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最高の書斎モニタ!? 4Kに最適38型、正確な色で映画もゲームも満喫、BenQ「EX381U」

BenQ「EX381U」。大画面感があって、ドットバイドット表示でも文字が読みやすい38型

今やPCモニターも4Kが標準と言っていい時代になった。PCディスプレイで解像度が上がるということは、つまり机が広くなるようなもので、たくさんのウインドウやアプリを開いて同時に表示ができる。これは便利だ。

しかし、実際に使ってみると20インチ前後のサイズで4K表示をすると文字が細かすぎて読めない、なんて事態も発生する。アイコンや文字を拡大表示してもいいが、これで200%表示をしようものなら実質的なデスクトップのサイズはフルHDと同じくらいになってしまう。ではフルHDモニターを2台、3台と並べるかというと、机にそんなスペースは無いという人も多いだろう。

というわけで38型だ。PCモニターとしては大きいと感じる人もいるだろう。だが、4Kのデスクトップを等倍で表示しても文字も読みやすい。サイズ的にもモニターの前にPC用のキーボードやマウスを置いてそこに手を置いて使う距離(50cm前後)で使うには、最大級のリッチなサイズだ。

視聴距離50cmで画面の高さはおよそ47.2cmだから、ほぼ1H(Hは画面の高さ)。大画面テレビの適正視聴距離は1.5Hなので、それよりもちょっと短い距離。経験上、このくらいの近接視聴でも画面全体を見渡すことができるし、近すぎて画素が見えてしまうようなこともない。

それでも、目の前に38型を置かれたら“大きいと”感じる人は多いだろう。「だから良い」のだ。テレビで38型というと、もう誰も大画面とは感じないが、PCモニターとしてはかなり大きい。だからこそ“大画面感”が得られるのだ。4K解像度をフルに使えて、デスクトップは広いし、映画やゲームなどもまさに大画面テレビでプレイしているような迫力と臨場感が得られる。ぜひとも注目してほしいサイズなのだ。

前置きが長くなってしまったが、こんな理由で38型のPC用モニターが各社から発売され始めている。今回紹介するのは、BenQのゲーミングモニター「EX381U」(オープンプライス/直販価格139,500円)だ。

大画面だが、一人で組み立て可能。ドライバーも不要

お借りしたEX381Uは梱包箱はちょっとした薄型テレビのサイズで、かなり大きい。徒歩で持ち帰るのはほぼ不可能な大きさだ。モニター本体とスタンド部分が分離した状態になっており、組み立てる必要がある。

だが、普段レビューしている薄型テレビに比べれば小さいので作業の負担はあまりない。しかもドライバー不要で組み立てられる。スタンドと支柱部分はあらかじめ組み込まれた大きめネジを締めるだけでOKだし、モニターと支柱部分も接合するとカチリと音がしてロックがかかる仕組み。作業はかなり簡単だ。これだけで十分な強度が確保されている。

SFチックなデザインのスタンド部

あとは、PCやゲーム機などとHDMIケーブルやDP(ディスプレイポート)ケーブルなどで接続するだけだ。EX381Uの場合、HDMI入力は3系統、DP1系統、USB-Cも1系統備える。家庭用ゲーム機やBDプレーヤー、デスクトップPC、ノートPCなどと幅広く接続できる。

向かって右側面の端子部
入力切替の画面。HDMIやDP、USB-Cを切替できる。

一般的な薄型テレビ用のラックに置いて、PC用途をイメージして画面に手が触れるくらいの近距離で見てみたが、十分な大画面感がある。映画鑑賞やRPGなどならば、もう少し距離を開けてプレイしたくなるほど。

まずはPS5を接続して「FINAL FANTASY VII REBIRTH」をプレイしてみる。

感心したのは、ほぼ初期設定のままでも、明るく色鮮やかな映像が楽しめたこと。EX381Uは業界規格である「DisplayHDR 600」の認証を得ているので、高輝度や高コントラストの点でも十分な実力がある。しかも色が正確に再現できる。明るいことは明るいが色が薄くなってしまうようなこともないし、暗いシーンでもきちんと色が乗る。これはなかなか優秀だ。

広色域のIPSパネルを採用し、出荷時にキャリブレーションを実施

液晶パネルは4K解像度で広色域のIPSパネルを採用。横方向の視野角は十分に広い。絶対的なサイズが小さいので高い位置から見下ろすとややコントラスト低下が生じるが、スタンド部分に高さ調整、角度調整、チルト調整が備わっているので、視野角を気にする必要はほとんどないだろう。

そして、ゲーミングモニターとしては珍しく、工場出荷時に1台1台キャリブレーションを行なっており、キャリブレーションレポートも同梱される。モニターの色味や明るさのムラの補正などを行ない、正確な色が再現できることを保証しているのだ。これは、プロフェッショナルユースのデザイナー向けモデルなどで行なっているノウハウを活用したもの。

画質モードなどを確認してみると、宇宙船のコクピットをイメージしたという台形のウインドウに設定メニューが表示される。これもなかなかカッコイイ。メニューの操作は画面の下部に十字キーがあるほか、リモコンでも操作が可能だ。

宇宙船をイメージしたというUIデザインもユニーク
付属のリモコン。コンパクトなサイズで、十字キーのほか、よく使う機能を直接呼び出せるダイレクトボタンなどを備える

また、ゲーミングモニターとしては、FreeSync Premiumに対応するなど、HDMI Ver.2.0の新機能にも対応。HDRにも対応する。そしてゲームでのfps表示をはじめ、解像度やHDRなどを表示するゲーム用ディスプレイも備える。このあたりの基本機能もきちんと押さえている。

画面の上部に表示して、ゲーム映像のステイタスを確認できるウインドウ
画面の右上に常時表示しておける「fpsカウンター」

画質モード(カラーモード)は、HDR映像入力時はSci-Fi/リアル/ファンタジー/シネマ/Display HDRの5つ、SDR映像入力時はDisplay P3/sRGBの2つがある。それぞれ高画質機能や明るさなどの調整を行なえる。

感心したのは「B.I.+ Gen2」機能。これは独自の輝度自動調整機能で、モニターが内蔵するセンサーで周囲の照明を感知しながら映像コンテンツの明るさを自動的に制御するもの。だから、一般的な環境としてはかなり暗めの視聴室でも自動で適切に輝度が調整されるため、明るすぎたり、暗すぎるといったことがなかったわけだ。

B.I.+ Gen2は個別の設定で細かく調整をすることもできるが、初期値のままでも暗い環境でも眩しくなったり、暗すぎることもなかった。暗室や暗室に近い環境での使用も考慮された機能であるとわかる。B.I.+ Gen2は明るさに加え、色温度まで周囲に合わせて自動で調整してくれるので、非常に便利だ。

さらに、独自の「HDRi」機能によって、HDRの明瞭さ、ディテール、色の効果を強化している。

設定メニューのカラーモードの選択画面。コンテンツに合わせて選択が可能。好みに応じて微調整もできる

これらの高画質表示を行なうのが、「AI搭載Pixsoulエンジン」。自動コントラスト調整や色彩の最適化などのほか、AIが自動で最適な画質調整を行なう「Shadow Phage」機能も備える。これは、入力された映像を解析して、コントラストを最適化するという。パネル特性に合わせた入力映像の最適化と、使用する部屋の明るさなどに合わせた最適化の2段構えで、HDRの高輝度再現やディテール再現、正確な色再現を実現しているのだ。

このほか、Eye Careの設定では、環境に合わせた画質調整を行なうB.I+のほか、ブルーライト軽減、カラーユニバーサルなど、眼の負担軽減に関わる設定も可能。長時間使用しがちなPCモニターだけに、こうした機能も完備しているのはありがたい。

カラーモードをシネマにして、「Light Tuner」(明るさ)を調整しているところ。各カラーモードで好みに合わせた調整が可能
「B.I.+ Gen2」や「ブルーライト軽減」、「カラーユニバーサル」などの機能も万全だ

FINALFANTASY VII REBIRTHでのHDR再現や細かなディテール表現を鮮やかに表示

さっそくFINALFANTASY VII REBIRTHをプレイしてみたが、色の忠実さだけではない、見やすくしかも迫力のある映像を楽しむことができた。FINALFANTASY VII REBIRTHは、HDR表現がなかなかよく出来ていて、室内から屋外に出ると一瞬ドアの外が真っ白になって、すぐに適正な明るさの景色になる。暗い部屋から明るい屋外に出たときに実際に起こる現象(明順応)を再現したものだが、眩しいほどの明るさを実際に感じるし、徐々に現れる街の景色も色鮮やかだ。

感心したのは、彩度の高い赤や青といった色が鮮やかなだけでなく、服装の微妙な陰影まで豊かに描かれること。最近のゲームのCGはゲーム内で設計された光源からの光や反射までも計算によって再現するが、日向や日陰、視点をぐるりと回すだけで変化する光の変化がよくわかる。そのため、ディテールもよりはっきりとわかる。ディスプレイとの距離が近い近接視聴のため、細かな部分までよく見えてしまうが、最近のゲームのディテール再現やHDRによる映像表現がよくわかる。

色再現をはじめとした画作りはモードによって変化があり、もっとも忠実度が高いと思われるのは「Display HDR」。「ファンタジー」はより色が濃厚になる。CGアニメなどにも合いそうだ。

好ましいのは色の濃厚さを適度に抑えた「リアル」。「シネマ」は色温度が下がり、やや色の彩度も下がって映画らしい色調になる。このあたりは好みに応じて切り替えるといいだろう。好みのカラーモードをベースにより自分好みに微調整することも可能だ。

「アーマードコア6」で多種多様な砲撃音も迫力たっぷり味わえる

今度は音だ。EX381Uはスピーカーを内蔵しないものの、ヘッドフォン出力を内蔵している。また、HDMI入力は「eARC」にも対応しており、サウンドバーなどを接続すれば音声を出力できるし音量調整もモニター側からの操作で行なうことも可能。最近のゲームはほとんどがサラウンド音声に対応しているので、ヘッドフォン出力やサウンドバーなどの機器でサラウンドで楽しんでいる人が多いと思う。薄型のモニターに内蔵したスピーカーでバーチャル再生を行なうよりも、迫力などでは優位だろう。そして、ヘッドフォン出力にはしっかとこだわっている。

リモコンで音量を調整すると現れる表示。ヘッドフォンの音量を調整できる
音量調整時に十字キーを操作することで、eARC出力に切り替えることもできる

まずはヘッドフォン出力用のオーディオ回路には、ESS製のSABRE DACを採用。オーディオ機器でも使われる高音質DACをぜいたくに使用して、音質にこだわっている。

しかも、ヘッドフォン出力ではサラウンドモードの変更だけでなく、ゲイン調整も可能(高/低)。ハイインピーダンスのヘッドフォンなどを使う場合でも、十分な音量が得られる。今やゲーム用として音質に優れたヘッドフォンやイヤフォンを選ぶ人も増えているので、モニター側でこうしたヘッドフォンの高音質再生に対応しているというのはうれしい。

ヘッドフォン出力端子は下部に備えている
オーディオ設定の項目。ヘッドフォンを選ぶと詳細な項目が選択でき、ゲイン調整も行なえる。

画面下部にあるヘッドフォン端子を試してみよう。使ったのはゼンハイザーのHD800だ。もはや旧式のモデルだが、インピーダンスが高く、優れた音だが鳴らしにくいとも言われるモデルで、ヘッドフォンアンプの実力を試すにはちょうどいい。ゲイン高でもボリュームは最大値付近まで上げる必要はあるが、逆に言えば、鳴らしにくいHD800を十分な音量で鳴らせればたいていのヘッドフォンでも十分に鳴らすことはできるだろう。

こちらを接続した状態で、「アーマードコア6」をプレイする。この作品はさまざまなパーツを選択してオリジナルのロボットをデザインできるが、搭載できる武器も種類が豊富だ。基本的にはミッションに合わせて最適な装備や武器を選択するわけだ。そういうゲームだから、搭載武器によって発射音や爆発音がそれぞれちがう。もちろん、射撃時の姿勢や反動、リロード時の挙動などもすべて専用にデザインされているので、メカ好きにはたまらない。

ゼンハイザーHD800を装着し、サラウンドモードは「サラウンド」を選ぶと、より低音のスケール感が増し、サラウンド感も強化される。「シネマ」もなかなか迫力があってよい。音はくっきりとした明瞭な再現で、敵機体の移動する音や背後から現れる敵の物音もよくわかる。コクピット内にいる感じがよく伝わる暗騒音などの小さな音まで明瞭に再現できるのはヘッドフォン再生の良さでもある。

なによりうれしいのは、武器の発射音や爆発音が迫力たっぷりでしかもリアルな感触があること。筆者がお気に入りのソングバードという武器は、当てるのはちょっと難しいが高威力なもの。発射時の音も迫力があるし、着弾時の爆発音も結構派手で(当たれば)なかなか楽しい。こうした武器のリアルな音を迫力のある音で再現できるので、バトルも当然盛り上がる。作戦中の指示をしてくる通信と幻聴のように話かけてくる謎の女性とで、音の響きというか鳴り方が違っているのもよくわかる。ゲームなどでも音質にこだわる人はPCなどにヘッドフォンアンプを組み合わせている人も少なくないと思うが、それに近い音質でゲームをプレイできるのは大きな魅力だ。

最後は映画。「クワイエット・プレイス:DAY 1」で、スリリングな逃避行を満喫

EX381Uは、画質も音質もなかなか良く出来たゲーミングモニターであることがよくわかった。では、映画はどうだろう。PS5のBDプレーヤー機能でUHD BDソフトの「クワイエット・プレイス:DAY 1」を見てみた。

この映画は、音をたてると襲ってくる謎の怪物から逃れるサバイバルホラーで、数多くのシリーズが制作されている。本作は謎の怪物が突如としてニューヨークに現れた設定。世界中の人類が沈黙してしまうことになる最初の1日を描いたものだ。

冒頭はニューヨークの喧騒が描かれるが、これがかなりやかましい。突如として謎の怪物が襲ってくるので、車は暴走するし、逃げ惑う人々が絶叫を上げるし、あちこちで(事故などが原因で)爆発なども起こる。クワイエットはどこに行ったかと思うくらいの大騒音だが、このパニックを、EX381Uなかなか明瞭な音で再生してくれる。爆発音や暴走する車の衝突などは迫力たっぷりだし、人々の叫び声も生々しい。

そんななかで、謎の怪物がやってきたときの特徴的な音もしっかりと聴き取れる。混乱する様子がよくわかって臨場感たっぷりだし、姿を見せない謎の怪物の怖さもよく伝わる。

ようやく状況がわかってきて、人々は室内で息をひそめているようになるが、暗い室内の雰囲気も見通しよく再現する。カラーモードは「シネマ」で見ている。こちらが暗部の再現や階調性が良好だ。画面の上下の黒帯はやや黒浮きを感じるが、これは液晶パネルでは仕方のないところ。

それでも暗部の再現はなかなか良好で、暗い部屋の中にいる黒人女性の主人公など、見通しが悪くなりそうな映像が続くがしかしきちんと描くのは立派。暗部の再現性も良好だし、部屋の外に出たときの静まりかえった明るい街の様子もなかなか不気味だ。夜の街のネオンなどの光も鮮やかだ。

PC用の液晶モニターというと、色は忠実というか薄い感じがしたり、逆に明るすぎて暗部がまるで見えないこともあるが、いずれにしても画質調整が欠かせない。しかし、EX381Uは、画質調整をあれこれいじらくても、十分に見やすく忠実感のある映像が楽しめる。HDRらしい輝きや高輝度の表現もしっかりしている。なにより色が自然でリアルな再現になっているのがよい。

ゲームや映画はもちろん、動画制作やイラストなどでも使える多才なモニター

ゲームや映画を中心に見てきたが、画質、ヘッドフォンの音質ともにかなり実力の高いモニターだと感じた。サイズとしてもプライベートルームで使うにもちょうどいいし、139,500円という価格もモニターとしては高価かもしれないが、複数モニターを購入する必要がないほど大画面な事を考えればけっして高くはない。4K解像度の広大なデスクトップは仕事用のPCモニターとしても役立つはず。

また、きちんとキャリブレーションを行なって出荷しているなど、色の正確な再現ができるので、動画制作やイラスト制作などを行なっている人のモニターとしても十分実用になるだろう。モニターでは重要になる色の忠実な再現ができ、ゲームや映画で役に立つヘッドフォン出力も充実。ゲームや映画といったエンタメ方面でも優秀だが、クリエイティブ方面でも活躍できる多才さが大きな魅力だ。PCモニターの買い換えを検討している人はぜひとも注目してほしい。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。