|
映像機器/コンテンツメーカーが参加し、デジタルエンターテインメント普及活動を行なう団体「デジタル・エンターテインメント・グループ・ジャパン」(DEGジャパン)は17日、Blu-ray Discソフトの特徴を最も活かした作品を表彰する「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」を発表。銀座ソニービルで授賞式を開催した。
この賞は、2008年1月1日~12月31日に国内で発売されたBDを対象とし、BDの特長を最も引き出すことで次世代デジタルエンターテイメントの普及に寄与したソフトを表彰するという目的で創設。 第1回のアワードでは「ベスト高画質賞」、「ベスト高音質賞」、「ベストインタラクティビティ賞」などの部門賞を設け、その中からグランプリを選出。BDの特長を最も引き出すことで次世代デジタルエンターテイメントの普及に寄与したソフトが表彰された。 審査委員長はAV評論家の麻倉怜士氏。審査委員は藤原陽祐氏や本田雅一氏などのAV評論家や、映画誌/DVD誌の編集長、DEGジャパンの機器メーカー会員らが担当。投票による1次選考と、合議による2次選考を経て決定した。 ■ 「ダークナイト」がグランプリ。「攻殻機動隊 2.0」がベスト音質賞
グランプリに選ばれたのは、国内外で評価の高かった「ダークナイト」。IMAXカメラによる映像のクオリティが高く評価され、「今後のBlu-rayソフトの画質を領導する記念碑的な作品」とした。審査委員長の麻倉怜士氏は「IMAXという大きなフォーマットをBDに入れたことで、BDの価値も上がるという試みが成功した」と称賛した。 なお、同作品は、ベスト高画質賞の実写部門も受賞。藤原陽祐氏は「候補作はいくつもあったが、クオリティの高さで文句なし。製作者によってIMAXの高画質がBDに込められており、新メディアの可能性を示した意義深い作品」とコメントした。同作品は、米国CESで行なわれたDEGアワードでも最優秀賞に選ばれている。 ベスト高画質賞のアニメ部門は「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス コレクターズ・エディション(デジタルリマスター版)」が受賞。評価点は、「ブリキや粘土などの素材の質感を明瞭に描き分ける精細感を持ちながら、フィルムの持つ柔らかな質感を余すことなく再現している。映画館では気づかなかったディテールが巧みに表現されている」とした。なお、同賞には「眠れる森の美女 プラチナ・エディションや、「ホートン/ふしぎな世界のダレダーレ」、「マクロスF(フロンティア)」がノミネートされたという。
ベスト高音質賞は、「音楽部門」と「映像部門」が設けられており、音楽部門は「NHK クラシカル 小澤征爾 ベルリン・フィル『悲愴』2008年ベルリン公演」が、映像部門は「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0」がそれぞれ受賞した。 「小澤征爾」については、「指揮者の息づかいや演奏者の細かな仕草まで感じさせる情報量と臨場感。24bit/96kHzのリニアPCMとはこんなに素晴らしいものかと感嘆した。演奏の隅々まで音の解像度が高く、映像との相乗効果で生の迫力を感じる」と評価された。また、「攻殻機動隊 2.0」は、「一つ一つの音が混じり合わず、音で空間の感じまでもが明瞭に表現されている」としている。
ベスト・インタラクティビティ賞は、フル3DCG作品の「バイオハザード ディジェネレーション」。特典として、PinP(子画面表示)により本編を見ながら関連したメイキング映像も再生できることが特徴で、リモコンのカラーボタンと連動し、動画コンテ/モーションキャプチャ/静止画絵コンテの中から選んで本編と同時再生できる。 評価のポイントは「新しい映画の楽しみ方をより深いものにしてくれた」こと。プレゼンターを務めた「キネマ旬報」編集長の明智惠子氏は「クリエイターが育っていく上でも重要なものが含まれており、評価に値する」と称えた。なお、同賞には、「アイ・ロボット」、「クローバーフィールド HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション」がノミネートされていた。
審査員特別賞は、4作品が受賞。「NHKスペシャル 映像詩 里山II 命めぐる水辺」と、「平井堅/Ken Hirai Live Tour 2008 “FANKIN’POP”」、「ザ・マジックアワー」、「眠れる森の美女 プラチナ・エディション」の4作品。 プレゼンターは本田雅一氏。「里山II」については「世界一高画質といわれる日本のハイビジョンを引っ張ってきたNHKの最高の技術が、これまでDVDなどでは見られなかった。BDによって、映像をそのまま届けてくれたことは素晴らしい」と評価した。 「平井堅」については「音質はもちろんながら、高く評価されたのは画質。暗いステージだが非常にノイズが少なく、フルHDのパフォーマンスを引き出した。良い画が良い音を感じさせ、良い音が良い画を感じさせるというトータルの体験のレベルが高い作品」とした。
「マジックアワー」については「フジテレビは、ここ数年、邦画を盛り上げている主役の一つ。画質、音質それぞれでは賞は取れなかったが、邦画の中で最も高画質で、柔らかいフィルムの雰囲気を出していた。音質も凝っていて、邦画の実写タイトルとして始めてTHXを取得したこと」を受賞の理由に挙げた。 「眠れる森の美女」については、「70mmフィルムで製作され、高画質の“はず”だったが、これまでLDやVHS、DVDで高画質というイメージは無かった。レストレーション(復元)技術で最新のBDに見合う映像に仕上げたほか、モノラル録音の音を分離してサラウンドに編集し直したという徹底した復元」が評価されたという。
■ 「製作者にこだわり、愛情のある作品が受賞した」
DEGジャパンの会長を務めるウォルト ディズニー ジャパンの塚越隆行氏は、今回のアワードについて「BDの良さを消費者の方々にも理解いただこうと始めた。この活動がBD/デジタルエンターテイメントの普及や、消費者が楽しんでもらえる環境作りに役立てれば」と説明。同副会長で、ソニーのオーディオ・ビデオ事業本部 事業開発部門の島津彰氏は「これまでBD作品は約800作品がリリースされており、ノミネート作品は35作品。そのなかで、とても力のある作品が受賞された」と受賞作を称えた。
麻倉氏は審査を振り返り、「数十作品をみて、正月は完全につぶれた」と笑いながらも、BDに寄せる大きな期待を語る。「高画質、高音質といわれるが、BDは単なるプラットフォーム、つまりトラックであって、積む荷物がきれいか汚いかということで全然違う。フルHDであっても良いものは良く、変なものは変になる。製作者にこだわり、愛情がないと絶対に良い作品はできない。今回の受賞作品は、製作者、エンコーダを扱うエンジニア、マーケティング担当者などのトータルな力が受賞に結びついたと考えている」とした。 続けて、「全体を眺めて、半分以上が日本の作品であることはいいこと。BDはハリウッド主体で作ったフォーマットだから、ハリウッドががんばるのは当然。体力的に厳しい日本のソフトメーカーがよくここまで素晴らしいものを作ったと思う。日本のがんばりに今後も期待するし、画質と音質の王道であるハリウッドにも頑張って欲しい。来年の抱負としては、インタラクティブ部門において今後はBD-Liveが本格的になってくるので、来年はBD-Liveの作品が入ってくれば」とした。
□DEGジャパンのホームページ ( 2009年2月17日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
Copyright (c)2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|