藤本健のDigital Audio Laboratory
第543回:“PCオーディオ”へ舵を切った「Sound Blaster ZxR」を試す
第543回:“PCオーディオ”へ舵を切った「Sound Blaster ZxR」を試す
ステレオ再生を強化。ASIOにも対応したPCIeサウンドカード
(2013/3/18 13:38)
クリエイティブメディアから24bit/192kHz対応のPCI Express x1接続サウンドカード、PCIe Sound Blaster ZxRが発売された。これまでのSound Blasterは、ゲームやサラウンドでのビデオ再生といったエンタテインメント系の色彩が強いイメージだが、今回のモデルはステレオでのオーディオ再生に大きく舵を切り、流行りのPCオーディオの世界に挑んできた格好だ。考えてみれば、最近PC内蔵のサウンドカードはほとんどなくなってきたが、デスクトップPCユーザーであれば、内蔵はやはり使いやすいのも事実。実際どんな製品なのか試した。
「ステレオダイレクトモード」など、ステレオ再生に注力
2月下旬に発売されたPCIe Sound Blaster ZxRは、Sound Blaster Zシリーズのフラグシップモデルという位置づけ。ハードウェア的にはPCIe接続のメインカード、ドーターカードであるDBproカード、そしてコントローラ+マイク+ヘッドフォン出力のAudio Control Moduleの3点で構成されている。メインカードとDBproカードはPC内でリボンケーブルで接続。Audio Control Moduleはメインカードのヘッドフォン端子、マイク端子に接続して、手前に持ってきて扱いやすくするためのものだ。これら3つのパーツについて、見た目からわかる点を1つずつチェックしていこう。
まず、見ていきたいのがメインカード。ここには標準ジャックのヘッドフォン出力、標準ジャックのステレオマイク入力、RCA端子のステレオメイン出力、さらにマルチチャンネル出力用にミニジャックで、リアの左右、センター/サブウーファの端子が順に並んでいる。いずれも金メッキされているあたりからも、気合の入れようが伝わってくるが、注目すべきは、やはりメイン出力がステレオミニではなく、RCAである点だろう。もちろん、従来のSound Blasterと同様にサラウンド出力は可能なのだが、ステレオ出力にフォーカスが当てられており、ステレオ再生に力を入れているのだ。
クリエイティブメディアによれば、「スタジオグレードのDAコンバータや各種コンデンサなど、こだわりのオーディオコンポーネントを採用。カード実測値でS/N比124dBという非常に低ノイズの優れた回路設計でこれまでとは一線を画したクリアな再生環境を実現する」とのことだが、購入した状態では全体をシールドで覆われていて、どうなっているかがよく見えない。このシールドをネジで取り外してみると、なるほど、これまでのSound Blasterシリーズとはちょっと様相が異なる。なんとなく、オンキヨーのサウンドカード「WAVIOシリーズ」を彷彿する見た目で、コンデンサがコンビナートのようにズラリと並んでいるのだ。
オンキヨーのようなステレオで回路を分離して、左右対称にする構造ではないようだが、デジタル回路とアナログ回路は銅板のグラウンドプレートで仕切られているのも確認できる。そのデジタル回路とアナログ回路の橋渡しをするのがDACだが、これをチェックしてみると、TI/バーブラウンのDAC、PCM1794が搭載されているのが確認できる。またコンデンサはニチコン製のFine Goldが採用されている。さらに、フロントのメイン出力用のオペアンプを見てみると、JRCの2114Dというチップが採用されているが、これがソケット上に搭載されているためユーザーによる交換が可能(メーカー保証対象外)になっている。こうした点を見ても、なかなかマニアックなサウンドカードになっているようだ。
一方、ドーターカードのDBproカードはPCIeバスは必要なく、メインカードとリボンケーブルで接続すればいい形となっている。ここにはライン入力用にRCA端子が2つ、またS/PDIFの光入出力がそれぞれ搭載されている。詳細は分からなかったが、DBproカード上にもメインカードと同様にSound Core 3Dというロゴが書かれたDSPチップと思われるものが搭載されている。
そしてもう一つのハードが、Audio Control Moduleだ。前述のとおり、これとメインカードはヘッドフォン端子とマイク端子に接続する形となっており、デジタル的にコントロールするものではない。PCのリアにあると、どうしても扱いにくいヘッドフォン端子やマイク端子を手元に持ってくるという利便性がメインのようで、ここに搭載されているノブも、あくまでもアナログ的にヘッドフォンの音量を絞るのが目的のようだ。面白いのは、左側にヘッドフォンおよびマイクの標準ジャック、右側にはミニジャックが搭載されていて、どちらでも使えるようになっていること。また、マイクをわざわざ接続しなくても、このAudio Control Module内にもステレオマイクが埋め込まれているので、とりあえずはこれで事足りるようになっている。もっとも、このマイクはHi-Fiなレコーディング用途ではなく、Skypeなどで利用するためのもののようだ。
これらを実際にPCにセッティングし、ドライバをインストール。すると、Sound Blaster Z-Seriesコントロールパネルが利用可能になる。これを利用することで、さまざまな設定が可能になるのだが、PCIe Sound Blaster ZxRにおいての設定の肝になるのが、「スピーカー/ヘッドフォン」という項目。まずは出力をスピーカーにするのか、ヘッドフォンにするのかを選択する必要があり、どちらか一方しか音が出ないようになっている。
スピーカーで聴く場合には、さらにモード選択があり、「5.1サラウンド」、「ステレオ」、「ステレオダイレクト」という3つから選ぶ。なかでも注目すべきが「ステレオダイレクト」というモード。これは、AVアンプなどに搭載されている「ピュアダイレクト」モードなどと同様に、何もいじらずに直接音を出力するために用意されたモード。したがってSound Blaster自慢のCrystalizerやイコライザなどは一切使わず、素の音をそのまま出すわけだ。ステレオダイレクトでも、画面上はMP3などの圧縮音を補強するCrystalizerをオンにしたり、イコライザを設定できるようにはなっているが、実際には無効になる。なお、Crystalizerやイコライザを使って積極的な音作りをしたいのであれば、ステレオや5.1サラウンドを選択すればいいのだ。ただし、ステレオダイレクトはあくまでもRCA端子からのステレオ再生用となっているため、ヘッドフォンで利用することはできない。
ちなみにヘッドフォンを接続する場合、出力ゲインの設定ができるというのもユニークなポイント。通常はデフォルトである「標準ゲイン」のままでいいが、600Ωインピーダンスに対応するハイエンドヘッドフォンを利用する場合は「高ゲイン」を選択することで最適化されるようになっている。
ASIOドライバ対応で高音質再生にも対応
もうひとつ、PCIe Sound Blaster ZxRの利用で大きなポイントとなるのが、標準でASIOドライバに対応していること。やはりせっかくステレオダイレクトで再生しても、Windowsのサウンドエンジン(旧称:カーネルミキサー)を通してしまっては台無しになってしまう。もちろんWASAPIの排他モードを利用するというのも手だが、ASIOドライバが利用できると、やはりアプリケーション側の選択肢も広がり、より気持ちいい音での再生が可能になる。実際に、foober2000にASIOのプラグインを入れて試してみたところ、ステレオダイレクトのモードでバッチリ高音質再生ができた。
ただし、ASIOドライバで利用する場合は最高で24bit/96kHzとなり、24bit/192kHzには対応しない。また出力のみのサポートであり、入力は使えないため、あくまでも再生専用ということのようだ。
このようにクリエイティブとして、かなり音質にこだわって設計したサウンドカードのようだし、聴いた感じでは、なかなか快適だったが、実際に測定してみるとどうなのだろうか? いつものようにRMAA PROを使ってのループバックテストを行なってみた。通常はASIOドライバを利用してテストしており、このPCIe Sound Blaster ZxRもASIOをサポートしているわけだが、前述のとおり、ASIOは再生専用で録音用には機能しない。そこで、ここではMMEドライバを使って44.1kHz、48kHz、96kHzのそれぞれでテストを行なった。MMEなのに192kHzでのテストができていないのは録音側の問題で、こちらはASIOでなくても96kHzまでに制限されているからだ。
結果を見ると分かる通り、RMAA PROの結果はなかなかの好成績。通常のオーディオインターフェイスのテストではバランス接続を行なっているのに対し、PCIe Sound Blaster ZxRはバランス接続がサポートされていないでアンバランス接続。それであるのに、これだけの結果が出ているということは、かなり高音質デバイスであるといっても良さそうだ。
デスクトップPCでスッキリしたPCオーディオ環境を構築したいという人は、検討してもいいのではないだろうか?
PCIe Sound Blaster ZxR |
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