◇ 過去の連載 ◇
【Watch記事検索】

第154回:フルHD映像を4K表示。JVC「DLA-X70R」

e-shiftに感じる4K化の魅力と制限



 昨年はDLA-X3/X7/X9という攻めの3モデルラインナップ構成を展開したビクターの反射型液晶(LCOS)プロジェクタだが、1年でモデルチェンジを敢行。DLA-X30/X70R/X90Rというまたまた3モデルラインナップ構成で業界を盛り上げてくれている。

 今期モデルで型番に[R]が付くモデルは、e-shiftとよばれる4K2K投射が可能なモデルで、今期のイチオシのセールスポイントはまさにそこにある。

 今回の大画面☆マニアでは、e-shift機能を有するDLA-X70Rを取り上げることにした。価格は89万2,500円で、実売価格は80万円弱だ。e-shift機能による4K2K画質はもちろんだが、DLA-X7からどのように進化したのか、昨年、初対応だった3D画質のチューニングは進んだのか、といった部分も意識して評価した。


■ 設置性チェック〜高い設置性。スクリーン補正機能はさらに充実

 X70Rは、DLA-X7の後継機ということもあり外観上に大きな違いはない。奇をてらった曲線造形はなく、直線を基調としたシンプルな見栄えだが、そこが逆に飽きのこないデザインとなっているように見える。外形寸法は455×179×472mm(幅×奥行×高さ)。

本体塗装色は光沢感のある黒で、標準価格89万2,500円の製品に見合った高級感がある
寸法上は縦長だが、パっと見は正方形状に見える

 底面側にはネジ式の高さ調整式の脚部が4つ実装され、横2つの脚部の距離は33.7cm、縦2つの脚部の距離は29.0cmだ。

 競合他機種では前部にのみ調整式の脚部を配置して後部は固定式の脚やゴム製のバーを取り付けているだけのものが多いが、本機は四点支持を採用。台置き設置には嬉しい仕様と言える。


背面 底面 ネジ式の脚部は取り外し可能。そのネジ穴は、天吊り金具との取り付けに利用される

 本体重量は15.4kg。10kg未満が多い最近のホームシアター機の中にあっては重量級だ。天吊り設置を予定しているユーザーは、この重さには留意しておく必要があるだろう。

 天吊り設置に際しては、DLA-X7と同型の純正オプションの天吊り設置金具「EF-HT13」(54,600円)が設定されているほか、'09年モデルのDLA-HD950/750/550/350用の天吊り金具を本機に流用するためのベースプレート「EF-BP2」(23,100円)や、DLA-HD1/100用の天吊り金具を流用するための「EF-BP1」(23,100円)も設定されている。JVC機の天吊り金具は高価なので、従来機からの継続利用を想定したオプション設定は嬉しい配慮だ。

投射レンズ仕様は先代から変更なし

 投射レンズは、電動ズーム、電動シフト、電動フォーカスに対応した2.0倍ズームレンズを採用する。光学スペックは「f=21.4mm〜42.8mm,F=3.2〜4」。また、投射レンズは、'09年のDLA-HD350/550/750/950世代筐体から採用となったスライド式電動扉により保護される構造だ。やや大きめの「ジー」という開閉音は賛否はありそうだが、筆者的には「テンションの上がる演出音」という捉え方をしている。

 100インチ(16:9)の最短投射距離は3.01m、最長投射距離は6.13mで、最近のホームシアター機のいわゆる標準的なスペックを備えている。レンズシフトは上下±80%、左右±34%で、上下シフト量が大きいので、台置き設置、棚置き設置との相性も良い。また、天吊り設置においても、投射映像をかなり低めの位置に持ってくることが可能で、設置自由度は文句なし。


投射レンズ保護用の電動開閉扉。下位モデルのDLA-X30ではこの機能が省略された

 光源ランプは220Wの超高圧水銀ランプ。交換ランプの型式番は「PK-L2210U」(25,200円)で、先代DLA-X7から変更なし。近年のJVC機は交換ランプが安価で、「上級機にしては安い」というよりは、ホームシアター機全体水準と比較しても安価だ。これは高く評価したい。なお、公称ランプ寿命は「ランプパワー=標準」で約3,000時間とのこと。消費電力は360W。消費電力はDLA-X7から+10W増加している。

 エアフローは、背面吸気の前面排気。底面にも吸気ダクトがあるが、ここには交換式のエアフィルタが組み込まれている。このエアフィルタは設置したままの交換が可能だ。

吸排気ダクト

 動作時の騒音レベルは、ランプ輝度「標準」モードで20dB。本体から1mも離れれば冷却ファンの音は聞こえない。

 しかし、ランプのフルスペック輝度駆動となる220W駆動時の「高」モードでは、若干だが、騒音レベルが高くなる。排気口の開口部からずれた位置で視聴しないとやや気になるかもしれない。天吊り設置だと問題なさそうだが、台置き設置の場合は、留意すべきポイントとなる。

スクリーン補正機能。DLA-X7のは2桁数字入力だったが、DLA-X70Rでは3桁に増加した

 さて、DLA-X7から搭載された「スクリーン補正」機能は、DLA-X70Rにおいても引き続き搭載している。これは、各スクリーンメーカーのスクリーン製品ごとに、JVCが用意した適切な色温度プリセット値を選択できるというものだ。

 スクリーンは、その素材に応じてRGBの反射ゲイン特性が異なったりするし、グレー系スクリーンのような有色系スクリーンでは、白色系スクリーンとはそもそもの発色特性が異なってくる。「スクリーン補正」機能は、こうしたスクリーンの発色特性に合わせた投射をするためのユニークな画調補正機能なのだ。

 2011年12月現在、DLA-X70Rにプリセットされた対応スクリーンは全101種類。利用には、オフィシャルサイトに掲載されているスクリーン製品名に対応した3桁のプロファイル番号を入力する。該当製品が見つからない場合は「調整無し」を意味する「00」を選択することになる(デフォルト値)。



■ 接続性チェック〜HDMI階調レベルは手動切換式のみ

接続端子パネル。簡易操作パネルも背面にある

 接続端子パネルは背面にレイアウト。アナログビデオ入力端子はコンポーネントビデオ端子(RCA×3)があるのみ。Sビデオやコンポジットビデオ入力には対応しない。

 HDMI入力は2系統。HDMIバージョンは1.4aで、3D対応のほか、1080/24p、Deep Color、HDMI CECに対応する。なお、DLA-X70Rは疑似(?)4K2K投射に対応するが、4K2K映像をHDMI入力することはできない。

 PC入力はアナログRGB接続のD-Sub15ピン端子を1系統備えている。Xbox 360を接続し、様々な画面解像度をテストしてみたところ、1,920×1,080ドットはもちろん、1,680×1,050ドット、1,400×900ドットといった一風変わったPC画面モードも正しく「その解像度として」認識して表示できた。1,280×768ドット、1,280×1,024ドット、1,024×768ドット、640×480ドットといった一般的な画面モードもOK。ただし、1,280×720ドットモードは正しく認識できずに非表示となってしまった。

 HDMI階調レベルの認識は、オート認識がなく、ユーザーが手動で設定する方式を採用する。具体的には、「入力信号」メニューの「HDMI」階層下の「入力」を「スタンダード」「エンハンス」「Super White」の3つのいずれかを設定することになる。

HDMI階調レベルの設定に「オート」がない HDMI階調レベルが正しいかどうかを確認できるテストモードがある

 「スタンダード」は階調レベル16〜235に対応したもの、「エンハンス」は0〜255に対応したもの、「Super White」は色差信号用のハイダイナミックレンジモードであるY=16〜255に対応したものになる。自動設定をあきらめたことは潔いが、その分、この問題に関してユーザーに意識してもらう必要がある。設定変更がまるでできない機種よりはマシだが、ここの設定が色差(YCbCr)接続とRGB接続の両方に効いてしまうのが厄介だった。例えば、PS3でゲーム映像をRGB(0-255)出力し、Blu-ray映像は色差(16-235)で出力……と言う感じでRGBと色差を使い分けている場合、オートがないためいちいち「スタンダード」「エンハンス」を切り換えなければならない。「オート」がないならば、RGBと色差で個別に設定したいところだ。

 本機と外部機器との連動動作を行なうためのトリガ端子は1系統を実装。トリガ端子は、「機能」メニューの「トリガー」設定で「オフ」の他に、「オン(電源)」と「オン(アナモ)」が設定でき、前者はDLA-X70R稼働時に常時12V出力するもので、後者はアナモフィックレンズモードを呼び出した際に12V出力するものになる。電動スクリーン、電動シャッター、照明装置などとの連動動作を行なわせるときには前者の設定を、アナモフィックレンズの着脱に利用する際には後者の設定を利用することになる。

3Dメガネ「PK-AG2」

 LAN端子(Ethernet)とRS-232C端子はリモート制御用のものだ。この他、赤外線リモコンの受光部延長のために利用するREMOTE CONTROL端子、3D(立体視)制御用「3Dシンクロエミッター」接続用の「3D SYNCHRO」端子がある。

 なお、DLA-X70Rは3D立体視対応プロジェクタではあるが、3Dシンクロエミッター、3Dメガネは別売となっている。これは先代DLA-X3/X7/X9でも同様だった。

 3Dシンクロエミッターは先代と同じ「PK-EM1」(9,450円)が設定されており、特に仕様変更はないが、3Dメガネは、値下げされ、軽量デザインとなった「PK-AG2」(14,700円)となる。なお、X7世代の「PK-AG1」(17,850円)はDLA-X70Rでも引き続き利用可能だが、実勢価格でも、PK-AG2の方が4,000円近く安価なので、あえてPK-AG1を選ぶ必要はないだろう。


新3Dメガネ「PK-AG2」は充電式になった。40時間の連続使用に対応 3Dシンクロエミッター「PK-EM1」

■ 操作性チェック〜 レンズメモリー機能搭載

 DLA-X70Rのリモコンは、競合機にもあまり例がない、つや消し塗装が施された、独特な手触りのものになっている。90万円近いハイエンドモデルのリモコンにしては高級感に乏しいが、質感そのものは悪くない。

リモコン。基本デザインは先代のDLA-Xシリーズと同じだがボタンレイアウトは結構変更されている [LIGHT]ボタンを押すことで全ボタンが自照式に点灯する

  電源オン操作から、D-ILAのロゴが表示されるまでが約62秒、HDMI入力の映像が表示されるまでが約75秒。D-ILAロゴ非表示設定もできるが、その場合もHDMI入力映像の表示までの所要時間は変わらなかった。起動時間75秒はとても遅い。世代を重ねるごとに遅くなっているような気がする。

リモコンからアスペクト比を着る換えることができなくなってしまった。変更は「入力信号」メニューから行なう必要がある

 入力切換操作は、[HDMI1]、[HDMI2]、[COMP.]、[PC]という個別ボタンを押すことで希望の入力に一発で切り換えられるダイレクト操作系を採用しているが、HDMI1→HDMI2の切換所要時間は約7.0秒、HDMI1→PCで5.5秒、HDMI1→コンポーネントビデオで約5.5秒と全体的にもっさりとしている。起動時間共々、ここも改善して欲しいポイントだ。

 アスペクト比切換は、「入力信号」メニューに潜って「アスペクト」設定から切り換える。DLA-X7のリモコンにはアスペクト比切換用の[ASPECT]ボタンがあったのだが、X70Rにはこれがないのだ。もはや「表示映像はワイドアスペクトのHD映像主体」ということなのだろう。なお、用意されているアスペクトモードは以下の通りで、バリエーションはそれほど多くはない。


アスペクトモード 効果
4:3 アスペクト比4:3映像をアスペクト比を維持して表示する
16:9 入力映像をパネル全域を使って表示する
ズーム 4:3映像にレターボックス記録された16:9映像を切り出してパネル全域に表示する
アナモフィックモードの切り替えはリモコンからでもメニューからでも行なえる

 アナモフィックレンズを組み合わせて投射する際の特別なアスペクトモードへ切り換えられる[ANNAMO]ボタンは、X70Rでも健在だ。

 デフォルトはアナモフィックレンズを用いない「オフ」設定で、[ANNAMO]ボタンを押すと順送り式に「アナモフィックA」→「アナモフィックB」と切り替わっていく。

 「アナモフィックA」モードは、アスペクト比2.35:1(シネスコ)の映像を横解像度を維持したまま縦解像度を引き伸ばしてパネル全域に表示するモードで、アナモフィックレンズを装着して2.35:1の映像鑑賞を解像度劣化無しに行なうモードになる。

 一方、アナモフィックBは、逆に横解像度を縮小して縦解像度を維持するモードで、こちらはアナモフィックレンズを装着した状態で16:9や4:3などのコンテンツを視聴することを想定したモードだ。こちらは解像度圧縮が介入するので解像度劣化を伴う。

 なお、アスペクト比切換、アナモフィックモード切換の所要時間はほぼゼロ秒で、操作した瞬間に切り替わるので高速だ。

 このアナモフィックモード時において、DLA-X70Rでは、DLA-X7に対して改善されたポイントがある。


 X7では、3D映像を視聴する際にはアナモフィックモードが利用できなかったが、X70Rではこの制限が解除された。すなわち、X70Rでは、アナモフィックレンズを使用して3D映像が楽しめるようになったのだ。ただ、3D映像視聴時には台形補正による映像変形処理はキャンセルされてしまう点はX7と同じだ。

レンズメモリー機能

 アスペクト/投射制御関連の機能としてとても重要な機能が、DLA-X70Rを含む今期のDLA-Xシリーズ全モデルに新搭載されている。それは「レンズメモリー」機能だ。

 これは投射レンズのズーム、フォーカス、レンズシフトの状態を保存しておける機能だ。DLA-X70Rでは最大3つまでを記憶させておくことができる。かつてパナソニックのTH-AE3000(2008年モデル)に搭載されたことがあったが、AE3000の時代は4:3映像と16:9映像をスクリーン面に最大限に拡大投射するための手段として訴求されたが、現在では2.35:1のシネスコ映像と16:9映像の最大投射に応用するために用いることになる。

 映画視聴主体のユーザーならば、2.35:1の横に長いシネスコスクリーンを設置し、普段は映画映像をこのスクリーンにはまるように拡大投射する。そして、アニメやゲームなどの16:9映像の時にだけ、シネスコスクリーンに映像全体が映るようにやや拡大率を絞った投射状態を利用する。双方の投射レンズの状態をユーザーメモリに記録しておけば、それぞれの投射状態をリモコンで簡単に呼び出すことが出来るようになる。この機能は、今後、プロジェクタには必須となってくる機能となるかも知れない。

 画調モード(PICTURE MODE)はプリセットプログラムとして「FILM」「CINEMA」「ANIME」「NATURAL」「STAGE」「3D」「THX」の7つが用意される。このラインナップはDLA-X7と同一だ。切換所要時間はどのモードからどのモードへ切り換えるかでばらつきがあり、約3.5〜4.5秒程度で、あまり早くはない。切り替え先のモードによってはランプパワーの切換、絞りの変更、カラーフィルタの切換を伴うためか、かなり大きめの「カチン」という機械音が鳴る。この音を伴うときは、画調モードの切り替えは遅くなる傾向にあるようだ。

 メニュー構成は、DLA-X7と基本的に同一で、画質調整機能も大きく変わらない。調整機能や操作系の詳細は本連載のDLA-X7編も参照して欲しい。


ガンマカーブは12ポイントによる調整でカスタマイズが可能

 画質パラメータを1つ1つ調整するのではなく、あらかじめ用意された「カラープロファイル」「ガンマ」「色温度」のプリセット設定値を組み合わせることでオリジナルの画調モードが作り出せる画調カスタマイズ機能はDLA-X70Rにおいても搭載されている。「カラープロファイル」は、いわゆる色域モードの設定に相当するもの。「Vivid」「Adobe」など、一部のカラープロファイルでは広色域が選択される。「ガンマ」は、階調特性を決定づける画調パラメータで、「色温度」は、いわゆるホワイトバランスの設定パラメータだ。

 DLA-X70Rでは、コンテンツの種類に最適化されたこれらのプリセットプロファイルを自由に選んで組み合わせることで「カラープロファイル×ガンマ×色温度」の組み合わせで自在なユーザー画調を作り出すことが出来るのだ。

 「Internet Movie Database」のような映画情報データベースにアクセスして、これから視聴する映画ソフトの情報を調べて、「カラープロファイル」と「ガンマ」をKODAK向けかFUJIフィルム向けかを選び、再現したい映画館の色あいを「色温度」で設定する……という使い方が、DLA-X70Rを用いた“通”な映画の楽しみ方になるだろう。

 この機能はDLA-X70R/90Rの上位機にしか搭載されておらず、X30では利用出来ない。この機能をどの程度重視するかで「X30にするか、X70R以上にするか」の製品選びの方針が固まってくるはずだ。

 カスタマイズした結果は、ユーザーメモリ機能としてUSER1〜5の5個のユーザーメモリに保存が可能。ちなみに、DLA-X7のユーザーメモリは2個だったので、この部分は機能拡張が行なわれたことになる。このユーザーメモリは入力系統ごとに管理されておらず、5個のユーザーメモリはDLA-X70R全体で5個という管理方式になっている点に留意したい。USER1〜5の5つのユーザー画調モードへの切換は、リモコンの[USER]ボタンを押すことで順送り式に行なう事が出来る。

 なお、カラープロファイルとガンマ、色温度の解説は、別ページで紹介している

カラープロファイルと画質モードの組み合わせ仕様一覧

 地味ながら、DLA-X7よりも大きく改善されたのは、リモコンから3D立体視関連の操作ができるようになったところ。

 DLA-X7では、3D立体視のオン/オフ切換や3D立体視にまつわるカスタマイズがメニューに潜ってからでないとできないという、今思えばビックリするような仕様だったのだが、DLA-X70Rでは、3D立体視対応プロジェクタらしく、そうした操作をリモコンからダイレクトに操作できるようになった。


3D設定はリモコンの[3D SETTING]ボタンで呼び出せるようになった

 [3D FORMAT]ボタンは、「トップ・アンド・ボトム」「サイド・バイ・サイド」といった3Dモードを切り換えるもの。「フレームパッキング」への対応は「オート」設定をすることで自動認識される仕組みで、ユーザーの明示設定は行なえない。ここを「2D」設定にすると、3D立体視をキャンセル出来るはずなのだが、筆者の実験では、一度3Dで視聴を開始してしまうと2D表示には戻せなかった。

 [3D SETTING]ボタンは、3D立体関連の調整メニューウィンドウを開くためのもの。DLA-X7ではできなかった「視差調整」などが行なえる。ユニークなのは「クロストークキャンセル」という調整項目だ。3D映像では、明暗差の強い箇所でクロストーク現象(二重像)が目立ちやすくなる傾向がある。「クロストークキャンセル」機能は、これを映像エンジン側で検出して、画質調整的なアプローチで意図的に低減させるというものになる。その効き具合として、ユーザーが、白、あるいはR、G、Bの原色単位での強弱補正を掛けられる仕組みになっており、万能な設定を追い求めるよりは、視聴するソフトごとに微調整をしてやる、といった感じの使い方が正しいと思われる。



■ 画質チェック 〜e-shiftテクノロジーによる疑似4K2K投射の実力は?

 映像パネルにはJVC独自の反射型液晶パネル「D-ILA」(Directdrive Image Light Amplifier)を採用する。パネルは0.7型のフルHD解像度のもので製造プロセス的にはこの2年ほど変わっていない。しかし、DLA-X70Rでは、このパネルに「e-shift」デバイスと呼ばれる時分割光学系を組み合わせることで、疑似4K2K映像の出力を実現している。

 映像パネルとしてのD-ILAパネルはフルHDの1,920×1,080ドット解像度なのだが、これを120Hz倍速駆動し、時分割で映像を斜め45度に交互にずらして投射することにより、疑似的に3,840×2,160ドット相当程度の映像を投射するのが、「4K e-shift」テクノロジーになる。

4K e-shiftテクノロジーの動作概念 4K e-shiftの効果の概念図

 より具体的にいうと、まず、映像エンジン側で入力映像に対して超解像処理により高周波成分を算術的に復元し、これをさらに2枚分のフルHD(1,920×1,080ドット)映像に展開する処理を行う。投射系では、生成された二枚の映像のうち、最初の1/120秒の間に映像"A"を投射し、次の1/120秒で同様にもう一枚のフルHDの映像"B"を投射し、以後、これを繰り返していく。この際、映像"B"は半ドット分斜め45度にずらして投射する。こうすることで1/4ピクセル分の解像度情報を描画できることになるので、3,840×2,160ドット相当の映像が出力したことになる……というのがJVCの主張になる。

 JVCは“疑似”という言葉は避けているが、原理的に見るとやはり「疑似」ということになる。

 数理的に4K2K(3,840×2,160ドット)はフルHD(1,920×1,080ドット)に対して4倍の解像度がなくてはならないが、このe-shiftの方法では前述の原理解説を見ても分かるように1,920×1,080ドットの2回分の描画しか行なっていない。ひいき目に見ても、1,920×1080ドットの両辺に√2を掛けた「2,715*1,527ドット」相当の解像度にしかならないのだ。

 最初の映像"A"の描画と続く映像"B"の描画ではほぼ全域で重複描画が行なわれるため、映像"A"と映像"B"のそれぞれの重複描画箇所に配慮した誤差拡散補正が盛り込まれることになる。重複描画時に、ちゃんとこの誤差拡散のつじつまが合う箇所では解像度は向上するが、そうでない箇所では輝度あるいは色情報の正確性が低下する(誤差が出る)。インターレース描画とは違って、重複描画されるという部分が、このe-shiftテクノロジーの厄介な部分なのである。

 実際に投射映像を見てみると、e-shift有効時の疑似4K2K表示では斜め線のジャギーが劇的に低減されて滑らかになることが分かる。これが疑似4K2Kの恩恵が最大限に享受できるケースだ。

全体像 e-shiftオフ(CMD=Mode1) e-shiftオン(CMD=オフ)。ジャギーが低減され、画素格子筋も緩和される
全体像 e-shiftオフ(CMD=Mode1) e-shiftオン(CMD=オフ)

 一方で、弊害もある。前述したように重複描画による誤差拡散のワーストケースが生じるケースだ。例えば、ドット単位で描かれるテクスチャ模様などはボヤっとしてしまう。わかりやすい例を挙げるとすれば、「画」の字の"田"の部分の穴は、e-shift有効時はぼやけてしまうのだ。

 ただし、ぼやけているのは投射されるドットの形状だけで、映像としての解像度の低下はほとんど起きていない。

 逆に言うと、いわゆる一般的な超解像処理のような、積極的な解像度強化は良くも悪くもほとんど行なわれていないこともよく分かる。

 つまり、筆者なりの見解を言わせてもらうと、「4K e-shiftテクノロジーは、テクスチャの精細度の向上をあまり行なわず、ジャギー低減に特化した画質改善技術」というイメージだ。

e-shiftオフ(CMD=Mode1) e-shiftオン(CMD=オフ)。ジャギーは低減されるがエッジもボケる

 シャープは、4原色パネルのQUATTRONでジャギー低減にサブピクセルを動員する「フルハイプラス」技術を現行AQUOSで実用化しており、東芝も「サブピクセルシフト技術ベースの複数フレーム超解像技術」を発表している。DLA-X70Rの4K e-shiftテクノロジーはアプローチこそ違うが、同系の技術だといえる。

 視覚体験としては、e-shift有効時の映像はアナログ感の漂う描画になるので悪くはないが、クリスピーなドット感は乏しくなる。両者に解像度の優劣はほとんどないので、「好みの問題」という感じはする。

 ただ、X70Rでは、ユーザーの「好み」によってe-shift機能をオン/オフすることが出来ないのが残念だ。e-shift機能は、基本的に2D映像の投射映像に対して強制的に効いてしまうのである。

 ただし、実は裏技的にe-shift機能をキャンセルする方法はある。それは、黒挿入が介入するCLEAR MOTION DRIVE(CMD)機能の「Mode1」「Mode2」を利用するテクニックだ。1/120秒単位で黒挿入が介入するので若干輝度は低下するが、この黒挿入によってe-shiftによる45度ずらし投射が事実上キャンセルされるのだ。ドット感を重視した表示を求めたいときにはあえてこのCMDモードを利用するのもいいかもしれない。ただ、次期モデルでは、ユーザーの意志でe-shift機能をオン/オフさせる手立てを設けてほしいものだ。

 ところで、3D立体視モード時にも、e-shift機能は強制解除されてしまう。つまり、疑似4K2K表示の低ジャギー画質で3D立体視を楽しむことができないのだ。e-shift採用第1号機と言うこともあってか、機能全体として荒削りな部分が残る。今後の洗練に期待したいものだ。

 続いて、光学的な画質に目を向けてみると、さすがに定評のある投射レンズを有するだけあり、画素の描画品質は良好だ。画面中央でフォーカスを合わせれば、ほぼ画面全域で合ってくれるし、レンズ解像力の高さと相まって、1ドット1ドットがとてもクリアに見える。これは近年のJVC機に共通する高性能だといえる。

 ただ、前述のe-shift機能が有効になっていると、ドットがボケるので「フォーカスが合わせにくい」という声もあるだろう。その際は、前述した裏技を使ってe-shift機能をオフ(CMD=Mode1,Mode2)にしてからフォーカス合わせを行なうとやりやすい。

 輝度は1,200ルーメン。先代DLA-X7と光源ランプが変わらないのに輝度スペックは若干下がることとなった。これは、おそらくe-shift機構の介入が影響していると思われる。ただ、1,200ルーメンは、ホームシアター機としては十分すぎる明るさであると同時に、3D立体視にも必要十分な輝度スペックだと言える。実際、「ランプパワー=高」設定の1,200ルーメンモードで2D映像を視聴している限りは、蛍光灯照明下でもかなり見ることができてしまう。

 コントラストは8万:1。X7が7万:1だったのでこちらは向上している。これは光学系の改良が主な理由として説明されているが、詳細は不明だ。おそらく、輝度スペックが下がったことで黒レベルが引き下がったこと、そしてD-ILAパネルの製造精度が上がり、より平面性が向上して迷光が抑えられたことが要因と思われる。

 ちなみに、この8万:1というコントラスト値は、動的絞り機構を用いないネイティブコントラストの値なので、同クラスの比較でいうと、見かけ上の数値はソニーのVPL-VWシリーズの半分程度だが、JVCの方が安定した黒表現になる。逆に時間方向のハイダイナミックレンジ感はVPL-VWの方が優勢になる。

 投射画素を見る限り、色収差による色ズレも最低限だ。レンズシフトを強めに利用すると画面の一部の領域で若干の色ズレが起こるが、DLA-X70Rでは待望の「ピクセルアジャスト機能」によってこれをかなり抑え込むことができるようになった。

カタログやWebサイトでは「ピクセルアジャスト機能」となっているが、実機では「画素調整」の「ファイン」設定がこれに相当する。余談だがPR上の名称と実際の機能名はきちんと揃えてほしい (10×10マスではなく)11×11ポイントでの調整が可能

 JVCの従来機でも1ドット単位のズレ補正は行なえたが、調整幅が大ざっぱすぎてほとんど使い物にならなかった。これに対して、今回のピクセルアジャスト機能は、ソニーのVPL-VWシリーズが先行して搭載していた、画像処理としての1ドット未満の色ズレ調整機能を、そのまま持ってきたようなものになる。

 後発なだけあって、VPL-VWシリーズの同等機能を凌ぐ細かさで調整出来るのが特徴で、調整単位は1ピクセルの1/16精度、調整範囲は画面全体を11×11に分割した121領域に対して個別に設定できる。追い込めは追い込むほど色ズレが少なくできるため、見返りが大きい。おそらく調整マニアには大興奮なフィーチャーで、筆者も夢中になって調整してしまった。ちなみに、このピクセルアジャスト機能が搭載されるのはDLA-X70R/X90Rのみで、下位モデルのDLA-X30には搭載されない。上位機ならではの特権的機能だ。

画素調整オフ。e-shiftオフ 画素調整オン。e-shiftオフ 画素調整オン。e-shiftオン

 発色は、DLA-X7で完成されたナチュラルな特性をそのまま受け継いだ格好で文句なし。プリセット画調モードを「フィルム」「シネマ」にしたときに選べるカラープロファイル「シネマ1」などは水銀系ランプとは異質な深みと鋭さのある発色をする。赤の純度も高く、緑や青にも派手ではない艶やかさがある。DCI準拠の色温度モードである「Xenon2」も赤すぎず青すぎずのキセノンランプの色あいを絶妙に再現しており、相変わらず素晴らしい。

 人肌は水銀系ランプ特有のクセである黄味に寄る感じもなく、適度に暖かみのある透明感のある発色になっている。色温度モード「Xenon2」は、人肌の再現性にもリアリティを感じるのでお勧めだ。

 色深度も深めで、二色混合グラデーションも、アナログ感に満ちあふれた滑らかな描画になる。

 階調再現性もプロジェクタ画質としてはかなり究極形に近いものになっている。映像中に明部と暗部が同居していても、その暗部はほとんど明部に引っ張られずに暗部としての沈み込みを維持できている。部屋が暗室に近ければ、最暗部は限りなく部屋の暗さに近づく。お見事だ。最暗部付近の色味もかなり正確に描き出してくれるので、暗い映像でも情報量が多く立体感もある。

ランプパワー=標準 ランプパワー=高

 3Dでの画質チェックはCGアニメ映画「ブルー」を視聴した。

 「ランプパワー=高」の1,200ルーメンモードならば、3D映像の明るさに大きな不満はなし。

 それよりも、なにより驚かされたのが3Dメガネを通して見た映像なのに、発色が艶やかで、階調が鈍らない点だ。純色の鋭さはもちろんのこと、中間色のアナログ感が2D時からほとんど変わらず、メガネを掛けている行為自体を忘れられれば、2Dの発色と階調をそのまま見ているような気になれる。「ブルー」は南国の鳥たちが活躍する動物アドベンチャーものなので、DLA-X70Rの鋭い純色の発色との相性も良かった。

 画調モードは「3D」が一番しっくりと来る。DLA-X7のときと同様、「3D」モードのデフォルトの色温度は8500Kと高めで、やや色あいに冷たさを感じるので、実写系3D映画などは7000〜7500K当たりにまで下げるといい。6000K台に下げると3Dメガネの特性かやや黄味の強さが出てくるのであまり下げすぎないのがポイントだ。

 3D画質と言えばクロストーク現象(二重像)の多い少ないがキモになってくるが、これは先代DLA-X7に引き続き、DLA-X70Rでも優秀だ。クロストークテストに用いている「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターシーンのトンネルの電灯の二重映りはほとんど見えない。ただ、様々なシーンを注意深く観察すると、ある1つの傾向が見えてくる。

 一般にアクティブシャッターグラス方式の3D立体視では厳しいとされる「暗い背景に対する明るい主体像の二重像」についてはDLA-X70Rはとても優秀な結果を示すのだが、逆に「明るい背景に対する暗い主体像の二重像」はやや目立つのだ。前者の良好ケースとは、まさに「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターシーンのことで、後者のワーストケースは例えば「明るい青空に重なるように走る黒い電線」のような表現になる。このワーストケースの二重像について、「操作性チェック」のところで触れた「クロストークキャンセル」調整で低減できるかとおもって色々いじってみたのだがうまくいかず。ここは完成度が増したDLA-Xシリーズの3D画質に「唯一残された課題」と言ったところだろうか。

 さらに、「アンチャーテッド・砂漠に眠るアトランティス」などの最近作のPS3用3D立体視対応ゲームをプレイしててみたが、3D映画とは異なり3Dゲーム映像では全般的にクロストークが強くなった。

 1080/24pの3D映像は実質的には48Hz相当の表示レスポンスがあれば表示出来るわけで、その意味では120Hz倍速駆動のDLA-X70RのD-ILAパネルにとっては余裕がある。しかし、ゲームの3D映像は720/60p。これは120Hz相当で表示されることになるため、D-ILAパネルのスペック応答速度に対して余裕がなくなってくる。この余裕のなさがゲーム映像でのクロストークの増加に繋がってきているのかも知れない。

 ところで、DLA-X70Rには、先代X7にはなかった「2D→3D変換」機能が搭載されている。搭載される2D→3D変換機能は、JVCが発売している業務用2D→3D変換イメージプロセッサ「IF-2D3D1」の機能を凝縮したものだそうだ。IF-2D3D1については、'11年のCES 2011レポートでも紹介しているので、具体的な機能やその優位性についてはそちらを参照して欲しい。

 実際に変換された3D映像を見てみたが、動きが連続的でなだらかな映像や、人の頬などのような陰影のなだらかなものについては、リアルな立体感が感じられるが、映像全体としてのパノラマ感やシーンの空間としての広がりのようなものはそれほど強くは感じられない。あくまで簡易的な変換のような手応えだ。

 放送としての3D番組が絶対的に不足している3Dテレビ製品とは違い、プロジェクタ製品の場合は3D立体視を行なうために前もって3Dコンテンツを用意してわざわざ視聴する……という活用スタイルになるので、個人的には2D→3D変換機能の出番は少ないと考える。3D版の存在しない昔の映像ソフトを楽しむ向きには結構遊べる機能ではあるが。

 さて、DLA-X70Rには、CLEAR MOTION DRIVE(CMD)と命名された倍速駆動技術が搭載される。

CMD機能は、オンとオフが比較できるデモモードが利用できる

 DLA-X70RのCMDはDLA-X7と同じく、MODE1、2、3、4の4モードと「Film Motion」と名付けられた毎秒60コマ映像にテレシネ変換された映像を本来の毎秒24コマで表示するモードが選べる。Mode1、2はそれぞれ黒挿入の弱・強設定、Mode3、4はそれぞれ補間フレームの弱・強設定に相当するものだ。なお、X7と同様に補間フレーム挿入と黒挿入の両用ができない。

 X7のCMDで気になったMODE1、2におけるカラーブレーキング(色割れ)現象がX70Rでも起こるかどうか試してみたが、やはり出てしまっていた。筆者に限って言えば弱、強のいずれの設定においても見える。

 この色割れをどうしても見てみたいという人は、CMD=Mode1ないしはMode2にて、「画素調整」機能利用時に出現する「黒背景の白グリッド画面」を出して、これを眼球を動かすように(目を回すように)見てみると分かりやすい。一方でCMD=オフ、あるいはMode3、4ではこれが見えなくなるはずだ。このアーティファクトは、D-ILA画素のデジタル駆動表示と黒挿入の相性によるものだと推察される。上でe-shiftをキャンセルするのにCMD=Mode1、2を利用する裏技を紹介したが、この黒挿入で色割れが見えてしまう人には、この裏技は使えないことになる。

 続いて、補間フレーム挿入の品質だが、「ダークナイト」のチャプター1およびチャプター9のビル群の空撮シーンで確認してみた限りでは、画面の動きはスムーズになるものの、Mode3、4いずれにおいてもビルの窓枠が画面内郭所で振動してしまうアーティファクトを確認した。三菱のLVP-MC7800Dのように、補間フレームの支配率をユーザーカスタマイズ出来る仕組みを設けるか、あるいは動きベクトルの検索範囲をより広げると言った改善が必要だと思われる。

「ピクチャートーン」機能。先代では「フィルムトーン」機能と呼ばれていたもの

 画調モード「フィルム」の時にだけ利用出来る、フィルム特有の階調を損なわずに出力ゲインを調整できる「ピクチャートーン」も搭載。X7では「フィルムトーン」と呼ばれていた機能だ。なお、取扱説明書には「画調モード=フィルム、ガンマ=フィルム1、2、3、4としたときにしか設定できない」と記載されているが、実際にはどのモードにおいても調整は出来る。色温度やガンマの調整に似ているが、赤、緑、青、白(赤緑青、全体に掛かる)の各色に対して露光のアンダー/オーバーの具合を調整することができる。まぁ、通常ユースでは色温度モードとガンマモードを組み合わせるだけでほとんど事足りるので、よほどこだわりたいときにしかお世話になりそうにない機能だ。

 この他、暗部と明部の階調出力ゲインを、ガンマとは独立して暗部と明部に対して局所的に調整できる「暗部・明部補正」機能、機器全体のグローバルな階調持ち上げ設定を行なう「黒レベル」設定機能、より締まった黒を出すためだけに存在する固定絞り機構「レンズアパーチャー」機能に関してはDLA-X7から目立った仕様変更も機能拡張は無い。機能解説は本連載のDLA-X7編でも行なっているが、基本的にはこの機能を使わなくてもいいと思う。

 また、画調モードについても、ユーザーが選択する「カラープロファイル×ガンマ×色温度」の組み合わせで、膨大なパターンが生成できるので、本稿では7種のプリセット画調モードのデフォルト状態の写真を参考までに示すだけとする。DLA-X70Rの画調を決定しうる「カラープロファイル」「ガンマ」「色温度」のプリセットプロファイルについてのインプレッションと活用方針については別ページにまとめているのでそちらも参照してほしい。

フィルム シネマ アニメ
ナチュラル ステージ
3D THX

・表示遅延について

 今回も0.2フレーム(3ms)の表示遅延性能を誇る東芝REGZA 26ZP2をリファレンスに用いて表示遅延を計測した。

 計測の結果、DLA-X70Rでは、画質モードによらず、2D映像では26ZP2に対して約5フレーム(約84ms)遅延することが判明。

 ただし、補間フレーム挿入機能であるCMDをオフ設定にすると約4フレーム(約67ms)となり、1フレーム分短縮する。これはユーザーは覚えておくといい。

全てのプリセット画調モードでは約5フレームの遅延 CMDオフにすると表示遅延1フレーム短縮して約4フレームになる

 3D立体視時の表示遅延は、各種高画質ロジックがバイパスされるせいか、さらに表示遅延短縮し約2フレーム(約34ms)となる。

 2D→3D変換時はCMDだけがオフになり、その他の高画質ロジックは効いてくるため、表示遅延は約4フレーム(約67ms)となった。

3D立体視時は表示遅延は約2フレームに短縮 2D→3D変換時の表示遅延は約4フレーム

 最近のテレビ製品と比べるとプロジェクタ製品は表示遅延問題に対しての意識は低い傾向がある。JVC機にかかわらず、全体的に改善方向に向かって欲しいものだ。特にDLA-Xシリーズには、プリセット画調モードには「アニメ」というマニアックなモードがあるので、次期モデルでは、より低遅延を実現する「ゲーム」モードを新設してはどうか。


■ “4K”の価値をどう見るか。VW95に対するアドバンテージも

 「4K2K投射」というキーワードは、2011年後半の映像機器において実にキャッチーな存在となった。プロジェクタ関連製品としては、本連載では未評価のソニー「VPL-VW1000ES」と今回紹介したJVCの「DLA-X70R/X90R」が4K対応となるが、両者は機能、価格帯、位置付けが微妙に異なる。

 VPL-VW1000ESは4,096×2,160ドットのリアル4K2Kパネルを採用し、近未来的には4K2Kのリアル入力に対応するリアル4K2Kプロジェクタなのに対し、DLA-X70R/X90RはフルHDパネルを用いての時分割アプローチの疑似4K2K投射であり、フルHD映像の高品位投射手段が主たる目的となっている。

 "疑似"は、"リアル"から見下されがちなのは世の常だが、しかし、4K2Kコンテンツがほぼ皆無という現状では、VPL-X70R/X90Rのアプローチのほうが現実的ともいえる。実際、VW1000ESとDLA-X70Rとでは本体価格も実勢価格にして2倍の開きがあり(VW1000ESが約150万円前後、DLA-X70Rが70万円台後半)、VW1000ESはやや突き抜けたハイエンド感が漂っている。結局のところ、「4K対応プロジェクタを選ぶ」ということについては、「フルHDコンテンツをアップコンバート4K2K表示で見る」ということに、どれだけ金額をつぎ込めるかと言うことにかかってくるわけだ。

 世間的には、DLA-X70Rのライバルは、VPL-VW95ESといえるかもしれない。VW95ES(実勢価格約50万円台)とX70Rとの価格差は約20万円。「4K2K対応の分だけX70Rの方が高い」と考えると、両者のどちらかで悩んだ場合に方針が決めやすいだろう。

 20万円の価格差と「4K2K対応」という要素を省いて考えた場合は、両者の実力は拮抗する。ただ、個人的には、2D映像、3D映像の双方において発色の美しさと階調の正確性と絶対的なコントラスト感に関していうとDLA-X70Rの方が上だと感じる。また、輝度性能がDLA-X70Rの方が明るい分、使い方の幅も広がるのがいい。

 ただし、3D画質に関して、クロストークの少なさについてはVPL-VW95ESの方が上だ。昨年の「VPL-VW90ES対DLA-X7」でX7の方がクロストークが少なかったのだが、今年は逆転されたと感じる。この差は、VPL-VW95ESの240Hz駆動対応の4倍速駆動SXRDパネルの優位性によって生まれたものだと考える。JVCの次の一手を求めるとしたらこの部分だろう。

(2012年 1月 6日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。