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音のビームとAtmosで圧巻の完成度。JBL新世代サウンドバー「Bar 5.0 MultiBeam」
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- ハーマンインターナショナル
2021年2月5日 08:00
外出しにくい昨今、テレビをよく見るようになった、ゲームに熱中! 、Netflixなどの配信でテレビを活用している、という人も多いだろう。同時に、薄型テレビのイマイチな音に「もうちょっとどうにかならないか?」、「けれど大きなスピーカーとかAVアンプ置けないし」「そもそも高いし……」と考えている人もいるはず。結論から言うと、そういう人にうってつけなサウンドバーが登場した。JBLの「Bar 5.0 MultiBeam」だ。
「うってつけ」の理由は、簡単に言うと3つある。1つは、1本でも包み込まれるようなサラウンド再生を実現するため、音をビーム状に放出して壁の反射を利用するビームフォーミングテクノロジーを搭載するなどの“音の良さ”。2つ目は、別途サブウーファーなどを接続しなくても豊富な低音が出て、これ1本で完結する“省スペースさ”。、
そして最後の1つは、「でも、お高いんでしょう?」という不安を良い意味で裏切ってくれる、実売約4万円という購入しやすい価格だ。
ビームフォーミングテクノロジーとは何か
JBLと言えば、最近ではBluetoothスピーカーやヘッドフォンなどで馴染み深いが、上を見ると、数百万円のハイエンドスピーカーや映画館に導入されるような業務用スピーカーまで手掛けている“泣く子も黙るオーディオブランド”。シアター系の技術も豊富に持っており、「Bar 5.0 MultiBeam」にもそうした知見が随所に投入されている。
一番の特徴は、先程も記載したJBL独自のビームフォーミングテクノロジーだ。ホームシアターと言うと、前にフロントとセンタースピーカー、背後にサラウンドスピーカー、天井に……と、沢山スピーカーを並べるイメージだが、実際に家でそうした環境を構築するのはかなりハードルが高い。
一方で、いくら“横長”とはいえ、一体型筐体にスピーカーを詰め込んだサウンドバーでは、なかなか広がりのある音を出すのは難しい。そのジレンマを解消するのがビームフォーミングテクノロジーだ。
ご存知の通り、音は波のように伝わっていくものだが、スピーカー側で工夫をすると、その指向性を鋭くして、まるでレーザービームのように音を出す事もできる。例えば、静かな環境でなくてはいけない美術館で、スピーカーから大きな音を流すわけにはいかないが、ビーム状に音を放出する事で、“絵画の前に立った人だけ”に、その絵の説明音声を聞かせる……なんて使われ方もしている。
そうした音のビームを、サウンドバーに搭載したのがBar 5.0 MultiBeamだ。具体的には、本体の両側面にビームフォーミングスピーカーを搭載。そこから音のビームを放出し、部屋の両側の壁に反射させて、ユーザーの耳へと音を届ける。要するに“ビリヤード”みたいな感じだ。これにより、人間は、音が反射した壁から音が出たように感じる。こうする事で、サウンドバー本体の横幅を超える、もっと離れた場所から音を感じさせる事が可能になり、サウンドバーでも広がりのある音を生み出せる……というわけだ。
サラウンド再生の秘密はこれだけではない。もう1つの特徴が、Dolby Atmosによるバーチャルハイト技術を搭載している事。これは、2chを含む、様々な音のソースを、高さ方向も含めた立体的な広がりのあるサラウンドサウンドに聴こえるように音響処理するバーチャルサラウンド機能の1種だ。
この機能には、“高さ”方向を仮想的に再現する方法の1つとして、頭部伝達関数も使われている。これは、スピーカーから放出された音が、聴いている人の頭や耳などに当たり、変化する事に着目したもの。簡単に言うと、ソースの音がそのままの形で耳に届くわけではなく、頭や耳などに当って“変化した後の音”が耳に届くのであれば、逆に“変化した後の音”を演算処理で作り出せば、実際に高い場所から音がしていなくても、“高いところからの音”を再現できるというわけだ。
Bar 5.0 MultiBeamは、前面にセンタースピーカー、その左右にフロントスピーカーの計3つを搭載しているが、フロントのLRがバーチャルサラウンド用スピーカーも兼ねている。音の広がりを出す場合は、フロントLRは離して搭載した方が有利。しかし、センタースピーカーに近い中央付近に搭載しているのは、頭部伝達関数も活用して処理したバーチャルサラウンドの効果を発揮するためで、人間の両耳の幅に近い方が、効果を発揮しやすいためなのだそうだ。
その代わりに、ビームフォーミングスピーカーが音の広がりをサポートする……というわけだ。
スピーカーユニットはこの5基だが、それだけではない。筐体内に、4基のパッシブラジエーターを、左右それぞれに、水平対向で内蔵している。このような配置にしているのは、不要な振動を打ち消しあいながら重低音を再生するためだ。
システム全体での周波数特性は50Hz~20kHz。5ch分、合計で250W出力のアンプや、Wi-Fi、Bluetooth受信機能なども搭載している。
これらを凝縮しながら、外形寸法は709×101×61mm(幅×奥行き×高さ)に収めているのも特徴。重量は2.8kgで、横幅70cmくらいしかないため、男性であれば、ガシッと手で掴んで移動させるのも容易だ。このサイズ感であれば、リビングだけでなく、書斎のPCディスプレイなどと組み合わせて使うのもアリだろう。
筐体デザインとしては、金属製のパンチングメタルを活用。触った時もひんやりとして、4万円以下のスピーカーとは思えないほど高級感がある。
使っていて便利だと感じるのは、前面右側に有機ELディスプレイを内蔵している事。ここに例えば「HDMI IN」や「TV」など、選択しているソースや、「Atmos」などのフォーマット情報などが流れる。文字数が多い場合はスクロール表示も可能だ。
サウンドバーの表示系は、LEDランプが数個だけ、みたいな製品が多い。AV機器に詳しい人であれば、LEDの意味を覚えるのも得意かもしれないが、家族で使う場合などは、わかりにくい。有機ELディスプレイがある事で、電源が入っているのか、どのモードになっているのかなどがわかりやすいのは非常に良いポイントだ。
リモコンも付属。モード切替やボリューム調整ができる。ボリューム調整は、HDMIのリンク機能を使って、テレビのリモコンからも操作できるが、やはり専用リモコンがあった方が何かと便利だ。
接続端子まわりも見てみよう。HDMIは入出力を各1系統搭載し、48Gbpsの転送速度にも対応した最新のHDMI 2.0bに対応。フォーマットとしては、ドルビーデジタル、ドルビーデジタルプラス、ドルビーTrueHD、Dolby Atmos、AAC、PCMに対応する。
HDRや、eARCなどの信号にも対応。ARC対応のテレビと接続する場合は、HDMIケーブル1本でOKだ。HDCP 2.3もサポートしており、4K放送やHDRコンテンツもパススルー可能。HDRはDolby Vision、HDR10+、HDR10に対応する。
サウンドバーの設置場所を考える
基本はテレビの前への設置だが、スタンドとの関係で前に置きにくいという場合もあるだろう。そこで、ちょっと違った設置方法として、最近製品が増えてきた“テレビ上のスペースを活用した置き台”を活用するという手もある。
例えば、サンワサプライのサウンドバー台「100-VESA001」は、テレビ裏のVESAマウントにネジで固定するタイプの台で、奥行き15.4cmまでのサウンドバーを設置可能。耐荷重は6kgだ。
今回は、サウンドバー用の置き台ではないが、山崎実業の「スマート薄型テレビ上ラック ワイド70」があったので、これを使ってみた。台部分の横幅が70cmと、サウンドバーとほぼ同じ。サウンドバーの重量が2.9kgで、ラックの耐荷重は3kgだ。
測ったようにピッタリサイズで、見た目もシンプルで良い。ただ、地震などの際はサウンドバーが落下する可能性もあるので、例えば本体と置き台をバンドで巻いて固定するとか何か落下防止策は施したほうがいいだろう。
テレビの音が激変
では、Bar 5.0 MultiBeamのサウンドを体験しよう。
その前に、ビームフォーミングスピーカー用の測定を行なう。AVアンプにおける音場補正用の測定と同じようなもので、サウンドバー自体にマイクが搭載されており、測定を開始するとサウンドバーから測定音が流れ、壁などで反射してきた音をマイクでチェック、部屋の音響特性を把握し、それを踏まえた上で、最適に再生してくれるというわけだ。
前述の通り、高さ方向も擬似的に再現するDolby Atmosのバーチャルハイト機能が特徴だが、まずはこの機能をOFFにした状態で聴いてみよう。
コンテンツはフツーのテレビ番組をチョイス。男性アナウンサーがニュースを読み上げている状態で、テレビの音から、サウンドバーへと切り替えてみた。
「すると、まず低音が……」といった説明をしようと思ったのだが、出てくる音がまるで別物だ。なんというか「自転車の乗り比べをしようと思ったらダンプカーが来た」くらい、まったく世界が変わる。
ニュース番組なので、男性アナの声しか無いわけだが、Bar 5.0 MultiBeamに切り替えると低音がグンと下まで伸び、高音もキレイに上に抜ける。音のレンジが広がっただけでなく、音圧も桁違いにアップ。低い声がしっかりと前に出て、「ああ、ちゃんとお腹から喋っていて、いい声だな」としみじみ感じてしまう。音像も立体的になり、平面キャラクターだったようなアナウンサーが、しっかりと肉体を持って、厚みがある、人間になったと感じる。
チャンネルを変えると通販番組になったが、この音もまるで違う。なんとかバブルで洗浄する機械を女性が紹介していたのだが、サウンドバーに切り替えると、彼女が話す声がリアルになるだけでなく、背景のBGMがグワッと広がり、テレビ画面を大きく突き破って、前方に大きな世界が広がる。
そもそも、テレビ内蔵スピーカーのスカスカした音で聴いていた時は“BGMが鳴っている事”をまったく意識していなかった。レンジが拡大し、広がりがアップし、情報量が増えた事でBGMが音楽として聴こえるようになったというわけだ。
この違いを体験してしまうと、あらゆる番組が面白い。クイズ番組で問題が出る時の「チャラン!」みたいなSEが、キレ良く、シャープに、音圧豊かに迫る。芸人が沢山登場して、ワイワイトークする番組がうるさくて苦手だったのだが、Bar 5.0で聴くと芸人たちの声色の違いがよくわかり、誰が話しているのか聞き分けやすくなり、内容が頭に入るようになった。番組が悪かったのではなく、テレビの音が悪かったのだ。
続いて、Fire TV Cubeを接続し、Netflixで映画を再生してみた。作品はDolby Atmosでも配信されている「オールドガード」や「タイラー・レイク -命の奪還-」だ。
テレビ番組でも、内蔵スピーカーとサウンドバーの違いは歴然だったが、映画ではその差がさらに広がる。特に爆発音や重厚なBGMといった低音要素は、映画の迫力を楽しむためには不可欠。
Bar 5.0は4基のパッシブラジエーターを搭載しているので、別筐体のサブウーファーを使わなくても十分に低い音が、音圧たっぷりに出てくる。リモコンを使って低域の量を1~5まで調整できるのだが、4や5にするとちょっと出過ぎと感じるくらいで、3くらいがちょうどいい。水平対向でユニットを配置し、余分な振動を打ち消しているのが効いているようで、「ズドンズドン」という銃の発射音など、鋭く低い音のキレも抜群だ。
では、映画を観ながらAtmosのバーチャルハイトをONにしてみよう。OFFの状態でも、テレビ画面の範囲を大きく超えた音の広がりが感じられるのだが、ONにした瞬間に、今度は左右ではなく上下にも音がブワッと広がる。OFFでも左右から音に包み込まれる感覚は味わえるのだが、ONにすると、映画世界の空間自体が目の前に出現して、その空間全体にガボッと体を包まれるような感覚になる。
もちろん、リアルなサラウンドスピーカーを背後に置いた時のように、完全に背中の方から音がするような事はない。ただ、上空や右上、左上といった定位感は感じられるし、また、音の響きが背中まで包み込んでくるような感覚は、リアルなサラウンドスピーカーを設置した時とよく似ている。
高さ方向の音像の聴こえ方は確かに違う。「タイラー・レイク」で、スラム街を舞台に追っ手から逃げるシーン。吹き抜けになった建物の、1つ上の階を敵が歩くシーンがあるのだが、バーチャルハイトをONにすると、明らかに右上の階から足音がしているように聴こえる。対して、OFFにすると右横から聴こえる感じになってしまう。音の響きの広がりと、こうした音像の上方定位感が組み合わさる事で、上からも音に包み込まれる感覚が得られるのだろう。
方位感、定位感だけでなく、バーチャルハイトをONにすると音像のシャープさ、クッキリ感もアップ。「オールドガード」で、主人公たちが蜂の巣になるシーンでは、飛び交う銃弾の音像や、薬莢が床ではねる鋭い金属音が、バーチャルハイト ON状態の方が鋭く、明瞭でゾクゾクする。
アニメも見てみた。最近人気の「呪術廻戦」から、五条悟と火山のような呪霊・漏瑚(じょうご)がバトルするシーン。爆発音や、マグマがジュワジュワ沸き立つ音など、効果音の恐ろしさがBar 5.0ではよく聴き取れる。中村悠一の低い声の色っぽさも、しっかり低音が出るサウンドバーで聴くと、より味わい深い。声の質感、細かな吐息などもよく聴こえるので、声優陣の演技もより楽しめる。
なお、バーチャルハイトをONにする事で、音色が変わったり、不快な感じになったりもしないので、映画やドラマを楽しむ時は常時ONでもいいと思う。
聴いていて見事と感じるのは、映画やドラマのセリフの高さだ。バーチャルハイト OFFの状態でも、声がテレビ画面の下方によどまず、画面の中央あたりから聞こえる。バーチャルハイトをONにすると、セリフの高さ具合はそのままに、風の音や道路のクルマの音など、背景サウンドの広さがさらに拡大し、セリフの上空にも音の空間が広がる。
ゲームや音楽配信も楽しめる
巣ごもりでゲームを楽しんでいる人も多いだろう。そこで、PS4 Proを接続し、人気のバトルロワイヤルゲーム「Apex Legends」をプレイしてみた。AtmosのバーチャルハイトはON状態だ。
映画も激変したが、ゲームも激変する。テレビ内蔵スピーカーでは、銃撃音や自分の足音くらいしか耳に入らなかったのだが、Bar 5.0では風の音や遠くで戦っている音など、広さと奥行きが一気に表現されるため、“自分が本当にフィールドにいる感じ”が一気に高まる。
迫力もまるで違う。「クレーバー」という50口径の強力なスナイパーライフルが登場するのだが、テレビ内蔵スピーカーで聞いていた時は「カシャーン」みたいな音に聞こえていた。しかし、Bar 5.0で再生すると「バゴォーン!!」という地鳴りのような迫力で、その後に「オンオンオン……」と続く響きが、遠くまで伝搬していく様子がよく聴き取れる。プレイが上手くなるかはわからないが、一度聞いてしまうと、テレビスピーカーの味気無さがツラすぎて戻れなくなるのは間違いない。
音楽を楽しむ機械としても活躍する
Bar 5.0は2.4/5GHzのWi-Fiを内蔵していて、AppleのAirPlay2や、GoogleのChromecast Built-inにも対応。Bluetooth受信もできるため、手軽にスマホ内の音楽を再生したり、スマホで再生している音楽配信サービスの音を、Bar 5.0にキャストする事もできる。
Amazon Alexa、Googleアシスタントからの音声操作も可能。Alexaでは「Alexa MRM」という新機能もサポートしており、Alexa対応デバイスと同一ネットワークにある複数の対応機器間での音楽を同期再生する事もできる。
試しに、AlexaやBluetoothでの再生も試してみたが、これはサウンドバーの利用時間を大幅にアップさせると感じる。サウンドバーというと、どうしても「テレビや映画の音を良くする機器」というイメージがあるが、スマホから音楽を再生するだけの時は、別にテレビが映っていなくても良い。つまり“リビングや書斎に置いたワイヤレススピーカー”として使ってもいいわけだ。
しかも、その音質は、一般的なポータブルBluetoothスピーカーを大きく上回る。サイズが違うので当たり前と言えば当たり前だが、ゆったりとした低音と広がりのある音を流してくれるので、「テレビを観たくないが、音楽は欲しい」という時に最適だ。
2chの音楽を流している時は、Dolby AtmosによるバーチャルハイトをONにできないのだが、OFF状態でも十分音の広がりがあるスピーカーなので、特に不満は感じない。ミニコンポなどが家庭から減っている昨今、“家の中で、一番良い音を出すスピーカー”としてBar 5.0を買うというのもアリだろう。
サウンドバーではなく、新世代スピーカー
Bar 5.0 MultiBeamを使って感じるのは“スキの無さ”だ。さほど大きくない筐体で、広がりのある音を出すためにビームフォーミング技術を使い、さらに高さ方向にも広がりを足すためにバーチャルハイト技術も搭載。
さらに、低音が不足しがちなサウンドバー単体製品の弱点をカバーするため、4基のパッシブラジエーターを内蔵。トレンドとも言える、ネットワーク再生まわりもしっかり対応し、有機ELディスプレイとリモコンで使い勝手や視認性も高めている。それでいて、実売は約4万円。しかも筐体の質感も高いわけで、この完成度の高さは見事だ。
一昔前は、サウンドバーの単体製品は、「ホームシアターの入門機」というようなイメージがあった。ここから入門して、例えば別体のサブウーファーが付属するより大型なサウンドバーを買ったり、AVアンプとマルチチャンネルスピーカーを導入してリアルサラウンドにステップアップして……というような道筋だ。
しかし、Bar 5.0 MultiBeamは単体でも十分な低音再生、音の左右上下の広がりを実現しており、これだけで満足度が高い。入門機というより、「テレビの音をシンプルにグレードアップ」、「テレビやゲームやスマホの音をハイクオリティに楽しむ」新世代のスピーカーが登場したという印象だ。