小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第865回
グイグイきてる中国撮影機材事情、DJI Mavic 2も発見! BIRTVが凄かった
2018年8月29日 08:00
今年も行ってきたBIRTV
昨年初めて中国は北京で開催される映像機材展「BIRTV」の取材に行ったわけだが、なかなか新鮮だったので今年も行ってみることにした。今年の会期は8月22日~25日の4日間である。
会場は昨年同様、北京国際空港から空港特急で約30分ほどの三元橋駅から、徒歩15分ほどのところにある「中国国際展示センター」。来場者登録は公式サイトからWe Chatアカウント当てにQRコードが送られてくるので、それをカウンターで見せれば入場パスが発行される仕組みだ。国外からのビジターは入場無料だが、「報道関係者」という枠はなく、一般人と同じ扱いである。当然会場内にはプレスルームのようなところもないので、仕事したければ中にある喫茶店か、会場の外に出るしかない。
会場入り口で全員手荷物検査を受けるが、形ばかりといったところ。出るのはノーチェックだ。むしろ中の方に高い機材が沢山あるので、持ち出しのほうをチェックした方がいいんじゃないかと人ごとながら心配になる。
今回も多くのブースを取材したが、本稿ではコンシューマユーザーでも気になる、日本にも入ってきそうな製品を中心にご紹介したい。
公式ではないが……FUJINONのM43レンズ
大手メーカーが集う第8ホールの入り口すぐに陣取るのが、富士フイルムである。多くの放送用レンズを展示しているが、会場の隅に珍しいレンズを見つけた。
FUJINONのシネマ用ズームレンズであるMKシリーズは、以前本稿でもレビューしたことがある。「FUJINON MK18-55mm T2.9」と「FUJINON MK50-135mm T2.9」は、ソニーのPXW-FS7などのカメラ用として、Super 35mmサイズセンサーのEマウントで企画されたレンズだが、のちに同社Xマウント用も発売された。
このレンズがパナソニックのGH5にくっついているので、なんでだろうとよくよく見たら、マイクロフォーサーズマウントに改造してあった。すでに中国では、今月から販売されているという。
メーカーの方にお伺いしたところ、このレンズはFUJINONとして公式にリリースしているものではなく、EマウントのMKレンズをマイクロフォーサーズに改造するサービスがあり、今回はレンズアクセサリーの一環として展示をしているという。
改造した時点でメーカー側の保証は無くなってしまうので、やるなら自己責任で、という事であった。フォーサーズはSuper 35mmより少し狭いので、画角も少しテレ側にシフトする。
一般的な静止画用レンズと違い、シネマ撮影用レンズはズームしても全長が伸びないため、リグに組んでフォーカスやズーム制御などがやりやすいという特徴がある。GH5ユーザーからもMKレンズを使いたいというニーズもあるのだろう。
ただメーカーとしては、カメラボディとレンズとの価格差が大きいため、自社で公式にマイクロフォーサーズマウントのMKレンズを出す予定はないという。
会期途中から突然展示、DJI Mavic 2シリーズ
中国企業でもプロ業界で高い認知度を誇るのが、DJIである。BIRTVではドローンの展示は控えめで、ジンバルのRONINシリーズやジンバルコントローラのMaster Wheelsといった製品をメインに展示している。
コンシューマコーナーではMavic Airなどが展示されていたが、会期3日目の24日から、突然新製品の「Mavic 2」シリーズの展示がスタートした。すでに日本でも報じられているが、ハッセルブラッドと共同開発となる1インチセンサーを搭載した「Mavic 2 Pro」と、コンシューマ機では初めてズームレンズを搭載する「Mavic 2 Zoom」だ。
ワールドワイドでは24日に発表とはいえ、会期途中から展示内容を変更するのは珍しい。ただ中国国内では十分にニュースが認知されていないのか、あるいはコンシューマ機はプロユーザーの関心が薄いのか、ブースはそれほど混雑していなかった。
日本でもプレス関係者向けの体験会が予定されているので、実際の性能も追ってお伝えできるだろう。
蛍光灯型LEDライト、Falcon Eyes「LB-16」
香港の照明機器メーカーFalcon Eyesは、元々写真撮影用のモノブロックライト製造からスタートしたが、現在はLEDライトを中心とした製品を幅広く展開する。日本国内でも入手できるので、ご存じの方はよくご存じのメーカーである。
そんなFalcon Eyesの新製品は、蛍光灯型のLEDライトだ。影の柔らかいライティングを行なうには、面光源ライトを使うのが一般的だが、どうしても大型となってしまい、スタジオワークが中心となる。一方線光源である棒状のライトは、最低二本使えば面光源に近い効果を得ることができるが、なかなか手軽に使える製品がなかった。
「LB-16」は600×45.5mm/16Wの棒状のLEDライトで、内部にバッテリを内蔵。光量の調整のほか、色温度を3000~5600Kまで可変できる。2.4GHz帯の別売コントローラを使用すれば、リモートで複数台の色温度を同時に調整できる。
販売は3本セット(予価500米ドル)と6本セット(同1,000米ドル)で、ACアダプタやジョイントパーツなどが同梱され、キャリングケースも付属する。1本の重量は480gしかないので、別売のマグネットアクセサリを使えば、金属の柱などにくっつける事ができる。
LB16の倍の長さ1200×45.5mm/32Wの姉妹品「LB-32」も参考出展されていた。
iPhone向けジンバルの新作、FeiyuTech「SPG2」
中国にはまさに無象のジンバルメーカーがあるが、FeiyuTechは早くからGoPro用ジンバルを日本国内でも販売しており、比較的知られたメーカーの一つである。ハイエンド向けはすっかりDJIやTILTA、ZHIYUNなどに追い越された格好だが、小型ジンバルにはまだまだ強みがある。
新製品として紹介されていた「SPG2」は、すでに発売されている「SPG」の後継モデルだ。日本国内ではSPGの防水モデルをSPG2として販売しているため、ちょっとややこしいことになりそうだが、製品的には全くの別物である。
新モデルのポイントは、液晶モニタを内蔵して動作モードの確認や設定変更が本体のみで可能になったこと。また右側にコントローラがあり、ジョイスティックの2軸のコントロールのほか、3軸目のコントロールにも対応する。つまりヨー、ピッチだけでなく、ロールもマニュアルコントロールできるようになった。また握った際の背面、人差し指があたるところにもダイヤルがあり、こちらにも機能をアサインすることができる。
加えてボディ横にはオーディオ端子があり、収録中の音声をモニターするためにイヤフォンを接続できる。また逆にマイクを接続して、スマホ撮影時にもマイク収録を可能にしている。ジンバルとスマホ間はBluetooth接続だ。つまりジンバルがBluetoothヘッドセットとして認識されるという事だろう。
ただしBluetoothマイクを使って動画撮影するには、アプリ側の対応が必要となる。現在動作確認できているのは「Tik Tok」ほか数種類で、今後はリクエストが多い動画アプリから順に対応を依頼していくという。
中国国内での予価は999元というから、日本円で17,000円程度。日本から買う場合は送料等も含めると、2万円強といったところだろうか。
セールスマネージャーのヘレン・リン氏は、日本には支社もまだなく広報活動も上手くできていないのが課題だと認識しており、今後の新製品情報はWe Chatで直接送ってくれるという。
米国の展示会ではほとんど紙のカタログは配布されないが、中国では大手メーカーほど紙の分厚いカタログを作りたがる傾向がある。そうでない小さいところやベンチャーは、ほとんど会場でWe Chatのアカウントを交換し、情報を流してくるというスタイルが多く見られる。
なるほどねーのアイデア小物たち
小さいブースが立ち並ぶメイン会場の2階を散策していたら、360度カメラ用ジンバルを見つけた。確かに360度カメラにもジンバルは必要だろうが、あまり製品化しているところは少ないようだ。
Gudsen Technologyという会社の「MOZA Guru360 Air」は、以前「MOZA Guru360」という製品のアーム構造を変えて、可動範囲を広くした新モデルである。
通常のジンバルと違い、カメラ位置がかなり高くなるので、転倒を避けるために下部にウエイトを足してバランスを取る。したがって全体の重量はかなり重く、デモ機を持った限りでは総重量5kgぐらいあった。手持ちで撮影するというよりは、車載やクレーン等に積むためのものだろう。
日本のAmazon.co.jpでも製品を販売している三脚メーカーのCOMANで見つけたのは、スマートフォン用の撮影スライダー。大型スライダーのミニチュア版といった作りだが、工作精度はなかなか高く、滑らかに動作する。両脇のレールの中央にある軸を斜めに設定すると、カメラが常に中央に向くといった動作も可能だ。
工場出荷価格も聞いたが、かなり安い。スマホでスライダー撮影したい人がどれだけいるのかという疑問もない事もないが、ストリート価格1万円程度であれば買ってみたい気がする。
レンズのクリーニング用品を製造するVSGOというメーカーで、おもしろいものを見つけた。一見普通のレンズブロアだが、底部に重りが入っていて、起き上がりこぼしのように勝手に上を向く。
ブロアは机の上などに置くと、どうしても吹き出し口が下になってしまい、ホコリが着いてしまって掃除にならなくなってしまう。そのため底部にロケットの羽根みたいなものをくっつけて自立するような製品も登場しているが、重りを使って勝手に立つというのはなかなかのアイデア。
吸気口は吹き出し口の根元あたりにあり、フィルタリングもされている。価格は日本円で800円程度と言っていたが、これなら1,000円ぐらい出しても欲しいところだ。
総論
BIRTVの取材は今年で2年目となり、だいぶ勝手がわかってきたところである。大手メーカーの新製品目当てならNABへ行くべきだが、BIRTVでは中国という「製造現場」に近いところから直接出てくる機材が面白い。
今回の展示でトレンドを感じたのは、撮影機材の豊富さだ。特にジンバルやロボットアームに関しては多種多様な製品があり、三脚を飛び越えて、もはやカメラ固定具はモーター付きが当然といった勢いである。
ジンバルに関しては、日本はシネマ撮影が中心となるため、大型のものしか注目されないが、中国ではミラーレスや一眼用の、シングルハンドのものが多い。このクラスは日本ではRONIN-Sぐらいしか注目されていないが、中国ではブライダルその他でスチルカメラによる動画撮りが多く、こうしたクラスのボリュームが厚くなるのだろう。
もう一つのトレンドは、LED照明機材がほぼRGB光源化したことであろう。RGB光源+白色+黄色の、5色を搭載したものが多い。白色+黄色で通常の照明のほか、どんな色の照明も1台で作れるという製品があちこちで見受けられた。
実際にそこまでカラフルな照明が必要なケースはそんなにないんじゃないかと思われるが、こうした展示会の照明としてはまことに目を引く。撮影ではなく、店舗や行楽施設でのニーズがあるのかもしれない。
正直、似たような製品をあちこちで見かける印象はあるが、厳しい競争を勝ち残れるかは1~2年で結果が出る。このスピード感が、中国の機材ビジネスである。