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Egretta、蛇腹振動板のハイレゾ無指向性スピーカー披露。車載やOlasonicコラボも

 オオアサ電子は22日、オーディオブランドEgretta(エグレッタ)から、12月上旬に発売するハイレゾ対応無指向性スピーカー「TS1000F」の発表会を開催。価格はペアで35万円。さらに、同技術を使った車載スピーカーの参考展示や、Olasonic(東和電子)の小型コンポ「NANOCOMPO」とのセット商品も発表した。

ハイレゾ対応無指向性スピーカー「TS1000F」

ハイレゾ対応無指向性スピーカー「TS1000F」

 Egrettaの第1弾モデル「TS1000」の特徴である円筒型エンクロージャーを踏襲しながら、音質の向上を追求。ユニットを上向きに取り付け、ディフューザーとで音を拡散させる無指向性スピーカーだが、そのツイータに、“ハイレゾ対応スピーカーとして理想的な特性を持つ”という「ハイルドライバーツイータ」を採用している。

 一般的なユニットは、ドーム型やコーン型の振動板を前後に動かして音を出すが、ハイルドライバー方式では、蛇腹状に折り畳んだフィルムを横方向に収縮させて音を出すのが特徴。プラス信号が入ると、蛇腹のヒダの1つ1つが膨らむように伸びて空気を押し出す。マイナス信号が入ると、ヒダの山が細くなるように動いて空気を吸い込む。この運動によって滑らかな高音が再生できるという。

ポリマー・クレイ・コンポジットフィルム・ハイルドライバー
ハイルドライバーユニットの動き方

 素材にも特徴がある。従来のハイルドライバーでは、フィルムにカプトン材(ポリイミド/高分子素材)を使う事が多かったが、オオアサ電子では、粘土を主原料とした新機能材「ポリマー・クレイ・コンポジット」を採用。フィルムの折り方を含めた製法も刷新する事で、「より自然な音色の再現を図った」という。

 ポリマー・クレイ・コンポジットは、住友精化と産業技術総合研究所(産総研)の化学プロセス研究部門が共同開発した「タフクレースト」をベースとしている。粘土を主原料としており、具体的にはベビーパウダーなどに使われるシッカロールとポリイミドを混ぜてフィルム状にしている。ポリイミドだけのフィルムよりも高音が良く伸びるのが特徴だという。高柔軟性、高耐熱性、低熱収縮性があり、もともとは曲げられる電子基板や太陽電池向けのパーツとして開発が進められていたもので、今回のユニットが初の採用実績になる。

ハイルドライバーに使われるフィルム

 ポリマー・クレイ・コンポジットフィルム・ハイルドライバーのユニットサイズは5cm径で、最上部に上向きに搭載。ディフューザーで音を拡散させている。さらに、13cm径のポリプロピレン・コーン型ユニットも上向きに搭載した2ウェイ。ハイルドライバーは高域だけでなく、中域から超高域までの広帯域をカバーしている。全体の周波数特性は44Hz~45kHz。

製品の点面部。この部分がディフューザーとなる
ディフューザーの下にあるのがハイルドライバー
横から見たところ。上向きのハイルドライバーからの音を、ディフューザーで拡散している

 筐体部分はメイドインジャパンにこだわる白漆喰仕上げ。柔らかな光の陰影と落ち着いた佇まいを実現し、「上質な音質と相まって、Egrettaの世界を作り出す」という。

13cm径のポリプロピレン・コーン型ユニットも上向きに搭載し、音を拡散させている
筐体部分はメイドインジャパンの白漆喰仕上げ

 最大入力は50W、出力音圧レベルは87dB/2.83V/1mと、無指向性としては能率が高く、「8Ωで13W×2chのアンプなどと組み合わせても、能率は一般的なスピーカーに負けないレベルであるため、十分に楽しんでいただける」という。エンクロージャはバスレフ型。外形寸法は330×960mm(直径×高さ)。重量は1本約11.2kg。専用のインシュレータが付属する。スピーカーターミナルはバナナプラグ対応。

スピーカーターミナルはバナナプラグ対応

 なお、TS1000のユーザー向けに、TS1000Fへのアップグレードサービスも12月から実施予定。

スピーカーの音響設計を担当したのは、元Olasonicで、現在オオアサ電子 生産部 開発技術課の川崎博愛氏。無指向性ながら能率が良く、鳴らしやすいスピーカーを目指したという

TS1000FとNANOCOMPOのセットモデルも

 TS1000Fと、OlasonicのNANOCOMPOを組み合わせた製品もラインナップする。NANOCOMPOは、CDプレーヤーの「NANO-CD1」と、プリメインアンプの「NANO-UA1a」で、TS1000Fと接続するためのバナナプラグ仕様スピーカーケーブル2本(2m)も同梱している。発売日は12月14日で、価格は46万円。モデル名は「Egretta & NANO(ホワイトモデル)」。

 TS1000FとNANOCOMPO、どちらもカラーはホワイトで、色味はよく似ており、実物を見ると良くマッチしている。無指向性スピーカーは部屋の中の置き場所を選ばず、どの場所でも同じような音場が楽しめるのが特徴だが、サイズが小さく、部屋に溶け込みやすいNANOCOMPOはそうした使い方にも合っていると感じた。

上がCDプレーヤーの「NANO-CD1」、下がプリメインアンプの「NANO-UA1a」

音を聴いてみる。車載用にも展開

 発表会場でハイレゾの「機動戦士ガンダム/メインタイトル」や、ブラームスのクラリネット五重奏曲を試聴したが、驚くのは高域の抜けの良さだ。音圧豊かで、聴き取りやすく、ダイレクト感のある中高域がキッチリと耳に届き、その感覚がスピーカーから離れてもあまり変わらない。無指向性なので、もちろん左右に移動しても音場の聴こえ方は大きく変化しない。BGM的に楽しめるだけでなく、ハイレゾらしい、情報量の多い音をじっくりと聴き込むような使い方にも耐えられるサウンドだと感じる。

 低域もしっかり出ており、ハイスピードで抜けの良い中高域に負けておらず、バランスは良好。ボリュームをあげると、心地よい中低域に包み込まれるような感覚も味わえる。

ハイレゾ対応無指向性スピーカー「TS1000F」

 今後、ハイルドライバーは車載にも展開予定。TS1000Fに使っているユニットを、Sound Suspensionの手により、トヨタの「86」に取り付けたデモカーも会場に用意。試乗して聴いてみたが、こちらも音抜けが非常に良く、エンジン音に混ざらずに中高域がダイレクトに耳に届く感覚が味わえる。

 セッティングも良好で、音像の定位は非常にシャープ。空間表現も巧みで、エンジンをかけた状態でも、音像の奥の空間に、音の余韻が消えていく様子がしっかりと聴き取れた。

ハイルドライバーをトヨタの「86」に取り付けたデモカーも会場に登場

第二の創業としてオーディオブランドをスタート

 オオアサ電子は、広島県大朝町(現:北広島町)で創業。今年で33周年を迎える。主事業は液晶パネルの製造だが、2012年から第二の創業として、受託専門企業から開発提案型企業に転換。日本製に拘り、自社開発の“Egretta”の発売を開始している。

Egrettaの既存モデルである「TS550」。こちらも無指向性スピーカーだ

 長田克司社長は、長年、車載用の液晶パネルを手掛けていたが、リーマンショックにより注文が激減、車メーカーは海外の工場に液晶パネルを依頼するようになり、国内の同業他社は次々と廃業し、「まさに青天の霹靂だった。しかし、150人の社員を路頭に迷わせてはならないと、(会社の)存続を決意した。我々は田舎の会社だが、世界に通用するモノづくりに対する粘り強さがあった。下請けだから固有技術は無いかと思っていたが、あらためて自分たちの仕事を振り返ってみると、製造装置も自分たちで作っているなど、全て固有技術だった」という。

長田克司社長

 そうした、「規模は小さくても光る技術」を活かし、メイドインジャパンにこだわったモノづくりを徹底。現在はスマートメーターの液晶パネルや、マツダなどの車載用液晶パネルを手掛け、「フル操業の状態」まで復活したという。そして、映像音響事業と、環境エネルギー事業なども展開。映像音響事業の1つが、Egrettaとなる。

 オーディオ事業のキッカケとして長田社長は、「オーディオメーカーをスピンアウトされた方が、オーディオを一緒に作ってくれないかと声をかけていただき、OEMとして高級プレーヤーなどを開発してきた。そうした経験の末に、自分たちのブランドを作らないかという話になった」という。

 誕生したEgrettaのスピーカーは、「北海道から九州まで、各地の皆様にご愛顧いただいて、本当に嬉しい。無指向性で、1本のスピーカーは無いですかと聞かれる事も多いので、今後は1本スピーカーも提案したいと考えている」と語った。

産総研の首席研究員である蛯名武雄氏

 前述のように、今回の製品には住友精化や産総研も協力。産総研の首席研究員である蛯名武雄氏は、クレーストが耐熱性の高い、粘度を使ったフィルムであり、電子回路だけでなく、漆器のコーティングや、おせんべいのパリパリ感を長期間保持するバリアフィルムなど、様々なものに使える可能性を持っていると説明。今回スピーカーに使われた「タフクレースト」も、それを発展させたものであり、実際の製品に採用される事は「材料開発者としては非常に嬉しいこと」と喜びを語った。

タフクレースとの開発と、活用事例

 広島市立大学非常勤講師の岩城富士大氏も、開発に協力。文科省の地域イノベーション戦略支援プログラムである、医工連携研究「ハイレゾリューション・オーディオの研究」として、ハイレゾの音響が人間に与える影響を研究。

広島市立大学非常勤講師の岩城富士大氏

 大橋力氏が提唱している、ハイレゾのサウンドが、基幹脳を活性化させるという「ハイパーソニック・エフェクト」を受け、経産省が2009年に、脳を覚醒させる事で居眠り運転を防止する「ハイパーソニック・セーフティ」を技術戦略マップとして2009年に作成。この実現に向け、車載オーディオの高音質化と、それぞ安全運転に繋げる事を目指してきたという。

 研究では、ブラインドテストなどを用いて、ハイレゾ・オーディオの音質の良さは、多くの人が判断できる事、そのサウンドが心理や生理に対して、集中力や注意力が増すなどの良い効果がある事が判明。動脈血流速度や副交感神経活動の上昇により、動脈硬化予防にも効果がある可能性がある事なども紹介した。

Olasonicと言えば卵型スピーカーがお馴染だが、会場には卵型スピーカー誕生までに試作された小型スピーカーや、ダチョウの卵なども展示されていた