大河原克行のデジタル家電 -最前線-

LG Smart TVの大画面モデルが売れる理由とは?

~日本市場への取り組みと今後の展望を聞く~


LG Electronics JapanのC.E.商品企画 & マーケティングチーム長の土屋和洋氏

 LG ElectronicsのLG Smart TVが好調な売れ行きをみせている。同社によると、発売から約2カ月で、販売金額では当初計画を大幅に上回ったほか、42型以上の販売構成比率が約5割に達するという予想以上の成果があがっている。また、LG Smart TV購入者の約7割がネットに接続するという、驚くべき結果も出ているという。

 LG Electronics JapanのC.E.商品企画 & マーケティングチーム長の土屋和洋氏は、「リーンバック、メガコンテンツ、サイズアップという3つの提案が、ユーザーに受け入れられているのが要因」と自己分析する。「LG Smart TVの売れ行きは、予想以上の手応え」とする土屋チーム長に、日本におけるテレビ事業への取り組みを聞いた。


■ 販売台数の半分が42型以上、約7割がネット接続でスマートTVを楽しむ

LG Smart TV

――LG Smart TVの売れ行きが好調のようですね。

土屋:当社は、今年6月から「LG Smart TV 5シリーズ14モデルを順次発売していますが、売れ行きには予想以上の手応えを感じています。売れ筋となっているのは、7600シリーズや5800シリーズ。より高い画質を求める方には9600シリーズの評価が高いですね。最初にターゲットとしていたのは、40歳前後のガジェットが好きなユーザー。海外経験があり、LGのブランドを認知しているといった層でした。しかし、こうした購入層は約3割程度。我々が想定した以上に、それ以外の購入層が多いという結果が出ています。

47LM7600LM5800シリーズ55LM9600

 具体的な購入者プロフィールを分析しているわけではないのですが、購入者を対象にした「サクサク、リラックスキャンペーン」や、「我が家に美しい大画面キャンペーン」の応募状況をみていますと、30代前後のファミリー層や60代以上のシニア層の購入も多い。このキャンペーンでは、マジックリモコンを使ってリラックスしているシーンを撮影した写真や、LG Smart TVにインチアップした写真を送っていただいているのですが、そこには日本的なお茶の間にLG Smart TVが置かれているというシーンを数多く見受けます。多くが都会的な大きなリビングの置かれているというシーンを想定していたのですが(笑)、これもいい意味で予想を裏切った例だといえます。洋室にも和室にもあうデザインであるということも改めて認識できました。これまでのLG製品の購入者層に比べて、明らかに顧客層が広がっていることを感じるのは、大きな手応えのひとつです。

――販売台数も当初計画を超えていますか。

土屋:販売台数という点では、当初計画を若干上回るという状況ですが、販売金額という点では、計画を大幅に上回っています。その理由のひとつが、大画面モデルの販売が好調であるという点です。市場全体では32型以下が約7割を占めていますし、今回のLG Smart TVでも26~55型までの製品をラインアップしていることもあり、全体の3~4割を42型以上が占めればいいと考えていました。しかし、実際には約5割が42型以上となっています。また、LG Smart TV購入者の約7割がインターネットに接続し、スマートテレビならではの使い方を楽しんでいます。一般的にはテレビのネット接続率は10~15%といわれていますから、スマートテレビという当社の提案が受け入れられていることの証だといえるのではないでしょうか。


■ 「リーンバック、メガコンテンツ、サイズアップ」という3つの提案

マジックリモコン

――好調な要因はなんでしょうか。

土屋:LG Smart TVでは、新たに3つのキーワードを軸にした展開を行なっています。ひとつは、リーンバックです。マジックリモコンがその最たるものですが、ソファに寄りかかって、リラックスした格好でテレビをみてもらい、画面に向かって目当てのアイコンやサムネイルを、マジックリモコンを使ってポイントしたり、クリックしたりといった操作ができる。しかも、それがサクサクと動く。マジックリモコンの操作性の高さが認識されたことが要因のひとつではないでしょうか。

LG独自の「3D WORLD」や、TSUTAYA TV、アクトビラ、K-POP ZONEなど多彩なコンテンツを用意

 2つめに、メガコンテンツです。LGはグローバルブランドのメーカーですが、TSUTAYA TV、アクトビラといった日本のコンテンツプロバイダーにも対応し、さらに、約300タイトルの3Dコンテンツを集めた「3D WORLD」などのLG独自のコンテンツサービスも用意しました。さらに、「K-POP ZONE」という韓国の企業ならではのコンテンツも用意しています。これらのコンテンツを、テレビ放送と同じように、違和感なく視聴できる環境を提案している点が大きな特徴だといえます。

 とくに、LGでは、CINEMA 3Dとして、円偏光方式での3D視聴を提案しており、リラックスした形で3Dを楽しめる点が高い評価を得ています。3D視聴においては、3Dメガネとコンテンツ不足が課題といわれていますが、すでに昨年の時点で、電池を使用せず、軽量で手軽に視聴できる提案によって、3Dメガネの課題を解決しました。今回の製品ではもうひとつの課題であるコンテンツ不足という点に踏みだし、3D視聴環境をよりよいものへと進化させています。実は、3Dの提案に関しては、日本においては、一時期に比べ、盛り上がりに欠ける部分があったため、訴求のプライオリティは高くはなかったのですが、実際に店頭展示をしてみると、多くの人から高い評価を受けている。メガネも明るく、3Dが見やすいという声もでています。この点も予想外の反応だったといえます。

――3つめのポイントはなんですか。

土屋:サイズアップです。LG Smart TVは、狭額縁による没入感がある画面が特徴です。上位モデルではフレーム幅を極小化した「CINEMA SCREEN」デザインを採用しており、同じフットプリントで、ひとまわり大きなサイズの提案が可能になる。7、8年前にフラットテレビを購入したユーザーの買い換え提案として、32型であれば42型、37型であれば55型というようなサイズアップの提案が可能になる。デザイン面でもスリムで、スマートであるということを訴えています。こうした3つの要素を、エンドユーザーや販売店に対して、明確なメッセージとして伝えられたことが大きかったといえます。


■ 「世界一厳しい目」を持つ日本向けに最適化。販売店の展示スペース拡大も

LGTV for JAPAN

――LG Smart TVでは、日本の市場に最適化した機能なども搭載していますね。そのあたりの評価はどうですか。

土屋:確かにLG Smart TVでは、画質のセッティング、録画機能、メニューのローカライズなど、日本の市場にあわせた形での提案を行なっています。とくに、日本のユーザーは画質には非常にシビアで、世界一厳しい目を持ちますから、これまでの日本市場での経験をもとに、事業部に多くの要求を出しました。これだけ多くの要求を出した地域はほかにはないと思いますよ(笑)。日本は重要な市場と位置づけており、本社とのパイプも非常に強い。結果として、グローバルモデルとは異なる、日本市場向けの高画質の製品を市場投入できました。その成果は出ていると思いますよ。また、サポート体制についても、すでに全国規模で行なえる体制を整えていますから、安心して購入していただける環境も整っています。

――販売店に対する支援体制にも変化はありますか。

土屋:LG Smart TVに関しては、発売前からプロトタイプをお見せする機会をつくり、さらに、小回りを利かせた体制によって、現場に足を運び、多くの幹部やバイヤー、店員の方々に説明をさせていただきました。これまでは都心部の店舗が中心でしたが、今回の製品では、対象とする店舗を広げ、面での展開を行なってきました。日本では、スマートTVというコンセプトがまだまだ理解されていない段階ですから、先ほどあげました3つのポイントを切り口に提案活動を行なっていきました。販売店の方々からは、「特徴が訴えやすい」、「説明がしやすい」という評価をいただいており、その点でも手応えを感じています。LGは、国内のテレビ市場に3年前に再参入を果たし、それ以来、販売店の方々には、LGの製品について、徐々に関心を高めていただいたという経緯がありました。そのなかで、LG Smart TVの投入を果たすことができた。この製品によって、お店の方々がLGのファンになっていただけたのではないでしょうか。

――現在、どのぐらいの店舗でLG Smart TVの展示を行なっていますか。

土屋:約600~700店舗です。店舗数には変化はないのですが、サイズアップの提案を行なっているように、大画面モデルを中心とした訴求をしていますから、必然的に展示スペースが広がる。その点で販売店のご理解をいただき、展示スペースが拡大しています。ざっと1.2~1.3倍程度には広がっているのではないでしょうか。また、販売店によっては、壁面展示だけでなく、ゴールデンゾーンと呼ばれる場所に展示をしていただいている例もあり、多くの方にLG Smart TVを体験していただくことができています。また、ブルーレイレコーダについては今年がゼロからのスタートですが、LG Smart TVと同時購入するという形でじわじわと広がっています。レコーダーについても購入者向けキャンペーンを実施し、購入しやすい環境を提案しています。

 

店頭展示店頭展示CINEMA 3D

 


■ 「日本のメーカーと共に活性化させたい」。日本市場における今後の展望

――今後はどんな展開をしていきますか。

土屋:年末に向けては、これまでの施策の延長線上で、さらにLG Smart TVの良さを提案していくつもりです。LG Smart TVは、とにかく体験してもらうことが、その良さを最も理解していただける。9月以降は、店頭やイベント、キャンペーンを通じて、タッチ&トライの場をより多く持ちたいと考えています。いまのこの勢いをいかに維持するか、ということが重要な課題ですね。

――今年1月のCESで、有機ELテレビを発表していますが、これに関してはどうなりますか。

土屋:年内のグローバルでの発売を検討しています。日本市場については、現時点でお話しできることはありませんが、個人的には早く投入したいですね。日本のユーザーにきちっと受け入れられるような画質を実現する形での市場投入を目指したいと考えています。

「世界一厳しい目を持つ日本のユーザーに認められる製品を出すことが、グローバルな競争力を磨くことにつながるという狙いはある」と話す土屋氏

――日本市場における最初の目標は何になりますか。

土屋:3年前に日本市場にテレビで再参入した際に、5年間で5%というシェア目標を掲げましたが、これはあくまでも結果としての目標であり、それに徹底してこだわるというものではありません。日本の市場を、日本のメーカーと一緒になって活性化させるというのが我々のスタンスです。もちろん、ビジネスという観点からは、市場のあるところに参入するという狙い、そして、世界一厳しい目を持つ日本のユーザーに認められる製品を出すことが、グローバルにおける競争力を磨くことにつながるという狙いはあります。

 また、現在、白物家電ではロボット掃除機や一槽式の洗濯機などを投入していますが、日本の市場に適した製品があれば、将来的には検討していきたいですね。LGの強みは、組織にとらわれずプロジェクト的な動きをし、それが大きな動きにつながっているというクロスファンクション体制にあります。小さな組織が、お客様のことをいつも考え、それをモノづくりにつなげている。日本からの要求に対して、前向きに取り組んでもらえるのもそうした姿勢があるからです。そして、日本の組織についても多くの権限委譲が行なわれており、柔軟に動くことができる。そうした強みを生かしながら、日本のお客様に受け入れられる製品を投入し、これをグローバルに展開していくという、いいスパイラルを作り上げたいと考えています。

(2012年 7月 31日)

[Reported by 大河原克行]


= 大河原克行 =
 (おおかわら かつゆき)
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、20年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。

現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、クラウドWatch、家電Watch(以上、ImpressWatch)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp (アスキー・メディアワークス)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下からパナソニックへ」(アスキー・メディアワークス)など