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連れ出すと思わずニヤリとするヘッドフォン、B&W「Px7 S2e」の実力

Bowers & Wilkins「Px7 S2e」オーシャン・ブルー

上品だが目を惹くヘッドフォン

近年、男女を問わずヘッドフォンを首から下げて街を歩くオシャレな方をよく見かける。以前からヘッドフォンをファッションアイテムとして使う風潮は若者を中心にあったが、最近はその年齢層も幅広く、コーディネートに合わせてヘッドフォンをチョイスしているようなセンスの良い方も増えており、僕は彼らとすれ違うとファッションも含めて見返してしまう。事実、「VOGUE Japan」「Harper’s BAZAAR」など海外著名ファッション誌の本国および日本語版でもヘッドフォンの特集は増えているようで、「良い音で音楽を聴けて、ファッションアイコンにもなるヘッドフォンの需要」は急速に上がっている。

そして、まさにそんな要求にドンピシャなワイヤレスヘッドフォンが、イギリスの高級スピーカーブランド、Bowers & Wilkins(B&W)社より登場した。型番は「Px7 S2e」(オープンプライス/実売5万円台後半)だ。本モデルは同社から2022年に発売され大ヒットした「Px7 S2」の最新バージョンで、型番末尾に進化を意味する”e”= Evolvedを付与している。具体的な進化点としては、ヘッドフォンの音質を左右する24bit処理のDSPに、上位モデルである「Px8」同様のチューニングを施して音質向上を狙っている。

Px7 S2eオーシャン・ブルー

レビューの執筆にあたり、手元に届けられたPx7 S2eの実機を見た僕は、まずそのデザインについて「これはいい!」と強く惹かれた。全体のデザイン品質が素晴らしく現代的なのだ。音質の良さが評価されるB&Wだから、いつもであれば機能的な部分から紹介するところだが、Px7 S2eについてはあえてデザインから紹介したい。

トレンドを抑えたカラーとデザイン

Px7 S2eのカラーバリエーションは、アンスラサイト・ブラック、クラウド・グレー、オーシャン・ブルー、フォレスト・グリーンの4つ。

アンスラサイト・ブラック
クラウド・グレー
フォレスト・グリーン

これらのカラーを見ていると、とある1つの共通点が浮かんでくる。4色とも巷のファッション広告や店舗のウインドウ内に置かれている商品でよく見かける、トレンドの配色なのだ。

実際のところ現在のヘッドフォン事情といえば、プロ用途を中心としたモニターヘッドフォンの他、民生機では低音重視モデルやゲーム用途など様々だが、音楽リスニング用モデルは全体的にデザイン品質が上がっている。そのような中でもPx7 S2eは 、ブームが続いているくすみカラーのグリーンや、落ち着いた濃色トーンながら視覚的インパクトのあるコバルトブルーなど、ファッショナブルなカラーバリエーションを持っていて、選ぶのが楽しくなる。

Px7 S2eはベーシック部分でのデザインバランスが完璧にとれており、ヘッドバンドからハウジング(本体)外装に使われている素材のファブリックと樹脂パーツの配置のセンスが良く、 それに加えてアーム部やハウジングに使われる樹脂パーツの造形や質感にチープさがなく、高品質なイメージを支えている。

ファブリックと樹脂パーツを組み合わせている
アーム部のアップ。質感が良いい

実はPx7 S2eの外観変更は、前モデルであるPx7 S2と比較するとハウジングに刻まれたBowers & Wilkinsの文字やトリムリング(ハウジングとイヤーパッドの間にあるパーツ)のデザイン変更くらいにとどめられているのだが、配色のセンスが洗練された結果、見た目の印象がテキメンに向上している印象だ。

左がPx7 S2e、右がPx7 S2

見た目だけじゃない、B&Wらしい“ガチな中身”

ここからは内部構成と機能面を確認していこう。基本となる振動板はPx7 Sから引き続きB&Wがカスタム設計した40mm口径のバイオセルロース・ドライブユニットを搭載。また振動板の放射面から耳までの距離を一定に保ち、聴感上の位相特性と音のクセを低減する「アングルド・ドライブユニット」構造も踏襲する。

今回のモデルチェンジで変更点となったのが、上述の通りDSP部で、先行で発売した上位機Px8のDSP回路開発で得られたノウハウを投入し、空間再現力、音数の多さを進化させているという。

B&Wがカスタム設計した40mm口径のバイオセルロース・ドライブユニットを搭載

端末との接続については、ワイヤレスとワイヤード(有線)の両方に対応している。ワイヤレスのBluetooth対応コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX HD/aptX Adaptiveと、今どきの高品質ワイヤレスヘッドフォンに求められる仕様を満たしており、例えばaptX Adaptive対応するスマホやタブレットなどと組み合わせれば、圧縮コーデックながら最大48kHz/24bitで低遅延な音声データの伝送が可能だ。

また、付属する「USB Type-C to 3.5mmケーブル」を用いてスマホとの音の良いワイヤード接続も可能。余談だが、Px7 S2eはDSB-DAC機能を搭載するので、こちらも付属の「USB Type-C ケーブル」でパソコンやスマホと有線接続してのリスニングにも対応するところはB&W製品らしさがある。

「USB Type-C to 3.5mmケーブル」に加え、「USB Type-C ケーブル」も付属。USBヘッドフォンとしても使える

ワイヤレスヘッドフォンで選択ポイントの1つとなるノイズキャンセリング性能や通話性能についても充実している。Px7 S2eは合計6つのマイクを搭載。ハウジング内に設置されたマイクでドライバーユニットからの音声を捉え、ハウジング外のマイクで外部のノイズを収音し、環境ノイズのみを取り除いている。ノイズキャンセリングはオン/パススルー(外音取り込み)/オフの切り替えが可能だ。また、電話やWebミーティング時には通話用専用マイクが利用されており、発話音声以外のノイズを抑制することで、使用者の発声を相手に明瞭に伝える。

その他の機能面については、iOSやAndroidデバイスにインストール可能な「Bowers & Wilkins Musicアプリ」が使用可能で、イコライザー調整や、ノイズキャンセリングのON/OFF/パススルー設定等を行なえる。

「Bowers & Wilkins Musicアプリ」でイコライザー調整や各種設定が可能だ

バッテリーの持ち時間はPx7 S2と同じで、音楽再生で最大約30時間、15分の充電で7時間の再生が可能な急速充電機能も可能だ。

高い透明感と分解能、ソースに忠実なB&Wサウンド

試聴は4つのシチュエーションで、一部は前モデルPx7 S2とも比較しながら行なった。最初に正直に話すと、今回のモデルチェンジにおける内部的な進化はDSPのチューニンググ変更が中心ということで、「本質的な音質差が出ないのではないか?と思っていた。……が、さにあらずであった。

まずは手持ちのiPhoneとBluetooth接続した。ハウジング側面の電源ボタンを上部に長押しするとペアリングモードになり、直後にiPhoneのBluetooth接続画面に「Px7 S2e」と表示される。ペアリングはスムーズで、Bluetooth接続コーデックはAACとなる。

ここでは筆者がヘッドフォンやアワード選定などでも利用するリファレンス音源としている楽曲をチョイス。定額ストリーミングサービスのSpotifyから、ホセ・ジェイムズのアルバム「リーン・オン・ミー」の「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」を試聴した。

両モデルともイコライザー設定はフラット、ノイズキャンセリングは無効化してある。

まずは新モデルであるPx7 S2eを聴いたが、帯域バランス(高音域から低音域までの音量の違い)はフラット基調、ごく僅かに高域と低域が持ち上がり、気持ちの良い音に仕上がっている。音の粒子が明快でボーカル、シンセサイザー、ベースのディテールがしっかりしている。高品位なホームオーディオのシステムで聞くような完成度の高い音で、音楽的にも楽しさがある。

そして驚くは、前モデルPx7 S2との音質差だ。Px7 S2eの方が一聴して音の透明感と分解能が上がっており、音数さえ違って聴こえる。またバックミュージックに対してボーカルの立体感も向上している。その大きな理由は低域表現の違いだ。帯域バランスとして、Px7 S2eは低域の量感がソースに忠実なのである。だからボーカルの立体感や1つ1つの音が明瞭だ。

続いてAndroidスマホとの組み合わせた。この場合のBluetooth接続コーデックは48kHz/24bitのapt Xとなる。ここではAmazon Musicから「YOASOBI/アイドル」を再生した。オーディオ的な音質表現をするなら、作り手の感性の高さを実感させる上下の帯域レンジ、SN比、ダイナミックレンジに優れた音。中~高音域の分解能が高く音がダンゴにならないし、低域はソースに忠実な量感で迫力とグルーブ感を両立、豊かなバックミュージックの中からフワッと浮き上がってくるIkuraの声の描写がたまらない。

クライマックスは、自宅でMacBookProとのワイヤード接続を行ない、Px7 S2eの音質的限界再生にチャレンジした。上述した通り、Px7 S2eはD/Aコンバーターを生かしてデジタル接続が可能。再生ソフトにRoonを利用して、女性ボーカルのアデルのアルバム「30」より「To Be Loved Easy on me」(44.1kHz/24bit)のハイレゾファイルを再生した。

まず気が付いたのは、ボーカルの距離感が近すぎず遠すぎずソースに忠実なこと。イントロのピアノは透明感があり、正直に書けば下手なモニターヘッドフォンよりもベースとボーカルの情報や空間再現能力に対する再現性が高く感じるほどだ。そして音楽的な楽しさと、オーディオ的な再生能力が高度に両立している現代的な描写力を持つヘッドフォンだと判断できる。この状態で改めてPx7 S2と比較したが、最初に感じた印象は覆ることがなかった。音質差は歴然としている。

また良いなと思ったのは良好な装着感で、本体重量は307gと一般的だが、側圧が適度で、イヤーパッドのフィット感も良好だった。また、ハウジングの振動板側には大きくLとRのプリントがあり左右が一目でわかるのも日常使用に嬉しいところ。

アプリも便利

「Bowers & Wilkins Music」アプリについても、記しておきたい。

Px7 S2eは箱から出してスマホとペアリングすれば即使用可能だが、アプリを利用するとノイズキャンセリング切り替えに加え、イコライザー機能等を利用できる。ペアリングした状態でアプリを立ち上げログイン(メールアドレスとパスワードを事前に登録してアカウントを作っておく必要がある)すると初期設定画面が表示される。ヘッドフォンの電源ボタンを上にスライドさせればアプリとの連携が完了、画面上の「クイックスタート」をタップすると基本的な操作方法が確認できる。

アプリでは、ノイズキャンセリングはオン/パススルー(外音取り込み)/オフの切り替え、高域と低域の量感を+/-それぞれ6db増減させるイコライザー機能、電源を自動で切るオートスタンバイのON/OFF。また内蔵の装着センサーと連携して、ヘッドフォンを頭から外すと音楽再生を一時停止する機能のON/OFFも設定できる。

外に連れ出して感じる、クオリティの高さ

最後は本モデルを外に持ち出してみた。最寄りの駅から東京駅までの車内でノイズキャンセリングを試したが、電車の音や市街地の暗騒音をかなり低減してくれるし、ノイズキャンセリング時の音質劣化も少なく感心した。道中の間にパソコンと接続して動画を見たり、通話性能も確認したが、通話相手に声質を確かめたところ、僕の声がとても聞き取りやすかったとのこと。

操作性については、右側のハウジングにあるマルチファンクションボタンを操作すると、再生、一時停止、トラック送り、電話の着信への応答等が可能。音量調整ボタンは上下に2つ独立している。

というわけで、Px7 S2eの奏でる再生音と機能性は、筆者の期待を大きく上回るものだった。まとめると、本モデルの魅力は、音質が良く、B&Wの名に恥じぬ良質な音質機能的にも不足なく、そしてデザインが美しいこと。

連れ出すと思わずニヤリとするヘッドフォン

僕自身、前職ではデザインに関わるようなブランドとの協業も多数経験したから、オーディオ評論家という職種の中でもデザインのセンスについてはかなりうるさい方だと自負しているが、Px7 S2eのファッション性には改めて強く惹かれる。

今回の取材において、箱から取り出しデスク上に置いた状態でさえPx7 S2eは素晴らしい存在感があったし、外出時にマックブックと並べた時の風景には思わずニヤリとしてしまうほど。ある意味、部屋に置いておけばインテリアさえ強化してくれるデザインであると同時に、ヘッドフォンに合わせて洋服をチョイスしたくなるほどの仕上がりの良いモデルは数少ないだろう。

巷のヘッドフォンより1つ上のセンスで毎日のテンションを上げてくれるような完成度の高いモデルだから、音質にもファッション性にも妥協なくワイヤレスヘッドフォンの購入を検討するのであれば、積極的に選択肢に入れていきたいところだ。

最後に余談だが、記事執筆中に同社ワイヤレスヘッドフォンのフラッグシップモデル「Px8」に 新色ロイヤルバーガンディカラーが発売されたとの情報が舞い込んだ。せっかくなのでこちらも自宅に送ってもらったのだが、カーボンコーン・ドライブユニットによる音の良さや、鋳造アルミニウムのアームと上質なナッパレザーなど高品位なパーツの搭載、そしてゴージャスさが増したデザインなど、見どころが多いモデルとなっている。嬉しかったので予定外に何枚か写真を撮影してみたので購入時はぜひ参考にしていただきたい。

「Px8」の 新色ロイヤルバーガンディカラー。ゴージャスな雰囲気がたまらない