トピック
DUNU初のMEMS「PRS 6」、マイクロプラナーで2万円台「PRS 5」。新世代IEM 2機種を聴く
- 提供:
- サウンドアース
2026年9月10日 08:00
音の良さや、駆動するDAPやアンプによる音の変化など、趣味性の高さで再評価されている有線イヤフォン。低価格なエントリーでは満足できないが、数十万円の高級機は手が出ない。やはり5万円以下のミドルクラスが一番気になる価格帯だろう。そんな激戦区で、強みを発揮しているブランド・DUNUから、要注目の2モデル「PRS 5」(9月末発売)と「PRS 6」(9月10日発売)が登場する。
驚きなのは、価格とスペック。「PRS 5」は26,980円ながら1DD + 3BA + 1マイクロプラナー、「PRS 6」は41,800円ながら、1DD + 4BA + 1MEMSと、リッチなドライバーを内蔵している。また、PRS 6はDUNU初のMEMS搭載イヤフォンでもある。
コストパフォーマンスの高いイヤフォンを得意とするDUNUだけに、どんなサウンドに仕上がっているのか気になるところ。また、新たなドライバーへの挑戦で、新たなDUNUサウンドを聴かせてくれそうだ。さっそく2モデルを聴いてみた。
DUNUとは
DUNUは、2002年に中国で誕生したブランド。特徴は、ハウジング用の金型CNC切削マシン、サウンドのテストルーム、周波数帯域測定機、無響室といった設備を持ち、大規模な生産工場も完備している事。つまり、イヤフォンを形作る振動板から磁気回路、筐体など、全てを自社で作れる。これが、高音質の追求と、コストパフォーマンスの高さを実現できる大きな強みだ。
2013年にアジアメーカーとしては初、オリジナルなBA×2基 + DD×1基のハイブリッドイヤフォン「DN-1000」が完成。2019年にはベリリウム振動板搭載の「LUNA」、2021年には新世代ECLIPSEドライバの「ZEN PRO」など、技術力を活かして様々なドライバを使いこなしてきた。
日本のオーディオイベントにも積極的に参加し、日本市場の意見やトレンドを取り入つつ、「DaVinci」や「VULKAN」、「TITAN」、「DK3001 BD」などの人気モデルを生み出してきたこともあり、日本にもファンが多い。
PRS 5とPRS 6の詳細
「PRS」はPro Response Soundの略で、Hi-Fi音響技術を核にしつつ、若いオーディオファンやeスポーツユーザーも想定して開発した、新世代の高性能インイヤーモニターと位置付けられている。
高解像度のサウンド表現、正確な空間定位、没入感あふれるリスニング体験を追求し、日常のエンターテインメントからゲームの競技シーンまで対応できるようにしたそうだ。
2モデルの筐体サイズはまったく同じで、標準的なIEMのサイズ感。特に分厚いということもない。滑らかなフォルムで、装着しても耳の収まりは良好だ。
フェイスプレートは凝ったデザインで美しい。PRS5は緑、赤、青などが組み合わさり、光の加減で輝く。まるで宝石のアンモライトのようだ。
PRS 6のフェイスプレートも美しく、ゴールドから紫へのグラデーションと、幾何学的なテクスチャーが印象的。素材としては純チタンを使っており、プレートを高温・真空環境下で加熱し、相変化させた後、ゆっくりと冷却。酸洗処理によって結晶模様を浮かび上がらせ、陽極酸化処理によって鮮やかな色彩を加えたそうだ。どちらも高級感のある仕上がりだ。
詳しいドライバー構成は、以下の通り。
- 【PRS5:5ドライバー構成】
超高域:カスタムマイクロプラナー ×1
中高域:カスタムBA ×1
中域:カスタムBA ×2
低域:ダイナミック ×1 - 【PRS 6:3ドライバー構成】
超高域:MEMS ×1
中高域:カスタムBA ×1
低域:ダイナミック×1
どちらも注目は超高域で、PRS5はカスタム仕様のマイクロプラナーを、PRS 6はDUNU初となるMEMSドライバーを使っている。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ドライバーの特徴は、パソコンのCPUなどと同様に、大きなシリコンウェハーからICのように切り出す、シリコンチップとして作られること。
そのチップに電圧をかけると、飛行機のフラップのように可動するように動作し、それを活かして音を出すという原理だ。高速かつ正確に動作するだけでなく、サイズも非常に小さくでき、シリコンチップなので品質のバラツキが少ないという利点もある。
仕様としては、周波数帯域、インピーダンス。
ケーブルは2ピンで着脱可能。入力プラグも交換できるタイプで、3.5mmのアンバランスと、4.4mmバランスプラグが付属する。
音を聴いてみる:PRS 5
「まずは、価格が手頃なPRS 5から……」と、DAPの「A&ultima SP3000」に接続したのだが、いきなり超ワイドレンジでゴージャスなサウンドが飛び出してきて驚く。思わず「上位モデルと間違えたかな」と耳から外して確認してしまった。
「ダイアナ・クラール/月とてもなく」では、1分過ぎから登場するウッドベースが「ズシン」と深く沈み、低音に迫力がある。それでいて、余分に膨らむことはなく、「ブルッ」と弦が震える様子もクリアに見える。
続くボーカルは、色付けが少なくナチュラル。本当にダイアナ・クラールの口元に耳を寄せているようなリアリティがある。高域の抜けも良く、閉塞感のない爽やかな聴き心地だ。
印象的なのは、中域がたっぷりと肉厚な事。カスタムBA×2基を搭載しているためだと思うが、声の低い部分の響きが豊かで、音像に厚みもあり、旨味が強い。聴いていて「しっかりお腹から声が出ているなぁ」と改めて感じてしまう。その肉厚な中域に負けないクリアな高域を、カスタムマイクロプラナーとカスタムBAのコンビが担当しているという構成だ。
その高域の美しさは、「手嶌葵/明日への手紙」を聴くとわかりやすい。歌い出しの「ハッ」というかすかなブレスや、ビブラートの震えが消える間際のかすかな変化までハッキリと聴き取れる。聴き慣れた曲でも、「こんな音が入っていたんだ」と驚く瞬間があるだろう。
特筆すべきは、これだけ高解像度な描写にも関わらず、音像の輪郭を強調したような、エッジを無理に立たせたような不自然さがまったくない事。ボーカルに血が通った、温かみも感じさせる。ワイドレンジで高解像度でありつつ、リラックスして長時間聴きたくなるのがPRS 5のサウンドだ。
音を聴いてみる:PRS 6
PRS 5の完成度が高かったので、上位機のPRS 6はどんな音なのか気になる。「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、「あー、こんなに違うか」と思わず声が出る。
音がどうこうという以前に、音場がより広く、より遠くまで見通せる。ギターやボーカルの声の響きが、空間に広がり、やがてフーッと消えていく様子まで聴き取れる。音が無い部分はより静かになり、その静かな空間から音が出現する時もPRS 6の方がズバッと素早く、トランジェントが良い。
MEMSドライバーの効果と思われるが、ハイスピードなサウンドになり、解像感もPRS 5を上回る。まるで視力が良くなったよう。PRS 5では、ダイアナ・クラールの口の動きが見えるようなリアリティだったが、PRS 6は口の中を覗き込んでいるような、そんな気さえしてくる。
低域はしっかりと沈み、量感もある。ただ、PRS 5と比べると、PRS 6の方が膨らみがより少なく、タイトだ。そのため、PRS 5の方が音に迫力はある。
おそらく、PRS 6の中低域がタイトなのは、MEMSのスピード感とマッチさせるためだろう。その試みは成功しており、低域から高域までスピード感が揃っており、全体としてもキレのあるサウンドに仕上がっている。音のまとめかたの上手さは見事だ。
「手嶌葵/明日への手紙」の透明感もハンパではない。ボーカルが登場する前の、ストリングスの細かさ、その音が広がる範囲の広さに驚く。PRS 5では、屋外の草原で歌っているようなイメージだったが、PRS 6では宇宙空間にワープしたかのようだ。
「米津玄師/KICK BACK」のような激しいロックも、切れ味鋭く聴かせてくれるため、非常に気持ちが良い。激しい低音の中でもベースラインがよく見え、ボーカルも埋もれない。コーラスや悲鳴のようなブレーキ音などのSEもクリアに聴き取れる。まるで「この音楽を構成する音を全て聴き取っている」ような、快感すら覚える音だ。
ハイコスパでありつつ、新たなDUNUを感じさせる音
PRS 5、PRS 6に共通して感じるのは、コストパフォーマンスの高さだろう。リッチかつ複雑なユニット構成と、それを高音質にまとめ上げる技術力、クオリティの高いデザインなどを実現しつつ、PRS 5で26,980円、PRS 6で41,800円に収めているのは見事だ。
では、予算があるならPRS 6が問答無用でオススメなのか?というと、そう単純な話でもない。
確かに、音場の広大さ、解像度の高さ、トランジェントの良さという面ではPRS 6の方にアドバンテージがある。
だが、PRS 5も十二分に音場は広く、低音から高音までのレンジも広い。さらに、高域のナチュラルさ、音のなめらかさという面では、PRS 5の方が魅力的と感じる部分もある。
PRS 6のMEMSドライバーによる超高域は、スピード感や解像感は圧倒的だが、少し音が薄いため、曲によっては「PRS 5のホッとする、美しい高音がマッチするな」と感じる時もあるのだ。
そういった意味では、価格ではなく、音の好みや、良く曲のジャンルで選んだ方が正しいだろう。
いずれにせよ、多様なドライバーを使いこなし、新たなサウンドに挑戦するDUNUの技術力と勢いを象徴するような2モデル。それがこの価格で入手できるというのは、嬉しい限りだ。












