小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第739回:8mmフィルムカメラ復活!? 腕時計からカメラ操作、CESで見た次世代技術
第739回:8mmフィルムカメラ復活!? 腕時計からカメラ操作、CESで見た次世代技術
(2016/1/11 09:00)
いよいよ終盤
現地時間の1月8日、CES会期3日目を終えたところである。今年は土曜日まで会期があるが、最終日は出展しないブースもあるようで、実質フルでブースが見られるのは本日が最後ということになる。
また展示会場以外でも、ホテルのボウルルームなどを使ってプライベート展示が行なわれており、移動も大変だ。展示会場からのシャトルバスやタクシーには、長蛇の列ができている。
さて今回は、活発化する映像配信を支えているroviのプライベート展示の網様と、会場で見つけたユニークな製品をレポートしよう。
音声認識でさらに先へ行くroviの戦略
全米最大手の番組・映画データベース提供者であるroviは、ラズベガスメインストリートの中央部に位置するシーザーズパレスホテルで、毎年プライベートブースを展開している。
roviは昨年、FanTVというベンチャーを買収した。簡単な検索動作で横断的にサービス事業者からコンテンツを検索できるユニークな形状のハードウェアを手がけていたが、昨年10月にハードウェア事業から撤退、今度はそのソフトウェア技術を使って、様々なプラットフォーム上でサービスを展開することになった。
例えば文字による検索は、キーボードが繋がらないテレビやSTBのようなハードウェアが苦手な分野である。十字キーを使ってひたすらポチポチ入力するのが面倒なため、スマホと連動させるか、音声認識でやろうという機運が高まっている。
一方FanTVが提供する文字検索は、極力入力の手間を減らす方向でチューニングされている。例えば米国CBSで放送中の人気ドラマ「The Big Bang Theory」を検索したい場合、頭文字の「tbb」と入力しただけで、tbbが略号として考えられる候補を検索する。
あるいは綴りを間違えた場合でも、正しい候補を検索できる。Googleでよくある、「もしかして」である。Tom Cruiseを検索するつもりで“cruze”と入力しても、候補の中にTom Cruiseがでてくる。
さて音声認識といえば、日本ではAppleやGoogleがスマートデバイス上で提供するサービスがよく知られるところだ。比較的に自由語を理解するが、あまり込み入った内容を理解させるのは難しい。
一方メディアサービスとしては、Amazonが自社のFireTV上で動作させているものがある。こちらは自由語を理解するわけではなく、コンテンツの名前といったそのものズバリを見つけてくるだけにとどまっており、今日の気分に合わせたオススメを紹介してもらうといった使い方は難しい。
一方FanTVが提供する技術は、かなりフレキシブルなリクエストも音声で実行することができる。例えば「トムハンクスが出てた空港の映画ってなんだっけ?(What’s that movie with Tom Hanks in the Airport?)」と喋ると、「The Terminal」が検索される。
このように、あいまいな言葉からその人にとって正しい結果を導くためには、過去の検索履歴や視聴履歴から好みの傾向を分析するなど、パーソナライズが必要だ。また子供が検索する場合には不適切なコンテンツが検索されないよう、フィルタリングする必要もある。
これまでコンテンツサービスは、それぞれが個別にアカウントを作るという行為でこれをわけてきた。例えばNetflixでは支払者は1人でも、キッズ用のアカウントも提供される。これはその都度、利用者が自分のアカウントを使ってログインする必要があったわけだが、子供が大人のアカウントで入って有料の成人向け動画を見るとかいったことも、考えられないわけではない。
roviが今年導入予定の技術は、音声認識を使ってアカウントを自動で切り替えるというものだ。例えば音声リモコンを使ってパパが検索すると、アカウントが自動的にパパのものに切り替わり、検索結果が表示される。子供が喋れば、子供のアカウントに切り替わる。
これは、アカウントの切り替え忘れを防ぐと同時に、大人のアカウントを子供が利用できなくなるとか、他人に自分のアカウントを利用されることを防止するというメリットもある。
これらの機能は、roviのサービスとして提供されるわけではない。実際にはサービス事業者に実装されるわけだ。
Kodakの「Super 8 Camera」、実際は……
現地時間の1月5日にKodakから、ユニークなカメラが発表された。かつてKodakが開発し、世界中で使用されたSuper 8mmフィルム誕生50周年を記念して、この秋に発売予定の「Super 8 Camera」だ。
Super 8mmフィルム(15mカートリッジ)に記録するカメラで、レンズはリコー製の固定焦点(6mm)。オプションで6-48mmズームレンズも用意する。3.5インチの液晶ビューファインダも備えている。
実際にKodakのブースに見に行ってみたが、実働するモデルはなく、モックアップであった。一応手にとって触れるようにはなっていたが、最終的なスペックは未定ということであった。
レンズはスクリューマウントで、見た限りCマウントだろう。Cマウント元々16mmフィルム撮影用だが、Super 8もCマウントを採用している。
Cマウントは、一部監視カメラや医療用機器などでまだ使われており、現役のレンズが存在する。本体に付属するリコーのレンズもその一つだ。
中古市場では一時期二束三文で取引されていたが、マイクロフォーサーズが出てきた時に、レンズマウントアダプタを使ってCマウントレンズで撮影するというのが流行した時期があり、その際に市場から払底し、価格が高騰した。ただ、今となっては持て余している人も多いだろうから、また中古市場に流れる可能性はある。
本体にはSDカードスロットもある。2014年には、デンマークのメーカーが同様のカメラを開発、実際に発売したことがあるのだが、このカメラではSDカードに音声を記録していたので、おそらくKodak Super 8 Cameraはこのモデルを下敷きにするのだろう。
撮影したフィルムは、現時点はどのDPEでも現像できないので、一旦Kodakのラボに送り、現像した後クラウド経由でデジタルデータとして引き渡すということを考えているようだ。
そもそもフィルムとは言っても8mmでは、現代人にとって画質的な期待には添えるものではない。さらに言えば8mmの面白さは、現像済みのフィルムを手にとって見られたり、細工したりできるところに楽しみがあるわけだが、デジタルデータになって映像だけ戻されても、それが面白いと言えるのか、疑問は尽きない。
意外に盲点? スマートウォッチでデジカメ撮影
ガジェット好きの人から注目されているのが、カシオが発表したスマートウォッチ「WSD-F10」(日本では3月下旬発売/7万円)。そもそもスマートウォッチは心拍計などの機能を有するため、スポーツで使用できるよう防水・防滴となっているモデルが大半だが、さすがG-SHOCKのカシオが作るだけあって、タフネス具合が1ランクも2ランクも違う。
そもそもガジェット好きは意外にインドアな人が多いため、普段使いにはゴツすぎるという意見も散見されるが、おそらく全然違うユーザー層を見ているのだろう。
また同時に、日本では昨年暮れに発売された、モニター分離型デジカメ「EX-FR100」も展示されていた。以前レビューした「EX-FR10」の後継機である。
カメラとモニター部が分離できるというコンセプトは、多くのカメラがスマートフォンでリモート撮影できる中、それほどのインパクトを市場に与えていないが、FR100のカメラ部はスマートウォッチのWSD-F10ともリンクできる。つまり、ヘビーデューティ仕様のスマートウォッチを、カメラのモニター兼リモコンとして利用できるわけだ。
そもそもアウトドアでは両手がふさがっていたり、なるべく荷物を少なく軽量化する必要がある。スマートウォッチでカメラリモートができるなら、使いたい人も多いだろう。ブースではカヌーやトレッキングといったユースケースを想定した展示が行われていた。
現在スマートウォッチでは様々なアプリケーションが提供されてはいるが、カメラのモニターになるものはあまりない。なぜならば、ディスプレイ表示が一番バッテリーを食うからで、そんなことしてたら時計として数時間しか保たないからである。
しかしWSD-F10は液晶が2層になっており、普段使いの時計盤面は、低消費電力のモノクロ液晶で表示する。こういった細かい工夫で実用性を高めており、単にアプリを入れただけのスマートウオッチではない。両方を同じメーカーが作るというメリットが現れた機能だ。