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コミュニケーションのための動画「LINE LIVE」1周年。テレビ対応は「意味ない」

 LINEは15日、ライブ映像配信サービス「LINE LIVE」開始から1周年を記念し、「数字で見るLINE LIVEの2016年」を公開した。総配信時間は373,116,672秒(11年303日間と11時間31分12秒)、コメント数は4,547万8,600コメント、総ハート数は26億3,237万9,446時間となった。

16日にはラジオ配信も追加した「LINE LIVE」
数字で見るLINE LIVEの2016

 LINE LIVEは、'15年12月10日にスタートしたライブ配信サービス。'16年8月まではアーティストやタレントによるライブ配信など公式アカウント限定だったが、8月10日に一般ユーザーへライブ配信機能を開放。以降は誰でも使えるライブ配信サービスとなり、特に10代から20代前半の女性を中心に人気を集めている。コメント機能やギフトアイテムを用いて、配信者と視聴者がコミュニケーションが行なわれている。

 アーティストや配信者とのコミュニケーションが特徴のLINE LIVE。視聴者が参加した指標として、1分間に送られたハート数を集計すると、1位は三代目J Soul Brothersのメンバーが参加した「ポッキー&プリッツの日 シェアハピイベント」、2位はSPYAIRのライブ、3位はAAAメンバーの「さしめし」など、公式アカウントの番組が人気。コメント数では、ももクロのライブが上位に入っている。

1分間に送られたハート数

 一般ユーザーの配信も盛り上がっているというが、ハート数やコメント数ではまだ一桁違いがある。だが、LINE LIVEを担当するLINEの佐々木大輔 執行役員は、「個人の配信者が中心のサービス」と語る。1周年を迎えたLINE LIVEの“いま”について佐々木氏に聞いた。

LINE LIVEはユーザー主導のサービス

 個人的には、映画の試写会やタレントのイベント、テレビ番組の連動企画などでLINE LIVEをよく見かける印象だ。また、スポーツ映像配信サービス「スポナビライブ」と連動し、リーガ・エスパニョーラとプレミアリーグの毎節各1試合を無料配信するなど、メディア連携型の企画も多い。こうした公式アカウントを持つメディア企業と、コミュニケーションに圧倒的な強みを持つLINEの連携で、LINE LIVEが伸びているのでは? と予測していた。

 だが佐々木氏によれば、LINE LIVEの成長の中心は、そうしたメディア型の配信よりも「一般ユーザーが積極的に使い始めているから」だという。「8月に一般向けのLINE LIVEをスタートしてから順調ですが、直近1、2カ月がすごく伸びています。人気の配信者が出てきて、ファンが生まれ、配信者の影響力が出てきた。外のサービスから来た人も居ますが、LINE LIVEの中からも影響力ある配信者が生まれてきました」(佐々木氏)。

LINE 佐々木大輔 執行役員

 その人気の配信者(LINE LIVER)を表彰する「LINE LIVE OF THE YEAR」も15日に発表。最優秀グランプリは、“ハート数合計1000万超え♡大人気JC”の「ねお」さん、グランプリは“人気爆発中の美少女ツインズ♪”「りかりこ」さん、“恋ダンス、モノマネ、歌・・・魅力の宝庫!”の「きりたんぽ」さんなど。

「ねお」さん
「きりたんぽ」さん
「かす」さん

 筆者が知っているLINE LIVEは、公式アカウントから通知されるアーティストやタレントの番組だった。しかし、LINE LIVEのアプリを立ち上げてみると、そこに見えてくるのは、若者たちのコミュニケーションの姿だ。別段、面白いネタや話があるというより、淡々と日常を話していて、そこにコメントやハートがやりとりされている。佐々木氏は、「コミュニケーション自体がコンテンツになっている」と語るが、まさに時間を共有し、その場にいることを楽しんでいる様子が伝わってくる。

 すでに、一般ユーザーの配信時間は、公式チャンネルの「倍以上」。このことからもLINE LIVEが、ユーザー主体のサービスになっていることがわかる。

 思えば2016年は、Facebookがライブ動画をスタートし、TwiterもPeriscopeのライブ配信機能をアプリ内に統合した。また、Instagramもライブ動画を始めるなど、ソーシャルメディアサービスのライブ動画対応が盛り上がった1年ともいえる。LINE LIVEもLINEのコミュニケーションの追加機能で、そこにメディア型の公式アカウント連動機能が追加されたサービス、と考えた方がわかりやすいかもしれない。

 佐々木氏は、コミュニケーション中心のサービスになることは「当初から想定していた」とのことで、2月のインタビューでもそう答えている。だが、実際のLINE LIVE上のコミュニケーションを見ていると、日々発見があるという。

 LINE LIVEでは、コメントやハートで配信者と視聴者がコミュニケーションできるが、人気の配信者は、「多くの視聴者を認識して、個別にコミュニケーションを行なう能力が凄い」という。「何千もの視聴者をかかえる配信者が、『このあいだは〇〇の話したね』とか『いつ以来だね』とか覚えて、コメントしてくれる。これは視聴者にとっては嬉しいですよね。傍から見てると、信じられないような対応力があります。テレビでのタレント性とは全然違ったものですが、ライブ動画ならではのタレント性が見えてきた」という。こうした、LINE LIVER達が、新たなスターになっていく、とも予想する。

横画面は「使われず」。テレビ対応は「面白いわけがない」

 一方、一般ユーザー開放以降にLINE LIVEから省略された機能もある。まずは「横」画面の表示だ。一般公開時には、横画面でもコメントやハートを送れることをアピールしていたが、「(ユーザーに)望まれなかった」という。

 佐々木によれば、「ユーザー配信が始まった後、ランキングに入る動画がほとんど縦画面になり、横画面がほとんど入らなくなった。そうなると、これまで横で配信していた人も、縦画面に切り替えて配信するようになり、さらに使われなくなった」という。その結果、横画面での配信や視聴機能を廃止し、現在は縦画面のみに統一されている。

 なお、LINE LIVEでは生配信だけでなく、動画のアーカイブも行なえるが、「コミュニケーションできないので、あまり見られていない」とのこと。あえてアーカイブを残さずに消している配信者も多いという。

 また、他の映像配信で重視されているテレビ対応についてはどうだろうか? 映画やドラマを見るようなメディア型のサービスの場合、「大画面のほうが利用時間が長くなる」というのが定説だ。しかし、佐々木氏はLINE LIVEのテレビ対応に否定的だ。

「テレビでみて面白い訳がない。ハートも押せないし、コメントができない。全く話にならないし、考えていません。また、講演などで『4Kに興味ありますか?』と聞かれるのですが、全く興味ないです」

 テレビのような受け身のデバイスだと、コミュニケーションが成立しないので、面白くない、ということだろう。一方で、VRや360度配信には興味があるという。「新しいコミュニケーションや、より体感に近いものができそうです。見る側の自由度を下げずに出来る方法があればやりたい」と語る。

 現時点では、LINE LIVEの利用は無料で、有料の部分はギフトアイテムなどのアイテム課金のみ。当然、事業としては赤字だが、今後のビジネス展開は「動画広告の実装を検討している」という。具体的な計画は明かせないが、「今、世の中に無いもの。新しい動画広告ができると思う。LINE AD Platformも好調ですが、基本的にLINE LIVEは広告事業の文脈の中にある」とする。

 現在のLINE LIVEユーザーは、10~20歳台の若年層が中心だが、佐々木氏は当面はそれでよく、使い方はユーザーに委ねているという。11月には、URL限定で配信できる「プライベート配信」を開始。一例として、LINE社員の結婚パーティを、LINEのグループで共有したら盛り上がったとのこと。ユーザーのコミュニケーションや友だちのつながりに軸足を起きつつも、「大人やビジネスでは別の使い方ができる」というのがLINEの強みだとする。

 佐々木氏は、LINE LIVEを「あくまで道具でありプラットフォーム」と位置づける。16日には音声だけのラジオ配信も開始するなど、機能強化が続いているが、具体的なアップデート計画は非公開。ただし「方向性としては個人の配信者とそのコミュニケーションを強化する方向」としている。