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KDDI研、4Kマルチアングル映像のリアルタイムエンコーダを開発。伝送も成功

 KDDI研究所は、H.265/HEVCマルチビュー拡張方式に準拠した4Kリアルタイムエンコーダを開発し、4Kマルチアングル映像のリアルタイム伝送実験に成功した。これにより、将来的に4Kマルチアングル映像や、ユーザーが自由に視聴アングルを切り替えられるフリーナビゲーション映像の家庭向け配信が可能になるという。

 この開発成果は、10月7日から11日まで千葉・幕張メッセで開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2014」の超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)ブースに展示される。

フリーナビゲーション映像のイメージ。ユーザーが見たいアングルを任意に選択できる

 2014年7月に国際標準規格化されたH.265マルチビュー拡張方式は、異なるカメラ間の画像フレームの類似性を利用して圧縮をすることで、さらなる帯域削減効果が得られるものだが、符号化方式の効率化や膨大な処理量削減が課題となっていた。

被写体に合わせてブロックサイズを自動選択するエンコーダ制御最適化技術のイメージ

 KDDI研究所では、移動する被写体の輪郭に合わせて最適な処理ブロックを判定し、圧縮率を15%向上するエンコーダ制御の最適化技術を開発。例えば、スポーツ中継などで、動きのある選手の輪郭部分にはより細かなブロックサイズを適用し、精緻な予測によりブロックノイズを低減。平坦領域の多い背景部分には最大ブロックサイズを適用し、サイド情報を削減するという。

 また、複数のカメラ間のブロック対応関係をもとに、符号化処理関係の基本情報を他のカメラに継承することで、符号化処理時間の大半を占める動き情報の計算量を大幅に削減する技術も開発。高速化サーチなど通常のHEVCエンコーダ向け高速化技術も併用し、リアルタイム化に必用な100倍の高速化を達成したという。

カメラ間予測結果に基づく符号化パラメータ継承のイメージ

 これらの技術を用い、CATV/FTTH網での伝送を想定した実験では、実際に4Kカメラ4台を使って撮影したサッカーの試合映像を、4K試験放送と同等の35Mbps程度まで圧縮して伝送することに成功。KDDI研究所では、「今後、更なる圧縮率の向上に努めるとともに、実際の回線を使った実証実験による本技術の検証を行なっていく」としている。

(一條徹)