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「テイルズ」等のゲーム音楽家・桜庭統、SUPERIORを聴く「音楽的な音がする」。実はオーディオマニア!?

qdc「SUPERIOR」を聴く桜庭統氏

オーディオファンにとって、プロが使用するモニター機器は気になる存在。制作現場で使われているモニタースピーカーやヘッドフォンと同じものを使ってみたいという人は多い。

今回登場していただくのは、ゲーム音楽界の大ベテランであり、コンシューマオーディオも業務用機器もどちらもこよなく愛するコンポーザー/キーボード奏者の桜庭統氏。トライエースの「スターオーシャン」シリーズ、ナムコの「テイルズ オブ」シリーズといえば、誰もが知る大人気作品だ。

桜庭氏は、ゲーム開発会社ウルフ・チームのサウンドスタッフとしてキャリアをスタート。数々のゲーム音楽を手掛けた後、フリーの作曲家に。現在は、ゲーム音楽だけでなく、Linked Horizonなどのコンサートへのキーボディストとしても活躍している。

そんな桜庭氏、実は生粋のオーディオファンでもある。プロ用機器を仕事で活用しつつ、音楽を楽しむためのオーディオ機器もこよなく愛する同氏との対話は、オーディオファン必読。

そんな桜庭氏に、昨年7月に発売されて以降“最強エントリーイヤフォン”として人気のqdc「SUPERIOR」(14,300円)を試していただき、注目すべきポテンシャルについても伺った。

qdc「SUPERIOR」

ゲームとの接点が無いままゲームメーカーへ

「通っていた幼稚園にオルガン教室があり、レッスンの様子を見てたらやりたくなりまして。3歳の頃、親に頼んで習い始めました。オルガンは2年くらいやって、途中からピアノに変わりました。実は、練習があまり好きになれなくて、真面目にやってはいなかったです。譜面通りに弾くという才能がなかったのだと思います。勝手に自分で変えちゃうんですよ。小学校高学年くらいまでピアノは続けましたが、この頃から適当に弾いて作曲めいたことはしていました」と笑う桜庭氏。

「兄が映画のサントラをよく聴いていたので、影響を受けました。ベートーヴェンの『英雄』をカセットで聴いたりもしていて。そこから冨田勲さんに興味が移り、シンセサイザーも気になりだしたのが中学生の頃です」。

現在の活動の基礎ともなるバンド活動は、高校生で始めたという。

「高校生になってハードロックを好んで聴いていた頃、バンドをやってる友人から『鍵盤やってるならキーボードをやってほしい』と頼まれました。学園祭に出たり、公共の会館などでライブをやったりして、楽しかった思い出があります。当時は運動部もやってましたので、活動としては部活とバンドの半々くらいでした」。

本格的にバンド活動をするのは、大学2年生からだ。

「最初は大学に入っても運動をやりたかったのですが、体育会系の部活はスポーツ推薦を受けてないと入れないことに、大学へ進学してから気が付きました(苦笑)。じゃあ何をやろうかと思って、そういえば音楽をやってきたから……と、ロック寄りの音楽をやっているサークルに入りました。出身者にはプロのミュージシャンもいて、他校と比べるとレベルは高かったと思います」。

桜庭氏が大学在学中に所属していたバンド「DEJA-VU」。ちなみに、インディーズデビュー作「Baroque In the Future」は、2023年の7月に紙ジャケットCDのボーナストラック入りで再発売されている。

そんなDEJA-VUでの活動を通じて、プロとしての仕事も請けるようになったというが、「今考えると若いって怖いですね」と苦笑いする桜庭氏。一体どういうことだろう。

「当時は、音楽で食べていくつもりはなかったのですが、バンド活動を続けるうちにプロになりたいと思うようになりました。でも、やっている音楽がプログレですから、それで食べていけるわけがないんです(笑)。でも、当時は『このままいけば、バンドマン、ミュージシャンとしてプロになれるだろう』と思っていました。所属事務所からセッションとかの仕事もちょっとだけもらえていましたので、就職活動もまったくしてなかったですね」。

そんな桜庭氏が、ゲーム開発の会社であるウルフ・チームに入社したのは、どんな経緯だったのだろう。そもそもゲーム音楽にも興味があったのだろうか?

「実は、ゲームは未経験だったんです。ゲーム機も持っておらず、ゲーム音楽というジャンルを知りませんでした。世代的なこともあると思います。僕より下の世代の人は、当たり前のようにゲームに触れていますので」。

「就職したのは、バンド活動をはじめとした音楽の仕事では食べていけなかったのが一番の理由です。アルバイトニュースを見たら、ゲーム会社の求人があって音楽を作れる人材を募集していました。当時は音楽系であればどんな仕事でもいいし、自分の曲で使ってもらえるなら……という気持ちでしたね。なので、わざとゲームっぽい曲を作るよりは、自分の得意な曲を詰めてデモテープを提出しました。受けたのもウルフ・チーム一社だけなんですよ」。

こうして、ゲームとの接点が無いままゲームメーカーに入社した桜庭氏だが、最初は苦労の連続だったそうだ。

「入社したての頃は、打ち込みをやったことがなかったので、やり方を覚えるところから始まりました。当時はリアルタイムではなく、PC-98でレコンポーザというソフトを使っての入力です。最初の1カ月くらいは効果音だけを担当して、その後は曲も作り始めるようになりました。ゲーム音楽特有の制約が多くて、それがストレスでした。和音がダメとか、音数が少ないとかです。当時作っていたのはPCゲームが主でしたから、アナログのPSG音源が3つにFM音源2つで表現していました。効果音が鳴ると、そこから1つ音が消えるんです」。

映像に合わせて曲を作るという行為も、バンド活動をメインとしてきた桜庭氏にとっては初体験だ。

「今まで作ってきた音楽とは大きく違いました。シーンに合せて曲を作るという作業も初めてでしたし。ただ、劇伴の仕事自体に苦労したということはあまりないんです。プログレをずっとやっていたので、ファンタジー要素だったり、場面を音楽で表すというテイストがゲームの仕事でも生きたのかもしれません。普通に作れば、ちゃんと合ってくることが多かったです」。

「自分は、インストの音楽も好きなんです。インストを作って食べていける世界はゲーム音楽しかないだろうという気持ちはありました。社員作家としてインストを作って、プログレはプログレでバンドも平行して続けていましたので、好きな音楽もやることができていました。それに、ゲームをプレイしたファンの方から手紙が届くんですよ。自分の作った曲で喜んでくれるファンの方の声を聞くとやっぱり嬉しくなりますね」。

ゲーム音楽の進化について話が及ぶと、歴史を感じるエピソードが次々に飛び出した。

「生録した音がゲームで流せるようになったのは、初代PlayStationくらいからです。当時、BGMの多くは内蔵音源で鳴らしていましたが、そのクオリティが良くなっていったのがまさにPlayStationの時代です。音色の組み込みも自分でやっていましたよ。大変ですが、楽しさはありました。サンプリングも出来て、生っぽい音を内蔵音源で鳴らすことも出来たんです」。

「ほとんどのBGMをストリーミングで流せるようになったのは、PlayStation 2くらいからです。それまでは『サウンドメモリが少ないから、このくらいの音でしょうがないか』みたいなのはありました。自分の出したい音が出せるように、妥協せずに作れるようになったのは嬉しかったですね」。

「ゲーム音楽のライブも徐々に増えていきました。作品の人気もあって、大きな会場でたくさんの人を前に音楽を届けられました。自分のバンドは狭い小屋でやったりしてましたが、ライブハウスはお客さんとの距離が近いのでそれはそれは好きですね」。

シナリオはあえて“読み込み過ぎない”

自由度の高い生録ならではの苦労、逆に内蔵音源だからこその魅力もあるのだろうか。

「オーケストラの録音をするときはとても大変でした。最初の頃は、バンド出身ですから、クラシックの本格的なことはわからないわけです。間にプロのオーケストラレーターに入ってもらいますが、自分も常に勉強の日々でした」。

「内蔵音源は、やっぱり“あの頃のハードにしか出せない音”が一番の魅力だと思います。今ではソフトウェア音源でエミュレートすることもできますが、なかなか当時の音にはならないんです。これだけゲームの音が進化した現代でも、あの頃の独特の音色が好きだと言われる方は多くいらっしゃいますね」。

ゲーム音楽作りは「シナリオをざっと読むところからスタートします」と語る桜庭氏。“ざっと”がポイントだ。

「あまり読み込んでしまうと、曲を作るときの世界が狭くなってしまうので気を付けています。世界観を掴んで、キャラクターの背景や生い立ち、目的をチェックします。もちろん、キャラクターのビジュアルや、舞台となるフィールドの風景(美術ボード)などは確認します。曲を作るときは、制作機材の前でガッツリやることもありますし、普段の生活の合間に思いついたフレーズをメモしたりもします」。

作品の資料にはあえて触れすぎないようにしているという桜庭氏だが、昨今のゲームにも増えてきた“フィルムスコアリング”のシーンでは、映像を見ながらフレーム単位で曲を合わせていくそうだ。

最近のゲームソフトは映像が進化し、演出も“映画的に変わってきた”と言われる。ゲーム音楽と映像のバランスには苦労もあるようだ。

「そもそもゲーム音楽はBGMではあるのですが、バックグラウンドになりすぎても適切とはいえません。かといって、映像がリアルになってきたので、あまりにもゲーム音楽然としてしまうと、合わなくなってきました。昔のゲームと違ってメロディが立ってしまうと曲の方が浮いてしまうので、バランスを取るのが難しくなっていますね」。

高校生から“バラコン”愛用

そんな桜庭氏が楽曲制作時に使用している機材は種類も豊富だ。

「自宅のメインのモニタースピーカーはDYNAUDIOの『Air6』を使用していまして、PA用としてElectro-Voiceの『FORCE i』も使っています。他には、ヤマハの『NS-10M PRO』と『HS50M』などもあります。作った曲を、ラジカセでもモニターできるようにしていて、B&Oの『Beosound Century』を設置しています」。

「イヤフォンはライブ用のIEMくらいであまり使ってはいません。ヘッドフォンは、ソニーの『MDR-900ST』の他に、AKGの『K371/K240/K501』の3機種を使っています。AKGはベルデン製のケーブルでリケーブルしています」。

Etymotic ResearchのIEMも愛用中

自宅の音楽制作ルームの広さは、なんと約40畳もあるそう。

「その分、吸音が大変で(笑)。自分でコンクリートの壁面に吸音材を貼ったりして対策しました。グランドピアノやドラムセットも置いてあります」。

自宅の制作機材は、あくまで作曲用途。ミックスはプロの方に任せることが多いそうだ。出来上がってきた音源を確認する際は、モニタースピーカーはもちろん、ラジカセからも再生してチェックするという。

リスニング用のオーディオ機器について聞くと、コアな話が続々と飛び出した。

「実は、昔からオーディオは好きだったんです。小学校高学年頃には、兄のおさがりのモノラルラジカセで音楽を聴き、録音も楽しんでいました。中学生になると、ソニーの「“ZILBA'P(ジルバップ)”」というラジカセで、購入したクラシックのカセットを聞いたり、FMラジオのエアチェックをしたり。兄のおさがりのターンテーブルを繋いでレコードも聴いていました。TOTOやBOSTON等のちょっとプログレが入ったロック系ですね。エアチェックは主にプログレです。富田勲等、シンセサウンドに興味が沸いて来た時期でした」。

「高校時代にアンプ、スピーカー、ターンテーブル等、自分用のものを購入しました。ハードロック、プログレ、クロスオーバー系の洋楽を聴いていましたね。ヘッドフォン等もこの時代に購入しました」。

高校生で“バラコン”デビューとは、恐れ入る。

「当時は、CDが登場する前のオーディオブームでしたが、周りでやってる人はあまりいなかったです。その分、友人を家に呼んでレコードを聴いたりはしてました。バンドを始めてからは、シンセを買ったり、楽器方面にもお金が掛かったので、オーディオの買い換えはそんなに頻繁に出来ませんでしたね」。

「社会人になってからは、アキュフェーズのアンプや、Bowers & Wilkinsの『805』も買いました。PS Audioの安定化電源も使っていました。アクセサリーはインシュレーターやケーブルなどを買ってましたが、キリが無いので、値段は4~5万円が上限でしたね」。

コンポーザーで制作機材にこだわる方にはたくさん出会ってきたが、桜庭氏のようにオーディオも本格的に好きという人は珍しい。機器を選ぶときの思想も、完全にオーディオファイルのそれだ。

「オーディオの世界は原音にこだわる人もいますが、この製品はこういう音がするといった“機器の個性”を楽しむ世界だと思っています。なので、制作用の機材とは完全に分けて考えていますね。今現在は、805は処分してしまったのですが、PMCのトールボーイ『FB1』を使っています。自然な誇張のない音が気に入って買いました」。

「オーディオ機器は、買ってから楽しむタイプです。お店で試聴しても正確なところは分からないと思っています。ある程度のクオリティが確保されているグレードの製品を、Webサイトや口コミで調べて、あとは買って実際に試します。完全に好みに合わなかったら、どうやってもダメなんですが、それは自分の責任として受け入れます。失敗しながら、自分の求める音を追求するのも面白くないですか? とにかくやってみる、聴いてみるということです。“電源ケーブルを床から浮かすと音が良くなって面白い”とかあるじゃないですか」。

話を聞いていて「うんうん、そうそう!」と首が痛くなるほどに同意だ。自分で試して、自分で聴いて、時には失敗しながら理想の音を追求する事が、オーディオ趣味の醍醐味といえるだろう。

SUPERIORは「音楽的な音がする」

そんなオーディオファンである桜庭氏に、SUPERIORをしばらく使っていただき、感想を聞いた。

「とても聴きやすい、親しみのある音がしました。モニター機のようなハイは若干出てないのですが、その分、聴き疲れはしません。自分が使ってる業務用のイヤモニはやっぱり疲れるんです。サウンドも味気ないですし。一方、SUPERIORは音楽的な音がしますね。楽曲をちゃんと聴かせてくれます。ローもしっかり出ていますし。モニター向けのサウンドだと“粗探し”が始まってしまって、楽しさがあまりないのですが、SUPERIORはそういう事がありません」。

「価格帯からしてここまでの音が出ることに驚きました。3万円台だと言われてもおかしくないくらいのクオリティですね。1万円台でこの音なら、逆にqdcの最上位機種に興味が沸きます」。

「装着感もよかったです。長い時間着けていても痛くなりませんでした。あと、着けやすさも良好でした。自分が昔持っていたイヤフォンだとパッと見で、どうやって耳に装着するかわかりにくかったので。SUPERIORはシェルやケーブルのデザインを見ればどうやって装着するかわかります。細かいところですが、日常使いするイヤフォンにとって大事だと思うんですよ」。

「イヤーピースは、シングルフランジとダブルフランジがそれぞれ3サイズ付属していますが、自分はシングルで大丈夫でした。欲を言えば、付属しているケーブルが短いです。音楽制作の時やテレビと組み合わせる時は、もう少し長いケーブルが良いですね。3.5mmの延長ケーブルも使ってみたのですが、音が悪くなってしまったので、リケーブルしたくなっています(笑)」。

SUPERIORのコネクターは、互換性の高いカスタムIEM 2pinコネクター(0.78mm)を採用し、バランス接続へのリケーブルも可能。純正のバランスケーブル「SUPERIOR Cable 4.4mm」もラインナップしている。また、3.5mmアンバランス接続のケーブルで、インライン式のリモコンマイクを搭載した「SUPERIOR Cable for Gaming」がオプション品として用意されている。こちらは約180cmと長めだ(純正は約120cm)。

「何時間もSUPERIORを着けて曲作りをしましたが、聴き疲れしない音で良いと思いました。このイヤフォンのお陰で、ヘッドフォン熱まで再燃しそうです。開放型がほしくなって、ヘッドフォンアンプまで調べ始めていて、ヤバいです(笑)」。

オーディオファンである桜庭氏の感性だけでなく、物欲も刺激するSUPERIOR。ちなみに、SUPERIORとマッチする自身の楽曲について尋ねてみた。

「最近のタイトルですと、『テイルズ オブ アライズ』のサントラはやはり聴いてほしいです。サウンドの傾向的には、打ち込み系も合うと思います。『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』のサントラとかはお勧めです」。

「SUPERIORなら多くの人に使ってほしいと思えます。癖がないのに、とても音楽的な音がするんです。分析するための音とは真逆ですね。誰が聴いても、いいなと思ってもらえるのではないでしょうか。理想をいえば、ある程度の大きさのスピーカーで聴いてほしいのも本音ですが、SUPERIORのようなしっかりした音のイヤフォンで聴くことから始めてもらえれば、こちらが表現したい意図が伝わるので嬉しいなと」。

SUPERIORをqdcと共同開発したアユートによると、SUPERIORはインストルメンタルを中心にチューニングを行なったという。ボーカルが主体のイヤフォンは、人の声がとても近くに聴けるのが魅力だが、SUPERIORは楽器などのボーカル以外のパートがよく聴こえるようにチューニングしたそうだ。ゲーム音楽もリファレンスの試聴ソースに使われたということで、相性がいいのも納得だ。

SUPERIOR EX

さらに、今年5月に発売されたqdcとFitEarのコラボモデル「SUPERIOR EX」(33,000円)も体験していただいた。FitEarが開発に参加するだけでなく、筐体もアルミニウムとなり、付属のケーブルもオリジナルの銀メッキOFC導体4芯線ケーブルとなっている。

「これは音のコンセプトからして違う感じがしますね。アタックがより分かりやすくなっていて、生音っぽく聴こえます。これで実売が3万円弱なら安いと思います。この音を聴くと、qdcの最上位機種が余計気になってきました(笑)」。ちなみにqdcとアユートの共同企画イヤフォンの“最上位機”は、5ウェイ・トライブリッド15ドライバー搭載のユニバーサルIEM「EMPEROR」(エンペラー/550,000円)となる。

SUPERIOR EX
EMPEROR

新たなソロアルバムも制作中

オーディオ談義で場の空気も熱くなったところで、今取り組んでいることや、今後やってみたい企画について伺った。

「ソロアルバムの制作を2作品進めています。1枚はシンセ系で、もう1枚はオルガン・ベース・ドラムのトリオ編成のバンドものです。シンセ系のアルバムは、ドラムも自分が叩いています。バンドものは、プロのミュージシャンの方にお願いしています。CDの他に、アナログ盤も出したいですね」。

「今後やってみたいのは、ピアノの即興です。ライブはもちろんのこと、アルバムとしてまとめてみたいと考えています。即興って、演奏しているときは楽しいのですが、録ったものを聴いてみると『何じゃこりゃ!』ってなるので難しいんですよ。いわゆるジャズを思い浮かべる方も多いと思いますが、私は専門的に学んでいるわけではないので、ジャズ的なものにはならないと思います。自分が好きで聴いていたのは、チック・コリアやハービー・ハンコックですから、それを踏まえて自分なりの音楽を目指したいなと今は考えています」。

桜庭氏のソロ作品は、過去に複数のアルバムが発売されており、ゲームサントラとはまた違った雰囲気が楽しめる注目の内容になっている。最新作が制作中となれば、ファンとしては期待が膨らむばかりだ。

また、ゲーム関連ではフランスのStudio Cameliaが開発しているターン制バトルのRPG「ALZARA Radiant Echoes」のゲーム音楽を制作中という。リリースは2026年の予定。こちらも楽しみだ。

長年に渡りビックタイトルを手掛けてきた桜庭氏。ゲームを含めた劇伴作家を目指す、次世代の才能に向けてのアドバイスも聞いてみた。

「まず、“作品を完成させること”を目指してください。途中までなら誰でも出来るんです。たとえ練習であっても、曲作りは途中で止めないで欲しいと思います。繰り返し何曲も忍耐強く完成させることが大事です。劇伴作家を目指すのであれば、“早さ”と“クオリティを上げていくこと”を並行して鍛えていきましょう。逆に引き出しの多さは、やりながら身に付いていくものでもあるので、あまり心配し過ぎなくてもよいと思います」。

「あとは、ちゃんと寝てください(笑)。曲をたくさん作ることと相反しますが、寝てないと発想が出てきません。疲労が溜まると、作業そのものは出来ても、芯を食わないというか、あとで聴き直すとイマイチだったりして、結局効率が悪いんです。昔は徹夜してやるのがいいことみたいな風潮もありましたが、今は時代も変わりました。健康維持のためにも、根を詰め過ぎず、適度に睡眠は取りましょう」。

頭では分かっていても、意外と出来ないことでもある。長年の経験に基づいた教訓は、シンプルだが重みのあるものだ。

桜庭氏の話を聞くと、ゲーム音楽の奥深さや面白さに改めて気がつく。同時に、音楽を自分の理想とするサウンドで楽しみたいという、オーディオファン共通の喜びも再確認した。そんな桜庭氏も気に入ったSUPERIOR。“万人に勧められる音楽的なイヤフォン“。気になってきた方、きっと今が聴き時だ。

桜庭氏サイン入り「SUPERIOR」を1名様にプレゼント!

本記事の公開を記念して、桜庭氏のサイン入り「SUPERIOR」を1名にプレゼントする。

応募方法は、アユート Audio事業部とAV WatchのXアカウント「@aiuto_audio」「@avwatch」の両方をフォローして、AV Watchの、この記事のポストをリポストするだけ。応募期間は記事公開から2週間の7月15日23時59分まで。奮って参加して欲しい。

橋爪 徹

オーディオライター。音響エンジニア。2014年頃から雑誌やWEBで執筆活動を開始。実際の使用シーンをイメージできる臨場感のある記事を得意とする。エンジニアとしては、WEBラジオやネットテレビのほか、公開録音、ボイスサンプル制作なども担当。音楽制作ユニットBeagle Kickでは、総合Pとしてユニークで珍しいハイレゾ音源を発表してきた。 自宅に6.1.2chの防音シアター兼音声録音スタジオ「Studio 0.x」を構え、聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。ホームスタジオStudio 0.x WEB Site