小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第944回
これでいんだよ! ゲーム録画・Web会議で使えるサンワサプライのキャプチャがステキ
2020年7月9日 08:30
落ち着いてきた「ビデオキャプチャ」
ビデオ信号をなんらかのファイルにする、いわゆるビデオキャプチャ製品は、次第に選択肢が減ってきたように思う。以前はビデオカメラがテープ式だったし、VTRもあったので、それらのデータをファイル化する需要はそこそこあった。だが今ではカメラもレコーダも記録方式がファイル化されているので、映像の取り込みはキャプチャではなく、データ通信に変わって行った。
とはいえ、アナログ出力やHDMI出力をキャプチャする需要はまだある。例えば筆者の場合、記事執筆のために機材のUIをキャプチャしたいので、カメラやレコーダのHDMI出力をキャプチャする必要がある。
以前はエスケイネットやAVerMediaといったメーカーの、パソコンに繋いでキャプチャするコンバータ的な製品を使っていたが、キャプチャアプリのアップデートがなく、OSのバージョンについていけなくなった。ハードウェア的には壊れていないのに、もったいない限りである。
そんなわけで最近は、パソコンに繋がず単体でキャプチャできるアイ・オー・データの「GV-HDREC」を使っていた。ゲームキャプチャとして売られている製品である。
この製品の難点は、本体にモニターがないことだ。録画ランプもあるのでまあ間違いなく録れてはいるのだが、どういう画面が録れているかは、別途HDMI経由でテレビやモニターに繋がなければならない。だがいくつもモニターをかき集めるのも面倒だ。
そんなタイミングで、PC周辺機器でお馴染みサンワサプライから、小型ながら画面付きで収録できるHDMIキャプチャボックスが発売された。「400-MEDI034」という名前で、価格は直販サイトで25,800円(税込)。以前アナログビデオデッキの映像を保存するボックスとして売られていた「400-MEID029」のリニューアル版である。
昨今はゲーム実況に限らず、リモート会議などで動画を扱う機会も増えている。デジカメからのキャプチャのみならず、HDMI-USB変換器としても使えるという400-MEDI034を、早速試してみよう。
機能てんこ盛りのボディ
まずボディだが、縦73.5mm、横160mm、高さ25mmの手のひらサイズ設計。左側のディスプレイ部は480×234ドットの3.5型液晶で、タッチ式ではない。右側のボタン部分はゴム製だが、スイッチとしてはしっかりしており、グラグラした感じはない。
メニューボタンで設定画面を出し、十字キーで設定していくスタイル。モードは、動画録キャプチャ、静止画キャプチャ、再生モードの切り替えである。
電源は付属USBアダプタで駆動するが、本体内にバッテリーも装備しており、4時間充電で連続録画時間は約2時間30分。再生は約6時間30分だ。
動画記録フォーマットはMP4で、コーデックはH.264。対応入力解像度は最大1,920×1,080/60pで、そのほか30p、24pにも対応する。最低解像度は720×480、オーディオサンプリングレートは48kHzだ。画質モードは3段階あり、1080/60pの場合で、高が30Mbps、中が22Mbps、低が18Mbpsとなる。
入出力を見ておこう。端子類は全て背面にあり、左から同軸のDC入力、マイク入力も兼ねるヘッドセット接続端子、アナログAV入力、HDMI入力、HDMI出力、USB-A端子、microUSB端子となっている。
記録メディアとしては、背面の USBーA端子に挿したUSBメモリーを使うか、側面にあるSDカードスロットに挿したSDカードかを選択できる。
加えて本機には、リモコンも付属する。ワンマンオペレーションの際に本体を近くにおけない場合など、離れた場所から録画を開始できる。また再生モードへの切り替えや静止画撮影など、本体でやれる機能はほとんどできるだけでなく、マイクやスピーカーのミュートなど、本体でできない操作も可能だ。
動画も静止画も同時キャプチャ
では早速キャプチャである。まずはパナソニックのカメラ「DMC-G7」のHDMI出力をソースとして入力してみた。デジカメは本体でも動画記録可能だが、UI画面を録画することができない。メニュー操作の説明動画を作りたい場合は、液晶画面を別のカメラで撮影するという方法もあるが、反射を抑えて小さい画面を撮影するのはなかなか難しい。
こうした場合に、操作の様子を動画で撮っておくわけだ。もちろん静止画もキャプチャできる。静止画モードに切り替えて録画ボタンを押すと静止画が撮影できるのに加え、動画として録画中に録画ボタンを長押しすると、内蔵スピーカーからカシャッとシャッター音がして、静止画が撮影できる。
アイ・オー・データの「GV-HDREC」は、静止画をキャプチャするためにはいったん動画として録画しておき、それを再生しながらでなければキャプチャできなかった。アクションゲームなど、リアルタイムで決定的瞬間を捉えるのが難しい場合はそれも便利だが、多くの場合は本番で動画と静止画が両方同時に押さえられる方が便利である。
続いてマイク入力を試してみよう。例えばゲーム実況を収録したい場合は、ゲーム音声と喋りの音声を両方収録する必要があるが、HDMIからゲーム映像と音声を、ヘッドセット端子からマイクを通して喋りをミックスして収録できる。
ヘッドセット端子は、ヘッドフォン出力とマイク入力の4極混合端子だ。本当にゲーミングヘッドセットを持っている場合はここに繋ぐだけだが、マイクだけ繋ぎたい場合は工夫が必要になる。ヘッドフォン端子とマイク端子を混合するためのケーブルが800円ぐらいで販売されており、それを購入する必要がある。サンワサプライからも販売されているので、探してみるといいだろう。
これのマイク端子にマイクを繋ぎ、4極の先端をヘッドセット端子へ接続する。ヘッドホンは繋いでも、繋がなくても大丈夫だ。ただしヘッドセット端子にケーブルが繋がっている時は、本体スピーカーからは音が出ないので、音声のチェックはスピーカーではできない。さらにミックスレベルが調整できるわけでもないので、いずれにしてもマイクを繋いだ場合は、ヘッドフォンで聴いて、ゲーム機側のレベルで調整するしかないだろう。
またスケジュールを決めての自動録画もできる。正直どういう使い方ができるのかあまりイメージが浮かばないが、録画機能のない監視カメラ等と組み合わせて、特定の時間のみ録画するといった使い方はできそうだ。
再生時は、最新の動画ほど若い番号がふられる仕様となっている。例えば動画を8本記録した場合、1番が最新動画、8番が一番古い動画という順番になる。
もう一つの使い方、HDMIコンバータ
昨今はオンライン会議でも、Webカメラではなくデジタル一眼などを繋ぐというのが流行っているようだ。Webカメラでは広角過ぎてプライベートな部屋全体が映ってしまうとか、背景がボケないので画面が妙に生活感があるといったところから、50mm前後のレンズで被写界深度を浅くして会議やリモート出演に挑むという人もあるようだ。
ただ、デジタル一眼をZoomなどで使うには、何らかの形でUSB Video Classのカメラに偽装させなければならない。そうしたHDMIキャプチャーデバイスを購入するのも手だが、実はこうした変換アダプタでもだいたい2万円以上する。
それなら本機のUSB出力を使わない手はない。本機ではパソコンにUSB接続した際の挙動を3つから選択できる。
カメラ接続モードを使うと、本機にHDMI接続したデジカメの映像をストリーミングで使用できる。ここではリモート会議などで利用者が多いZoomで接続してみたところ、無事USBカメラとして認識した。カメラ接続モードでは本体での録画はできなくなるが、PC側で録画できるので問題ないだろう。
ただ筆者が試した範囲では、macOSではUSB Video Classで認識できなかった。しかしBootCampでWindows 10を起動させたMac MiniではUSB Video Classで認識できたので、ハードウェアの相性というよりは、macOSの標準ドライバのクセに対応できていないという事かもしれない。
なおカメラ接続モードでも本機のマイク入力は使える。カメラからの距離が遠くても、音声だけはワイヤードで入力できるので、絵柄が重要なリモート出演などの時には便利である。
総論
安価なキャプチャユニットは、これまでビデオテープのデジタル化やゲーム実況の収録などに使われてきたが、モニターが付いたとなると、用途が変わってくる。カメラと繋いだ場合、キャプチャユニット側で録画しなくても、演者の手元モニターとしても使えるわけだ。また液晶モニタが自撮り用に反転できないカメラも、外部モニターがあることで使えるようになる。
パソコンのHDMI出力も録画できるので、ソフトウェアの紹介やレクチャー動画も収録できる。マイクを繋げば解説も同時に記録できるので、操作しながらの解説も一発撮りが可能だ。
加えてカメラ接続モードでは、USB Video Classのコンバータにもなる。ソフトウェアスイッチャー/コンバータのOBS Studioにも対応しているので、複数の音声や映像ソースと切り換えながらの完パケ作成も可能になる。
旧製品からHDMIに対応しただけだと油断していたが、結構使い道が多いデバイスだ。“ディスプレイ付き”のキャプチャデバイスはプロ用なら沢山あるジャンルの製品だが、この価格でコンシューマ用は以外とありそうでなかったところだ。これまでになく動画需要が盛り上がっている昨今、「1台あれば」的な製品の需要もまた、高まってくるところである。