ヤマハ、3D/ARC対応で84,000円のAVアンプ「RX-V767」

-VPSで仮想フロントハイSP。iPodを無線接続


RX-V767

8月上旬発売

標準価格:84,000円

 ヤマハは、3D映像伝送やARCにも対応した7.1chのAVアンプ「RX-V767」を8月上旬に84,000円で発売する。カラーはブラック(B)とゴールド(N)の2色を用意する。

 さらに、iPodやiPhoneの再生音をワイヤレスでRX-V767に送信できる周辺機器「YID-W10」も8月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は2万円前後の見込み。カラーはブラックのみ。

 RX-V767は、AX-V765の後継モデル。定格出力は95W×7ch(6Ω時)、最大出力は135W×7ch(6Ω時)。6月から発売しているエントリーモデル「RX-V567」、「RX-V467」と同様に、3D映像伝送やARC(オーディオリターンチャンネル)に対応。HDMIはVer.1.4aをサポート。10万円を切る価格ながら、HDMIを6入力、2出力備えている。リモコンにはHDMI出力切り替えボタンを新設した。

RX-V767右は従来モデルのV765。フロントパネルのデザインが変更されている

 基本機能として、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master AudioなどのHDオーディオのデコードが可能。同社AVアンプの特徴である「シネマDSP」もHDオーディオに対応。マルチチャンネルリニアPCMだけでなく、ドルビー TrueHDやDTS-HD Master Audioなどの音声フォーマットに対し、シネマDSPをかけて再生できる。

 シネマDSPは、従来の「シネマDSP-plus」に、“高さ”方向の音場データを加え、立体的なサラウンド空間を実現する「シネマDSP <3D モード>」になっている。音楽再生プログラムでは天井や床の反響音まで計算することで、ホールの空間を再生可能。映画用プログラムでは、映像とサラウンド音場の一体感を高め、「画面に引き込まれるような立体的な表現」を実現するという。また、ゲームモードなど、各モードのブラッシュアップも行なわれている。

 RX-V767ではさらに、VPS(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能も装備。前方上方に設置するプレゼンス・スピーカー(フロントハイ)を仮想的に創成するもので、フロント・プレゼンス・スピーカーの設置が必須だったシネマDSP <3Dモード>を、7.1chや5.1ch構成のシステムでも手軽に利用できるようになった。さらに、サラウンドバック・スピーカーと仮想フロント・プレゼンス・スピーカーの同時出力もでき、9.1ch相当のシネマDSP <3Dモード>も利用できるようになっている。

 特徴的なのは、フロントの仮想プレゼンス・スピーカー用の信号を、背後のサラウンドL/Rスピーカーから、頭部伝達関数(HRTF)を付加して再生している事。さらに、センタースピーカーから左右のクロストークキャンセル信号を再生し、仮想的なプレゼンス・スピーカーを生み出している。一般的な方式は、フロントのL/Rからバーチャル音声とクロストークキャンセル信号を一緒に再生する事が多いが、別々のスピーカーで再生することで目的音と妨害音の位相差を抑え、スイートスポットが広く、自然な音場感が得られるという。

 また、耳の後ろにあるサラウンドL/Rスピーカーからバーチャルスピーカー用音声を放出する事で、例えば右耳用の信号の場合、左耳にも届いてしまう妨害信号が、フロントスピーカーから再生する場合と比べて、小さくなる。これにより、クロストークキャンセルの音圧レベルそのものを小さくできるのも特徴となっている。

背面端子部。HDMI出力を2系統備えているリモコン

 iPhoneや地上デジタル放送など、圧縮された音源を再生する際に、欠落した音楽信号を補間再生し、低域も補強する「ミュージックエンハンサー」機能も使用可能。新たに同機能とシネマDSPを同時に適用できるようになった。これにより、ミュージックエンハンサーで高音質化したものに、シネマDSP処理でホールトーンなどの臨場感を付与して再生する事もできるようになった。

 シネマDSPのモードも進化。ゲーム用のモードにアクションとRPGというモードを備えているが、両方の中身をブラッシュアップ。スクウェア・エニックスのサウンドクリエイターの意見を聞きつつ、「RPGではフィールドの奥行きや遠近感を高める」、「音場を広げながらもメニュー選択時のクリック音は明確に」など、それぞれのジャンルのゲームにより適した音場効果を目指したという。

 アンプのアナログ部分にも音質チューニングをほどこしており、電源部には低インピーダンス巻線設計の大容量電源トランスや、防振シース採用のヤマハオリジナル高音質ブロックケミコン、大電流ショットキーバリアダイオードを投入。インレットタイプの電源ケーブルや電源ヒューズにも専用の選別品を採用したという。オーディオ回路にはカスタムオーダーのPPコンデンサなど、ヒアリングで選んだ高音質パーツを投入している。

 GUIも進化。オーバーレイ表示が可能なOSDを採用し、アイコンなどカラフルな画面になっている。さらに、AVアンプでは珍しく背景画像も選択できる。

OSDメニュー。ピアノの写真は壁紙として用意されているものメニューもカラフルなものになったこちらも用意されている壁紙の1つ

 映像面も強化。3次元動き適応型のI/P変換回路や、ディティールエンハンサー、3:2/2:2プルダウン検出、マルチケイデンス検出などにも対応。様々な映像ソースを高画質化して表示できるという。アナログ入力された映像をHDMIから出力するビデオアップコンバート機能も備え、従来モデル「AX-V765」では非対応だったアナログ映像を、D4端子やコンポーネントのアナログ端子から出力できるようにもなった。マルチルーム機能も新搭載している。

 省エネも追求。プレーヤーからの信号をテレビにスルー出力する、スタンバイスルー状態での待機時消費電力を3W未満に抑えたほか、消し忘れ防止のオートパワーダウン(4/8/12時間)も使用できる。

 音声用DACはバーブラウンの「PCM1681」(前モデルは1680)を採用。ADCは「PCM1803」。映像用には、アナログ・デバイセズの「ADV7800」と「ADV7172」を採用する(前モデルはADV7800のみ)。ほかにも、視聴環境最適化機能のYPAOや、普通のヘッドフォンでサラウンド再生が可能な「サイレントシネマ」機能なども備えている。

 音声入力端子は光デジタル×2、同軸デジタル×2、アナログ音声×6、アナログ7.1ch入力×1。音声出力はアナログ音声×3、プリアウト×3(7ch×1 / サブウーファ×2)。映像入力はHDMI×6、コンポーネント×2、D4×2、コンポジット×5。映像出力はHDMI×2、コンポーネント×1、D4×1、コンポジット×2。

 筐体は新デザインを採用。外形寸法は435×367.5×171mm(幅×奥行き×高さ)、重量は11.2kg。消費電力は240W。HDMI CECにも対応し、他社のテレビ/レコーダのリモコンからアンプを操作する事もできる。


■ YID-W10

 YID-W10を使ったiPod/iPhoneとのワイヤレス接続には、ヤマハ独自の「AirWired」技術を使用。Dock端子に接続する送信ユニットと、充電台を兼ねた受信ユニットで構成するシステムで、AVアンプと受信ユニットは専用ケーブルで接続。送信ユニットから受信ユニットへ、2.4GHz帯を用いて音声をワイヤレス伝送でき、音源であるiPod/iPhoneそのものを操作する事で、リモコンのような感覚で音楽がAVアンプから楽しめるのが特徴。

 ペアリングは不要で、通信距離は約20m。非圧縮のPCM伝送で、高音質な再生が行なえるという。なお、iPod/iPhoneのDock端子から送信ユニットへの伝送はアナログ。また、既発売の有線接続Dock「YDS-11/12」も使用可能。こちらもiPodからの伝送はアナログとなる。

 YID-W10の対応iPodは、第5世代iPod、classic、nano、touch、iPhone 3G/3GS。外形寸法と重量は、送信ユニットが45.3×17.6×94mm(幅×奥行き×高さ)で42g。受信側が91×88×54mm(同)で、260g。AVアンプと接続するためのケーブルの長さは1.2m。

YID-W10送信ユニットをiPodに取り付けたところ


■ 前モデルと比較試聴

 試聴のインプレッションもお届けしたい。アンプとしてのストレートな音の評価として2chでCDを試聴。前モデル「AX-V765」と比較すると、低域の重心が一段下がり、低音の解像感も向上した事がわかる。これによりヴォーカルとベースなどの分離も良くなり、音場の見通しがアップ。音像もより立体的になった。電源周りの改良などが効いているようだ。

試聴の様子。右上にあるのがフロントハイスピーカー
 低域が改良されたと同時に、高域の伸びも良くなっており、かさつきも低減され、女性ヴォーカルも生々しくなった。情報量のアップや微細な表現力の向上は、DAC用の電源回路におけるカスタムパーツの投入などが効果的だったという。また、意外な要素として、iPod Dock接続用端子の電源部分において、コンデンサを変更したところ、AVアンプ全体の音に良い変化があったという。様々な部分のパーツで細かい吟味が重ねられたようだ。

 新機能であるVPS(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)の効果も、実際にフロントハイスピーカーを設置した音と、バーチャルの音で比較してみた。「アバター」のBlu-ray版(5.1ch音声)をシネマDSPの「Sci-Fi」で再生。深い森の中で、鳥(?)などの鳴き声が充満するシーンでは、鳴き声の音像がVPSでも非常にシャープで実在感がある。本物のフロントハイスピーカーで再生した音を、あまり違いは感じられない。

 7.1chソースの「クリス・ボッティ/ライブ・イン・ボストン」(北米版BD)を、VPSを加えて再生すると、ホールの高さが感じられるようになり、トランペットの高音が天井に反響して上から降り注ぐ様がよくわかるようになる。実際のフロントハイスピーカーを設置できない環境では、積極的に活用していきたい機能だ。


(2010年 6月 29日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]