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番組クラウド録画「nDVR」は普及する? “ケーブルラジオ”などCATV最新動向
2016年7月28日 20:56
ケーブルテレビ(CATV)関連の新製品や技術、サービスなどを紹介する「ケーブル技術ショー 2016」が東京国際フォーラムにて7月28日から29日まで開催。展示の中から、「ネットワークDVR」や「ケーブルラジオ」といったCATV連携の新提案についてお伝えする。
なお、4K/8K放送のCATV再送信に関する内容は、別記事で掲載している。
録画はすべてクラウドに。「nDVR」の方法と課題
日本ケーブルラボのブースで紹介されている「ネットワークDVR(network Digital Video Recorder/nDVR)」は、現在のCATVで採用されている録画用HDD内蔵STBから、録画機能の部分を全てネットワーク上の別のサーバーなどに持たせるというサービス。
ユーザーは容量などを気にせず、従来のレコーダなどと同様の操作で録画が行なえ、その番組は接続したテレビ以外でもネットワーク経由で観られる。STBの機能もシンプルになり低価格化されるほか、STB故障時の録画コンテンツの保護といったメリットも挙げられる。
基本的な方法としては、ユーザーから録画/予約録画の操作があると、CATV事業者側で、放送後の番組をトランスコードしてストレージに保存。それを配信サーバーのフォーマット変換部で、テレビやスマホなどの視聴端末に応じた画質に変換され、IPネットワーク経由で家庭内に送られる。
現状では、1つの録画ファイルに複数のユーザーがアクセスする「シェアドコピー」と、利用者ごとに録画ファイルを作って各自でアクセスする「プライベートコピー」があり、多くのアクセスがある場合はプライベートコピーの方が安定して受信できるが、それだけ多くのストレージが必要となり、トラフィックも増大する課題がある。そのため、プライベートコピーの元ファイルを視聴端末に合わせた複数の画質に変換/コピーして蓄積する方法などの対策も検討されている。
このサービスは、考え方としては以前からあったもので、既に欧米では先行して導入されている。調査会社の米Heavy Readingは、nDVRの加入者数について'16年の939万人に対し、'18年は2,388万人に伸びると見ており、その半数に近い1,159万人は北米のユーザーが占めると予測。
一方、日本では著作権保護に関する慎重な考え方から、採用時期は不透明だと見られている。こうした状況の中で、前述したSTBのコスト面などから、ユーザーの利便性だけでなく事業者側にとってもnDVR導入のメリットを強調。既存のVODサービスなどからの置き換えではなく、「これから観る番組はnDVRで録画、見逃したらVODで視聴」というように、併用することでサービスの最適化を提案している。
今回のケーブル技術ショーでは、パイオニアもSTB展示のコーナーで、サービス高度化の一つの案としてnDVRをデモ。同社の小型STB「BD-V372」のような小型STBでも、別途HDDなどを用意せずクラウド上に録画してストリーミング再生できるメリットを紹介している。
テレビとHDMI連携する「ケーブルラジオ」
マスプロ電工は、緊急時などにテレビと連動して情報を案内できる「ケーブルラジオ」を展示。普段はFMラジオとして同軸経由でラジオを聴けるが、センターからFM緊急信号を受信すると、カラー液晶が点滅して文字で警告を表示。緊急放送用の別チャンネルに切り替わる。緊急信号は、放送局が流すDTMF音(電話のプッシュに使われている音)で送られる。
HDMI出力を備えているのが特徴で、接続したテレビとCECで連動し、自動でテレビに警告表示を行なう。テレビの電源がOFFだったり、放送ではないビデオなどを視聴している時も強制的に切り替わるため、必要な情報を見逃すことがない。
緊急信号を受け取るには同軸接続が必要だが、ロッドアンテナも備えており、持ち運んで通常のFM波を聴くことも可能。電源はACとニッケル水素充電池、アルカリ電池の3種類に対応する。
現在、山口県岩国市のケーブル事業者「アイ・キャン」がフィールド実証を行なっており、実際のサービス提供開始は年内を見込んでいる。
ソニーがEマウントの超高感度4Kカメラ
映像制作やセキュリティ関連の機器も多数展示されている。ソニーは、デジタル一眼カメラの「α7S」をベースとしたISO 409600の超高感度業務用4Kビデオカメラを参考出展。35mmフルサイズCMOSセンサーを備え、Eマウントのレンズを装着可能。「星明り程度の明るさがあれば、あたかも日中のようなカラー動画撮影が可能」としており、夜間に走行中の車両のナンバープレートを撮影するといった、シャッタースピードの速い撮影にも強いという。
既報の通り、同社は監視用のネットワークカメラとして、4K/30p対応の35mmフルサイズ/Eマウント搭載機「SNC-VB770」(オープンプライス/想定価格85万円前後)を8月に発売予定。この製品は、津波の監視など長時間撮影を前提とした高い耐久性を特徴としており、AFなどモーターが動く部分は省かれている。
一方、今回参考展示されたカメラは液晶モニタやバッテリ、操作ボタンを省いて本体を小型化しているが、AFは搭載。ネットワーク機能は搭載せず、制御は接続したPCまたは別売リモコンで行なう。ロケ撮影や、警察の利用などを想定しているという。
SDカードへ3,840×2,160ドット/60Mbpsで記録できる。なお、音声は記録できない。HDMIマイクロ出力を備え、最大4K/30pで出力可能。秋ごろの発売を予定しており、価格はオープンプライスで、想定価格は75万円前後(レンズ別売)。
好みの番組に出会える様々な提案
パナソニックは、番組視聴機会の拡大を図る様々な方法を提案。「コミチャン見逃しVODシステム」は、CATV局ごとのコミュニティチャンネル番組を自動で録画し続け、VODとして配信できるコンテンツとしてライブラリ化するもの。
番組終了後だけでなく、放送中に最初から見直す追っかけ再生も可能。VOD向けにCMカットも行なえ、アドサーバーから読み込んだ別のCMを交えて配信するといったこともできる。この機能はMPEG-DASH方式の採用により可能となっている。視聴者側は、番組表と同様のUIから番組を探せる。
放送通信連携のハイブリッドキャスト(Hybridcast)関連では、スポーツ中継の視聴例をデモ。ゴルフコースの地図(航空写真)とVOD動画を組み合わせて表示するもので、BDなどのチャプタを選ぶように、観たいシーンを地図上から選んで再生できる。STBのHTML5対応により、表現の自由度が大きく向上したという。
新たな番組/コンテンツとの出会いなどを目的とした「マインドマップによる視聴体験」も参考展示。観たい番組を探すときに「どんなキーワードを軸にするか」という時点から提案するもので、「わくわく」や「豪華出演者」、「アカデミー賞」などのキーワードを事業者側が用意することで、視聴者が予想外の作品に巡り合えることなどを狙いとしている。