プレイバック2023

ますますバイクにハマったら、ミラーレスまで買い換えてた by 橋爪徹

山梨甲府へ。道の駅甲斐大和

今年は、久しぶりに開放的な気持ちになれた1年だった。世間は2019年以前の日常を取り戻しつつあり、観光や興行なども徐々に楽しめるようになりつつある。筆者も感染に気を付けながらだが、レジャーやイベント、ライブと、体験する楽しさを思い出している日々だ。というのも、筆者は今年の6月に初めて有症状感染者になってしまい、全ての自覚症状がなくなるまで3週間というたいへんな日々を過ごした。たとえ高熱が数日で終わっても、決して油断出来ないと肝に銘じたのだった。

さて、昨年このコーナーで振り返ったのは『125ccスクーターでバイクデビュー』というテーマ。2023年も私の相棒、ヤマハ「アクシスZ」は忘れられない体験をいくつもさせてくれた。ますますバイクにハマっている筆者は、冬用のハンドルカバーを購入したり、冬用のレッグウォーマー(足に巻く防寒具)まで手を出してしまった。真冬はあまりの寒さに片道20分が限界だったのをどうにかしたいという訳だ。通勤でもないのだし、寒いんだったら乗らなきゃいいのに、順調に125ccに沼っている。

ワイズギアのハンドルカバーを装着して冬でも手があったか
TAKEGAWAのレッグカバー

初めて訪れた甲府では、国道20号線の長い道のりを経て、眼前に広がった甲府盆地の雄大な景色が今も脳裏に焼き付いている。江ノ島へ向かう道中で、海風を受けながら走る気持ちよさといったらない。奥多摩には何度行ったか分からないほど通い詰めた。東京都屈指のライダーの聖地、奥多摩周遊道を125ccの証=ピンクのナンバープレートで走っている変わり者は筆者くらいだが、何のことはない。急ぐ後続車にさっと道を譲ればいいだけだ。

2023年、特に思い出深かったスポットは富士山だ。今年は2回も訪問した。去年は、富士スバルラインを車で行ける5合目まで登った。今年は、富士スカイラインと富士あざみラインに挑戦。スカイラインは静岡県側から登る無料の道路。あざみラインは富士山の真東、小山町側から登るこちらも無料の道路だ。

富士スカイラインへ登坂直前、森の駅富士山

スカイラインは、駐車場がある5号目から6合目まではプチ登山をすることができる。終点の宝永山荘でチップトイレやお土産屋を見物。既に登山道は冬期閉鎖によるバリケートが敷かれていたが、6合目でも眼下に広がる雲海と裾野までの景色はさすが2,493mだ。富士山気分は(山頂まで登ったことのない私にとって)十分すぎるほど味わうことが出来た。生きててよかったとすら思えるほどに。

富士スカイライン ~宝永山荘から眼下を望む2,400m級の絶景~

スカイラインが最高過ぎて、わずか2週間後にはあざみラインにアタックしていた。

あざみラインは、スバルとスカイに比べて知名度は低いかもしれない。約11.2kmの道中で1,160mもの標高差を登る急勾配がドライバーの恐怖を誘う。筆者も125ccのスクーターで登るというやや無謀なチャレンジを敢行した。あまりの激坂に「頑張れ……!」と自然と愛車に祈りながら登っていく。50ccでは登ることすら不可能ではないかと思えるほどの強敵だった。

あざみライン5合目。ガスって山頂が見えなかった

あいにく5合目ではガスってしまい山頂が見えず、近場の小富士遊歩道を通って2,000m級の森林浴を楽しんだ。須走口は、森林限界が2,700mと高いのも注目ポイントだ。小富士という岩を積み上げた観光スポットで休憩をした。

あざみライン。~小富士遊歩道⇒小富士へ~

帰りは、ぐんぐん加速してしまう下り坂を、エンジンブレーキを命綱にゆっくり下山した。ブレーキが効かなくなるフェード現象やベーパーロック現象は警戒していたものの、エンジンブレーキだけでは安全なスピードに減速できず、ブレーキも頼りに慎重に下っていった。奥多摩周遊道路や山中湖(道志みち)に何度も行ったことで峠道にはだいぶ慣れたつもりだったが、あざみラインの怖さは別格だったと思う。十分に運転に慣れてからチャレンジする場所だと感じた。

実は、大変残念なことにカメラに取り付けていった標準ズームレンズが前の日に壊れてしまった。絞りが変わらず、ピントも合わない。前日から山中湖に入って、翌日あざみラインに向かう旅程にとって、1日目からカメラが動かなくなるのは大ショックだった。天気が2日間とも悪かったのは、カメラを直してリベンジを図れという富士山からのメッセージかもしれない。

去年スバルラインを登ったときもつくづく思ったのは、富士山の5合目までは神聖な森が広がっているということ。人の手が入ることを厳しく規制された富士の山は、ひたすらに神々しい。現代を生きる自分ですら、言いようのない神秘的なエネルギーを感じるのだから、大昔の人々がこぞって信仰の対象にしたのも無理はないと思う。

α6700

カメラと言えば、ミラーレスを買い換えた。一眼にハマる人の口癖は「カメラは消耗品。レンズは資産」だ。最初、何を言ってるんだ? と正気を疑ったが、今となっては意味が分かる。レンズはカメラを買い換えても使える文字通り「資産」であり、ボディ(本体)は新しい機種が出たら欲しくてたまらなくなりつい買ってしまう「消耗品(?)」だ。

筆者のお気に入りはだいぶ前からソニーの「α」だ。α230という一眼レフカメラから始まって、ミラーレスのα6000、α6600、α6700と愛機が入れ替わってきた。14年以上もαユーザーなのにフルサイズにしないのは、価格や重さの問題と、APS-Cの画質も案外捨てたものじゃないと思えるようになったからだ。

その評価はα6700で決定的になった。α6000からα6600の画質向上もなかなかだったが、α6700の画質は筆者の予想を超えて圧倒的だった。もう大ジャンプを果たしたと言っていい。素人である自分が見ても、色味のリアルさ、コントラストの深さ、精細感、空気感、低ノイズ性能などなど驚異的なレベルに達している。

α6600の夜景 2023年元旦御嶽神社
α6700の夜景。八王子祭り

APS-Cのαシリーズで初めて採用された裏面照射型Exmor R CMOSセンサーと、α6600比で最大8倍の処理能力を持つBIONZ XRの効果だろうか。ここまで撮れるならフルサイズ要らなくね? と半ば本気で考えている。AIプロセッシングユニットによるAF性能も、「よくぞここまで追従するなぁ」とため息が出そうな程、動く被写体に強くなった。

筆者は趣味で撮影する程度のライト層であるが、ライターの取材で機材を撮ったり、地域のジャズフェスでボランティアスタッフとしてミュージシャンを撮影したりしている。もちろん、バイク旅行のお供にカメラは欠かせない。

レンズは、あれよあれよという間に3本になっている。Zeissの標準ズーム「F4/16-70mm」、同じくZeissの単焦点「F1.8/24mm」、ソニーのズームレンズ「F3.5-5.6/18-135mm」。135mmは、ジャズフェスの撮影ボランティアでどうしても70mmでは望遠が足りず、思い切って購入した。望遠を使うシチュエーションといえば、動物が真っ先に思い浮かぶ。多摩動物公園での撮影は機会がまだ作れていないが、いつか試してみたい。

最新型のα6700。気になる点は、わずかだ。α6600でチルト式だった液晶が、バリアングル液晶になったことで、ローアングルやハイアングルからの撮影がやりにくくなった。チルト式ならすぐに角度を調整できたのに、バリアングルだと開いて回してという手間が発生する。しかも、360度自由に回せないので、目的のアングルにするとき、逆に回して折ってしまいそうになる。何度も開いているが、最近ようやっと回す方向を覚えてきた。

それと本体の発熱が増した。α6600の頃は、動画撮影時に発熱を気にすればよかったが、α6700は普通のスチル撮影でも本体が触って分かるほどに発熱する。撮影が出来なくなってしまう訳ではないものの、最初はちょっと心配になった。おそらくBIONZ XRの処理能力が高いため、消費電力も上がり、連動してバッテリーなどが発熱しているのだろう。

撮影枚数がファインダー使用で約720枚から約550枚に減少した。ジャズフェスでバンド演奏を撮りまくっていると、若干電池の消耗が早い気がした。去年(α6600)は満充電していけば丸1日撮り切れたのに、今年(α6700)は途中で電池を予備に交換する必要があった。ちなみにバッテリーは同じZバッテリーだ。画質が大幅に改善したので、バッテリー消耗は仕方ないかなと受入れることにした。

宮ヶ瀬湖畔園地。ISO 10000でも驚異の低ノイズと空気感

という訳で、α6700は仕事の撮影に、レジャーのお供に大活躍。決して安い値段ではなかったが、α6600を買った店に下取りに出して、同時に買い換えをするとお得にα6700をゲットできた。発売日に購入したので、現在の市場価格より若干高めだったが、その分α6600のボディが高額買い取りとなった。本稿を書いている時点で、7月末に比べて2万円もα6600の買い取り査定金額は下がっている。「カメラは消耗品」と書いたばかりだが、α6600には最後まで役に立ってくれて感謝しかない。

来年2024年は、アクシスZでどんな景色に出会えるか楽しみだ。α6700とともに、まだ見ぬ感動体験を探していきたい。

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト