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大河原克行のデジタル家電 -最前線-

「iPod touchが50%突破」に裏付けられるiPodの進化

“iPod = エンターテイメントデバイス”が明確に



■ なんと8四半期連続で前年割れを続けるiPod

2011年1月〜3月 携帯オーディオ
メーカー別・全体販売台数前年同月比(月次推移:%) 
出典:BCN
年月 アップル ソニー 全体
11年01月 80.9 133.4 101.9
11年02月 78.2 128.6 96.2
11年03月 62.8 103.7 79.6

 ソニーが2010年12月以降、携帯音楽プレーヤーの日本市場において、50%以上のシェアを維持し続けている。

 BCNの調べによると、2010年12月に52.1%のシェアを獲得して以来、2011年1月には54.6%、2月には50.1%、3月には52.4%と、50%を超える市場シェアを獲得しつづけているのだ。

 しかも、その一方で、iPodの販売台数は減少傾向にある。

 BCNよると2011年に入ってからのiPodの販売台数は、1月が19.1%減、2月が21.8%減、3月が37.2%減。3月は東日本大震災の影響もあるが、それでもソニーが3.7%増と、前年同月比プラスになっているのに比較すると落ち込み幅が目立つ。


2011年1月〜3月携帯オーディオ
メーカー別・全体販売台数前年同月比(月次合算:%) 
出典:BCN
年月 アップル ソニー 合計
11年1〜3月 74.6 123.0 93.6

 そして、iPodの販売台数が減少しているのは、日本だけの特殊事情ではない。世界中でiPodの出荷台数が減少しているのは、アップルの公式発表数字からも明らかだ。

 米アップルが発表している各四半期決算の数字をみると、2010年10〜12月におけるiPodの出荷台数は、前年同期比7%減の1,945万台、2011年1〜3月でも17%減の902万台となっている。実は、iPodの出荷台数は、2009年4〜6月に前年割れしてから、8四半期連続で前年割れを続けているのだ。

 とはいうものの、アップルが携帯音楽プレーヤー市場において、低迷しているとは一概には言い難いのも事実だ。



■ 驚くべき伸張を遂げるiPhone

iPhone 4

 仮に、携帯音楽プレーヤーの定義を、音楽配信サービスに接続している端末と定義し直してみたらどうか。

 周知のように、アップルにはiTunes Storeがあり、それを管理するソフトウェアとしてiTunesがある。ここに接続する携帯型端末はiPodだけに留まらず、iPhoneにも広がる。

 そのiPhoneの出荷台数は、世界的にみても驚くべき伸びを記録している。

 米アップルの発表によると、2010年7〜9月におけるiPhoneの出荷台数は、前年同期比91%増の1,410万台、10〜12月では同86%増の1,624万台となっており、最新四半期となる2011年1〜3月には、113%増の1,865万台と2倍以上の伸びとなっている。

 しかも、商品サイクルが短い携帯電話およびスマートフォン市場において、すでに発売から10カ月を経過しているiPhone 4が、引き続き成長を続けているというのは驚きである。

 当然のことながら、iPhoneユーザーのすべてが、音楽プレーヤーとしての機能を利用しているとは限らない。しかし、いつでも携帯音楽プレーヤーとして利用できる環境にあることは間違いないのだ。



■ 「iPod = iPod touch」という認識への変化

 そして、もうひとつ特筆すべきことがある。それは、iPodシリーズにおけるiPod touchの構成比が高まっていることだ。

携帯オーディオ アップルにおけるモデル別販売台数構成比推移 2011年1月〜3月(月次推移)

 BCNの調査によると、2010年1月には19.3%の構成比に留まっていたiPod touchは、2011年3月の集計では、51.5%に達し、初めて半数を突破した。

 これに対して、2010年1月には、70.2%の構成比を占めていたiPod nanoは、2011年3月には32.5%と、3台に1台の水準にまで減ってきているのである。

 いわば、これまでは「iPod=iPod nano」という構図から、「iPod = iPod touch」という認識へと変わりつつあることの裏付けである。

 そして、それは「iPod=携帯音楽プレーヤー」という認識から、「iPod = エンターテイメントデバイス」への位置づけへの変化を明確に示したものともいえる。


2011年1月〜3月 携帯オーディオ
アップルにおけるモデル別販売台数構成比(月次推移:%)

出典:BCN

年月 touch nano shuffle classic その他 合計
10年01月 19.3 70.2 5.7 4.8 0.0 100.0
10年02月 22.7 65.7 6.1 5.5 0.0 100.0
10年03月 22.9 66.2 5.9 5.0 0.0 100.0
11年01月 48.1 35.4 11.0 5.5 0.0 100.0
11年02月 47.6 32.3 13.6 6.5 0.0 100.0
11年03月 51.5 32.5 11.6 4.4 0.0 100.0
2011年1月〜3月 携帯オーディオ
アップルにおけるモデル別販売台数構成比(月次合算:%)
出典:BCN

年月 touch nano shuffle classic その他 合計
10年1〜3月 21.3 67.9 5.8 5.0 0.0 100.0
11年1〜3月 48.8 33.9 11.8 5.5 0.0 100.0
iPod touch iPod nano

 iPod nanoの場合は、音楽を聴くことが重視され、一部機能としてビデオを見たり、撮影したりといった機能が搭載される。しかし、iPod touchの場合には、App Storeでのアプリケーションのダウンロードが可能になり、マルチタップを生かしたゲームなども楽しむことができる。また、筐体の表と裏に付属したカメラで撮影して楽しむこともできる。つまり、エンターテイメントデバイスとしての活用が可能になるのだ。

 iPod touchの販売構成比が増加しているということは、携帯音楽プレーヤーとしての利用ではなく、エンターテイメントデバイスとしての機能をiPodに求めるユーザーが増加していることの証でもある。なかには、iPod touchを携帯音楽プレーヤーとして購入するのではなく、最初から音楽を聴くという用途以外で購入しているユーザーもいるだろう。



■ エンターテイメントデバイスへの進化を宣言

 米アップルのスティーブ・ジョブズCEOは、「iPodは、もはや携帯オーディオプレーヤーの枠を超えた、エンタテイメントデバイスだ」と宣言。その言葉通り、iPodは、携帯音楽プレーヤーとしての舞台だけで戦うつもりはないとする。

 あるアップルの関係者は、次のように語る。

 「iPodと直接競合する製品は、いまの市場にはないと考えている。ある時には、ウォークマンと競合する場合もあるだろう。だが、その一方で、ニンテンドーDSシリーズや、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPSPシリーズといったモバイルゲーム機と競合する場面も出てくる。もはや、iPodは、携帯音楽プレーヤーの領域を越えているのは紛れもない事実。」

 ジョブズCEOは、2010年9月のiPodの製品発表の場において、「iPod touchは、世界ナンバーワンのポータブルゲームプレーヤーともいえる。その出荷台数は、任天堂とソニーの合計数よりも多く、米国では60%のシェアを獲得している。そして、15億本のゲームソフトがダウンロードされている」と、iPod touchがモバイルゲーム機としての利用されていることを示してみせた。

 日本においても、いよいよiPod touchの販売構成比が過半数を突破したことは、アップルが語るエンターテイメントデバイスへの進化を、まさに示しているといえよう。

 日本において、iPodのシェアを抜いたソニーのウォークマンだが、それに対して、iPodは、戦う舞台をすでに大きく変化させていた。この領域に踏み出しているメーカーは、いまのところ、まだないといっていい。

BCNの調査は、全国23社2,336店舗の量販店のPOSデータを集計。POSデータ提供店は2010年12月現在、アベルネット(ボンバー各店舗)、アマゾン ジャパン(Amazon.co.jp)、エディオン(ishimaru、エイデン、デオデオ、ミドリ)、NTTレゾナント(NTT-X Store)、大塚商会(P-tano)、グッドウィル(グッドウィル)、ケーズホールディングス(ケーズデンキ)、サードウェーブ(ドスパラ)、サンキュー(100満ボルト)、上新電機(上新電機)、スタート(onHOME)、ストリーム(ECカレント)、ソフマップ(ソフマップ)、ZOA(ZOA)、ナニワ商会(カメラのナニワ)、ビックカメラ(ビックカメラ)、ピーシーデポコーポレーション(PC DEPOT)、ベスト電器(ベスト電器)、三星カメラ(三星カメラ)、ムラウチドットコム(ムラウチドットコム)、MOA(A-Price)、ユニットコム(パソコン工房、Faith、TWO TOP)、ラオックス(ラオックス)。

(2011年 4月 21日)

[Reported by 大河原克行]


= 大河原克行 =
 (おおかわら かつゆき)
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。

現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、クラウドWatch、ケータイWatch、家電Watch(以上、ImpressWatch)、日経トレンディネット(日経BP社)、Pcfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊ビジネスアスキー(アスキー・メディアワークス)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社)など