小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1067回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

リーズナブルな500ルーメン、Netflix公式ライセンス取得プロジェクタ「Emotn N1」

Emotn N1

手に入れやすいホームプロジェクタ

家庭内で気軽に使えるプロジェクタとしては、バッテリー内蔵でどこにでも置けるモバイルプロジェクタ、電源接続は必要だが小型で可搬型のホームプロジェクタがある。天井に穴を開けて設置する大型プロジェクタまではとても……というニーズに応える製品群である。

2月上旬にはモバイルプロジェクタとしては珍しいレーザー光源を使用した「Nebula Capsule 3 Laser」をご紹介したところだが、発色面でアドバンテージがあるものの、価格としては12万円弱ということで、なかなか手が出せないというのが正直なところだ。

一方ホームプロジェクタながら、500ルーメンを確保し、71,999円という製品が登場した。Emotn(エモートン) N1という商品で、2月6日からAmazon公式ストアで発売中。2月21日に確認したところ、10,800円オフのクーポンが用意されており、実質61,199円で購入できる。

低価格ながら500ルーメンを確保、Emotn N1

メーカーのHangzhou Dangbei Network Technologyは2013年に杭州市で起業したハイテク企業で、当時はTVネットワークプラットフォームを開発していた。その後大画面向けOS開発を経て、2018年にスマートプロジェクタ産業に参入している。

Netflix公式ライセンスを取得するEmotn N1を、テストしてみよう。

大型ながら軽量なボディ

Emotn N1はダークグレーとホワイトの2色展開である。今回はダークグレーをお借りしている。

サイズは奥行き18.2cm、幅12.7cm、高さ20.3cmで、重量は1.92kg。モバイルプロジェクタに比べれば大きいが、重量が軽いので三脚などにも載せられる。

奥行きが長い箱型
底部に三脚穴と角度調整用脚部

ボディには天面に電源ボタンがあるだけで、コントロールはすべてリモコン操作となっている。このあたりがコストダウンのポイントなのだろう。電源ボタンは、LEDが点いた状態がスタンバイで、消えると電源ONというのもちょっとややこしい。

本体には電源ボタンのみ

光源はLEDで、輝度は500 ANSIルーメンを確保。ディスプレイデバイスはLCD(透過型液晶)で、解像度は1,920×1,080。投影距離とサイズの関係は以下のようになっている。

投写サイズ距離
60インチ1.67m
80インチ2.2m
100インチ2.65m
120インチ3.15m
約3m離れてもなかなか明るい

投写サイズに関しては、「Nebula Capsule 3 Laser」とほぼ同じという事になる。ただ合焦する最短距離はNebula Capsule 3 Laserより長く、スペックどおり1.6m以上離れないと合焦しない。

TOFによるレーザーオートフォーカス機構を搭載しており、投影面を変えると自動的にフォーカスを取り直す。自動台形補正機能も搭載しており、±20度の補正が可能だ。マニュアル補正も備えており、自動で追いつけない場合は手動で調整できる。

マニュアルの台形補正もできる

スピーカーは後部メッシュ部分に5W×2のステレオスピーカーを内蔵。前面のメッシュ部は排気口となっている。

背面端子のすぐ下にスピーカーが2基

Wi-FiおよびEthernetによるネット接続で、公式サポートであるNetflixやAmazon Primeビデオ、YouTubeなどが視聴できる。外部入力としてはUSB、HDMIのほか、Miracastによるスクリーンのミラーリングにも対応する。

またApple系デバイスでも使える「ホームシェア」機能もある。さらにYouTubeなどは、 [テレビコードでリンク]機能を使ってスマートフォンの視聴画面をミラーリングできる。

Miracastを利用する「スクリーンキャスト」
Appleデバイスも対応する「ホームシェア」

出力は3.5mmの音声出力を備えており、パッシブスピーカー等に接続できる。またBluetoothも搭載しており、ヘッドフォンをペアリングして使用することも可能だ。

Bluetoothスピーカーモードも搭載。多くのプロジェクタでも同様の機能があるが、Bluetoothの送受信関係が逆になるので、いったん再起動が必要になるものが多い。一方本機はアプリベースでBluetoothスピーカーモードを備えており、再起動なしに使用できる。

ACアダプタは120Wのものが付属

専用リモコンにはNetflix、Prime Video、YouTubeのショートカットキーを備えているが、Netflix公式ライセンス取得プロジェクタなので、起動すると最初にNetflixが起動するようになっている。

ダイレクトボタン付きのリモコン

リモコンは赤外線式。通常は前面に赤外線照射用の赤色の窓があるのが一般的だが、このリモコンはボディ全体が濃い赤の半透明樹脂となっている。このため、照射枠を設けなくても照射できるわけである。なかなか洗練された方法だ。

下からライトを透かしてみると、ボディが赤外線透過樹脂でできているのがわかる

メインサービスに特化した作り

では早速使ってみよう。最初に起動すると、リモコンとのペアリングを求められる。実はここが最初のハードルかもしれない。

画面の指示に従っていくわけだが、プロジェクタがきちんと投写できる状態にセッティングしてから最初の作業を行なわないと、何が起こっているかユーザーが確認できない。また昼間の明るいうちはオートフォーカスが上手く動作しないほか、リモコンの挙動も変なので、セッティングは部屋を暗くした状態で行なう必要がある。筆者はなんにも気にせず昼間の明るいうちにセッティングしようとしたので、超ハマった。

リモコンがペアリングできれば、あとは自動AFと台形補正が行なわれ、ネットワークを設定したらホーム画面になる。公式ライセンス取得ということもあり、Netflixが一番いい位置に配置されており、アカウント設定もQRコードを使って簡単に設定できる。非対応プロジェクタではNetflixアプリをダウンロードしてapkファイルを自分でインストールするなど無理矢理感があるが、このあたりはさすが公式対応である。

ホームにはAmazon Prime、YouTubeのほか、いくつかのコンテンツサービスが登録されているが、日本語のコンテンツはないようだ。アプリストアからは映画配信サービスのPlexも利用できる。

ホーム画面。Netflixがメイン
リモコンの操作感も良好
アプリストアから他のサービスも利用できる

プロジェクタの設定は、ホーム画面の左上からアクセスする。画面モードとしては、「標準」以外に「鮮やか」「シネマ」「スポーツ」のほか、マニュアルで設定できる「カスタム」がある。

ピクチャーモードで画質が選べる

音質調整は、「ベース」「高音」のほか、サラウンドのON・OFF、サウンドスタイルとして「標準」「スポーツ」「映画」「音楽」が選択できる。ベースと高音は0~100まで可変できるが、100を超えると0に戻るという仕様なので、押しっぱなしで数値を上げているといつまでも止まらずグルグル回る。

オーディオ設定画面

早速Netflixで「トロール」を観賞してみた。レーザー光源の「Nebula Capsule 3 Laser」と比べると、発色はやや鈍い感じはするものの、やはり輝度が高いことで、コントラスト感は高い。特に字幕作品では字幕の100%の白がバシッと出るので、読み取りやすい。

サウンドは、やや中低域寄りで高音の抜けにはかけるが、音量はかなり出る。ただ背面スピーカーからはサラウンドで再生されているのだろうが、およそ18cm幅に平行にスピーカーが設置されているようで、この距離ではそれほどサウンドフィールドが展開できず、ほぼモノラルのように聞こえる。本格的に鑑賞するなら、以前もご紹介したような小型のサウンドバーを使うなり、Bluetoothイヤフォンを接続するなりしたほうがいいだろう。

なおコンテンツの再生中でも、リモコンの「設定」ボタンを押せば、ピクチャーモードの変更とオーディオ設定にアクセスできるので、実際の絵を見ながら調整できる。

HDMI入力も意外に使える機能だ。昨今のパソコンにはHDMI出力を装備するものも多いが、セカンドスクリーンを大きくプロジェクションできるのは、実際にセカンド用液晶ディスプレイを用意しなくてもそこらへんの白壁で十分である。

またデジタルカメラの出力を繋いで、撮影した動画を大画面でプレビューすると、自分で映画と撮ったような気持ちになる。

音楽再生としては、Bluetoothスピーカーモードがある。ホーム画面から選ぶだけで簡単にモードが切り替わるのは便利だが、このモードでは音質調整が効かないようだ。ただパラメータは設定できてしまう。効果が得られないのであれば、メニューは無効にしておくべきだろう。

Bluetoothスピーカーモードはアプリを起動するだけ

総論

Netflix公式を謳うだけあって、リモコン操作もこなれており、まさに専用機として快適に操作できるのは魅力だ。

ホームプロジェクタは、なければないで困らないものだが、あれば夜が楽しくなる。夕食後に部屋で1人スマホでNetflixを見てるという人も多いように思うが、せっかくの作品を小さい画面で見るのは勿体ない。4K作品をHDで見るのも勿体ないとは言えるが、大画面で見ることで、その作品に正面から向き合った気になる。

またスマホで見ている画面のプロジェクションも多彩な方法をサポートしており、1つの方法が上手く行かなくても他の方法で繋がるといった回避策が使える。

本体機能もさることながら、OSまわりがよくできている印象だ。Netflix公式ライセンス取得も、そのあたりが評価されたのかもしれない。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。