小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第723回:アキバ発ベンチャー家電、UPQのアクションカム&スタビライザーを試す

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第723回:アキバ発ベンチャー家電、UPQのアクションカム&スタビライザーを試す

アキバ発家電・家具ブランド「UPQ」

 8月6日、アキバ発の家電ブランド「UPQ」が第1弾となる製品群を発表した。販売はDMM.make STORE、先行するベンチャーのCerevoがバックアップする女性1人の会社で、起業からおよそ2カ月で17種類もの製品をリリースするという異例ずくめのスタートに、少なからず驚いたものである。

アクションカメラ「Q-camera ACX1」

 もちろん、ゼロから設計開発していたら、これだけの数が揃うわけがない。当然中国あたりからの“買い物”を、ブランディングして販売というスタイルなのだろう。UPQによれば、「一部製品は中国などの工場と交渉しながら、設計から生産まで委託するODM方式で生産。ネット直販とすることで流通コストを抑え、デザイン性や性能の高さを備えながら低価格化した」とのことだ。

 製品カラーがブルーとグリーンの中間色「blue x green」で統一されているが、バラバラなところの製造で、こういった中間色の色をちゃんと揃えるのは、結構大変だっただろう。

 発表された製品は、いわゆる家電・家具もあるが、我々の注目はAV機器に近いところである。今回は「Q-camera」とブランディングされた製品のうち、アクションカムの「ACX1」と、スタビライザーの「ES02」をお借りすることができた。ACX1が15,500円、ES02が33,200円である。

50型4K液晶ディスプレイ「Q-display 4K50」
Bluetoothスピーカー「BS01」
アウトドア向け防水・防塵LEDライト「LT01」

 実売3万円台後半のソニー「HDR-AS200V」や、GoPro「HERO+LCD」などと比べると、競合製品よりかなりリーズナブルだ。これがそこそこ使えるなら、無理して変なものを並行輸入するより全然いいと思う人も多いことだろう。UPQのQ-cameraシリーズはどれぐらい使えるのか、さっそく試してみよう。

どこかで見たような? アクションカム

 ではまずアクションカムのACX1から見ていこう。GoProの大ヒットにより、国内メーカーもアクションカムに参入してきたのが、2012年頃。そこから昨年ぐらいまでは参入が続くわけだが、ご存じのようにそれほど日本国内で大きなパイがあるわけでもなく、徐々に明暗が分かれてきたのが今年だろう。

 そんな中、今年の新規参入は、かなり後発である。勝負どころをどこに持ってくるのかが難しい分野だ。カメラとしては、見た目はGoProとかなり似たデザインだ。右上にレンズが付いた長方形の箱という、シンプルなデザインである。

フォルムはGoProにそっくりなACX1

 実際にCESやNABを取材すると、中国メーカーが有象無象のGoPro互換機を出展している。これも元を辿れば、そのうちの1つなのかもしれない。

 GoPro HERO3と比較してみると、微妙に大きさが違う。高さにして1mm、横幅2.5mm、厚さにして3mm、ACX1のほうが大きい。ということは、GoPro用のアクセサリはほとんど使えない。デザインが似ていても、それがアドバンテージとしては活かされないことになる。

GoPro HERO3と比較。高さが約1mm違う
横は2.5mm長い
厚みは液晶モニタがあるため、3mmほど違う

 レンズは170度のワイドアングルレンズで、手ぶれ補正機能はない。撮像素子はパナソニック製の1,400万画素撮像素子だという。

正面には電源・モード切り換えボタンとLEDが2つ

 正面には電源とモード切り換え兼用のボタンがあり、Full HDと14MEGAという表記に沿って、LEDライトがある。これはそれぞれ、動画と静止画の動作モードを示しているのかと思ったらそうではなく、上のLEDは充電中を示し、下のLEDはバッテリー動作を示すんだそうである。配置デザインから連想される機能からあきらかにズレており、そのあたり「Designed in Tokyo」の文字もどこか空しく感じる。

 上部には録画ボタンがあり、青色のLEDがある。これは前面にあるバッテリ動作のLEDと同じで、電源ONで点灯、録画すると点滅する。モニタのないカメラならともかく、録画ランプと思わしき場所のLEDが、電源が入ったぐらいでずっと常時点灯するというのも、違和感があるところだ。

上部には録画ボタンと青色LED

 動画解像度は以下の通り。最大でもフルHDで30fpsしか撮れず、スペックとしては3年前ぐらいのアクションカムと同等である。

動作モード解像度フレームレートビットレート(実測)
1080p1,920×1,0803014.8Mbps
720/60p1,280×7206013.3Mbps
720/30p1,280×720306.5Mbps
WVGA848×480606.6Mbps

 背面には2型の液晶モニタがある。タッチパネルではなく、右横にあるクイックメニューボタンと上下キーで操作する。左側にはmicroUSB端子とHDMIマイクロ端子、microSDカードスロット、その下にマイクがある。

背面には2型の液晶モニタを装備
メニュー操作用のボタン
左側には端子類。カバーはない

 バッテリは底部から差し込むスタイルで、交換可能だが、予備バッテリや外部充電器の販売は今のところないようだ。付属アクセサリは、防水ケースを始め、各種取り付け器具やジョイントは一通りのものがセットになっている。

バッテリは底部から差し込むタイプ
同梱アクセサリ。取り付けには困らない種類が揃っている
防水ケースに入れたところ
液晶もよく見える
こちらはクリップ型のマウント
背面がクリップになっている

スマホも利用できる万能スタビライザー

スマホ対応スタビライザー「ES02」

 ではもう一つ、スタビライザーの「ES02」を見てみよう。スタビライザーとは、カメラと組み合わせて使用する画像安定化装置のことだ。これまでは重りやバネなど物理的動作を利用するタイプが主流だったが、ドローンの進化に伴って、モーターを使った画像安定化装置、いわゆるジンバルタイプの製品も1~2年前から登場している。プロ業界ではFREEFLYのMOVIが先駆者としてよく知られるところだが、GoPro専用の小型ジンバルまで含めると、中国製で有象無象の製品がひしめき合うジャンルでもある。

 「ES02」も恐らくその中の一つと思われる。特徴はスマートフォンが挟めるよう、マウントクリップが工夫されているところだ。従来これぐらいの小型製品では、例えばGoPro専用といった具合にカメラを決め打ちして重量バランスを設計することで、キャリブレーションの手間を省いたものが多い。その点ES02は、どんな重さ、重量バランスになるものが取り付けられるのかわからないというところに、果敢に挑んだ製品と言えるだろう。

 X/Y/Z軸それぞれにモーターを配置し、3軸でブレを防止する。バッテリは底部から挿入し、電源スイッチも底部にある。本体にもminiUSBの充電ポートがあるほか、専用充電器も付属する。

電池は底部から挿入する
充電用USB端子も装備

 使い方はシンプルで、スマホを先端にはさみ、電源スイッチを入れるだけだ。あとはES02が自動でバランスをとって、水平を保ってくれる。

 動作モードとしては4つ。そのほかスリープやリセットモードがある。

電源ボタンは底部に
モードボタンを押して動作を切り換える
モードボタン操作動作
水平追従1回押し水平・垂直だけ保ち、パンはゆっくり追従
水平・チルト追従2回押し水平だけ保ち、パン、チルトはゆっくり追従
固定2秒長押し水平、パン、チルトすべてを保つ
水平追従(反転)3回押し水平追従と同じだが、スマホの向きが反転
スリープ4秒長押し省電力で待機
リセット4回押し電源投入後と同じく、キャリブレーションを取り直す
エクステンションバーを取り付けて延長することも可能

 さらに延長用のエクステンションバーも付属している。これを使うとさらに35cm伸ばすことができる。いわゆる自撮り棒的な長さになると言えばいいだろう。重量はジンバル部がバッテリ込みで330g、エクステンションバーも含めると394gとなっている。

早速撮影してみると……

 あいにくここのところ関東地方は雨続きで、撮影日も小雨が降ったり止んだりのぐずついた天気であった。そのため、いつものようにあれこれ撮影できなかったのが残念だ。いやカメラ自体は防水ケースに入れれば問題ないが、ジンバルなどそのほかの機器が防水ではないので、なかなか思い切って屋根から出られない。

 ACX1は、電源を入れると動画撮影モードで起動する。続いて電源ボタンを押すと、静止画モード、メニュー画面に切り替わる。動画モードの際にボディ右側のメニューボタンを押すと、クイックメニューで最低限の設定変更ができるようになっている。

ACX1のメニュー画面
設定メニュー内にはかなりの設定項目がある
クイックメニューは動画に必要なメニューのみ表示される

 GoProに比べて発色がよく、高コントラストなのは魅力である。一方フレームレートが30fpsしかなく、手ぶれ補正もない。自転車にマウントして走ってみたところ、画角が広いので映像酔いするような激しいブレは感じないものの、画面上では常時小さくブレている。こうした部分に余計なビットレートを食ってしまうので、精細感は減退する。

ACX1で撮影
ACX1-ZoomaHD.mov(55MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 電子ズームも付いており、撮影中に右横の上下キーで操作できる。ただ、昔ながらの電子ズームなので、画質的には見るべきものはない。

 静止画は解像感はそこそこあるが、明るい部分の白飛びが激しい。またレンズの歪曲も結構あるので、何らかの補正は必要だろう。

4Kオーバーの静止画も撮影できるが、白飛びが厳しい

 一方ジンバルのES02も試してみた。まずは手持ちのiPhone 6との組み合わせである。電源を入れると、自動でキャリブレーションし、水平を保つ。スマートフォンは横長のため、かなり横に飛び出す格好になるが、モーター部にもそれなりに重さとパワーもあるため、えいやっと持ち上げてしまう。

ES02の動作
ES02-1-ZoomaHD.mov(163MB)
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 あとは必要に応じてモードを切り換えて使用する。やはり縦横にゆっくり追従する、「水平・チルト追従」が手持ちジンバル一番の花形だろう。歩きながら撮影してみたが、歩行による縦揺れは吸収できないものの、概ねなめらかな撮影ができた。

 スマートフォンの動画にここまでのクオリティを求めるのか、ここまで投資するならちゃんとしたカメラで撮った方がいいんじゃないかという疑問もあるところだが、3万円強の汎用ジンバルとしては、まずまずイイ線だと言える。

 各モードのうち、水平追従(反転)モードだけは、本当に必要なのか疑問のあるところである。なぜならば、このモードにするとスマートフォンが縦にフリップして反転するわけだが、スマホの高さがあるために途中でつっかえて回らなくなってしまう。設計上、スマホを挟むクリップギリギリしかアームの回転スペースがないので、当然である。

 さらにいったんスマホを外して反転させてみたが、回転角が360度以上あるわけではないので、反転したところでモーターがつっかえる。それ以上回らないのである。つまりスタビライズしようにも、上下方向の半分がつっかえて回らない。しかも縦方向に180度回ってしまっているので、スマホ動画としては上下が逆に撮影されることになる。

 スマホなんだから、裏返して挟みなおせばそれで済むものを、そうまでして反転モードが必要な意味がわからない。

3種類のジンバルを比較

 さて、この2つの製品が手元にあると言うことは、ACX1をスタビライズするとどうなるのか、という疑問である。ACX1を取り付けられるジンバルとしては、同社には「ES03」というモデルもあるが、こちらは今回お借りできなかった。

Q-camera ES03の使用イメージ

 一方で、GoPro用として販売されているジンバルに、FeiyuTechの「G3 Ultra」という製品がある。GoPro専用3軸ジンバルとしては、比較的廉価で人気のあるモデルだ。価格はAmazonで約29,800円といったところである。これにACX1を取り付けられないかと試してみたが、GoPro HERO3より数ミリずつ大きいため、固定できなかった。

 一方ES02は、iPhone 6が使えるぐらいならACX1ぐらいはどうということはないはずである。ただそのままでは付けられない。なぜならば、ACX1ではクリップの高さに届かないからである。ということは、なんらかの方法で挟めれば、なんとかなるはずだ。

 というわけで、間に消しゴムを挟んで動作させてみた。マトモにピッタリはめてしまうと、モーター側が重すぎて水平が保てない。元々スマホ前提に設計してあるので、バランスが取れないようだ。そこで横方向にはみ出すようにして装着したところ、なんとか動作した。実際これぐらいはみ出させないと、クリップが上部の録画ボタンを押し込んでしまって、操作ができなくなる。

ES02にACX2をむりやり装着

 もちろん、本式にはES03を使うべきだろうが、おそらく逆方向にカウンターバランスになるようなものを取り付ければ、そこそこ動くようにはできそうだ。

 比較対象として、GoPro HERO3専用のG3 Ultraでも同様の撮影をしてみた。さらにもう少し本格的なものということで、PilotFlyの「H1+」という10万円くらいするジンバルでも撮影してみた。小型ながら、ミラーレス機ぐらいまで搭載できる、本格的なジンバルである。搭載カメラはソニーの「RX100M3」だ。

GoPro専用ジンバルとしては人気が高いG3 Ultra
本格的なジンバルPilotFlyのH1+とRX100 M3との組み合わせ

 撮影して比較してみると、ES02には若干歩行感が強めに出るものの、スタビライズはなかなかうまくできている。G3 Ultraは多少歩行感が減退しているが、概ね同じような動きだ。H1+は本体重量とカメラで合計1.2kgぐらいになるので、歩行感はこの重さでだいぶ吸収される。体が吸収するといったほうが正しいだろう。動き感は最もなめらかだ。

3種類のジンバルとカメラで歩きを撮影してみた
Walk-ZoomaHD.mov(173MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 横方向の追従もテストしてみた。ES02はパン終わりが少し行き過ぎて戻る感じがある。G3 Ultraは、動きはなめらかだが、パン終わりでカチッと止まるクセがある。H1+はさすがに高級機だけあって、動き感も止まる瞬間もなめらかだ。こうした横の動きは比較的よく使われるところだが、こういった細かい部分に値段なりの差が出るといったところだろう。

それぞれPanを撮影。アルゴリズムの差がやわらかな停止の違いとして出る
Pan-ZoomaHD.mov(97MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

総論

 UPQのアクションカム「ACX1」は、GoPro HERO3に近い構造ながら微妙にサイズが違うため、GoPro用アクセサリがそのまま使えないのが残念だ。付属のマウントを使うのがメインになるだろう。アクションを撮影するには1080/60pは欲しいところだが、発色やコントラストという点ではGoPro HERO3よりは好印象の映像である。

 ただ手ぶれ補正もないので、ガチなアクションを撮影すると、映像がぶれすぎて厳しいように思う。交換用バッテリが単品販売されていないのも大きなマイナスポイントで、長時間の撮影ができない。またバッテリゲージも、使い始めると早速目盛りが1つ減る。おそらく本当に100%じゃないと目盛りがフルにならないのかもしれないが、まあ通常は80%ぐらい減ったところで目盛りが一つ減るぐらいのほうが、精神的に安心できる。

 またデフォルトのTVモードがPALになっているあたり、中国向け製品そのままという気がする。日本でしか販売しないのであれば、デフォルト値の見直しはきちんと行なうべきだろう。なお、カメラにアナログ映像出力は無く、HDMI出力のみだ。なんでモード設定があるのかという気もする。

【追記】
レビューした機体のファームウェアではPALとなっていましたが、製品版のファームウェアでは、デフォルトのTVモードはNTSCになっています。(9月2日15時編集部追記)

 ACX1は、アクションカムとしてはマトモに動くものだが、カメラに慣れた者から見るとおかしいところが沢山ある。カメラやテレビシステムとはこういうもの、ということがよくわかんない技術者が見よう見まねで作ったような製品のようにも見える。そのあたりと、15,500円という価格のバランスをどうとらえるかだろう。

 ES02は、汎用性のあるジンバルとして、なかなかいいポジションに付けている。そもそもこのぐらいの低価格ジンバルはGoPro用に設計されているものがほとんどだが、最近になってようやく他のカメラやスマホが挟めるものが出てきたところだ。価格的にそれら競合製品より1万円ぐらい安い。

 動作的には、プロレベルで細かいところを見ていけばもう一歩なところもあるが、趣味で使うぶんにはほぼ問題なく動くだろう。工夫次第でいろんなものが搭載できるという点では、楽しみも大きいジンバルである。

 UPQのカメラ製品群は、「ES03」をテストしてないが“リーズナブルに面白く使える”という点は評価したい。ただ数が出るビジネスモデルではなく、小ロットで低リスクのモデルのようにも見えるので、ある程度ユーザー側が知識でカバーするという前提に立っている。

 そういった意味で、低価格な製品をアリババやタオバオを使って中国から並行輸入で買って買うのに比べれば、困った時に日本語でサポートが受けられるというあたりもポイントという事になるだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。