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こだわりのハイブリッド、強力ANCで1.4万円以下。EarFun「Air Pro 4+」執筆陣3人で聴き比べた

Air Pro 4+。左からホワイトモデル、ブラックモデル

EarFunと言えば、コストパフォーマンスに優れた完全ワイヤレスイヤフォンでお馴染みだが、その評価を決定付けたと言っていいのが2024年に登場した「Air Pro 4」だ。1万円を切る価格ながら、LDAC対応で強力なハイブリッド式アクティブノイズキャンセリング(ANC)も搭載、しかも高音質という隙の無さが評価され、EarFunを代表する人気モデルの1つとなった。

だが、これで満足せず、それから1年以上かけて進化させたのが2025年後半に登場した「Air Pro 4+」だ。大きく変化した点は、ドライバーユニットがAir Pro 4の10mm径ダイナミック型×1基から、Air Pro 4+では独自開発かつ業界最小クラスというBAドライバーと、10mm径ダイナミック型を組み合わせたハイブリッド・デュアルドライバーになっていること。

さらに、このドライバーの“取り付け方”にもこだわりがあるなど、イヤフォンとしての音質を大きく磨き上げた。モデル名だけを見ると最後に「+」がついただけなので「マイナーチェンジモデル?」と思われがちだが、実際は“完全に別物”と言って良いほどの進化を遂げている。

それでいて、13,990円と手に届きやすい価格は維持している。そんなEarFunを新たな代表モデルAir Pro 4+の実力を、AV Watchでお馴染み鳥居一豊氏、野村ケンジ氏、そしてAV Watch編集長・山崎の3人が聴いた。

Air Pro 4+

試聴の前に、Air Pro 4+の進化ポイントを見ていこう。

Air Pro 4+ブラックモデル

大きな点は前述の通り、BA(バランスド・アーマチュア)と10mm径ダイナミック型を組み合わせたハイブリッド仕様になったことだ。

BAと10mm径ダイナミック型を組み合わせたハイブリッド仕様

BAとダイナミック、方式の異なるユニットを搭載しているのは、各ユニットに“得意なところ”があるためだ。BAは、微細な信号にも敏感に反応するため、例えばギターの弦が擦れる音、ボーカルの息遣いといった細かな音の再生が得意だ。反面、BA 1基では、低い音は出しにくい。

そこでパワフルな低音を得意とするダイナミック型を追加することで、それぞれの長所を活かしながら、低音から高音まで、バランスのとれたサウンドを実現できるわけだ。

ホワイトモデル

Air Pro 4+では“組み合わせ方”や“取り付け方”も追求している。BAとダイナミック型を組み合わせると、どちらも磁気を出しているため、干渉する可能性もある。そこで、ダイナミック型の磁気が、BAの高音域レスポンスを低下させないよう工夫。

さらに、ダイナミック型とBAを単に並べるのではなく、理想のサウンドを追求するため、様々な取り付け角度をテスト。その結果、“11度”の角度を設けることが理想的という結論に至ったという。この角度にすることで、高音域の減衰が最小限に抑られ、透明感があり、明瞭なサウンドになったそうだ。この配置は「Nano Side-Fitted Acoustic Architecture(NSAA)」技術と名付けられている。

BluetoothのコーデックはLDACに加え、aptX Losslessにも対応する。

コーデックはLDACに加え、aptX Losslessにも対応する

アクティブノイズキャンセリングは、独自の「QuietSmart 3.0ハイブリッドANC技術」を搭載する。これは、フィードフォワードマイクが外部の騒音を、フィードバックマイクが耳の中に残ったノイズを検知。20Hz~20kHz以上の幅広いノイズを効率的に低減するというものだ。

鳥居、野村、山崎の3人が聴く

鳥居一豊氏

1万円ちょっとの価格で、ANC搭載。しかも、音声コーデックもaptX LosslesssやLDACに対応と、なかなかコスパの良さそうなモデルだ。

さっそく装着してみると、耳への収まりもよく、軽快に使える。耳から伸びるスティック部分をタッチしての操作も戸惑うことなく使えて快適だ。ANCは上級機の驚くような静けさはないが、無理をして消音しているような不自然さがなく、気持ちよく落ち着いた静けさが得られる。

外出時に使ってみたが、ANCがONになっていたこと忘れて「今日はなんだか静かだな」と思ってしまった。そのくらい効果がある。ただ、路上で車が接近する時は、直近で急に気付いてヒヤッとするのではなく、数メートルくらいから気配を感じられるので安心感がある。「これくらいでいいんだよ」。まさに“ちょうどいい静けさ”で、路上や駅などの混雑した場所でも気にせずに使える。

もちろん、ANC特有の閉塞感のような感じはなく、常時ANCで使っていられる使い心地の良さにも感心した。

音の点でもなかなか出来が良い。

バランスがよく聴き心地のよい音調はANCにも通じるものがある。“いかにも高音質”という神経質な感じがなくリラックスできる音で、いつもイヤフォンをつけっぱなしにして使うならこちらの方が好ましいと思った。

気持ちよく聴ける理由は、イヤフォンにありがちな緻密だがこぢんまりとした音ではなく、しっかりした低音が豊かに響くおおらかさがあること。この価格でBA型とダイナミック型のハイブリッドというのもお買い得感があるが、音のつながりもよく、低音から高音までスムーズだ。

お気に入りの「米津玄師/JANE DOE」を聴くと、しっとりと歌うふたりの声の質感も豊かだし、せつない恋を歌うふたりの距離感も感じられ、音質的な実力も十分。豊かに響く低音も思ったよりも質感がよく、リズムの響きも重みがある。ほかの人気のポップス曲をいろいろ聴いてみても、ベースの弦を弾く感じやドラムスの深い響きと力感がリアルに出て、バランスの良さだけでなく、なかなか聴き応えがあると感じる。

比較的手の届く価格ながら、この機能と音ならば注目されるのも不思議はない。通勤・通学を目的に選ぶなら、一番の候補になるモデルだ。

野村ケンジ氏

以前から評判の高いEarFun独自のANC技術「QuietSmart」はなかなかのもの。「Air Pro 4+」に搭載されている3.0では、ハイブリッド構成に加えてAI聴覚適応型ANCモードによって、とても静かな、それでいて自然な騒音低減を実現。特に空調のファンノイズや街中の暗騒音をしっかりとシャットアウトしてくれ、声もかなり抑えめにしてくれるため、仕事などの作業に集中できる。静かすぎるのでこのまま街中を歩き回るのはオススメできないが、外音取り込みモードもあるのでシチュエーションに応じて活用すればよい。

肝心のサウンドはというと、先日更新されたファームウェア、バージョン1.2.8で高域側が少しだけジェントルな印象へとシフトしている。もともと、10mm口径ダイナミック型ドライバーと自社開発のBA型ドライバーによるハイブリッド構成によって、丁寧な中高域と低域の迫力が見事にバランスしていたが、よりニュートラルな音色傾向に進化したイメージだ。

おかげで、女性ボーカルがとても魅力的。YOASOBIは僅かに大人びた、それでいてヌケの良い(そしてどこか甘い)独得の歌声をとても近い距離で楽しませてくれる。もうひとり、ReoNaとの相性も抜群だった。「シャル・ウィ・ダンス?」では、独得の歌声が活き活きと伸びやかだし、バックバンドのリアルさや迫力も含め、普段よりも印象的なサウンドに感じられた。

男性ボーカルも悪くない。「Mrs.GREEN APPLE/クスシキ」を聴くと、とても近距離な歌声のためその艶やかさが大いに堪能できるし、何よりも各楽器が音質に注力した丁寧な録音が行なわれていることまで伝わってくる。躍動的であることはもちろん、楽曲の魅力を存分に引き出してくれるサウンドだ。

そして、クラシックとの相性も悪くない。音像に僅かな甘さがあるものの、その分全体の纏まりが良く、ダイナミックな抑揚表現と相まって雄大な演奏を楽しませてくれる。ちなみに、クラシック系はバージョン1.2.8以前のデフォルトEQ「オリジナルサウンド」のほうがマッチしている印象があったので、是非こちらも試してほしい。

このように「Air Pro 4+」、特に最新ファームウェアのバージョン1.2.8のサウンドは、Jポップからクラシックまで幅広く楽しめる懐の深さ、表現力の高さを持ち合わせている。特にポップス、女性ヴォーカルをメインに聴く人にとってベストマッチな製品といえる。

いずれにしても、価格を大きく上まわる音質を持ち合わせているし、ANCも大いに活躍してくれそう。満足度の高い製品だ。

AV Watch編集長・山崎

LDACで接続し、Qobuzアプリから「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生した。

冒頭アコースティックベースの低音が「ズシン」と沈む。量感があるだけでなく、適度な締まりもあり、ボワつかない。“重い低音”がしっかり出ている。その後、ピアノやボーカルが登場してくるが、ピアノの高域のタッチのニュアンスや、ボーカルのかすかな吐息といった、微細な音がしっかりと聴き取れる。

Air Pro 4+の大きな特徴は、BAと10mm径ダイナミック型を組み合わせていることだが、各ユニットの利点が活かされている。

その上で特筆すべきは、“BA型とダイナミック型の組み合わせ方が上手い”という事だ。

ユニットの方式が違うと、出来の悪いイヤフォンの場合、例えば「低音の音像が膨らみがちで、モワモワした音なのに、その上にBAのカリカリシャープな高音が乗っかり、低音と高音が分離して聞こえる」なんて事も起こる。

だが、Air Pro 4+の低音は、不必要に膨らまず、タイトかつスピード感のある低音が再生できており、BAも解像度だけを追求するのではなく、声の質感も丁寧に描写するナチュラルさがある。

そのため、低音と高音を組み合わせても音色やスピード感の違いが無く、「全体として自然な音」として楽しめる。その証拠に、しばらく聴いていると「BAとダイナミックのハイブリッド型」という事を忘れて音楽に没入できる。よく出来たハイブリッドイヤフォンだ。

ANCも強力で、電車の中で使ってみたが、電車のボディが振動する「グォオオオ」というノイズが綺麗に消え、レールの繋ぎ目を超える「ガタン、ゴトン」という音もほとんど消滅。わずかに残った高音が、小さく「タタン、タタン」と残っている程度。これも、音楽を再生すると、まったく気にならなくなる。電車の中でも静かな空間で音楽が楽しめるというのは、やはり大きな魅力だ。

ANCが強力にも関わらず、鼓膜を押されるような圧迫感は少ない。長時間使用時のストレスも少なそう。AIを使い、ユーザーの聴覚や、外のノイズにあわせ、ANCを最適に調整する機能も備えている。

ANCで空間が静かになるので、音が広がる余韻が見通しやすく、音場も広大だ。モントリオール交響楽団による「死の舞踏~魔物たちの真夜中のパーティ」から「サン=サーンス:死の舞踏 作品40」を聴いたが、弦楽器の高音がホールに響き、広がっていく様子、観客の小さな咳払いなど、細かな音も聴き取れる。クラシックやジャズも含め、音楽ジャンルを問わずに楽しめる。

なお、全体のバランスとしては、やや低域が強めでパワフル寄りな印象。このままでも聴きやすく、満足度の高い音だが、イコライザーで少し低域を控えめにすると、モニターイヤフォンのように、細かな音が聴き取りやすくなり、個人的にはより好みな音になった。

アプリのイコライザーで細かな音の調整も可能

スペック、機能に優れ、高音質と、欠点が見当たらない。これのクオリティで、1万円台前半というコストパフォーマンスの高さは驚きだ。イヤフォンにこだわるオーディオファンはもちろんだが、エントリーイヤフォンからのステップアップにAir Pro 4+を選んでも、幸せになれるだろう。

AV Watch読者限定 Amazonで使える割引クーポン

クーポンコード:EARPLUSAW
・クーポン使用期限:2026年3月3日~4月6日23時59分まで
・対象モデル:EarFun Air Pro 4+
・通常価格:13,990円
・特別価格:10,371円

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやHiFiオーディオ、ヘッドフォンなどのポータブル機まで、AV系のジャンル全般をカバーする。AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、さまざまな媒体、メディアで製品紹介記事や取材記事を執筆。かつてはB&W MATRIX801 S3を中心とした大型スピーカーでサラウンド再生システムを構築していたが、現在は、BWV H-1という小型スピーカーによるシステムへ移行中。映画はもちろん、アニメやゲームも愛好する。

野村ケンジ

ヘッドフォンからホームシアター、カーオーディオまで、幅広いジャンルをフォローするAVライター。オーディオ専門誌からモノ誌、Web情報サイトまで、様々なメディアで執筆を行なうほか、レインボータウンFMの月イチ番組「ふわっと」にレギュラー出演、YouTube「ノムケンLabチャンネル」を運営するなど、様々なメディアで活躍している。最も得意とするのはヘッドホン&イヤホン系で、年間300モデル以上の製品を15年以上にわたって試聴し続け、常に100製品以上を個人所有している。一方で、仕事場には100インチスクリーンと4Kプロジェクタによる6畳間「ミニマムシアター」を構築し、ステレオ用のプロフェッショナル向けTADとマルチチャンネル用、2系統のスピーカーを無理矢理同居させている。

山崎健太郎