次へ」を選ぶと測定が始まる
測定中の画面。リモコンはマイクのある上部をテレビに向けて、視聴位置に固定しておく。高さは耳の位置あたりにするといい

「自動音場補正」を試してみると、左右のチャンネルのそれぞれでパチパチとパルス音のようなテスト音が再生される。テスト音の感じを含めて、ソニーのAVアンプに採用されているものに似ている。きっと共通する技術を採用したのだろう。テストが完了してから、同じシーンを見直してみると、ずいぶんと違って聴こえる。まず、セリフが明瞭だ。画面から音が出ているだけでなく、定位が明瞭になり実体感が出てくる。音の広がりもずいぶんとスムーズになり、地下室内から聞こえてくる爆発音のくぐもった感じや室内の振動がはっきりとわかるし、頭の上で爆発音が響いているようなDolby Atmosらしい高さ感も感じられるようになる。

絶対的な低音の力強さや迫力は決して十分ではないが、低音から中高音のつながりがスムーズになったことで迫力不足というほどではなくなった。測定も簡単で使いやすく、効果もかなりあるのでぜひとも試してほしい。リビングで使う場合、音は不要な反射が多くなりがちで不明瞭になりやすいし、個室では低音が十分に響かずにひ弱になるなど、部屋の環境による影響は思った以上に大きい。こうした機能を薄型テレビが内蔵したのは実にありがたい。

暗闇の中での異星人との遭遇。暗部の再現性を確認

さて、レイたち家族は妻の安否を確認すべく、ボストンを目指す。被害にあった人々が長い行列を作り、運河を渡るフェリー船の発着場を目指している。このあたりのムードはまさしく災害映画と同じもの。トライポッドなる敵には軍による攻撃も効かないようで、地震や津波による災害と同じでなすすべもない。おそらくは9.11などのテロ攻撃を追体験させる狙いだと思うが、実際の異星人の侵略があったとすれば似たようなことになると思わされてしまう。

夜になってフェリー船に乗り込むが、その船も水中から現れたトライポッドに沈没させられてしまい、レイたちは泳いで運河を渡る。そこでは、植物の根のようなものがたくさん生えた不気味な景色が広がっていた。暗闇に浮かぶ赤黒い物体が実に見事に描かれていて、その不気味さにぞっとする。これは有機ELテレビならではの暗部階調性の豊かさだ。見通しの悪い暗闇の中で、森の緑や赤い植物がきちんと描かれるし、恐怖の表情を浮かべるレイの娘の表情も真に迫ったものになる。

前回の東芝の48X8400と同様、KJ-48A9Sも黒の締まりや暗部の階調性自体は大きな差はない。これは同じ有機ELパネルを使っているのだから当然だ。ただし、画作りには多少に違いもあって、東芝48X8400は黒の締まりが強く、深い闇の感じがよく出る。ソニーのKJ-48A9Sだと黒の締まりはキープしながらも階調感を高め、見えにくい暗部の様子を掘り起こして見せるような再現をする。見通しが良いのはソニーだが、東芝の方が夜の闇の恐さがしっかりと出る。同じ有機ELテレビでも暗部の見せ方には違いがある。画質を重視して有機ELテレビを選ぶなら、こうした暗部の階調感の表現の違いに注目して好みに合った方を選ぶといいだろう。

続いて、小屋の中に逃げ込んだレイたちは、人々をさらっていたトライポッドから、異星人が降りたって探索している姿を目撃する。このあたりのシーンも、闇の中に異様なシルエットが浮かぶ様子が怖いし、物音を立てずにその場を離れようとするレイたちの緊張感もよく伝わる。階調をしっかりと再現して真っ暗なシーンを見通しよく再現するKJ-48A9Sの実力がよくわかる。トライポッドから伸びているであろう探査用の触手のようなカメラが昔のブラウン管のように光る様子なども実に鮮やか。

この後、レイたちはトライポッドに捕らえられ、レイによる娘の決死の救出が行なわれるが、トライポッドの内部の真っ赤な光も鮮明で、公開当時はわからなかった周囲の様子もよくわかる。このあたりの場面だとトライポッドは原寸大のセットとして作られていることがわかる。4K化とHDR化で情報量は大幅に増しているが、それでもあからさまにセットや模型を使っていることがバレないのは、当時としてはかなりコストをかけて作り込んでいることがわかる。

ちなみに、CGバレや特撮バレが目に付くのは、トライポッドに間近に迫るような場面ではなく、遠景のカットだ。小高い丘の向こうで複数のトライポッドが襲来し、軍隊が攻撃している場面があるが、何体かのトライポッドを収めたロングのカットではやや解像感が不足しており、おそらくはCGで描いているのではないかと思ってしまう。こうした遠景のカットは、最新のCGを駆使した作品と比べるとやや差を感じる部分。こういうところをわざわざ見つけようと目を凝らして作品を見てしまうのは特撮好きの悪いクセだが、そういう楽しみを持つ人にとって有機ELテレビの情報量の豊富さは実に頼りになる。

ぜいたくな使い方とも言えるが、個室で自分専用のテレビとしてKJ-48A9Sを手に入れようという人ならば、画面ににじりよってじっくりと見ることだってできる。いささか変態的だが、画面に顔が当たるまで近づいても4Kならば画素が見えない。トライポッドの全身が映るような場面は一時停止して、じっくりと見てみると実に面白い。当時の技術でどのようにしてこの映像を作り上げたがわかるという点でも興味深いし、とても真似できないレベルでの手間とコストをかけて造っていることもわかる。

作り手の気持ちに迫れる表現力を自分だけのものにできる

物語は佳境を迎えるが、その結末は意外なものだ。原作は有名な古典SFなので、ご存じの人も多いと思うが、ぜひとも自分の目で確かめてほしい。「宇宙戦争」は1938年のラジオドラマで放送され、ニュース形式のリアルな語り口だったこともあって、視聴者がパニックを起こしたという話もある。この作品を2005年の現代に蘇らせたのは、対話のできない正体不明の存在の恐怖と、テロリストによる凶悪な攻撃の恐怖を重ねたものだと思う。そんな怖さを存分に味わえる映画であったことは間違いなく、特撮好きとしては物語性、映像の素晴らしさを含めて外すことのできない作品だと思う。

そんな作品を存分に楽しみたい。どのように作っているのかを知りたい、作り手の気持ちにどこまでも近づきたい。そんな思いがあって、自分は映像や音にこだわってきた。そんな自分にとっても、有機ELテレビはとてもありがたい存在だ。48型有機ELテレビは、使い勝手のよいサイズというだけでなく、20万円半ばと比較的価格が手頃ということも大きな魅力だ。ぜひともこの機会に有機ELテレビとの遭遇を果たしてもらいたい。きっと、自分の好きな映画や映像作品がもっと好きになるはずだ。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。