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4K放送が録れるBDレコーダ、どれ選ぶ? シャープ×ソニー×パナソニックでガチ比較・前編
2020年2月20日 08:30
7月24日から、約1カ月間に渡って行なわれるスポーツイベント「東京オリンピック・パラリンピック」開催まで、半年を切った。
2020年の東京大会は'18年12月の4K8K実用放送開始後、初めて開催されるオリンピックで、開会・閉会式や注目競技を中心に、4Kまたは8Kの高精細カメラによる収録・放送も行なわれる。4K8K機器と受信環境を整えれば、臨場感溢れる競技映像が自宅で体感できるわけで、開催を前に機器の購入・入れ替えを検討する方も増えるはずだ。
そこで、4K8K機器の1つである「4Kレコーダー」をピックアップし、シャープ、ソニー、パナソニックの3社から現在発売されている上位シリーズを横並び比較してみた。
比較に使用したのは、シャープ「4B-C40BT3」('19年10月発売・約14万円)、ソニー「BDZ-FBT3000」(同年11月・約12.5万円)、そしてパナソニック「DMR-4CW400」(同年7月・約14万円)の3製品だ。
HDD容量は異なるが、いずれも新4K衛星放送のチューナーを2基搭載し、4K放送番組の視聴はもちろん、4K放送の2番組同時録画、2K放送の3番組同時録画、そして4K/2K放送をブルーレイディスクへ保存することができる。またアプリを使って、スマートフォンでも録画した番組が楽しめたり、毎回予約をすることなくドラマや新番組をレコーダーが自動で録画してくれる機能など、カタログをパッと見た時に把握できる基本的なスペックは、3モデルともほぼ同等だ。
では、4Kレコーダーはどれを買っても一緒なのだろうか? 違いがあるとすれば、どこが違うのか?
今回は、レコーダーの3つの基本機能「録る(録画)」「見る(視聴)」「残す(保存)」に加え、外観・仕様、レスポンスやマルチタスク、スマホ連携を比較し、カタログの見比べだけでは分かり難い、各社の違いを2回に分けて深掘りレポートする。
前編は外観・仕様比較から録画まで、後編は視聴から保存、スマホ連携までを取り上げる。今後、4Kレコーダーを選ぶ際のいち参考となれば幸いだ。
1.外観比較
まずは外観の比較から。
昔であれば、新放送のチューナーを搭載した録画機はAV機器の花形的存在で、中でも“黎明期に発売される最上位モデル”とくれば、これでもかと物量や夢(?)が詰まった無骨な風貌が定番だった。
しかし、3社の4Kレコーダーはどれもブラックのボディ&薄型筐体という、やや平凡な外観。加工や異なる素材を組み合わせるなど、ブランドごとでフロントパネルに変化を付けてはいるが、標準的な2Kレコーダーと見た目が変わらず、4Kモデルの特別感はあまり無い印象。
横幅と高さはほぼ同等だが、パナソニックは小さく・軽い
筐体の横幅は、3社共通で430mm。高さは、ソニーFBT3000が56.4mm(ゴム脚)、シャープC40BT3が65mm(ゴム脚)、パナソニック4CW400が66mm(インシュレーター含む)。
3社で差があるのは、奥行きと重量。アンテナ端子の突起部を含めた奥行き/重量(実測)は、パナソニック4CW400が209mm/約2.5kg、ソニーFBT3000が224.5mm/約3.6kg、シャープC40BT3が約239mm/約3.2kgとなり、一際パナソニックの筐体が小さく、軽く仕上げられている。
筐体を開腹すると、パナソニックは内蔵するBDドライブとほぼ同等の奥行きまで、筐体サイズを最短化していることが分かる。右側の電源と中央メイン基板のサイズも小さく、必要なパーツも集積化されていて、内部がかなりスッキリしていた。左側にあるBDドライブを覆うカバーは無く、プラスチックの黒い外装がそのまま見えている。
シャープはやや大きめのメイン基板が中央にあり、その上にはチップを放熱するためのプレートとヒートシンクを設置。右側には、同社が「塵や埃に強く密閉度を高めた」とする“ホコリシールドBDドライブ”を備える。
3.5kgと3モデルの中で最も重いソニーは、剛性を高める効果も考慮してか、シャーシ中央にフロント部とリア部を結ぶ梁を設け、その梁にHDDを逆さで取り付けている。左側のドライブは金属カバーで囲ってあり、フロントパネル内側にはドライブの振動を抑制するスポンジが貼られている。
なお3モデルとも、Ultra HD Blu-ray再生に対応したBDドライブを搭載。BD/DVDビデオ、ブルーレイ3D、CDなどの再生に対応。サポートするHDR方式は、HDR10とHLG。Dolby VisionやHDR10+には対応しない。
インターフェイス比較~構成はほぼ同じだが、接続できるHDDに違いあり
3モデルとも、前面にあるUSB端子(USB 2.0)からスチルカメラやビデオカメラとケーブル接続し、撮影したデータをレコーダーに取り込んだり、SeeQVault対応USB HDDを接続して、HDD内の録画番組再生やダビング(録画は非対応)が行なえる。
ソニーとパナソニックは、JPEGの静止画データ、およびMP4(最大4K/60p)とAVCHDの動画データ取り込みに対応。シャープは、JPEGの静止画データとAVCHD動画の取り込みをサポートし、ビデオカメラのMP4(4K)動画は対応しない。取り込み可能な静止画画素数は、シャープが32×32~6,400×9,600ドット、ソニーが32×32~16,383×16,383ドット、パナソニックが34×34~8,192×8,192ドット。
パナソニックとシャープは、スマホ内の静止画・動画データをWi-Fiで転送する機能もある。パナソニックはアプリ「どこでもディーガ」(無料)、シャープはアプリ「AQUOS 写真&動画転送」(無料)を介してレコーダーにデータ転送でき、シャープでもスマホで撮影したMP4/MOV形式の4K動画取り込みが可能だ。
背面のインターフェイス構成は3機種共通で、映像&音声と音声専用のHDMIが2系統、外付けHDDを接続するためのUSB、ネットワーク接続用のLAN端子を各1系統用意。このほか、地上・BS/CS用のアンテナ(2K・4K兼用)とメガネ型のACインレットを備えている。
チューナー部はいずれも、BS/CS 4Kチューナー×2基、地上/BS/CS 2Kチューナー×3基の構成で、最大3番組同時録画が可能。'18年発売の4Kレコーダーは、4Kチューナーが1基だったため、'19年モデルから4K放送の2番組同時録画が行なえるようになった。ただ、パナソニックは特定条件下において、4K放送のダブル録画ができない仕様になっている(詳しくは後述)。
映像&音声のHDMI出力は最大18Gbps伝送をサポート。4K/60p YCbCr4:4:4 24bit、4K/60p YCbCr4:2:2 36bit、4K/24p YCbCr4:4:4 36bitなど、いずれも高レートな映像信号が出力できる。
映像信号の信号レートが高くなる(高周波数になる)のに比例して、一緒に流れる音声品質への影響も大きくなるため、音質にこだわるコアなユーザーは、音声専用HDMI出力の利用がオススメ。ただ、映像と音声を分離出力する場合は、音声専用側のHDMIリンク(機器制御)が機能しない(パナソニック)、もしくはHDMIリンクの機能そのものがオフになる(ソニー)などの制約があることも頭に入れておきたい。
外付けHDD用のUSB端子にも若干の違いがある。
シャープは、USB 2.0(DC5V/500mA)端子で、最大8TB、8台までのHDD登録が可能。2K放送も4K放送もUSB 2.0接続で録画できるが、外付けHDDには1番組しか録画できない。またバスパワー駆動型の外付けHDDは推奨していない。
ソニーは、USB 3.0(DC5V/900mA)端子で、最大6TB、10台までのHDD登録が可能。バスパワー駆動の外付けHDDもサポートする。2K放送も4K放送もUSB 3.0/2.0接続で録画でき、USB 3.0接続時のみ複数番組の同時録画に対応(USB 2.0接続時は1番組録画)。
パナソニックは、USB 3.0端子で、最大4TB、8台までのHDD登録が可能で、バスパワー駆動の外付けHDDもサポートする。USB 3.0接続時のみ複数録画に対応するのはソニーと変わらないが、パナソニックの場合は4K放送の録画もUSB 3.0に限定している。
なお、3機種ともSeeQVaultのHDDが利用できるが、同規格が4K放送録画に対応していないため、2K放送の録画にしか使用できないので注意。
リモコンに関しては、ボタンや配列、サイズに違いはあるものの、基本的な構成は差が無く、通信方式も赤外線とシンプルな作りだ。
パナソニックのリモコンには「Netflix」ボタンを搭載。ホームのメニュー画面から「テレビでネット」を呼び出せば、Netflixのほかに、YouTube、Amazon Prime Video、dTV、ベルリンフィル、hulu、TSUTAYA TV、DAZN、Paravi、アクトビラ、radikoが楽しめる。シャープはアクトビラ(4K対応)に対応。なお、ソニーにネット動画機能は搭載しない。
2.番組を録る
それでは、録画機能を比べていこう。
2K放送の番組を録画する場合も、また4K放送の番組を録画する場合も、基本的な操作は変わらない。
リモコンボタンでEPG(電子番組表)を表示して、対象の番組にカーソルを合わせたら、録画時の設定を確認して決定を押すだけ。録画時の設定項目名は各社で異なるが、番組をどこに録画するか(内蔵HDD/外付けHDD/BD)、毎週録画するか、長時間録画するか(2KはAVC圧縮/4KはHEVC圧縮)などを予約確定前に選ぶのは一緒だ。録画の設定を番組ごとに変える必要が無い場合(前回の録画予約と同じ設定)は、EPGで番組選択中にリモコンの録画ボタンを押せば、ボタン操作1つで予約完了する。
EPGを使ったシンプルな録画予約以外にも、他のユーザーの視聴・予約動向を活用したランキング予約(シャープ・ソニー)や、番組ニュースの記事情報を使った予約(パナソニック)など、ネット回線を活用した方法もある。
またソニー独自の予約機能として、番組情報誌・テレビジョンと連携し、1カ月先に放送予定の新作ドラマやアニメの情報を表示・先行予約できる「新作ドラマ・アニメガイド」がある。予約すれば、シーズン終了まで全話自動録画してくれる。NHK大河ドラマなどのように、4K放送と同じ番組が2Kチャンネルでも放送される番組も、優先放送設定から「BS4K」を選べば4K放送版を優先して毎週録画することもできる。
4K放送の録画~長時間録画や記録できるチャンネル数に違いあり
4K放送に限っては「予約時にBDへの直接録画ができない」「SeeQVaultのHDDに録画できない」など全社共通の制限があるほか、4K長時間録画ができるのはソニーとパナソニックだけで、シャープはDR記録に限られる、といったモデル間での性能差もある。
4K長時間録画は、ソニーが最長11倍、パナソニックが最長12倍を用意する。ただ、パナソニックは「4K 8~12倍録」というモード名になっていて、常に12倍録になるわけではなく、番組内容に応じて倍率を自動変更する仕組みになっている。同社によれば「内容次第だが、スポーツや音楽番組は8~10倍、ドラマは12倍になることが多い」とする。ソニー、パナソニックともに圧縮はリアルタイム処理では無く、いったんDRモードで録画した後、レコーダーがスリープ状態になっている時などを利用して、バックグラウンドで変換処理している。
録画番組の音声記録にも違いがある。例えばNHK BS4K「8Kベストウインドー」などのような複数の音声信号(2ch/5.1ch/22.2ch)を放送する4K番組を録画した場合、シャープは5.1ch(5.1chまでの音声で一番チャンネル数の多い音声信号を記録)、ソニーは2ch/5.1chと、記録する音声信号が制限されるのに対し、パナソニックは音声信号全てを記録する仕様になっている。
またパナソニックの場合は、4K長時間録画で2つの音声信号しか記録できない場合でも、チャンネル数の多い音声信号を優先して記録するか否かを選択できるようになっている。22.2ch対応のオーディオ機器が限られるとは言え、受信した放送を音までしっかり残せるのは魅力だ。
番組の予約や検索に利用するEPG画面は各社で異なっていて、シャープとパナソニックは番組表のほかに受信中の番組と広告を画面端に表示し、ソニーは番組表のみを全画面で表示するデザインになっている。シャープのみ、EPGも4K解像度で表示する。
1画面に表示できるチャンネル数/時間は、シャープが5ch/3時間・8ch/5時間・11ch/7時間・14ch/8時間・17ch/8時間の5パターン。パナソニックが3ch/3時間・5ch/4時間・7ch/5時間・9ch/7時間・11ch/8時間・15ch/10時間・19ch/12時間の7パターンから変更が可能。ソニーは4ch/3時間、7ch/4時間、9ch/6時間に加えて、それぞれで文字サイズ(大・中・小)を変更できる。
自動録画機能~多彩なおまかせ設定と嗜好学習を備えるソニー
近年、録画機能で各社が力を入れているのが、レコーダーが自動で番組を録ってくれる“おまかせ”録画だ。おまかせといっても最初にある程度の設定は必要だが、1度設定すれば、あとはレコーダーが自動で番組を探して録画してくれるので、毎回録画予約する手間が省ける便利な機能だ。
シャープには、連続するドラマやアニメ、バラエティを自動で録画してくれる「ドラ丸」という機能がある。例えば、ジャンルを“ドラマ”に設定すると、新作連続ドラマを4週間分、自動で録りおきしてくれる。
録りおきされたドラマを見る・見ないに関わらず、4週間経ったら古い回から自動で消去してくれるし、“お気に入り”登録すれば、自動消去されることなく最終話まで全話録画してくれる。ただ、該当ジャンルを1つに絞る必要があるほか、現状4K放送には対応していないのが残念なところ。
パナソニックには、新しく始まるドラマとアニメの“第1話”を自動録画してくれる「新番組おまかせ録画」、地デジの最新ニュースを自動録画してくれる「ニュース録画」、ジャンル・フリーワード・人名などを設定して、その条件に該当する番組を自動録画する「おまかせ録画」がある。おまかせ録画を使えば、4K放送の番組も自動録画することができる。
ソニーには、ジャンル・フリーワード・人名などを設定して、該当する番組を自動録画する「おまかせ自動録画」と、ユーザーの嗜好を学習して自動でおすすめ番組を録画する「おすすめ自動録画」が用意されている。前者は1日最大20件(HDD容量を逼迫するため4Kは最大10件に制限)、後者は1日最大4件まで録画できる。
シャープ、パナソニックと違って、ソニーの自動録画は2K放送の場合も、4K放送の場合も制約がほぼ無く、条件設定も細かくカスタマイズできるのが特徴。4K放送でも人名で自動録画できたり、録画先を指定できるのはソニーだけだ。中でも、好みを学習して録画する“おすすめ”の精度の高さはDVDレコーダー時代から折り紙付きで、経験から言えばほぼ外れが無い。おまかせ・おすすめを併用すれば、好みの番組を録り逃すことは無く、こまめに録画予約できない忙しい方には格好の機能だ。
録画の最後に、パナソニック4CW400の注意点を。
番組視聴中にリモコンの録画ボタンを押すと、即座に録画が開始される「クイック録画」という機能があるが、パナソニックの場合、2K放送受信中にこのクイック録画を行なうと2K専用チューナーではなく“2K兼用4Kチューナー”が使われてしまい、クイック録画の終了まで4K放送の“シングル録画”しか実行できなくなる。
クイック録画よりも数秒、録画開始が遅れてしまうことにはなるが、視聴中の2K番組をすぐに録画したい場合は、クイック録画ではなくEPG画面からの予約録画をするといいだろう。
後編へ続く。