小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1113回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

Mac Miniとほぼ同サイズで明るいプロジェクタ「Dangbei Atom」登場

Google TV搭載に変更された「Dangbei Atom」

こちらもGoogle TV搭載

どうも1月末から新製品が目白押しなので、またまた今週もプロジェクターでお送りする。今回取り上げるのは、「Dangbei Atom」だ。広報代理店からの提供品でテストする。

Dangbeiは2013年創業の中国メーカーで、当初は大画面テレビ用OSを開発して別企業に提供していたが、現在はホームエンタテイメントハードもソフトも一括で開発する企業に成長してきている。ちょうど昨年の今ごろ、Netflix公式ライセンス取得プロジェクタの「Emotn N1」を紹介したところである。

「Emotn N1」がわざわざNetflix公式ライセンスを取得したのは、搭載OSがDangbei独自OSだったため、あとからアプリをインストールしてサービス拡張が難しかったからだ。一方、今回のDangbei AtomはOSにGoogle TVを採用したことで、TVer、ABEMA、U-NEXTなどGoogle Play上にあるサービスも使えるようになっている。

またレーザー光源を採用し、小型ながら明るいのもポイントだ。1月26日より発売されており、価格は134,800円。オンラインではAmazon、楽天の公式店ほか、楽天Bic、トレテクYahoo! ほか、多くの家電量販店でも扱っている。

Dangbeiの新作を、早速テストしてみた。

ホームエンタテイメント用としては珍しい薄型設計

Dangbei Atomの特徴は、縦型が多い小型ホームプロジェクタの中で、薄型ボディになっているところだろう。このサイズ感、どこかで見覚えがあるなと思ったら、Mac Miniとほぼ同じ大きさであった。厚みはAtomの方が少しあるが、フットプリントはほぼ同じだ。

Mac Miniとほぼ同じフットプリント

背面に丸形の台座があるところなどもよく似ている。Mac Miniと組み合わせて使う事は想定されていないのだろうが、サイズ感のアタリとしてはわかりやすい。

底面の台座部分も似ている

正面左寄りに照射部があり、レンズアレイは光軸がやや上向きにセットされている。ポイントとしては、光源照射を均一にする方法として、石英ガラスフライアイレンズを採用していることだ。フライアイレンズとはいわゆるトンボの複眼のようなもので、小さいレンズをマトリクス状に配置した構造となっている。これにより、1点光源でも多数の点光源像ができるという理屈だ。

正面の照射部分は左寄り

パネルはフルHDのDLPで、レーザー光源により1,200 ISOルーメンを確保する。HDR規格としては、HDR10とHLGをサポート。プロジェクタの明るさを示す単位としては、最近はアメリカの規格であるANSIルーメンを用いるケースが多いが、ISOルーメンは主にヨーロッパ市場で多く使われている。測定法が違うので単純に換算はできないが、1,200 ISOルーメンはだいたい900〜1,000 ANSIルーメン程度と考えていいだろう。

投影面のサイズは40〜180インチで、推奨サイズは60〜100インチとなっている。スクリーンまでの距離からすれば、1.6〜3m程度が推奨範囲という事になる。

スピーカーは5W×2となっているが、ライトを当てて確認したところ、正面から見て右側のスリット奥に、直径2cm程度のドライバが2つ搭載されているようだ。従ってステレオ仕様というわけではない。

スピーカーは右側に2つ

外部入力はARC対応HDMI 1.4で4K入力には対応しない。USB-A端子はUSBメモリーやHDDなどからのファイル再生用だ。3.5mm端子はヘッドフォン/ライン出力となっている。一番左は電源ボタンだ。

外部入力端子はシンプル

リモコンも見ておこう。円形の十字ボタンを中心に、ボタン全体が上の方に寄った作りになっており、ネットサービスとしてはYouTube、Netflix、Amazon Primeのショートカットボタンがある。ボリュームは縦方向の長いボタンになっており、暗いところでも手触りでわかりやすい。

付属リモコンは小型プロジェクタとしては一般的なサイズ

横の赤いボタンは短押しでフォーカスモードへ、長押しでオートフォーカスとなる。その下の黒いボタンはプロジェクター設定へのショートカットボタンで、長押しするとミュートになる。コンテンツ再生中にフォーカスや台形補正を微調整する際には、通常は今のサービスを抜けて設定メニューへ移動しなければならないが、こうしたショートカットメニューがあるのは気が利いている。

側面にショートカットボタンがある

電源は120W必要なので、まあまあ大きめのACアダプタが付属する。バッテリーは内蔵しない。

電源は120W仕様のものが付属

バキッとした映りが特徴的

では早速視聴してみよう。起動すると自動的にオートフォーカスと台形補正が起動する。どちらもかなり正確だが、あまり投影面に近すぎるとAFが失敗することもある。やはり最低でも投影面から80cmは離したいところだ。

自動AFと台形補正はかなり正確

日が暮れてから自室で白のリモート会議用背景布に投影してみた。投影距離は約2mで、だいたい80インチぐらいの投影面積となる。1,200 ISOルーメンはかなり明るく、一般的な小型ポータブルプロジェクタの中では群を抜いている。中型クラスのプロジェクタに匹敵する明るさである。

適当な布に投影しているとは思えない高コントラストな映像

日中でも見えるかテストしてみたところ、カーテンを閉めて1m程度のところから投影しても、十分にコンテンツとして見られる明るさが確保できていた。解像度がHD止まりなのは残念だが、ディスプレイが足りない時、どこにでもちょい足しできるのは心強い。

日中でも近距離投影ならバッチリ視認できる

Google TV対応なので、あとからアプリでサービスが追加できる。Emotn N1の時は独自OSだったので、あまり日本では何染みのないサービスばかりだったが、Google TV採用は各国で人気のサービスに対応できるという狙いだろう。

日本独自のサービスにも対応できるのがGoogle TV採用の強み

各種設定もGoogle TVに負うところが大きく、先週の「Nebula Capsule 3」と同じである。ユーザーとしてはUIが同じなので使い方に迷うことはないが、独自の調整パラメータがないのは物足りない気がする。

設定画面はGoogle TV採用ならだいたい内容も同じ

機能として面白かったのは、内蔵ファンをぶん回してホコリを飛ばすという機能があるところだ。ファンが回るのは数秒だが、長年使っているとホコリも溜まるだろうから、たまにこうしたクリーニングモードを使うのもいいだろう。

独自のクリーニングモードを搭載

音質としては、モノラル2スピーカー仕様ではあるものの、かなりの音量が出る。また低音もそこそこ出るので、小型スピーカー特有のキンキンした感じはない。音楽コンテンツもいくつか再生してみたが、映像と一緒に楽しむのであれば十分だと感じた。またBluetoothスピーカーモードも備えており、プロジェクタ機能と切り離してスピーカーとしても使える。

Dangbeiではコントロール用のスマホアプリを提供していないが、その代わりに「Google Home」 が対応する。スマホ画面をタッチパッドのように使って操作することが可能だ。多くのプロジェクタは独自アプリを提供しているので、Google Homeにこのような機能があることを知らない人は多いのではないだろうか。もちろんChromecastにも対応するので、スマホで見ている動画をプロジェクタに転送して視聴することもできる。

Google Homeで提供されているリモコン機能

本体が平たいメリットは、三脚等に載せても重心が低いため、安定性が高いところである。ちょっと角度を付けるための足などは内蔵されていないが、ミニ三脚程度でも十分バランスが取れる。

総論

レーザープロジェクタと言えば中型〜大型機が中心で、ポータブルモデルといわれるものはビジネス用のデータプロジェクタが中心だった。その点、ホームエンタテイメント用で小型モデルという事では、Ankerの「Nebula Capsule 3 Laser」がある程度だった。ただこれは300 ANSIルーメンしかなく、せっかくのレーザー光源を生かし切れていないのが気になった。

一方本機はバッテリー非搭載でモバイル型ではないものの、1,200 ISOルーメンあり、レーザー光源らしい明るさを確保している。薄型なのでカバンに入れて持ち運びも楽だ。

実は案外出張時に持っていったらいいのではないかと考えている。ホテルなら投影できる広い壁はいくらでもあるので、パソコンを繋いで大画面で仕事したのち、夜はエンタテイメント端末として楽しめる。わざわざモバイルディスプレイを持参するライターも多いが、割れたりする危険性を考えれば、プロジェクタのほうが妥当な選択ではないかと思う。

ホームエンタテイメント用として134,800円はそれほど安くはないが、これぐらいの明るさがあれば昼間でもカーテンで遮光してちょっと暗くすれば使えるので、用途は広い。

Dangbeiも昨年から日本でのビジネスを始めたばかりで、まだ知名度としても苦戦しているようだが、このAtomは1つの足がかりとなるだろう。投入製品も多く、今後注目のメーカーとなりそうだ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。