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Egretta、デスクトップで使える全方位スピーカー。底部のアクチュエーターで低音強化
2019年11月27日 15:00
オオアサ電子は、Egretta(エグレッタ)ブランドの新製品として、ハイルドライバー型ツイーターと、スギ由来の新素材「改質リグニン」を使ったドーム型ウーファー、接地面を振動させるアクチュエーターを組み合わせた、デスクトップサイズの全方位スピーカー「TS-A200」を12月24日に発売する。DACやアンプを内蔵し、1台でモノラル仕様の「TS-A200a」が124,000円。スピーカーを2台セットにしたステレオモデル「TS-A200as」が196,000円。DACやアンプを抜いた、パッシブ型スピーカー「TS-A200s」は1台72,000円。
直径130mm、高さ260mmの円柱形スピーカー。ツイーターとウーファーを上向きに取り付けている。ホーンスピーカー(ラッパ形状)の鮮明な音質に着目し、360度水平方向に開放口を持つホーンの中心部にスピーカーユニットを置き、ドーム形状の振動板によりコンプレッションをかけてホーンロードを通し発音。これにより、ホーン型スピーカーを全方位化する「アクティブホーン」を構成している。
これにより、音を全方位に広げて再生できる。ステレオ仕様で広い音場が楽しめるほか、モノラルの1台で再生しても広がりのあるサウンドが再生できる。
ツイーターは、ボイスコイルがプリントされた振動フィルムを、蛇腹状に畳んだハイルドライバーを採用。その振動板フィルムに新素材として、ポリマー・クレイ・コンポジットを使っている。これは、産総研と住友精化が共同開発したもので、粘土を主原料としている。剛性が高く、薄く軽量な振動板フィルムが作れるほか、再生音も自然であったため、採用を決定したという。
ハイスピードなハイルドライバーの描写にマッチするウーファーユニットとして、新たに開発されたのはドーム型の振動板。その素材として、スギ由来の新素材「改質リグニン」を成分に加えた、宮城化成が製造する「カーボン繊維強化プラスチック」を使っている。
改質リグニンは、森林研究・整備機構 森林総合研究所(森林総研)が、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代農林水産業創造技術の研究コンソシアム「SIPリグニン」の課題内で開発したもの。スギ材の中に約3割含まれるリグニンという成分から製造される新素材で、熱に強く、加工し易く、生分解性を示すなどの性質を持つ。
この改質リグニンを成分に加えたカーボン繊維強化プラスチックは、揮発性有機化合物をほとんど発しない、曲げに強いなどの性能を持つ。これにより、薄型軽量化を実現。分割振動の低減、内部損失や伝搬速度の最適化などが可能になったとする。なお、ウーファー部分の筐体は密閉型。
この2つのユニットで、反応の良い低音から高音までの再生を可能としているが、そこに低域の量感をプラスするため、底部にアクチュエーターを配置。スピーカーを設置した床を振動させる事で、その振動を低音の再生に活用している。このアクチュエーターを加えた3ウェイスピーカーシステムとなっている。
ユニットの口径は、ツイーターが5cm径、ウーファーが6cm径。筐体はアルミ製。インピーダンスは8Ω。
TS-A200asには18W×2ch、TS-A200aには18Wのアンプを内蔵。さらに、USB入力で192kHz/24bitまで、DSDで5.6MHzまでに対応したDACも搭載。96kHz/24bitまでに対応する光デジタル入力と、3.5mmのアナログ入力も搭載。SBCとAACコーデックに対応した、Bluetooth受信機能も搭載する。
なお、TS-A200asは2台セット、TS-A200aはモノラルで1台の製品だが、TS-A200aにも18W×2ch分のアンプは内蔵している。別途、パッシブのスピーカーである「TS-A200s」を購入し、TS-A200aとLANケーブルで接続すると、TS-A200aからTS-A200sをドライブし、ステレオスピーカーとして機能する。
A200シリーズでステレオ再生する場合、左右のスピーカーはLANケーブルで接続する。パッシブ型のスピーカーは、LAN端子に加え、スピーカーターミナルも搭載。オーディオ用アンプで、通常のオーディオスピーカーとしてドライブする事もできる。
重量はA200asの左チャンネルと、パッシブのA200sが各1.4kg。右チャンネルとA200aが各1.5kg。消費電力は最大50W以下。
音を聴いてみる
一般的な無指向性スピーカーは、1台でも音が広範囲に広がり、部屋の中を移動しても聴こえ方が大きく変化せず、BGM的に音楽を楽しめる製品が多い。
1台でモノラル仕様の「TS-A200a」も、1台で音がしっかりと広がるが、その音の“出方”に特徴がある。1つ1つの音がパワフルで、ハイスピードかつクリア。鋭い直接音もしっかり耳に入るため、無指向性スピーカーと聞いて思い浮かべる、ボワッとしたサウンドとは異なり、普通のオーディオ用スピーカーのサウンドに近い。
これを2台、ステレオで再生すると、さらにその印象が強くなる。2台の間に定位するボーカルの音像はシャープで、定位は明瞭。楽器の動きもよく見える。無指向性スピーカーというよりも、「あまり左右間を広げて設置できない環境でも、メチャクチャ音場が広く展開するピュアオーディオスピーカー」という印象だ。これは、デスクトップ設置を前提とした製品として、強い魅力と言える。
また、サウンド自体も小型スピーカーとは思えない堂々としたもので、中域から高域にかけては非常にトランジェントが良く、ハイスピードで、ハイレゾの情報量も明確に描いてみせる。ハイスピードなハイルドライバーのサウンドに、新開発ウーファーがしっかりとマッチしている。
面白いのは底面のアクチュエーター。接地面を振動させるアクチュエーター型のスピーカーは、他にも様々な製品が存在するが、設置したモノの素材によって音が大きく変化する。素材が硬すぎると豊かな音が出ず、空洞で薄い箱のように鳴きやすいものは豊かな響きが出るが、ボワボワと不明瞭な音になりがちで、「音の良い場所」を探す苦労がつきまとう方式とも言える。
しかし、A200シリーズの場合は、アクチュエーターはあくまで非常に低い音のみを担当。ツイーターとウーファーで多くの帯域をカバーしつつ、地鳴りのような迫力部分を“少しプラス”しているため、“アクチュエーターでよくある不明瞭な音”はまったく感じない。3つのユニットのバランスが、細かく追い込まれて作られているのがわかる。
また、接地面でも音が当然変化する。剛性が適度にあるものであれば、ウーファーや高域に負けない、キレのある重低音が響きとして伝わってきて、コンパクトなサイズからは想像できない雄大なサウンドが楽しめる。
逆に、薄い板でボンボンと鳴きやすいテーブルの場合は、最低域の振動がボワッと膨らみがちになり、ハイスピードな低域~高域までとのミスマッチを感じやすくなる。逆に言えば、設置場所による音の変化や、ユーザーがスピーカーの下に敷くものを工夫する事で、理想の音へと追い込める、オーディオらしい楽しみ方ができる小型スピーカーと言えるだろう。