小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第846回
40型でリーズナブルなHDR対応テレビ、東芝「40M510X」を買ってみた
2018年4月4日 08:00
HDR10/HLG対応テレビが欲しい
筆者の自宅での仕事環境は、PCディスプレイとして40型の4Kテレビを使うという、「4Kコンピューティング」である。これは2015年2月に記事にしたことで、かなり大きな反響を得た。
3年経った今も基本的な構成は変わっていない。当時購入した40型4KテレビはパナソニックVIERA「TH-40AX700」だが、テレビおよびPCディスプレイとしての機能は今でも申し分ない。ただ2014年発売のモデルということで、HDRに対応していないのがネックとなってきた。
放送ではまだHDRはスタートしていないものの、ネット配信では既にHDRコンテンツも増えてきている。加えてデジタル一眼やビデオカメラもHDR対応のものが増えてきた。これらをテストする機会もあるので、やはりそろそろHDR対応テレビを買わないとな……という事で色々探した結果、東芝映像ソリューションのREGZA「40M510X」にたどり着いた。
「40M510X」は、HDR10/HLG(ハイブリッドログガンマ)対応4Kテレビとしては、現時点で最小サイズとなる。現在PCモニターとして使用中のVIERA「TH-40AX700」も40型なので、スポッと入れ替えできるのはこれ以外になかった。発売は2017年5月で、発売当初は約14万円だったが、購入した2018年2月中旬時点で81,480円と、かなり廉価で購入したつもりであったが、そろそろ新モデル投入のタイミングも近づいているのか、4月現在では既に8万円を切り始めている。
購入しておよそ1カ月半、メリットもデメリットもわかってきたところである。今回は東芝REGZA M510Xシリーズの使い勝手について、ご報告したい。
着実に進化を感じる内容
まずはハードウェアとしてのポイントを押さえておこう。外寸は脚部まで含め、高さ57.6cm、幅90.3cm、奥行き17.8cm。スタンドを省くと、奥行きは6.9cmとなる。重量はスタンド込みで13kg、消費電力は定格動作時で115Wとなっている。パナソニックの「TH-40AX700」が133Wだったので、ほぼ同じ画面サイズでありながらこの4年で消費電力は確実に下がってきている。仕事中は常時付けっぱなしにするだけに、消費電力の低下はうれしい。
パネルはVA方式LEDバックライトで、4K放送のHDR表示に対応。放送対応ということは、Blu-ray等で使用されているHDR10だけでなく、HLGにも対応という事である。
狭額縁のミニマルデザインではあるが、底部には前面に向いたスピーカーがあるため、幅4cmほどのパンチンググリルがある。ドライバのサイズなどは情報がないが、音の明瞭度が高く、加えてセリフ音を分離して持ち上げる「クリア音声」機能を備えている。
端子類はすべて左側に集まっている。アンテナ入力は地上デジタル・BS/110度CSデジタルの2入力だが、4Kチューナは搭載していないため、4K放送がダイレクトに受信できるわけではない。
HDMI入力は4系統で、そのうち1番のみARC対応だ。また2番はアナログ音声入力にも対応する。LAN端子もあるが、もちろんWi-Fiも内蔵している。録画用HDD接続用にUSB端子が1つ、そのほか汎用USB機器接続用にもう一つある。
リモコンも見ておこう。レコーダのリモコンに比べれば若干シンプルだが、中央部分には機能が集中している。一つだけ色が違う「みるコレ」は、ネットサービスや録画機能をまとめた、いわゆるホーム的な画面へ移動する。
テレビ番組とクラウドサービスの関係
まずテレビ放送の録画機能を見ておく。USB HDDを接続すればテレビ録画が可能になるわけだが、テレビの番組表による録画予約や録画リストは、旧来の機能と大きく変わるところはない。地上波・BS/CSともに3チューナ搭載しているため、2番組までは同時録画ができる。
レコーダと違うところは、画質設定がなくDRモードで録るだけというところだ。よってビットレートは地上波であれば17Mbps程度ということになる。なおBS放送も今年1月から帯域削減され、BS11など一部チャンネルを除き、地上波と同程度になった。REGZA本体の録画残量表示は24Mbpsが目安となって算出されているが、このあたりは今後のアップデートで現実的な値への修正が必要だろう。
従来の番組表スタイルに変わる機能を提供するのが、「みるコレ」だ。クラウドからの番組情報とネット配信サービスが合体した、REGZAの顔とも言える画面である。
みるコレを特徴付ける機能が「みるコレパック」だ。話題の番組、お笑い特番など、見逃せない番組をパック化して提供。これをおまかせ自動録画に指定することで、柔軟な自動録画を実現する。タレント名などで検索すれば、そのタレントのみのパックが作成される。
Netflixのパックでは、注目番組が一括で表示される。Netflixのホームとはまた違った視点でコンテンツと出会うことができる。
録画用HDDは、手動での予約録画用と自動録画用にエリアを分けて利用する事になる。DRなのでそれほどの容量は入らないが、うまく活用すれば、レコーダ並みに録画番組も楽しめるようになる。
また録画リストや予約リストも、みるコレから開くとまた違ったUIとなっている。みるコレのページは項目が多いので、リモコンでリストの枠まで行くのが面倒ではあるが、録画リストに関してはカラーキーのショートカットが割り当てられている。テレビもネットコンテンツも1つのUIで扱うという試みとして、全画面に情報がバーッと展開するのは見栄えがいいが、リモコンの十字キーでの操作では使い勝手に限界があるのが残念である。
HDRの対応状況
続いてHDR関係の機能をまとめておこう。現在HDRと呼ばれる方式には大きく分けて2種類ある。HDR10とHLGだ。HDR10は主に映画やゲームで使われており、コンテンツごとに最大輝度を指定することができる。ガンマカーブはPQと呼ばれる。
HLGはNHKとBBCが放送ワークフロー向けに開発した方式で、従来のテレビに入力すればSDRで、HLG対応テレビに入力すればHDRでと、2つのガンマカーブを内包する。
したがってHDR10とHLGは、違ったガンマカーブを持っているので、テレビ側で切り換えが必要になる。この切り換えは、HDMI信号に含まれるメタデータを読み取って、ユーザーが意識することなく自動的にテレビ側で切り換えてくれるのが理想ではあるが、これに関しては各社ポリシーが異なるようだ。
ソニーおよびパナソニックでは、まだメタデータの整備が十分ではないとして、オート切り換えの他、マニュアル操作による切り換えもできる。一方東芝とシャープでは、HDR10とHLGの切り換えはメタデータによる自動切換しか対応しておらず、マニュアル切り換えができない。
しかし実際に、HLG撮影が可能なカメラだからといって、MDMIで繋いだ際にメタデータを付けて出力してくるかはわからない。PC用4K I/Oボードも同様だ。この点で、自動切り替えしかないREGZAを買ったのは失敗だった。なおREGZAの業務用機「Z810X(P)」シリーズには、手動切り換え機能がある。
加えてカメラのHDMI端子はMicro端子が多いが、MicroHDMI - フルHDMIケーブルのラインナップには、4K HDR対応製品がないという状況である。そうなると、USB端子を使ってメモリーカードを直接読み出して再生するしかないが、これもファイル自体にメタデータが付いてなければ切り替わらない。
現時点において、自分で撮影するユーザーであれば、HDR10とHLGのマニュアル切換機能があるメーカーのテレビを買うべきだろう。REGZAもファームウェアのアップデートでマニュアル切り換え機能が載せられるのであれば、ぜひ対応していただきたい。
もちろん自動切換がきちんと動作する機器も存在する。一番身近なところでは、第2世代でHDR対応となったAmazon Fire TVがある。Amazonプライム・ビデオでHDRコンテンツを再生すると、自動的にHDR10に切り替わる。
REGZAでは、メタデータが来れば信号の解析情報を表示できる。画面はAmazonのオリジナルコンテンツ「高い城の男」だが、色空間はBT.2020、レンジ変換特性(ガンマカーブ)はST 2084(PQ)となっているのがわかる。またこのコンテンツのピーク輝度は870nitで調整され、平均は704nitであることもわかる。
元々REGZA本体では、Netflixに対応している。NetflixもHDRコンテンツを提供しており、これはそのままHDRで表示できる。また3月末から放送波でのアップデートで、新たにAmazonプライム・ビデオとスカパー!オンデマンドにも対応した。
Fire TV経由ではなくREGZA内蔵アプリからAmazonプライム・ビデオで同じ「高い城の男」を視聴してみたところ、こちらではHDR表示であることが確認できなかった。Amazon側でREGZAをHDR機器として認識していないのか、それともメタデータが来ないのかわからないが、HDR表示ですんなり見られるまで、解決しなければならない問題は多い。
根本的な話として、ダイナミックレンジがそれほど高くない液晶ディスプレイでHDR表示に意味があるのか、疑問に思う方もいるだろう。ただ、ダイナミックモードがテレビ側で判断してダイナミックレンジを拡張するのに対し、HDRではすでに信号側でダイナミックレンジが拡張しており、1カットずつ演出意図として輝度が考慮されているぶん、見え方は厳密には同じにはならない。
Googleアシスタントに対応
3月から提供されているネットからのアップデートでは、Googleのスマートスピーカーにも対応した。放送波とネットでアップデート内容が違うのは、スマートスピーカー対応は元々ネットに繋がっているのが前提の機能だからだろう。
REGZA側の設定は、「みるコレ」画面内にある「クラウド設定」の中にある。スマートスピーカーは、音声操作だけでは設定できないので、スマートフォンを使って設定する事になる。スマートフォンにGoogle HomeとGoogle Assistantの両アプリがインストール済みで、すでにスマートスピーカーは設定されている前提で説明する。
Google Homeのメニューから「できること」をタップし、「アシスタントの機能を検索」からREGZAを検索する。するとREGZAの登録画面が出てくるので、ここで「リンク」をタップする。連携コード入力画面に移行したら、REGZA側で表示されている8ケタの番号を入力すると、リンクが完了する。
この設定はスマートスピーカーにも転送され、あとは音声操作でREGZAが動かせるようになる。音声コマンドでは、「OK Google、REGZAに繋いで」と言うと、「REGZAです」と別の声になる。電話をかけて係の人に代わってもらったイメージである。
REGZAの音声コマンドは、チャンネルや入力の切り換え、電源のON・OFFなど簡単な操作はできるが、「みるコレ」画面を開いたり、録画リストを表示させたりすることはできなかった。おそらく次にリモコン操作が必要なコマンドは、音声コマンドには対応しないという事だろう。
いちいちREGZAに代わってもらうのが面倒な場合、「OK Google、REGZAを使って~」というフレーズで一気に操作ができる。ただそれだと、「OK Google、REGZAを使ってHDMI1に切り換えて」みたいにめちゃくちゃ長いフレーズになってしまうし、日本語としても変なので使いづらい。Google Homeは特定のフレーズで一定の動作をさせる「ショートカット」が登録できるので、うちでは「OK Google、Macに切り換え」というだけで、「OK Google、REGZAを使ってHDMI1に切り換えて」を実行するよう登録している。
総論
REGZAは4つのHDMI入力ごと、あるいはテレビ表示、ネットコンテンツ表示でもそれぞれ映像設定が記憶できるため、コンテンツに合わせた表示ができるところがウリである。テレビを視聴するよりも、外部入力するモニターとして使うとメリットが大きい。
同時に40インチでHLG対応という、限られた選択肢の中ではこれしかなったというのが実情ではあるが、HDMIのメタデータ解析機能があるのはREGZAだけなので、かなり期待した。だが現実は、メタデータを出さないHDR機器やファイルがまだまだ沢山あり、HDR10とHLGがマニュアル切換できないと、こんなに不便だとは思ってもみなかった。
こういう実情があらかじめわかっていれば、多少サイズが大きくても他社を検討したところだが、今回は高い勉強代だと思って我慢するしかない。今後のファームアップに期待しよう。