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JBL最上位スピーカーで“360°極上音響”、日本初「JBL PREMIUM THEATER」体験してきた

JBL PREMIUM THEATER

今年の4月、愛知県安城市にオープンした「ららぽーと安城」。その中に、全10スクリーン・約1,500席を有するシネコン「シネマワールド ららぽーと安城」も誕生。IMAXやDolby Atmosも導入された劇場なのだが、それとは別に、オーディオ/ホームシアターファン要注目のスクリーンがある。JBLのプロ向け最上位スピーカー機種のみで構成し、“360°極上音響”が楽しめるというスクリーン5、その名も「JBL PREMIUM THEATER」だ。

日本はもとより、世界でも初というこの「JBL PREMIUM THEATER」のサウンドを体験したので、そのレポートをお届けする。鑑賞したのは、シリーズ最新作「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」。贅沢にも、同劇場のスクリーン4(Dolby Atmos)で試聴した後、スクリーン5(JBL PREMIUM THEATER)で鑑賞できた。

上映時間169分の映画を2本観るという長丁場だが、 結論から言うと、オーディオ/ホームシアターファンはもちろんだが、そうでない人でも一聴して「これは、今までの映画館のサウンドとは違う」と実感できるであろう、驚きのサウンド体験となった。

JBL PREMIUM THEATERとは何か?

ららぽーと安城

「シネマワールド ららぽーと安城」が入ってるららぽーと安城は、県道76号線・県道47号線に隣接(最寄り駅はJR東海道本線の安城駅徒歩10分、名古屋鉄道西尾線 北安城駅徒歩14分)、スーパーマーケットのSEIYUや、愛知県生まれの総合アミューズメント会社であるコロナワールドが出店。買い物だけでなく、シネマ、アミューズメント空間も楽しめる施設になっている。

愛知県江南市、新盛館という小さな芝居小屋から始まり、現在では映画館だけでなく、温泉、アミューズメント、ボウリングなど、シネマコンプレックスを基幹とした複合型総合レジャー施設を展開しているコロナワールド。

左から、コロナワールド ららぽーと安城の総支配人であり、大のオーディオ好きでもある春馬庄蔵氏、シネマ事業部の松野淳次長

同社シネマ事業部の松野淳次長は「(来ていただいた方々に)楽しんでいただきたいというのが根底にあります。また、常に新しい事に挑戦しようというのもコロナワールドの社風です。シネマワールド ららぽーと安城には、IMAXやDolby Atmosも導入していますが、それだけでなく、この劇場で、新しく、そして我々の独自のものをやりたいというのは以前から考えていました」という。

シネマワールド ららぽーと安城は、JBL PREMIUM THEATER以外のスクリーンにも、JBLのプロ用スピーカーを導入している。そこで、JBL PROFESSIONALのスピーカー扱っているヒビノイマジニアリングに相談したところ。JBL PROFESSIONALの最上位スピーカーで構成する提案があり、そのサウンドデモを担当者が体験。そのクオリティに感動し、導入を即決したという。

シネマワールド ららぽーと安城

単にハイエンドなプロ用スピーカーを使うだけでなく、その機種選択や、設置場所、そして測定やチューニングも徹底。測定したデータを、JBLシネマソリューションのプロダクトマネージャーであるサニール・カランジカル氏に送付。世界の映画館・設備・ライブツアー向けサウンドシステムなどを手掛けてきたサウンドエンジニアである彼が、チェックし、完成したのが“JBL PREMIUM THEATER”だという。

JBLシネマソリューションのプロダクトマネージャーであるサニール・カランジカル氏

ハーマンインターナショナル マーケティング本部の濱田直樹プロダクトマーケティングマネージャーは、「JBL PROFESSIONALのハイグレードなスピーカーを使っていただいたスクリーンで、さらに我々が監修し、JBLのブランド名に恥じないサウンドのスクリーンとして付加価値をお届けしたい。そういった想いも込めて、今回初めて“JBL PREMIUM THEATER”という名前をつけた」と語る。

ハーマンインターナショナル マーケティング本部の濱田直樹プロダクトマーケティングマネージャー

具体的に、スクリーン5のJBL PREMIUM THEATERに導入されたスピーカーは以下の通りだ。

用途型番台数備考
メインJBL 57423台4ウェイ・大型シネマスピーカー
サブウーファーJBL 56284台高出力ダブル18インチ
リアサラウンドJBL 93504台壁設置
サイドサラウンドJBL 932012台コンパクトコーン型
サラウンド補助JBL ASB61184台シングル18インチサブ

配置としては、メインのLCR(JBL 5742)はスクリーン裏の真正面に3台設置。サブウーファーのJBL 5628は、こちらもスクリーン裏、LCRの間に配置。サラウンドのJBL 9320、9350は壁面に設置している。

メインとなる4ウェイ・大型シネマスピーカー、JBL 5742
側面に並んだサラウンドスピーカー

ユニークなのは、サラウンドスピーカーの補助用サブウーファーの「JBL ASB6118」を壁面に配置している事。壁に浮いているように取り付けられたサブウーファーというのは新鮮だ。アンプは以下のものが使われている。

補助用サブウーファーの「JBL ASB6118」が壁面に取り付けられている
用途型番台数備考
アンプCrown DCi4 1250N5台4chパワーアンプ(高出力)
アンプCrown DCi8 300N1台8chパワーアンプ
アンプCrown DCi4 300N1台4chパワーアンプ
アンプはCrown
上映中の映写機

JBL PREMIUM THEATERのサウンドに圧倒される

JBL PREMIUM THEATER

JBL PREMIUM THEATERに足を踏み入れると、想像していたよりも巨大なスクリーンかつ、空間に驚く。スクリーンサイズは縦7.25m、横17mと大型。席数も282と、シネマワールド ららぽーと安城の中では最も多いメインシアター。ラグジュアリーシートなども導入されている。

広々としたスペースで映画が楽しめるラグジュアリーシート ボックス

さっそく「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」を鑑賞した。なお、公開からまだ日が経っていないので、ストーリーのネタバレは極力避けるが、シーンと音声の感想は記載しているので注意して欲しい。

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』ファイナル予告|2025年5月23日(金)日米同時公開

JBL PREMIUM THEATERの実力は、冒頭からすぐにわかる。「ミッション:インポッシブル」と言えば、「このメッセージは5秒後に自動的に消滅する」がお馴染みだが、今作でももちろん登場する。

今回はVHSテープで再生するのだが、VHSをデッキに挿入する時の「カチャ、カチャ」という、本当に小さな、かすかな音が、非常に細かく耳に届いて驚く。その後のメッセージボイスも、音像の定位が明瞭で、とても聴き取りやすい。

イーサン・ハントやチームメンバーなど、登場人物達の声がリアルで、アクション中の吐息も含めて、非常に声が生々しい。

JBL PREMIUM THEATERの前に、Dolby Atmosのスクリーンでも鑑賞し、解像度の高いサウンドが楽しめたのだが、Atmosでは少し音が固く感じられた。だが、JBL PREMIUM THEATERでは、中高域にまったく強調感が無く、非常になめからなサウンドに聴こえる。

スリリングなシーンで流れるBGMの、重厚なストリングスは、弦が震える様子が目に浮かぶほど音が細かいのに、広がっていく響きはどこまでもナチュラル。目の覚めるような解像感の高さと、音のナチュラルさという、なかなか両立が難しい要素が、どちらも高い次元で描写されている。

低音も驚きだ。深海にある潜水艦のシーンでは、潜水艦のボディがきしむ「ギリギリ」「グガガガ」という金属質な鋭い音が響き渡るのだが、その背後に常に、深海でうねる潮の流れが「グォオオオ」という凄まじい重低音で広がっている。まるで、シアターがそのまま深海に沈められたような迫力だ。

特筆すべきは、こんなにパワフルに押し寄せてくる重低音の音像が、ボワボワと膨らまず、極めてシャープである事。ホームシアターでも、低音が遅れず、位相が完璧に揃うとビシッとレンズのフォーカスが合焦したような解像度の高い重低音が楽しめるものだが、それがこの大型スクリーンで体感できる。

低音の“押し出しの強さ”、“沈み込みの深さ”と“解像度の高さ”、この3つすべてが実現した時にだけ体験できる、快感とも言える重低音の世界。奮闘するイーサン・ハントには申し訳ないが、気持ち良すぎて「これはヤバい」と、少し笑ってしまった。

松野次長によれば、この極上の低音は「導入したベースマネジメントシステムの効果が大きい」という。また、サラウンドスピーカーの設置位置の工夫もすることで、中央だけでなく、どの席でも、満足度の高いサウンドが味わえる事にも注力。「360°極上音響」を実現したという。

予告編にもあったように、レシプロ飛行機での空中アクションも展開するのだが、飛行機がアクロバティックな動きをした時に、「ドドドッ」と重低音を響かせるエンジンの音像が、あっちこっちと移動する様子も明確に聴き取れる。音像の位置や、移動感が明瞭さも見事だ。映画世界に入り込んでしまったような没入感も強くなるので、「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」のようなアクション映画は、JBL PREMIUM THEATERにピッタリだろう。

なお、Atmosなど、専用のフォーマットに沿ってサウンドが作られた映画でなくても、様々な映画に対応できるのがJBL PREMIUM THEATERの特徴でもあるという。前述のように、ナチュラルで質感の豊かなサウンドも持ち味なので、例えば、ミュージカル映画や、音楽ライブの上映なども、JBL PREMIUM THEATERで聴くと、音楽や歌声がグッと胸に迫る体験ができそう。ホームシアターファンはもちろんのこと、オーディオファンにも要注目のシアターと言えそうだ。

JBL PREMIUM THEATERを体験した人からは、「音楽が素晴らしかった」という意見や、いわゆる“推し活”の映像上映イベントを開催して欲しい……などの要望も寄せられているそうだ。現在、JBL PREMIUM THEATERを導入しているのはシネマワールド ららぽーと安城のみだが、こうした利用者からの反響も踏まえ「(コロナワールドの他の劇場にも)水平展開していけたらいいなと考えています」(松野次長)とのこと。

JBLは、こうした劇場の大型プロ用スピーカーから、サウンドバーなどのコンシューマースピーカーまで幅広く手掛けている。ハーマンの濱田氏によれば、プロ用機器の開発は、JBLの本拠地であるアメリカのノースリッジで行なわれており、そこでは、プロ用、コンシューマー用問わず、エンジニア達が「どのようなサウンドを目指すか」という方向性を話し合い、決めているという。

「サウンドバーなどは、サイズ的な制限もあり、劇場スピーカーの音をそのまま再生するのは難しいですが、映画の感動の大事な部分を、いかに残しながらサウンドバーで再生するかという部分に、プロ用機器で培ったのノウハウも活かされています」(濱田氏)。

山崎健太郎