レビュー
AirPlay/DLNAを両方使えるスピーカー、デノン「コクーン」
1台でiPhone/Android/PC/NASとネットワーク連携
(2013/2/7 11:00)
デノンの「コクーン」(Cocoon)は、AirPlayやDLNAなど豊富なネットワーク機能を備えたアクティブスピーカー。繭(まゆ)のような本体形状と、聞き覚えのある製品名で印象深いというAV Watch読者も多いことだろう。
4chアンプ内蔵の上位モデル「Cocoon Home(DSD-500)」と、バッテリを内蔵するポータブル型「Cocoon Portable(DSD-300)」の2製品をラインナップ。いずれも無線LANとEthernetを備え、DLNAとAirPlayの両方に対応するという強力なネットワーク機能が魅力。前面にプッシュ収納式のiPhone/iPodドックトレイ(30ピン)を備え、iPodなど(Lightningコネクタモデルを除く)とデジタル接続して高音質に再生できる。DSD-500はiPadも装着可能だ。
2012年7月に製品が発表された後、発売延期のアナウンスなどもあって、なかなか実際の製品を目にできなかったが、ついに製品を試すことができた。上位モデルDSD-500のネットワーク機能などを中心に紹介していく。
両機種の主な違い
外観は、丸みのある形状が特徴。前述の通り、カイコの繭を思わせるデザインがユニークだ。どの方向から見ても目立つボタンなどは無く、端子やハードウェアボタンの類いは、全てスタンド部の背面に収められている。再生/停止やボリュームといった基本操作は向かって右上にあるタッチセンサー式の操作部または付属リモコン、iPhone/Androidアプリで行なう。前面にディスプレイを備え、再生中の楽曲名などを表示可能。
なお、AV機器で「コクーン」といえば、ソニーが2002年から展開していたHDDレコーダを覚えている人も多いだろう。デノンは今回のスピーカー国内発売にあたり、ソニーから商標を取得したとのことだ。
上位モデルDSD-500のユニットは2ウェイで、25W×4chのクラスDデジタルアンプを搭載(DSD-300はフルレンジ/25W×2ch)。DSD-500は前面の布製グリルが着脱式で、外すとユニットが見える。グリルは手洗いもできるとのこと。デザイン性の高いスピーカーの場合、汚れてしまうとせっかくの見栄えが台無しだが、この着脱グリルはうれしい。なお、DSD-300のグリルは金属製で、取り外しはできない。
その他、両製品の違いをおさらいしておくと、ポータブルタイプであるDSD-300はバッテリを内蔵しており、背面に指を引っ掛けて片手で持ち運べる。並べてみると、サイズに差があるのが分かる。DSD-500はスタンド部が金属ということもあり、見た目よりも重量感があり、安定感も高い。取っ手のようなものは無いので、両手で抱えて持ち運ぶような形になる。外形寸法と重量は、DSD-500が451×170×236mm(幅×奥行き×高さ)、5.4kg。DSD-300は352×136×180mm(同)、3.3kg。一つ注意しておきたいのは、DSD-300は製品発表時に「防滴仕様」とされていたが、実際の製品は防滴j仕様ではなくなったという点だ。また、DSD-500は電源部を本体に内蔵しているが、DSD-300はACアダプタを使用するという違いもある。
価格はオープンプライスで、発表時点の店頭予想価格はDSD-500が6万円前後、DSD-300が5万円前後だったが、2月時点でAmazonなどのネット通販を見ると、店舗によってはDSD-300がもう少し安くなっているようだ。
AirPlay/DLNAで手軽にワイヤレス再生
まずは、この製品の大きな特徴であるネットワーク機能を利用するため、LAN接続の設定を行なった。連携させたいPCやNAS(LAN HDD)と同じルータから、本体のEthernetにケーブルを挿しこむだけでも完了するが、置き場所を選ばない本体デザインを活かすには、無線LAN接続の方がすっきりしていてお勧めだ。なお、ネットワークに関する機能は両機種共通だ。
WPSボタンを備えており、対応ルーターがあれば無線LAN設定も簡単に行なえる。また、Dockコネクタ搭載のiPhone/iPod touch/iPadがあれば、前面トレイに装着することで無料アプリ「Denon Cocoon」(iOS 5以降に対応)のインストールを促す画面が表示される。アプリを入れた後、セットアップ画面の「NetLink」を選んで、認識されたSSIDのパスワードを入力すれば完了する。
上記2つの方法が使えない場合は、PCからも設定可能。本体背面の「NETLINK」ボタンを押すと、PCの無線LAN設定画面にコクーンのSSIDが表示されるので、それを選んだ後、Webブラウザ上から指定のIPアドレスにアクセスして、設定画面を呼び出せばOKだ。ネットワーク設定さえ終われば、ほぼ全ての機能が活用できる。
iPhone/iPad/iPod touchを持っていれば、AirPlayでワイヤレス再生が可能。音楽再生中にAirPlayのアイコンをクリックし、再生先としてコクーンを選べばOK。iOS端末だけでなく、パソコンのiTunes楽曲を同様にAirPlayでコクーンに再生させることも可能だ。今ではもう珍しくなくなったAirPlayだが、ケーブルをつながずに手元で操作しながらiPhoneやパソコンの音楽を楽しめるのは手軽で魅力的。
次は、DLNA再生も試した。この機能はAndroidアプリでも利用可能。機能をおさらいしておくと、コクーンはDLNAのレンダラー(DMR)として動作するため、LAN内のパソコンやDLNA対応NASなど(DMS)の音楽を、ワイヤレスで伝送して再生できる。さらに、スマートフォンをコントローラ(DMC)として使うことも可能だ。ネットワーク設定さえ済ませておけば、対応機器の連携はアプリで簡単に行なえる。
まずアプリから「Music Server」をタップし、サーバーとなるPCやNASを選ぶ。今回、NASはバッファローの「LinkStation LX-XHL 2.0」をサーバーとして使用している。サーバーにアクセスすると「ミュージック」のメニューから、アルバム/アーティスト/ジャンルといった分類で表示可能。アルバム楽曲などのシャッフル再生も行なえる。PCの曲を再生したい場合、Windows Media Player 11以降がインストールされていれば、ライブラリの楽曲を共有/再生できる。なお、あらかじめWindowsのコントロールパネルでコクーンとの共有設定を許可しておくことが必要。許可されていれば、コクーンのMusic ServerとしてPCも表示される。
ここまで説明したDLNA機能の使い勝手はiOS/Androidアプリでほぼ同じ。今回はiPhone 4SとAndroid搭載ウォークマンの「NW-F807/S」を使っているが、手持ちのiPhoneやAndroid端末をリモコンとして、別室にあるNASの音楽を簡単に聴けるのは便利。コクーンを使えば、1台でプレーヤー/スピーカーとして動作するので、あまり多くの機器を置きたくない部屋で使うのにも良さそうだ。
再生対応フォーマットはWMA/MP3/WAV/AAC/FLAC。DRM付きのWMA/AACファイルは再生できない。サンプリング周波数は最高48kHzまでの対応だ。
サードパーティ製のDLNAコントローラーアプリからの操作もできるかどうか試してみた。iOS/Android版のTwonky Beamを使ったところ、サーバーとしてコクーンが認識され、NASの音楽を再生できた。DiXiMとPlugPlayerでは、レンダラーとして認識はされたものの、楽曲の再生は残念ながらできなかった。この辺りはアプリによって差がありそうだが、特にこだわりがなければ純正アプリで十分だろう。
iPhone再生で音質比較
基本機能であるDock接続のiPhone/iPodスピーカーとしても使ってみた。手持ちのiPhone 4Sを接続して、Dockスピーカーとして再生。デジタル接続となっており、コクーン側のDAC/アンプを使うので、アナログ接続に比べて高音質に再生可能だ。iOS標準の音楽再生アプリで利用できるほか、Denon Cocoonアプリにも音楽再生機能を装備。アプリでプレイリストを作成することも可能だ。
DSD-500/300は本体サイズやアンプ、ユニット構成が違うため、音の聴こえ方にも結構な差がある。DSD-300は素直に音を聴かせるタイプで、中高域に渡るバランスは良好。余計な味付けや付帯音が気になることはない。低音の力強さはやや物足りなく、一定以下の低音が平坦に感じられる部分もあった。ただ、“最低域”を意識しなければ、全体的なバランスは好感が持てるもので、本体サイズから想像するよりも十分なパワーを持っており、置き場所を気にせずこの音が楽しめるのは魅力だ。
一方のDSD-500は豊かな低音が印象的で、バスドラムの重量感が足元から伝わってくるようだ。単に低域へ寄ったバランスというのではなく、低い音の中にも丁寧な描き分けが感じられる。中高域にも目立った粗さは無く、全体的に厚みのある音となって迫ってくる。両製品とも、ただのデザイン重視のスピーカーではないという底力を持つが、DSD-500の音は価格差以上の満足感はあると感じた。
イコライザなど、音質を調整する機能は特に用意されていないが、本体背面に「LOUDNESS」ボタンを装備。これをONにすると、小音量では聞こえにくい低域/高域が増強される。押してみると少し低域が持ち上がった印象を受けた。あまり大きな音が出せない場合は活用するといいだろう。
インターネットラジオやUSB再生、アラームも
インターネット接続していれば、ネットラジオの音楽を聴くことも可能。アプリで「Internet Radio」を選び、地域やジャンルで絞り込んでネットラジオ局やPodcastを検索/選局できる。WMA/MP3で配信している局に対応し、3つまで本体にプリセットできる。受信中は、局名が本体ディスプレイに表示される。ネットラジオアプリの「TuneIn」とも連携可能で、本体にTuneInがインストールされていれば、コクーンの再生ソースとして利用できる。
背面にUSB端子を備え、USBメモリやバスパワー動作のUSB HDDなどからも楽曲を再生可能。対応ファイルはネットワーク再生時と同じ。FAT16フォーマット(最大2GB)のほか、FAT32フォーマット(最大2TB)もサポートする。最大フォルダ数/ファイル数はそれぞれ500/5,000。ストレージクラスのポータブルプレーヤーも再生可能。なお、このUSBはiPod接続には対応していない。試しにLightning-USBケーブルを介して第7世代iPod nanoを接続してみたが、やはり再生はできなかった。ウォークマンF807も同様だった。また、USBスピーカーとして利用することもできない。Dock接続以外のプレーヤーと有線接続する場合は、ステレオミニのアナログ入力を利用する。
ベッドサイドの利用なども想定し、アラームやスリープタイマーも搭載。アラームはデフォルトのサウンドのほか、iPhoneなどの楽曲を使用することもできる。
iPhone 5やiPad miniといったLightningコネクタ搭載モデルをダイレクトに装着できないのは惜しいが、iPhone 5への機種変更でiPhone 4/4Sが手元に残っていたり、30ピンDockコネクタ搭載のiPad/iPodを現役で使っているという人も多いはず。こうした手持ちの製品を活かしつつ、iPhone 5でもAirPlayによってワイヤレスで音楽再生が行なえるのは便利。
そして、AirPlayだけでなく、DLNAレンダラーとしても使えるのがコクーンならではの魅力。iPhone/Androidスマートフォンをリモコンとして操作できるため、様々な機器と連携できそうだ。Bluetoothには非対応だが、ネットワーク対応により、決してiPhone/iPodの旧機種専用ではないのが面白いところ。音質についてはDSD-500を推したいが、上位機と同じネットワーク機能をより低価格で楽しめて、バッテリ駆動ができるDSD-300も面白い製品だ。
純正アプリは多機能なだけでなく操作もシンプルなので、ネットワークオーディオは面倒だと考えている人でも、最初のネットワークプレーヤー/スピーカーとしても良さそう。一方で、多くの楽曲をNASに貯めていて、既にネットワークオーディオを楽しんでいるという人も、その楽曲を再生できる場所(部屋)が簡単に追加できる。あまり複雑に考えず、ネットワーク再生ができるスピーカーとして楽しめそうだ。
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