小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第694回:【CES】ハンディからアクションカムまで4Kカメラ盛況。新コーデックLDACの音質は?
第694回:【CES】ハンディからアクションカムまで4Kカメラ盛況。新コーデックLDACの音質は?
(2015/1/8 08:20)
見えてきた今年の流れ
毎年1月上旬に行なわれる、世界最大級のコンシューマエレクトロニクスショーのCES。現地時間の日曜日にはちょい見せイベントであるUnveiled、月曜日のプレスカンファレンスと続き、本日6日火曜日から本会場が開幕した。
今年のCESは、ラスベガスコンベンションセンターを中心とした「CES Tech East」、メインストリートに近いSands ExpoやVenetianホテルを中心とした「CES Tech West」、メインストリートを南に下った高級ホテル・ARIAの「C Space at ARIA」と、大きく3会場に分かれている。Tech Eastは大手を中心とした、言わばこれまでどおりの展示、Tech Westはベンチャーを中心としたデジタルヘルスやデジタルホーム、ロボティクスなどの展示、C Spaceはコンテンツ制作とディストリビューション、オンラインメディアの展示となっている。
Unveiledや大手メーカーのプレスカンファレンスに出席したが、テレビやカメラなどのメインストリームはもちろんフィーチャーされているものの、IoTやカーエレクトロニクス、デジタルホームが熱いような印象を持った。
もっとも今回のムーブメントに対してデジタルホームという言い方が正しいのかどうかわからない。そもそもこの言葉は今から10年前に盛んに提唱されていたが、特に普及することなく終了した。それが最新のセンシング、ワイヤレス、モバイル技術を使って、もう一度まとめ直したような感じだ。
ただ、現時点ではベンチャー企業が1ソリューションをひっさげてバラバラに動いているだけで、トータルでどういうソリューションになるのか、大きな流れに成長していくのか、その辺が見えてくるのはまだちょっと先のようだ。
まずは会場取材初日を終えたところで、Tech Eastで見つけた製品を中心にお伝えしていく。
全ラインナップ4Kを揃えたパナソニック
ここ米国でも4Kテレビは盛んに訴求されてはいるものの、4Kを撮る方に関してはそれほど熱が入っていないように見受けられる。来場者の注目度も、4Kカメラコーナーは割と低い感じがする。
現在コンシューマ市場で4Kカメラを席捲するのは、パナソニックだ。昨年末の総集編でもまとめたばかりだが、現在のところ大小様々なカメラが揃っており、唯一欠けているピースがハンディタイプのカムコーダだった。
しかし、これも今回のCESで埋まった。「HC-WX970」は、丁度昨年のCESで登場したツインレンズ方式のカムコーダHC-WXシリーズの4K版。デザイン的には昨年のHDモデルとほぼ同じである。
メインのレンズはライカ・ディコマーの30.8~626mm(35mm換算)/F1.8~3.6の光学20倍ズーム。超解像ズーム領域も含めると25倍ズームとなる。センサーは1/2.3インチのMOSで、総画素数1,891万画素。記録方式はMP4で、3,840×2,160/30p、ビットレートは最高72Mbpsとなっている。
静止画ではすでに珍しい機能ではないが、動画でもHDR機能を搭載した。静止画ではいわゆる多重露光による合成で生成されるが、動画では60pのうち、明るいほうに合わせた露出と暗い方に合わせた露出を交互に撮影し、プロセッサでリアルタイム合成する。逆光や窓抜けの室内など、輝度の差が激しいシーンでも両方がきちんと写る映像が撮影できる。記録時には従来のガンマに収まるよう調整するため、既存のテレビでも問題なく表示できる。
サブカメラの方は、527万画素の1/4インチMOSで、37.2 mm(35mm換算)/F2.2の単焦点。スペックだけ見れば、ここは昨年のモデルと同じだ。ただマウントの仕方が変わっており、前回は水平方向に回るだけだったが、今回は他の軸方向にも角度が付けられるようになっている。
前モデルのように1軸固定では、サブカメラをベストの角度に向けるためには液晶モニタの角度で調整するしかないため、撮影者が見辛い角度になることもあった。そのあたりを改善したということだろう。
サブカメラの映像は4K動画の中にPinP(小画面配置)できるようになっており、位置は4隅のどこかを選択、サイズは正方形、小、大の3タイプが選択できる。
HC-VX870はサブカメラのないタイプで、メインカメラのスペックはWX970と同じ。サブカメラはないが、スマホのカメラの映像をWi-Fiで受信し、それをサブカメラとして同時記録する「ワイヤレスツインカメラ」機能がある。
実際にデモを拝見したが、フレームレートは12fps程度まで落ちるものの、離れた場所の映像を同時に記録するというメリットが生まれるため、記録映像としては案外使える機能ではないだろうか。なおこの機能はWX970でも使える。
そのほか、Androidを搭載したデジタルカメラ「LIMUX DMC-CM1」も展示されていた。昨年9月のフォトキナで発表され、すでにヨーロッパではドイツ、フランス、イギリスで発売が開始されているが、それ以外の国では発売されていないため、触るのは初めてだ。
デジカメとスマートフォンのハイブリッドのようなカメラだが、4K撮影機能もある。ただ、動画ではなく写真中心に設計されている。4Kフォトモードでは、常時3秒間が4K解像度の15fpsでループレコーディングされており、シャッターを押すと、その前後1.5秒ずつを記録するというスタイルだ。つまり、シャッターを押した瞬間の前後も、写真として切り出す事ができる。
4K動画も15fpsながら撮影できるが、連続撮影は主に放熱の問題で5分に制限されている。
4K + ハイレゾで攻めるソニー
コンシューマ用のハンディタイプ4Kカメラをいち早く登場させたのがソニーだが、およそ1年ぶりの後継機が登場した。
FDR-AX33は、以前HDカムコーダで好評だった空間光学手ぶれ補正を搭載した、4Kハンディカム。前モデルAX100から体積で約30%、質量で20%の小型軽量化を実現した。
レンズはZEISSのバリオ・ゾナーで、29.8~298mm(35mm換算)/F1.8~3.4の光学10倍ズーム。超解像ズーム併用で15倍となる。絞りは6枚羽根の虹彩絞り。センサーは1/2.3型、1,890万画素のExmor Rだ。
前モデルAX100は、マニュアル操作を意識した作りでボタン類も多かったが、AX33はよりコンシューマに寄せた作りで、レンズリングの切り換えスイッチやAF/MFの切り換え、NDフィルタのスイッチ、シーソー式ズームレバーなどがなくなっている。
デザイン的にも、AX100は鏡筒部がスマートでスッキリしたデザインだったが、AX33はサイズが小さくなった分“コロッ”とした印象で、前モデルを知る人にはかっこよさが減退したように見える。
記録は3,840×2,160/30pもしくは24pで、記録フォーマットはXAVC Sの100Mbpsが新しく加わり、60Mbpsとの2段階となった。
一方で、好調が伝えられるアクションカムも、4K対応モデル「FDR-X1000V」が登場した。デザインやカラーは前モデルAS100Vに近いが、録画ボタンとホールドスイッチは昨年発売された小型のHDR-AZ1同様、上部へ移動した。
また、ボディはこれまで背面だけが空いた筒状の一体成形だったのに対し、前方に継ぎ目がある。さらにレンズにはZEISSロゴが入るなど、構造を含めAZ1以降で世代が変わっているようだ。
録画フォーマットやビットレートはハンディカムのAX33と同様。フレームレートも4Kでは30pまでとなる。
一方ハイレゾオーディオでは、これも好評だったウォークマン「NW-ZX1」の上位機として、「NW-ZX2」が発表された。金属的な仕上げも良好で、かなりずっしりとした重みを感じる。ボリュームボタンに記されたでっかいプラスとマイナスの記号が全体から見ると変なバランスだが、頻繁に使うボタンということで強調されているのかもしれない。
ダイレクトに聴く音質はもちろん良好だが、今回個人的に興味を持ったのが、Bluetoothの新しいコーデック「LDAC」だ。会場ではZX2と対応ヘッドホン「MDR-1ABT」の組み合わせて、SBCと切り換えて試聴できるようになっていた。
実際に聴き比べてみると、機材のレベルが高いのでSBCでもそれなりに聴かせる音にはなっているのだが、圧迫感というか過密な感じがする。LDACで聴くと、耳がスッキリするというか、音像の広がりや奥行きを感じ、音がギュウギュウに詰め込まれている感じがしない。ワイヤレスで、しかもBluetoothでもここまで音質が向上するというのは、すごいことである。
これまでワイヤレスによる音声伝送で高音質化を目指したものとしては、非圧縮伝送のKleer方式がある。2007年のCESでお目見えした技術で今もイメーション(TDK)などで採用製品が存在する。今回のUnveiledでも採用製品を見つけたところだが、Bluetoothではなく専用トランスミッタが必要になるため、あまり普及しているとはいいがたい。
今回のLDACはBluetoothのコーデックとして、aptXなどと同じように広く採用される可能性もあり、これから数年でワイヤレスのサウンドが劇的に向上することになるかもしれない。
業績では不振が伝えられるソニーだが、CESの会場ではやはり注目度は高く、製品にも未来を見据える勢いがある。高付加価値への転換が求められる既存事業と、次世代のスタンダードを作る新事業のバランスをとるのはなかなか難しい舵取りだが、世界に誇る日本企業としてエールを送りたい。