西川善司の大画面☆マニア
第179回
4K AQUOS登場。明るい大画面の「LC-60UD1」
AQUOS正常進化形。モスアイと上質なスピーカーも
(2013/8/20 10:00)
シャープは4Kテレビ製品としては、AQUOSとは別ブランドを立ち上げ、2013年2月に60型のICC PURIOS「LC-60HQ10」を市場投入している。今夏発売された「LC-60UD1」はAQUOSブランドの製品で、シャープによれば、ICC PURIOSとは別ラインの製品だ。
筆者は、以前、ICC PURIOSを評価した際、専用設計部位とオーバースペックな映像エンジンの搭載、受注生産モデル、そして260万円超という価格設定から「車で言えばスーパーカー的な製品」と評したが、今回のLC-60UD1は長く親しまれてきたAQUOSブランドの製品であり、これまでのAQUOS製品の延長線上に位置する製品だ。またあえて車で言えば「量産車としてのハイスペックモデル」という感じだろうか。
AQUOS UD1シリーズは、6月に70型の「LC-70UD1」が発売されているが、今回採り上げる60型の「LC-60UD1」も8月に入って販売開始。AQUOSの4Kラインナップも強化されてきた。今回はLC-60UD1の実力を探ることとしたい。
設置性チェック~明るいリビングに適したモスアイパネル
ディスプレイ部とスタンド部を連続した曲面で繋いだような独創的なデザインのICC PURIOSとは異なり、LC-60UD1はスクウェア型スタンドの上にディスプレイ部が合体しているオーソドックスなデザインを採用している。外観は、普通の60インチ液晶テレビと映るはずだ。
外形寸法は、ディスプレイ部が137.8×11.4×82.9mm(幅×奥行き×高さ)、スタンド込みで137.8×38.3×87.6cmで、60インチという画面サイズからするとずいぶんとすっきりとまとまっている印象だ。4~5年前の60型AQUOSは、横幅は144cm以上はあったのでずいぶんとコンパクトになったものだ。シャープは、このLC-60UD1の設置性に関して「2006年当時の52型相当の設置スペースで置ける60型テレビ」とコメントしている。
このスリム感の実現に大きく貢献しているのは、こだわりの狭額縁デザインだ。筆者の実測によれば、左右の額縁は約19mm、上が約18mm、下はスピーカの底辺までを含んで約45mmとなっていた。
重量はディスプレイ部だけで37kg。スタンドを含んで45kgとなかなかの重量。今回、部屋から部屋への移動は成人男性2人で行なえたが、階上へ上げたりするのは3人以上必要と思われる。
これだけの重さと大画面サイズのLC-60UD1ではあるが、スタンド部は左右の首振りに対応する。可動範囲は左右±20度の40度だ。なお、70型のLC-70UD1は首振り機構には対応していない。
LC-60UD1を設置してまず気が付くのは、周囲の情景の表示面への映り込みが極めて少ないという点。
この特性は、昨年発表になった「モスアイ」テクノロジーを採用したことの恩恵によるものだ。これを液晶パネルに組み合わせたものをシャープは「モスアイパネル」と命名している。
このモスアイとは、具体的にはナノメートルスケールの微細突起構造を持つフィルタのことだ。可視光波長に近い微細凹凸を形成することで、やってきた外光を拡散反射せずに吸収浸透させる(実際には界面付近で反射するが入射方向にはほとんど反射しない)構造がモスアイの秘密だ。内側からの出射光にはほとんど影響を与えない特性も両立されていることから、液晶パネルへの応用が実践されたのだ。
蛍光灯照明主体の明るいリビング空間を好む日本においては、この映り込みの少ない表示特性は、とても歓迎されることだろう。
映り込みの少なさは、AQUOS UD1シリーズの大きな特徴といえる。一方、普段の使用で気を付けなければならないのは、指紋が付きやすく、そして一度付くとそれが取りにくいというところ。
そんな特性を持つAQUOS UD1シリーズのためにシャープは、このモスアイパネルのための掃除・メンテナンス用に専用のクリーニングキット「CA330CK」を発売している。価格は2,990円。
洗浄用クリーニング液、仕上げ用クリーニング液 クリーニングクロス3枚をセットにしたたもの。AQUOS UD1シリーズには専用クリーニングクロスが付属するがクリーニング液は付属しない。そのため、このCA330CKを本体購入時に1セット入手しておいた方がいいだろう。ちなみに、専用クリーニングクロスのみも購入可能で、こちらはCA300WH1(24×24cm)、CA300WH2(40×30cm)の2種類が設定されている。
クリーニングの仕方については、シャープがハウツービデオを公開している。それだけ、メンテナンスに気を遣う製品と言うことなのかも知れない。幼児がいる家庭などでは、子供がテレビの表示面をベタベタ触られないように注意喚起する必要があるかもしれない。
AQUOSラインナップのハイエンド製品と言うことでLC-60UD1はサウンド機能にも力が入っている。
現在の薄型テレビ製品では、スピーカーユニットはディスプレイ部下辺に下向きに設置するのが主流だ。これは薄型デザイン実現のための妥協の産物であり、音質の観点からすれば芳しいことではなかった。
最近では、こうした音質軽視の動向に反証を訴えるべく、各メーカーの一部のハイエンドモデルでは、スピーカー開口部をユーザー側に向けるデザインを採用することがしばしばある。本連載で取り上げたソニーKD-65X9200Aもそうだったが、LC-60UD1でも、スピーカーをディスプレイ下部に配置するアンダースピーカーデザインを採用してはいるが、サブウーファー以外のメインスピーカーを全てユーザー側に向けて実装している。
ユーザー側に向いているのは、左右の2.0cm系のツイーターユニットと3cm×15cmの矩形ミッドレンジユニットの4スピーカーだ。低音は定位感があまり重要ではなくなるため、サブウーファーユニットとして4×7cmのユニットを本体背面側に配している。
総出力35W(10W+10W+15W)の3ウェイ6スピーカーシステムの音質はなかなかのもので、高音の輪郭が鋭く、低音にもパワー感がある。音像バランスも良好だ。若干、定位感が下寄りの実感があるが、テレビ内蔵のスピーカーの音質としては上質な部類に属すると思う。ただ、サラウンドモードは技巧的すぎて音楽視聴には適さないという印象。常用は通常のステレオモードのほうか印象がいい。
定格消費電力は270W。年間消費電力量は242kWh/年。同サイズのフルHDよりはだいぶ消費電力が高いが、同サイズの他社製4Kテレビとの比較ではほぼ同レベルだ。ここ最近の4Kテレビでは、同サイズのフルHDよりも約30%は消費電力が大きくなるようだ。
接続性チェック~HDMIによる4K/30p入力対応。アナログPC入力も装備
接続端子は、正面向かって左側の側面と背面側に集約されている。HDMI入力端子は4系統あるが、その全てが側面側にある。全てが3D立体視に対応するが、ARC(オーディオリターンチャンネル)はHDMI1のみサポート。HDMIによる4K(3,840×2,160ドット)接続は、現状のHDMI規格の制限から30Hz(30fps)までの対応となる。x.v.Colorには未対応だ。
アナログビデオ入力は背面側に1系統のみ。D5入力と、コンポジットビデオ入力があるが、これらは同時には利用できない排他仕様となっている。ステレオ音声入力も1系統。PC入力は、D-Sub15ピンのアナログRGB入力端子を配備。今時搭載している薄型テレビは少数派だが、ノートPCなどではいまだ搭載製品も多いのであれば便利に使えることだろう。
PCと本機の接続にはもちろんHDMI端子も利用が出来る。音声をHDMI経由で伝送できない一部のデスクトップPCなどのために、ステレオミニジャック端子の「音声入力6/入力4音声入力端子」も用意されており、HDMI4専用のアナログ音声入力として使える。
HDMI階調レベルの手動設定項目は無く、自動認識にしか対応しない。ただし、PlayStation 3やPC(VAIO F)と接続実験をしてみた限りでは、HDMI階調レベルの自動認識は正しく行なわれていた。
ゲーム機やPCとの接続時に気になる、映像外周がクリップアウトされてしまうオーバースキャンの解除設定(アンダースキャン設定)は「画面サイズ」設定から「Dot by Dot/アンダースキャン」を選択すればOKだ。
USB端子は、側面にあるUSB1、背面に2つがUSB2、USB3となっており、USB3が録画専用の割り当てとなっている。USB1、2はデジタル写真やMPEG-4動画、MP3楽曲が記録されたUSBメモリを本機で使用するために利用する。
この他、光デジタル音声出力端子や、ネットワーク接続用のEthernet、ヘッドフォン出力などを装備する。無線LAN機能も内蔵しており、対応規格はIEEE 802.11a/b/g/n。
操作性~充実の2画面機能。受け身姿勢で使えるネット関連機能
リモコンはオーソドックスなバー形状タイプで、使用頻度の高いチャンネル切換用の数字ボタンは白地に大きな数字が刻印してあり、暗がりでも見やすい。下部にはHDMI CECによるレコーダ機器操作用の録再制御ボタンが並ぶ。
リモコン自体の操作性は良好で、メニューのグラフィックスやアニメーションはスムーズも近代的だ。
使っていて感心したのは「裏番組表」で、現在、他チャンネルで放送している番組を、放送内容の静止画サムネイルと番組名を一覧表示してくれるのだ。電子番組表の文字情報だけでは分からない、ライブ感が伝わってくるので「テレビをザッピングして見る派」の人にはうれしい機能だといえる。
一方で、設定メニュー関連の操作レスポンスはややもっさりしており、GUIの表面は格好良くはなっているのだが、メニュー構成自体は昔のAQUOSから変化はなく、縦方向に長くて古くさいところもある。画面のかなり広い領域を縦に長い設定メニューが占有することもあり、この辺りはもう少し近代化と高速化を望みたい。
また、何かのメニューアイテムを選択してから、それが機能するまでの待ち時間が長いのも気になった。たとえばYouTubeメニューを選択してYouTubeのアプリが起動するまで、約20秒もかかる。今後、ユーザーはますますスマートフォンの軽快な操作レスポンスに慣れてくるはずで、テレビ製品全体に言えることだが、こうしたUI部分の高速化や使いやすさの改善は急務と考える。
リモコンの電源オン操作を行なってから、地デジ放送が表示されるまでの待ち時間は約6.5秒。最近では標準的な早さといったところ。地デジ放送のチャンネル切換は約3.0秒。こちらも平均的な早さだ。
HDMIから別のHDMIへの切換所要時間は約7.0秒。これは最近の機種としてはかなり遅い部類になる。
プリセット画調モードの切り替えはリモコン下部の蓋を開けたところにある[画質切換(AVポジション)]ボタンを押して選択。切換元と切換先の組み合わせによって切換所要時間は異なり、早いもので約1.5秒、遅いものだと約3.0秒掛かる。
アスペクトモードの切換はメニュー操作から「画面サイズ」設定を変更して行なう。操作所要時間はほぼゼロ秒。アスペクトモードは他社製品と比べると非常に絞ってある感じで「ノーマル」「フル」「Dot by Dot/アンダースキャン」の3つのみ。なお、「フル」は実質的にはオーバースキャンモードに相当する。
さて、シャープのAQUOSと言えば、かなり最初期のモデルから2画面モードを搭載していたことが特徴だった。最新のLC-60UD1も、2画面モードに気合が入っており、表示モードとして「ピクチャー・イン・ピクチャー」「サイド・バイ・サイド」の両方に対応している。子画面の大きさも自在に変更が可能で、かなり凝った作りとなっている。
2画面の組み合わせの自由度も高く、HDMI同士などの外部入力同士以外が選べない以外は「デジタル放送同士」はもちろん、「デジタル放送」「HDD録画コンテンツ」「外部入力」の自由な2つの組み合わせでも許容される。Webブラウザとデジタル放送の2画面モードももちろんOKだ。
実際に使ってみると、さすがは4K映像パネル、2画面モードとなった小さな画面でもとても解像感が高い。60インチという大画面サイズも相まって均等サイズの2画面でも普通に見られてしまう。スピーカー側からは「♪」マークが付いた操作対象画面の音声しか出力されないが、ヘッドフォンを用いることでもう一方の画面の音声を聞くことは出来る。どうにもならないチャンネル競争になったときには、この機能を活用するといいかもしれない。
さて、LC-60UD1は、最近流行のスマートテレビ的な機能も充実している。
テレビに、Webサイトが見られるWebブラウザを付けたり、ネットワークベースのVOD(ビデオオンデマンド)サービスに対応したりしても、ユーザーはテレビ放送を見ること以上の面倒な操作をテレビに対して試みようとしない。そこで、LC-60UD1のネットワーク機能では、テレビ放送視聴に関連したネットワーク機能を取り揃えることにしたのだ。
よくあるのが、テレビを見ていて、その内容に関連したキーワードの検索だ。そんな状況になったら[ホーム]ボタンを押して出てくる[スマートサーチ」を選択すればいい。すると右側に、電子番組表からピックアップしたと思われる想定検索キーワードが並んでいるので、出演者等の「ありがちな」ワード検索であれば、ここから選択しての迅速なネット検索が行える。
今やテレビ上の使いにくいリモコン操作ベースのソフトウェアキーボードによる文字入力をするくらいならば、手元のスマートフォンでネット検索をすることだろう。しかし、並んだキーワード候補を選ぶだけですぐ検索できるのであれば、LC-60UD1のこの機能を使うはずだ。
もう一つ、LC-60UD1のネットワーク機能は、勝手にバックグラウンドで色々な情報を取ってきておいてくれる。これも、地味ながらなかなか便利で楽しい機能だと言える。
例えば、他のAQUOSユーザーが今何を見ているかを示す「AQUOS視聴ランキング」を表示してくれたり、TSUTAYA TVやT's TVの人気コンテンツランキング、現在と明日の天気も知ることもできる。
決して、仰々しい高機能群ではないが、ユーザー側としては、ほとんど面倒なリモコン操作をすることもなく、ネット上の情報を興味ある形で教えてくれるのはテレビの前に座るユーザーの嗜好と相性が良いと思う。
また、ネットを繋いでいないと、ホームメニューに「ネットワークに接続されていません」というメッセージが各機能ブロックで出てくるので、なにげにこのメッセージも「ネットワークに繋がなきゃ」という気にさせてくれる。
画質チェック~優秀な輝度均一性。「マルチ画素=しない」が選択可能に
液晶パネルの配向モードはVA(垂直配向)。製造方式はUV2Aで、リブレス構造となっている。
画素を拡大して見てみると整然とした縦ストライプ状に青緑赤(BGR)サブピクセルが並んでおり、格子筋もほとんど見えない。UV2Aらしい特徴だ。
パネル解像度が3,840×2,160ドットという超解像度パネルであること、そしてUV2A特有の格子筋が極細という特性の相乗効果で、かなり近づいて見ても画素の粒状感を感じない。
そして画素駆動関連に関して、LC-60UD1には1つ特徴的な機能が備わっているので紹介しておきたい。それは「プロ設定」の「マルチ画素」設定だ。デフォルトでは「マルチ画素=する」で、この状態では視野角が広くなる。従来の一般的なAQUOSでは、この「マルチ画素=する」設定が固定だったのだが、今回、LC-60UD1で「マルチ画素=しない」設定が出来るようになったのだ。
「しない」設定は視野角が若干狭くなる設定で、一見しただけではなんのための機能しかわからないが、実は、これ、筆者が4年ほど前からリクエストしていた機能だったりする。
AQUOSは自社生産のVA型液晶パネルを採用している関係で、視野角的にIPS型液晶パネルに若干の引け目があった。これをカバーするためにシャープはVA液晶のサブピクセルをマルチドメイン化し、斜めからの視線に向けて正しい階調を表示できるような補助的なサブピクセル駆動を実践していた。
しかし、このサブピクセル駆動の弊害で、1ドット幅の太さの垂直線、あるいは水平線を描画したときに千鳥足のようなジグザグ描画になってしまっていた。実写映像だと意外に気づかない人が多いようだが、PCデスクトップ画面を出力すると分かりやすい。ウィンドウの輪郭や漢字フォントの描画がジグザグしていることに気がつくだろう。ゲームグラフィックスでも同様の描画特性が気になる局面がある。
VA型液晶の視野角がIPS型液晶に及ばないといっても正面に相対する位置から見ている分にはほとんど変わらない。極端に斜めから見たときにしかその差は現れない。そもそもテレビでの映像鑑賞はテレビに相対した位置から見るものだ。サイネージ用途の業務用ディスプレイならばいざ知らず、斜めからの視線の階調を補償するために、このジグザグ描画しかテレビ視聴ユーザーが選べないのはおかしくないか……と繰り返し訴えてきたのだが、ついに対応されたようだ。
「マルチ画素=しない」とすると、細い線分描写や輪郭線か鮮明になり、テクスチャの解像感も向上する。最終的には好みの問題だとは思うが、AQUOSで長らく千鳥足状の線描画が気になってきたユーザーは「マルチ画素=しない」設定を常用してもいいだろう。
LC-60UD1のバックライトシステムは白色LEDを用いたエッジバックライトシステムになる。開発側によれば、エッジバックライトシステムを採用しながらも、表示面の輝度均一性(ユニフォーミティ)には自信があるとのことで、実際に、中明度の単色映像を表示して輝度ムラを確認してみたが、確かに優秀だ。最外周に若干の輝度差があるくらいでそれ以外の領域ではほとんど輝度ムラがない。これは競合他社の同クラス製品と比較してもかなり優秀だった。
バックライトはエリア駆動には対応せず。その理由の筆頭として挙げられているのは「UV2Aパネルであればエリア駆動無しでも十分なコントラスト感が実践できる」という自信から来るものなのだが、この点に関しては競合他社の同クラス製品と比較すると、暗い映像での黒浮き感はややある。特に表示面の4つ角付近はとくに黒浮きが強調されがちだ。また、ビスタサイズやシネスコサイズのような上下に黒帯が出る映画コンテンツではその黒帯がグレーになって見える。
ただ、こうした黒浮き特性が目立つのは部屋を暗くして視聴した場合で、明るい部屋ではこうした特性は目立ちにくい。なお、部屋が明るくても、LC-60UD1のピーク輝度は相当高いので、十分なコントラストは得られている。映画視聴に適したモードとして用意されている「THX」モードでも暗室ではやや黒浮きが気になるので、間接照明くらいの薄明るさでの視聴が望ましい。
では、階調バランスが悪いかというとそう言うわけでもない。部屋を明るくして見る分には、ちゃんと最暗部にも色味が乗っており、色ダイナミックレンジはそれなり高いのだ。
LC-60UD1は、暗部階調を、黒浮き分を上乗せしたところを最暗部としており、そこから最暗部までの階調設計はリニア感をちゃんと実現できている。いうなれば、透過型液晶プロジェクタの階調特性によく似ている。
良くも悪くもLC-60UD1は、明室での視聴に合わせたチューニングが行なわれているように感じた。
発色の傾向自体は良好で、純色の色味も自然だ。人肌についても、暗いシーンにおいても、太陽光の下の屋外シーンにおいても、一貫して黄味の少ない美しい肌色を再現出来ている。前述したように色ダイナミックレンジは悪くないので、二色混合グラデーションにおいても目立った擬似輪郭はない。
リアル4Kコンテンツが殆ど無い現状では、4Kテレビは、デジタル放送を4Kにアップスケールして見るのがメインな使い方となる。
地デジ放送を見てみた感じでは、アップスケール感はそれほど高くない。映像中の文字や図版/グラフィックスの輪郭はスムーズになるが、テクスチャの精細感はそれほど向上はせず。あまり精細感を強調しないチューニングと言うことなのかも知れないが、もう少し解像感がアップするモードもあって良かったという感じだ。
また、全体的に、デジタル放送のブロックノイズやモスキートノイズが目立ち、時々コーミングノイズも見える。以前のフルHDモデルのAQUOSでは、ここまで感じなかったので、アップスケール処理の際の副作用なのかも知れない。いずれにせよ、デジタル放送映像に対する4K化映像エンジンのブラッシュアップは必要だと感じる。
一方、Blu-rayの映画など、もともと高品位なフルHD映像の4K化に関しては、デジタル放送の時のような粗は見えず。今回は、「アメイジング・スパイダーマン」を視聴してみたが、アップスケール処理も理想通りの働きをしてくれるようで、輪郭のスムーズさだけでなく、テクスチャの解像感も向上して見えていた。
LC-60UD1は残像低減技術として新開発の「240スピード」を搭載している。これは液晶パネル自体は補間フレーム技術を応用した120Hz倍速駆動を行なうが、240Hzの4倍速駆動相当のバックライト制御を行う事で、より残像を低減させる工夫だ。
この機能の設定は「QS駆動」設定で行える。「アドバンススピード」がこの「240スピード」に相当する設定で、「アドバンス(強)」がバックライト制御は無くすが補間フレームの支配率は高いモード、「アドバンス(標準)」は、さらに補間フレームの支配率を下げたモードになる。「スタンダード」は補間フレーム挿入無し、「しない」設定は倍速駆動無しの設定になる。
24Hzの映画コンテンツの場合は、これに付随したパラメータとして「フィルムモード」の設定が有効となり、「アドバンス(強)」が補間フレーム支配率の高いモード、「アドバンス(標準)」が補間フレームの支配率が低いモードになる。「スタンダード」は24Hz表示の等倍表示設定でフィルムジャダーが味わえるモードだ。「しない」はこの機能を完全にオフにする設定となっている。
LC-60UD1は、このような残像低減関連機能の設定は複雑なのだが、24Hzの映画コンテンツを映画館的に楽しみたいならば両設定を「スタンダード」設定にするのがいい。
ただ、最近のAQUOSの補間フレーム精度は高いようだ。本連載ではよく使っている「ダークナイト」のビル群空撮シーンの2シーンを確認したところ、「アドバンス(強)」「アドバンス(標準)」のいずれの設定においても、ピクセル振動のような問題は確認されなかった。
補間フレーム挿入有効時は、動きが、非常にスムーズになり、動いている映像のディテールまでが鮮明に見える。よほどオリジナルのフレームレートにこだわって視聴したいと言うとき以外は、この補間フレーム挿入はオン常用でもいいかもしれない。
アニメは「星を追う子ども」のブルーレイを視聴。UV2Aによってサブピクセルを仕切る格子筋がほとんど見えない特性と、4K解像度の高密度画素描写の相乗効果で、輪郭線のスムーズさと、単色で塗られた領域の密度感と均一感が素晴らしかった。4Kテレビでアニメを見た際の表現としてここ最近何度も用いているが、原画を高解像度で印刷したような見た目となるのが感動を誘う。LC-60UD1がこだわったという輝度のユニフォーミティ性能の高さも、このアニメ画質の高さには貢献しているに違いない。なお、今回は3Dメガネの入手が遅れたため、3D立体視の評価は省略する。
表示遅延の計測は、今回もテレビ製品として業界最速の表示遅延3ms(60Hz時約0.2フレーム)を有するREGZA 26ZP2との比較の形で行なった。
LC-60UD1側の画質モード(AVポジション)は「ゲームモード」を選択。計測結果は26ZP2に対して約34ms(60fps時で約2フレーム)の遅延があることが分かった。最近の薄型テレビのゲームモードの遅延程度としては標準的な値といったところだ。
プリセット画調モードのインプレッションと解説
・高精細
名前の印象とは裏腹にいわゆるダイナミックモードに相当する。圧倒的なピーク輝度を誇示することができるため、店頭ではこのモードで展示されている。
・標準
落ち着いた画調で万能性が高い。
・映画
色温度が低く設定されたモード。コントラスト感は控えめで階調表現に重点を置いている。ただし、モード名の割には輝度はそれなりに高い
・映画THX
THX認証されたモード。
・ゲーム
高画質処理を控えた低遅延モード。色調は「高精細」に近い
・PC
PCとの接続に最適化された画調モード。色調は「高精細」に近い
・フォト
デジタル写真向けのモード。色調は「高精細」に近い。
・sRGB(dsc_7240.jpg/dsc_7249.jpg)
sRGB色域に準拠したモード。リファレンスモニター的に活用するのに適している
おわりに~明るい大画面が魅力のAUOQS UD1。今夏の4K TVどれにする?
LC-60UD1の特徴としては、シャープが誇る均一性の高さや、高いピーク輝度を活かした明るいリビングでも使える画質ということになるだろう。基本的なメニューや操作系、ネットワーク機能などはAQUOSを継承しており、4Kに対応したハイエンド量産モデルとして、確かな性能が実感できる。
ソニーBRAVIA「KDL-65X9200A」、東芝REGZA「58Z8X」に続き、AQUOS「LC-60UD1」をチェックしたが、今夏発売の4Kテレビ製品の評価として総括してみると、サウンド性能はソニーBRAVIA X9200Aが最も優秀だった。AQUOS LC-60UD1もがんばってはいたが中央の定位感と音像のワイド感の面でBRAVIAに一歩及ばすといったところ。
画質は、幾つかの項目に分けて評価したい。まず、フルHD映像の4K化の品質だが、ブルーレイ映画のような、もともと品質の高い映像では、画作りの傾向に特徴の差はあるが、どれも満足できるレベルだ。しかし、デジタル放送の4K化は、東芝REGZA 58Z8Xが最も優秀だった。REGZAの超解像処理はかなりアグレッシブだが、超解像レベルの調整を1ピクセル単位で行なっているため破綻は少ない。ブロックノイズやモスキートノイズの影響も少ない。この点でやや及ばないのがLC-60UD1だ。デジタル放送の4K化にはもう少しレベルアップが欲しいと感じた。
暗部の階調性能やコントラスト感はBRAVIA X9200Aが優秀だ。バックライトのエリア駆動には相当なチューニングを行なったと見られ、暗室で見るに耐える画質を提供してくれていた。REGZA Z8Xはエリア駆動は行なってはいるが、ややX9200Aには及ばず。一方、AQUOS LC-60UD1はエリア駆動を行なっていない分、黒浮きが目立つ。しかし、輝度性能はダントツで、明部の輝度で満足のいくコントラスト感は実現できており、明室で見る分には階調にも破綻はない。
発色は、3者を直接比較すると65X9200Aがやや派手目な印象を持つ。また、X9200は肌色がやや黄味が強い。58Z8XとLC-60UD1は色味はよく似ており、この二者は過度な人為的な調色の少ないオリジナル志向だった。
総論としては、暗室で階調性重視でしっとりと楽しむならばBRAVIA X9200A、デジタル放送を4K化して楽しむのであればREGZA Z8X、日本の明るいリビングで明るさ重視で大画面を楽しみたいならばAQUOS UD1と言ったところだろうか。
LC-60UD1 | CA330CK |
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