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映画や4K放送、ゲームやスポーツも大迫力! 気軽に4K HDR大画面BenQ「TK850」

BenQ TK850

映画館のような特大サイズで映画などを楽しめるプロジェクター。最近はテレビ放送や映像コンテンツをスマホやタブレット端末で見る人も多いが、自分の好きな映画やスポーツ中継、ライブコンサートなどなら大画面で見たいと思う人も多いはず。薄型テレビは大画面モデルとなると価格が高価になりがちで二の足を踏んでしまうかもしれないが、プロジェクターならば、サイズもコンパクトで価格的にも10~20万円ほどで、最新鋭の4K HDR対応のモデルも発売されている。

なかでもオススメしたいのがBenQのプロジェクターだ。BenQはDLP方式のプロジェクターとしては、アジアおよび太平洋、中東、アフリカなどの4Kホームシアター市場で、2018年に続いて2019年もシェアNo.1を獲得。日本市場においても、56.3%のシェアを持っている。高いシェアは人気や製品への信頼性の高さを示しているが、ほかにも注目したい点がある。生産台数が多いので量産化によってコストを抑え、高性能でも低価格で提供できるということ。人気が高いからこそ、さらに研究開発を行なって、よりよい製品開発を行なえるメリットもある。

そんなBenQの4K HDR対応のホームプロジェクターの最新モデルとして6月27日に発売されるのが「TK850」。すでに国内でも発売されているTK800Mの上位モデルで、最大輝度は3,000ルーメン、ダイナミックアイリス機能の採用で3万:1の高コントラスト実現(TK800Mは3,000ルーメン、コントラスト比1万:1)。色再現範囲もより拡大されたほか、動画応答性を高めるモーションエンハンサーの採用など、さらに高画質性能を高めたものになっている。

さらに、投写レンズは100型でおよそ2.5mと短焦点となり、1.3倍のズーム機能を備えるため、設置の自由度も高まっている。さらには自動台形歪み補正機能や上方向のレンズシフト機能も持つなど、設置のしやすさも向上している。さらに上位の高画質モデルに迫る画質を実現しつつ、より使いやすさも高めたモデルになっているのだ。それでありながら、価格はオープンプライス、店頭予想価格は21万円前後(税込)に抑えられている。

TK850の外観。横幅は380mmとコンパクトなサイズとなっている
投写レンズは1.3倍ズームやレンズシフト機能も備える。DLP方式の採用で4K HDRの表示が可能だ
上から見たところ。天面には電源ボタンや十字キーを備え、基本的な操作も行なえるようになっている
操作ボタン部分の拡大図。十字キーを使ってメニュー画面の呼び出しや操作、入力切り替えができる
スライド式のカバー内には、フォーカス調整とズーム調整、レンズシフトのダイヤルが内蔵されている
側面部は放熱のための開口部があり、大きめのファンが内蔵されている。

背面の接続端子を見ると、HDCP2.2対応のHDMI入力が2系統搭載。USB端子は3系統で、動画などを再生できるUSB3.0端子のほか、サービス用端子、電源供給用端子を備える。このため、Amazon Fire TV Stickのような動画配信サービス用の端末を接続し、電源供給も可能だ。残った1系統のHDMI入力にはBDレコーダやゲーム機などを接続できる。装備としては十分だろう。

背面には、HDMI入力やUSB3.0などの接続端子があり、左右にはステレオスピーカーも内蔵されている
接続端子部の拡大図。2系統のHDMI入力はどちらもHDCP2.2対応。USB3.0端子は動画などを保存したUSBメモリーの再生が可能
付属のリモコン

まずは壁面投写で、手軽に100インチ級の大画面を体験してみよう

まずは設置だ。コンパクトなサイズなので設置場所に困ることは少ないだろう。10畳を超える広めの部屋ならば、視聴位置の手前にあるソファなどに置けばいいし、8畳やそれ以下の広さならば、後ろの壁際に背の高いラックを置いて設置するといい。部屋の後方に設置する方が邪魔になりにくいし、視聴位置から離れた場所になるので、プロジェクターのファンノイズが目立ちにくい。

TK850の騒音レベルは30dB(通常モード。Ecoモードでは28dB)と十分に低騒音と言えるし、小型プロジェクターにありがちな高い周波数のノイズが少ないので耳触りにならない。とはいえ、体感としてはエアコンと同じ位の音が出ていると感じるし、映画の静かなシーンでは少々ファンノイズが聞こえるので、視聴位置付近に置くとどうしても気になる。また、ランプや光学系を冷却するため、放熱口から熱い空気が排出されるので夏場は少し離して置きたい。これらの理由から、部屋の後ろの壁際の高めの位置がおすすめの設置場所となる。

また、専用の取付金具を使って天吊りしてもいい。重量は4.2kgと軽量なので、天吊り金具の設置も比較的簡単な工事で済む。常設していても邪魔になりにくく、設置場所がずれて、いちいち調整をしなおす手間も減るので検討しよう。

TK850と500mlのペットボトルを並べたところ。奥行き263mmでペットボトルをほぼ変わらない長さだ

プロジェクターは投写距離によって表示される画面サイズが変化する。基本的に投写距離が長くなるほど投写画面が大きくなると考えていい。TK850は約2.5~3.2mの投写距離で100型の投写画面となるので、6畳間や8畳間くらいの部屋だとちょうどスクリーンを置く壁の反対側の壁際に置くことになる。つまり、リビングスペースはもちろん、個室などでも使いやすい設計になっているのだ。

筆者の自宅の視聴では、常設している120型のスクリーンに投写した。投写距離は3m~3.9m。広めのリビングで使う場合は、120型くらいのスクリーンを用意してもいいだろう。もちろん、スクリーンは必須ではない。TK850は3,000ルーメンと十分な輝度があるので、室内の白い壁に投写しても十分に明るい画面が楽しめる。まずは壁面投写で楽しむのが手軽でいい。

投写用のスクリーンは、画質的なメリットもあるが、部屋の壁に模様や濃い色が入っている場合は使用を検討するといい。ベージュ系の薄い色ならば、画質調整で違和感のないように調整するだけでも十分だ。あるいは、映画館のように部屋を暗くするのではなく、明るい室内でテレビのように楽しむ場合はハイゲインタイプのスクリーンを使うといい。使い方に合わせて選ぶべきスクリーンの種類も変わってくるので、まずは壁面投写で使ってみてから、実際の使い方に合わせてスクリーンを選ぶようにした方が失敗は少ないし、なにより最初のコストを抑えられる。

筆者自宅の視聴室に設置した状態。写真のような背の高いラックや棚を用意すると、プロジェクターの設置がしやすい

プロジェクターの設置場所がだいたい決まったら、電源を入れて映像を投写してみよう。設置位置を高めにすると、投写画面が高すぎて天井に投写されてしまうことが多いので、その場合はレンズシフト機能で画面の位置を下げるか、プロジェクターの脚部の高さ調整で斜め下を向くように調整する。斜めに投写すると映像は台形に変形するが、自動台形歪み補正機能があるので、自動的に修正されるので便利だ。細かな調整はほとんど必要ない。多少の歪みが気になる場合は、後から手動で微調整することもできる。後は、ズームレンズでサイズを微調整し、フォーカス調整できちんとピントが合うように調整すれば準備完了だ。ピント調整では、画面の中央だけでなく、四隅もきちんとピントが合うように調整する。このとき、画面メニューから「テストパターン」を表示するときちんと調整ができる。

だいたいの調整が完了したら、システム設定などもひととおり確認しておこう。

TK850の背面。設置のための脚部は3つある。天井取り付け金具を固定するためのネジ穴も用意されている
前方にある脚部。ダイヤルを回すことで高さの調整が可能だ
画面メニューからインストール(設置調整)を選択したところ。自動台形補正の選択やテストパターンの表示など、設置時に使用する機能が用意されている
システム設定:基本のメニュー。使用言語の選択をはじめとする設定が行なえる。初めて電源を入れたときには専用のガイド画面が現れるので、その時に初期設定を済ませよう
システム設定:詳細のメニュー。ランプ設定やHDMI設定など、専門的な設定項目がある。基本的には出荷時設定のままで使える
HDMI設定のメニュー。HDMIフォーマットは「オート」のままで問題ないが、接続した機器によって映像が表示されないなどのトラブルが生じた場合は切り替えてみよう。Audio Return(ARC機能)は必要に応じて切り替える

さっそく視聴。精細感が高く、色鮮やかな映像

一通り調整が終わったら、映像を見てみよう。まずは4K放送を見てみたが、精細感も十分。120型の投写でも画面の周辺でピントが甘くなったり、色が変化するようなこともない。レンズ性能は十分な実力だ。

4Kの解像感も不満なし。TK850は、極小のマイクロミラーを駆動してRGBの光を反射させて映像を表示するDLP方式を採用しているが、独自の表示技術を採用することで、4K解像度の830万画素の表示を可能にしている。4K放送のドキュメント番組などで、さまざまな名画や彫刻などの映像を見ても、細かなディテールまで精密に描写している。

HDR方式は、HDR10とHLG方式の両方に対応しているので、4K放送のHDR番組もコントラストの高い映像で楽しめる。しかも、映像信号の輝度レベルに合わせて、動的にレンズの絞りを調整する「オートアイリス」機能も備えるので、明るいシーンの眩しい光の感じから、暗いシーンの黒の締まりまで、破綻することなく映像が表示できている。このあたりは、オートアイリス機能をはじめ、映像信号処理でのトーンマッピング機能などを統合した「HDR-PRO」技術の完成度の高さがよくわかる。また、好みに応じて画面の明るさを調整できる「HDRブライトネス」機能も備わっている。

ピクチャ(画質調整)のメニュー。HDR信号の入力時は専用のモードに切り替わる。好みに応じて画質調整も可能だ
詳細設定では、HDR輝度の調整をはじめ、詳細な画質設定が用意されている
詳細設定メニューの後半。ダイナミック絞りは、高/中/低から選択できるが、もっとも調整幅の大きな「高」のままで違和感を感じることはなかった

感心したのは色の鮮やかさと色数の豊富さ。NHK BS4Kの大河ドラマ「麒麟がくる」は、登場人物たちの衣装の色鮮やかさが特徴的だが、それらを実に鮮やかに再現した。明るい日差しの下での色の鮮やかさも、彩度が高すぎて不自然になることもなく、肌の色も自然な感触だ。そして、室内の暗めなシーンでも色が抜けてしまうようなことがなく、暗色もしっかりと出るので、室内の暗い雰囲気がよく伝わる。暗い室内から外の明るい景色を眺めるような場面でも、青空と白い雲を階調感豊かに描きながら、暗い室内も黒潰れせずに見通しよく描くなど、HDR映像の高いコントラストをしっかりと再現している。120型の大画面でこれだけの映像が見られるならば、TK850はかなり優秀だ。

続いては、2Kのテレビ放送なども見てみたが、こちらも明るく鮮明な映像だ。精細感の高い映像なので、地デジ特有のノイズが少し目立つが、シャープネスを落としてやるとノイズで映像が荒れた感じが減り、見やすくなる。ニュースやバラエティ番組を見るときには、ピクチャモードで「ブライト」や「リビングルーム」に切り替えるといい。照明を落とした暗い環境では明るすぎるくらいだが、部屋を明るくした状態でも薄型テレビに近いくっきりとした映像になる。ニュースやバラエティも大画面だと案外楽しい。なぜなら、出演者の表情がよくわかるから。表情や動作がよくわかるので、トークの面白さもよく伝わる。

そして、スポーツ好きにはぜひ注目して欲しいのが、スポーツ中継の番組だ。選手をクローズアップした映像の迫力は言うまでもないが、フィールド全体を俯瞰したような映像でも選手の動きがよくわかるので、試合の動きを掴みやすい。モーションエンハンサー機能があるので、動きもスムーズだ。筆者は映画などでは動画補間を行なうモーションエンハンサーは使わないが、スポーツのような動きの速い映像ではモーションエンハンサーは有効。ピクチャモードを「スポーツ」に切り替えるだけでモーションエンハンサーもオンになるので、使い勝手も良い。スポーツ好きにとって大画面は大きな魅力だ。

地デジ放送など、SDR映像の入力時は、5つのピクチャモードを切り替えられる。映画モードのほか、スポーツ中継に適したスポーツモードもある

「AKIRA」など、UHDブルーレイの高精細な映像も存分に楽しめる

今度はUHDブルーレイで映画を見てみた。まずは4Kスキャンで驚くほど新鮮な映像に蘇った4Kリマスター版の「AKIRA」。金田の赤いスーツやバイクの色も豊かに描くし、緻密に描かれた背景画も鮮明だ。背景画を複数重ねて動かすことで奥行き感を出したネオ東京の様子は、透過光で光るネオンや細かな書き込みまでよくわかり、作り手の熱意やこだわりまでよくわかる。

細部でのチラつきや色ノイズが少々気になることもあったが、このあたりも画質調整を行なえば不満は解消できる。特にアニメ作品の場合は、「ブリリアント・カラー」を少し抑えてやると自然な発色になる。色についてはやや彩度が高いと感じることはあるが、ノイズ感については元々の映像にあるノイズが目に付きやすい印象。忠実志向というか、ストレートな再現だと思う。

「AKIRA 4Kリマスターセット」
(C)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
色再現や精細感を調整できる「シネマ・マスター」。「カラーエンハンサ」は色の彩度の調整。肌色の調整は独立して調整できる。ディテール感の調整は「ピクセル・エンハンサー4K」で行なう
画質調整の詳細設定。色ノイズが気になる場合は、こちらの「ブリリアント・カラー」を調整するといい。視聴では初期値の10から8へと抑えた
メニューの情報から、入力信号などを表示したところ。信号の種別や解像度を確認できるほか、ランプ使用時間なども確認できる

続いて、迫力たっぷりのカーレースが楽しめる「フォードVSフェラーリ」を見た。当時の雰囲気に合わせて、粒子感のあるフィルム調の感触を残しながらも、映像は緻密。路面の荒れた感じや汚れた車体などがリアルに描かれ、臨場感たっぷりの作品だ。こちらも、粒子感がやや目立つストレートな再現で、雰囲気はよく伝わる。レースカーの華やかな車体の色がよく出るだけでなく、油や誇りで汚れた感じもきちんと描くので、忠実感のある映像になる。また、ルマン24時間レースなどでの時間経過による空模様の変化などもよくわかり、生のレースを観戦している気分になる。

「フォードvsフェラーリ 4K UHD」
(C)2020 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

壮大な物語を締めくくった「スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」は、CGで描かれた戦艦やメカのディテールも緻密に描く。4Kらしいディテールのきめ細かさを積極的に見せようとする画作りだ。そのぶん、少々ノイズが目立つのが惜しいが、精細さと低ノイズの両立を求めると、どうしてもより高価な高級機には及ばない面もある。とはいえ、ノイズ感は画質調整で好みに合わせて調整できるので、元々の映像情報をなるべく損なわずに出そうとする画作りの方が、個人的には好ましいと感じる。

UHD BD「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け 4K UHD MovieNEX」

ゲームも4K HDRならば、想像以上の臨場感で楽しめる

最後に、PS4 Proでゲームもプレイしてみた。「ファイナルファンタジー7:リメイク」は、高品質なグラフィックで蘇ったミッドガルの街をより深く探索できることが大きな魅力。三人称視点のゲームではあるが、100型級の大画面となると、まるで自分がそこに居るような感覚になる。肝心のは、大画面になったぶんだけ、緻密に描かれた都市の細部までよく見えること。これこそまさに臨場感。ゲーム好きの筆者だからこそ言いたいが、こうした優れたグラフィックのゲームほど、大画面でプレイすると満足度はさらに高まる。

「バイオハザード:RE3」もプレイした。従来のじっくりと探索する要素よりも、追跡者から逃げながらゾンビやモンスターを倒していくアクション要素が強まったものになっていて、アクションゲームが下手な筆者にとっては手強い内容だったが、ゾンビが大発生した街の中を走り回るのは楽しかった。そして怖かった。まさにパニック映画の登場人物になっている気分が味わえた。街の看板やポスターの細かな書き込みを見るのも面白いし、必死に逃げ回りながらとはいえ、ラクーン市の観光をしている気分にもなる。こういう体感的なプレイができるのもプロジェクターの100型級の大画面ならではだと思う。

ちなみに、ゲームで気になる表示の遅延だが、アクションゲームをカジュアルに楽しんでいる筆者の体感では、明らかな表示の遅延が生じているようには感じなかった。モンスターの攻撃アクションを見てから操作してもきちんと避けられるし、プレイがしづらいとは感じなかった。もちろん、高度な反応を要求される格闘ゲームやリズムゲームなどでは多少の影響はあると思うが、一般的なゲームプレイならば十分に楽しめると思う。

プロジェクターというと大げさに感じてしまう人は少なくないかもしれない。しかし、映画を見るためだけでなく、スポーツ中継や音楽ライブ、ゲームなども楽しめるとなると、魅力を感じる人は多いのではないだろうか。

70型を超えるような大画面テレビというと敬遠してしまう人もいるかもしれないが、プロジェクターならばもっと容易に100型級の特大画面が身近になる。また、薄型テレビの画面サイズに近い40型や50型での投影もできる。投写距離を短くすれば、画面サイズをフレキシブルに選べるのもプロジェクターならではの特徴。リビングなどに固定して使うのもいいが、その時々でリビングやプライベートルームなど、さまざまな場所に持ち運んで、その場にあった画面サイズで楽しむこともできるのだ。薄型テレビとはひと味違う楽しみ方のできるプロジェクターにぜひ注目してほしい。